オシム監督

  • soultrans
    2006年08月17日 04:05 visibility70

オシム監督の2試合目、日本vsイエメン戦が終了した。なんとか2-0で相手を退けたが、オシムはあんまり喜ばない。4年間ジーコ監督に慣れてしまっていたが、監督って、そういうものだと改めて思った。さっき、観戦記を書いたときに、ちょこっと触れたが(その分カットすれば、短くなったのに、文章。。。)、オシムは自分に忠実な選手、または忠実に動いてくれるだろう選手を厳正して選ぶという方針があるようだ。もちろん、能力がある選手であることが前提ではあるだろうが、逆に言えば、自分の戦略を無視してまで自由にプレーして、日本を勝利に導ける選手がいるとも思っていないところが、ジーコとは一番違うところかもしれない。

そういう点では、ジーコの「自由」よりもオシムの「走る」というテーマは、やはりトルシエに近いものがあると思う。テーマは違えど、規律があるという点において、両者は非常に似ている。出身からすれば、近いのは当然かもしれないが。

現在のサッカーは、非常にシステマチックになりつつある。ファンタジスタが消えつつあるヨーロッパのサッカーを見ても、一人の閃きにほかの10人をゆだねるよりも、11人全員が、一貫した戦略を実行できるパーツであるほうが、閃きが起こる回数よりも、より確実だだ、という風潮が強い。さらに大きいのは、その閃きが消えたときに、どうするかということを考えると、戦略の駒(という言い方はあまりよくないが)は代役を立てられるが、閃きの代役はそうそういないし、閃きが異なれば、選手も対応が変わってくる。戦略上の申し合わせができないというところが、勝つサッカー(ビジネスにおけるサッカー?)において彼らの存在を難しいところに追い遣っている。

戦略家で知られるカペッロ監督は、自分の戦略にそぐわない選手なら、どんなにすごい選手でも必要ない。ただしロナウジーニョを除いては、というようなインタビューを見たことがあるけど、カペッロが考えても、自分の、つまり監督の指示を無視できる人間は、ほとんどいないと考えていないといけない。それを無視してもいいといわれているロナウジーニョはすごいけど、なぜ彼がそれでもいいといわれるのかは、ここでわざわざ言わなくても想像できると思うのであえて書かないけど、つまりはそれほどの影響力を持たなければ、誰であろうと監督の意にそぐわない人間はチームに入れるべきではないのかもしれない。

実際、オシムはユーゴ代表の監督時に、マスコミに言われて当時のユーゴの有名選手(実力ももちろんあったと思うけど)ばかりをスタメンに連ねたチームで見事に負けている。実際に証明して見せたといってもおかしくない。当時の代表には、サヴィチェヴィッチ(!)やストイコヴィッチ(!!)といったような問題児が多く在籍していて、そのときもおそらく彼らが選ばれただろう。その後はオシムの考えどおりにチーム編成を行ったらしいが、それでも前述の両名はおそらくはずさなかったのだろうから、彼らも規律を(ある程度)無視しても必要な個性だったといってもいいかもしれない(実際はどちらの理由で抜擢していたのか、など詳細は不明なのであくまで私見としてですけど)。ま、どちらにしても、日本には、中田、中村などを含めても、ストイコヴィッチやサヴィチェヴィッチのような名手は全くいない。たぶん、オシムにしてみれば、中村や中田の経験がいかにあったとしても、彼らを入れたときと入れないときのチーム差は、世界のレベルで考えれば、あまり遜色ないと考えているのではないだろうか。確かに遜色はないだろう。2-0が1-0になる程度だし、0-2が0-3になる程度にあまり差のないことのように思っていると思う。

日本は、まだまだサッカー後進国だということを、オシムは一番良くわかっている。よくわかっているから、日本代表が出来ていないことをどのようにできるようにするかということを考えてくれている。チームの強さとは、最も調子の悪いときの勝率をどのぐらい上げられるか、ということなんじゃないかな、と僕は個人的に思っている。一番良い状態で、勝てない相手は別として、一番調子が悪いときでも、勝てる、あるいは勝ったという意識や結果を残せる相手をいかに増やすかが一番重要ではないかと思う。そのために、チームは戦略を考え、実行する。その戦略の成功率をいかに上げるかということが、選手個々の状態にかかってくるならば、なおさらである。11人の平均の状態が良い状態なのか、悪い状態なのか、サブの選手はどうか、そういう全体的なチーム作りが今の日本に、というか日本に4年間足りなかったものかもしれない。「自由」を掲げて自由に勝利を勝ち取れるほど、日本のサッカーは成熟していなかった。2006年のワールドカップは、改めてそれを教えてくれたのだと思うし、オシムはそれをこれから日本代表に教えると思う。敗北を常に口にするのも、その現われだと思う。敗北しても、勝利しても、そこから収穫と呼べるものを次の試合に持っていけなければ、カップ戦だろうが、親善試合だろうが、練習試合ですらなくなってしまう。

きっと、オシムはそれを踏まえてやってくれるんじゃないかな、と思う。

ふと、今日僕の頭の中によぎった不安があった。それは、オシムが「何か」に失望して、代表監督を辞さないか、ということ。オシムがもしそういうことをしてしまうとなれば、日本代表、あるいは、日本のサッカーが、相当危険な状態になってしまったときかもしれない。そういうことが任期中にないことを祈って、なんとか代表がより強く成長してくれることを祈っている。

chat コメント 

コメントをもっと見る

通報するとLaBOLA事務局に報告されます。
全ての通報に対応できるとは限りませんので、予めご了承ください。

  • 事務局に通報しました。