偉大なる鈍感力を持つ男・松山英樹

久しぶりに野太いゴルフをする選手が現れた。東北福祉大学4年生で、今春プロ転向した松山英樹である。彼のすばらしいところは「偉大なる鈍感力」だと、ずっと僕は言い続けてきた。ともすると日本人選手は、神経質になりすぎる。たとえば、マスターズやほかのメジャートーナメントに出場すると、過剰反応をしすぎる。それは、大舞台というイメージだけではなく、コースの難しさ、グリーンの速さなど、速い、難しい、いいスコアが出そうもない、どうしようと大げさにとらえて過剰反応をしてしまうのだ。けれども、松山は、至っていつもどおりのゴルフができる。つまり過剰反応をしない鈍感力が、松山の取り柄ではないかと思う

「偉大なる鈍感力」を言い換えれば、とてつもない集中力を発揮する選手といえる。一昨年、マスターズでローアマを獲ったときのコメントは有名である。

 「18番ホールのグリーン上に上がってきたとき、鳥肌が立ちましたよ。・・・あ、このパットを沈めないとやばいなって思いました。もう1回は、表彰式。拍手が多すぎてびっくりしました。緊張しました。プレーより全然緊張しましたね。(シルバーカップは)重量は軽かったけど、重みはありました(笑い)。自分で何人目かわからないけど、その一人になれたことがうれしいです。石川遼より先に表彰式に出れましたね。スコアは負けたけど(笑い)。グリーンジャケットを見ていて、いいなって思いました。着てみたいなって感じです。まあ、それまで日本のどっかで緑のニセモノジャケット着てようかな(笑い)」

 帰国後すぐに彼がしたことは、トレーニングだった。打球練習よりも、身長180センチメートルの恵まれた体格の体幹をさらに鍛えないと世界で勝てないという気持ちが強かったのだろう。

 「出る試合は全部勝ちたい。勝ち目標にします」という言葉も、彼の朴訥(ぼくとつ)な雰囲気だと嫌みがない。

 「余計なことは考えないようにしています。(攻略も)キャディーに任せて、言うとおりに迷わず打つだけです」と、プレッシャーをいかに排除して自分の1打に集中するかを重視している。

 このところ10代の選手も含めて、ずっと日本人選手には世界ランキング上位選手に比べて小柄な選手が多かった。久しぶりに、という形容詞は、彼の体格も世界水準であることだ。

 朴訥といえば、彼の携帯電話に登録してある姉妹の番号表示は、「姉」と「妹」としか書かれていない。付け加えるなら、彼のトラッドなブレザー、ネクタイ姿がとてもさまになっていて、遠くから見ると世界を駆け巡るスポーツマネジャーのように見えるのは、僕だけの印象だろうか。

 当面の松山の目標は、世界ランキング50位以内に入って、来年のマスターズ出場権を獲得することである。



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