海うそ

”海うそ”  梨木香歩著  岩波書店

筆者の作品は久々。

本著は民俗学者が昭和10年ころに訪れた

 遅島が舞台だが・・・

  甑島をモデルとしているようだ。

遅島は民俗学者の父がかって僧侶として修業中

 明治政府の意向で進められた神仏分離策が

  急進派によって廃仏毀釈の行動を産み

 父も無理やり還俗させられた島でもあった。

民俗学者が島で見た散々に壊された仏閣。

 鹿児島・薩摩藩は最も忠実に行動したがゆえに

  1600以上の寺で仏像、仏閣が壊されたところだった。

そして仏教よりも更にヒドイダメージを受けたのが

 各地に古来から伝わる土着の宗教であったろう。

民俗学者が島内を巡って感じる寂寥感が

 読者にも十分に伝わってくる。

そして更に50年近く経って、80才になった民俗学者が

 大規模な島のレジャー開発直後に見た現実の島は・・・

皮肉なことに学者が捜し求めていたものをそこで目にするが

 読後の寂寞とした感覚は拭うことが出来ない。

色即是空と筆者は表現しているが・・・

 人間の破壊的行動にはやるせない思いを消すことが出来ない。

 

 

sellテニス

chat コメント 

コメントをもっと見る

通報するとLaBOLA事務局に報告されます。
全ての通報に対応できるとは限りませんので、予めご了承ください。

  • 事務局に通報しました。