苦手なこと。

小さい子供が、

「ねーねー、これ見てー！」
と言って何かを得意気にやって見せてこちらの反応を待ってるとき。

その得意気にやったことがそんな大したことじゃないとき。


あのときの返しがとても苦手な僕です。

一応、その都度「すごいねー！」とは言ってみますが、あの子供の澄んだ目に見つめられると、心の中を見透かされてるようで心が痛みます。


本気ですごいと心に思えてるときは、恐らく百点の「すごいねー！」が出来てると思うのですが、娘とか息子なんかが見てもらいたいことってのは、なかなか気持ちよく言ってあげられないような…

どうしても

え？みたいなことが多くてですね。


それでも子供からしたら驚かせたい、ほめてもらえたいから見せてくるわけで、シラーっとするわけにはいかないので、リアクションするんですが、結果、下手くそな感じになってるような気がして、それがとてもジレンマです。





今日もありました。



仕事中、手が汚れたので水道を探していると、入り口に水飲み場のある公園を見つけました。


ウインカーを出して入り口付近に車を停めて、蛇口に手をかけると

６、７歳くらいの女の子が僕の方へ駆け寄ってきました。


女の子「びっくりしたぁー！」

こちらのセリフなので、僕は手を洗いながら女の子に「？」っていう顔をしました。

女の子「手を洗いにきたんじゃ？」

僕「うん、そうよ」

女の子「そうなんじゃ、びっくりしたぁー！」

何をそんなに驚いたのか？
不思議に思ってるともう一人同じくらいの歳の女の子が駆け寄ってきました。

僕の顔を見ると

女の子B「こんにちは…」

と挨拶してくれました。

僕もこんにちはと返しました。
するとその子も
「手を洗いにきたん？」と聞きます。

僕は手を洗い終えて、「うん、そうよ」と返事をしました。

そして、やはり
「そうなんじゃ、びっくりした…」と言っているので、二人してどうしたの！？

と、思っていると。

女の子に
「入ってくるんかと思ったよー」

と、言われました。



入ってくる？それでもピンときませんでした。


公園に？いや、もう入ってるし。

女の子二人の遊びの輪に？おっさんがいきなりそんなことしないでしょ。

うーん…。





車を眺めてる女の子。

僕も車を見ました。

あー、なるほど。

そこでようやく意味がわかりました。



公園の入り口にウインカーを出して停まっている僕のトラックは、確かに今にも曲がって公園に入ってきそうに見えました。

それでか…。

トラックが公園に入ってくるのかと思ったんだな、かわいいね。




意味もわかったし、手も洗ったし、車へ行こうとしたら、

きました。


あの言葉。

女の子B「わたし、アレに登れるんよ」


うっ！

どんなことなんだろう…。

素直に驚けることならいいけど…。



恐る恐る女の子Bの指差す方向を見ると結構な大きさの木。


僕は普通に驚いたので
「え？アレに登れるん？すごいじゃん！」と素のリアクションができました。


ヨシヨシ。



と、ここまでは良かったのですが。

女の子Bは
「うん！見とって！」と、木の方へ走り出したかと思ったら、その木の手前にある高さ１メートルくらいの公園の名前が書いてある木柱に手をかけました。


僕は思いました。
「そっちかい！」と。

これはヤバイパターンのやつ。


そんな僕をしりめに頑張って登る女の子B。

てっぺんに…

登るというか座ります。

こちらを見る女の子B「ね、登れたじゃろ？」



はい！リアクションタイム！！





僕「す、すごぉいねぇ…」



くっそ！へたくそっ！！！



拍手までしましたが、ぎこちない。


自分の笑顔がひきつってるのがわかります。



そろそろと降りてくる女の子B。

女の子が「わたしも出来るかも？ 」と続きます。


もう、それ以上やめて…。


同じようにてっぺんに腰を掛けて女の子は僕を見ます。「できた！」




はい！リベンジチャンス！！！




僕「おー！できたねぇ、すごぉい！」



やっぱりへたくそ！
大根役者！

弱っていく僕。


女の子は元気よく飛び降りました。


こういうとき、子供たちは１つほめられたら次から次へと、自分の得意なことを見せてくるものです。


完璧にこの場を去るタイミングを逃した僕は緊張します。

つ、次は何を見せようとするんだろう？




そんな僕の心を読み取って気を使ったのか、リアクションの悪さが気にいらなかったのか…

わかりませんが二人は
「よし！バドミントンしーよおっと！じゃあねー！」と手を振ってきました。


一瞬ホッとしてしまった僕は。

バイバーイ！と手を振り、今度はガッカリして車に乗り込みました。





ハンドルにうなだれます。


なんでうまく出来ないかなぁ…。


女の子二人は頑張ってましたよ。





普段からリアクションが薄いと嫁さんに言われます。

性格なんです。

そら、驚くときもあります。

それでも一般的に見れば薄いんだと思います。




その点、うちの嫁さんはこういうのめっちゃ得意なんで、かなりなオーバーリアクションができます。

聞けば他愛もない内容の話でも、そらすごいと驚いて見せます。

それでそれで！と相手をのせます。



僕は思うのです。

天才だと。



嫁さんに話を聞いて欲しがる友達がたくさんいるのも頷けます。


僕には真似できません。





僕に無いものをこの他にもたくさん持ってる嫁さん。


だから心惹かれ、一緒になったんでしょう。











よし、今日はこれにて御開き！！