天性のスター性で成功を引き寄せたい宮市 李

  • 2012年08月25日 01:53 visibility116
宮市はどうか。昨シーズン、ボルトンでのプレーで宮市はその魅力と課題を示した。最大の魅力はもちろん、ウォルコット顔負けのスピードだ。チェルシー戦でブラニスラフ・イヴァノヴィッチとガリー・ケーヒルをぶち抜いたシーンは英国中を驚かせた。技術の高さも特筆もの。香川と同様、彼もまたボールコントロールなどの基本レベルが非常に高い。FAカップのミルウォール戦で決めた初ゴールのファーストタッチ、プレミアリーグのQPR戦でイヴァン・クラスニッチの決勝点をアシストしたラストパスなどはその好例であり、何気ないトラップの正確さなども、ボルトンではトップクラスだった。更に、彼はボールを持ったらまずは相手に仕掛けようという“マイ・ルール”を持っており、90分を通じて気力と集中を切らさないハートの強さとスタミナもある。これはイングランドのファンに気に入られるために絶対に必要な要素だ。持っている素質は十分。あとは昨シーズン終盤戦のように、相手から警戒された時の対応力を身につけたい。単調にならないように工夫する力。いずれアーセナルのレギュラーになるには、これを磨いていくべきだ。幸い、彼はまだ19歳。まだまだ時間は残されている。ローン移籍先のウィガンで実戦経験を積めば、その才能はさらに磨かれていくはずだ。

 最後に、今年1月にサンフレッチェ広島から渡英し、半年後にプレミアリーグへの挑戦権を獲得したサウサンプトンの李についてだが、彼もまた宮市と同様に苦しいシーズンを送るかもしれない。韓国人の血を持つ日本人選手である彼は、アジアを代表する両国の良い部分を兼ね備えている。日本人特有の堅実な技術と献身的な姿勢、パク・チソンやイ・チョンヨンなどに見られる勇敢さや貪欲さ。いわゆる“根性”は、日本人選手の中でもピカイチだろう。

 ただ、サウサンプトンは今シーズン、残留争いを戦うことが予想される。戦力的に格上の相手ばかりと戦う中で、どうしても守勢に回る展開が増える分、下位チームのストライカーには、体格を生かしたボールキープや、ロングボールを直接たたき込める高さが求められる。そして、現チームのエースであり、昨シーズンの2部年間最優秀選手でもあるFWリッキー・ランバートはまさにそのタイプ。クラブ加入後、132試合出場で78得点を決めてきたエースからポジションを奪うのは容易ではなさそうだ。

 それでも、李には期待してしまう何かがある。例えば、今年2月のダービー戦で決めた左足の移籍後初ゴールは、シュート精度と思い切りの良さが光ったファインゴールで、クラブのゴール・オブ・ザ・シーズンに選ばれている。また、サウサンプトン移籍の決め手となり、ナイジェル・アドキンス監督が「選手たちに何度も映像を見せた」という2011年アジアカップ決勝で決めたボレーシュートも、彼が持つスター性を象徴するものだ。ファンの心に残るゴールを決められる選手は、たとえ出場機会が多くなくとも、それだけで存在価値を得られるものだ。そして、李はそのタイプの選手に見える。今シーズン、オールド・トラッフォードで香川擁するユナイテッド相手に李がビューティフルゴールをたたき込む。日本人ファンにとってこれほど面白いシチュエーションはないだろう。

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