【NPB&巨人】 田中賢と武田久の契約更改
-
DIME
2006年11月29日 23:48 visibility133
日本一になった日本ハムの成長株、表題の2名の契約更改のニュースが個人的に非常に興味深かった。
田中賢介の契約更改についてはNPB全般が抱える問題点、武田久については巨人が抱えていた問題点が透けて見える。
まずは田中賢介の契約更改について。記事はこちらから。
-------------------
今季ブレークした日本ハム田中賢介内野手(25)が29日、札幌市の球団事務所で契約更改交渉に臨み、今季1350万円から約3倍増(金額は推定)で保留した。
「今日は話をしに来た。まずは自分の評価を聞きたかった」。今季はパ最多の34犠打を記録。ゴールデングラブ賞とベストナインにも輝いた。
「守備の貢献度も評価してもらった」と話していた。
-------------------
個人的にこの田中選手の対応は非常に普通なことだと思う、っていうかこういう対応しない他の選手のほうがおかしい。ところがNPBのなかではこれを「保留する」ということになってしまうのだ。
これは球界だけでなく日本全体の悪しき伝統とさえ思うのだが、契約をするにしてもじっくり話し合うことを良しとしない、細かな部分まで意見を交わしたうえで契約することを「相手を信用していない」と悪いイメージに捉えているところがあると思う。
そういう悪しき伝統が、公共団体での随意契約の蔓延を招いたりしているそもその元凶だと思うがその話は野球には関係ないのでとりあえず置いておく。
「契約をする」ことでもわかるとおり、選手というのは球団に所属する社員ではなく1名1名が独立した個人事業主である。その彼らが雇用主である球団と来季の契約内容について聞きに行ってそこで「自分が1年間働いた結果としての評価」に基づく提示を聞いてじゃあこちらでその内容を確認します、というのは普通ではないだろうか。
その「自分が1年間働いた結果としての評価」というのはものの10分やそこらで確認できるものだろうか、というかそんな短い時間で安易に確認して認めていいものだろうか。
むしろ「今年のあなたの仕事内容についてはこのように評価していますのでこういう金額です」と初めて提示されたにもかかわらず、初めて聞かされてからほんの1時間もたたずに契約を交わしてしまうことこそ奇妙なことだとしか私には思えない。
そんな考えで契約交渉に臨んでいる選手が本当の意味でしっかり野球に取り組んでいるといえるだろうか、プロといえるだろうか、私は言えないと思う。
自分の仕事に対してしっかり取り組んだことにたいして、どこがどのように評価されているかということをを見極めたいというのは仕事に熱心であるなら自然な欲求ではないか。むしろ言われた額を唯々諾々と認めるほうがよっぽど仕事に対して不熱心ではないだろうか。
別観点から見れば、そういう非常識な常識が横行しているのも日本プロ野球の実態が企業スポーツの形から脱却しえていないということを示しているのではないだろうか。
企業スポーツの感覚からすれば選手は「個人事業主」ではなくあくまで「従業員」でしかなく、従業員が企業に対して「年俸」でなく「給料」の額について交渉することがないのも不自然ではない。
今多くのファンがNPBが企業スポーツから脱却することを期待している。もしそう期待しているのならば選手に対してももっとそういう自覚を持った行動をするべきだという目で見るべきではないだろうか。
ところが、「企業スポーツからの脱却」とか言い出すファンに限ってこういう田中選手の行動などを批判していたりする、小笠原の件然り、黒田の件然りで金銭的な部分を気にすることがまるで悪いことであるかのように扱われる。だがそれは「企業スポーツからの脱却」という目標を遠ざける考え方だと気づくべきだ。
田中選手のようなケースは「金にあくどい」ことを示しているのでは決してない、私から言わせてもらえれば「プロ意識が高い」からこそこういう対応をするのだ。
あまりに簡単にサインしてくる選手に対して、プロスポーツ選手としての自覚があるのかと厳しく接するのも野球ファンとしてのプロ野球への愛情の示し方ではないだろうか。
-----------------------------------------------------------
この契約については最初に書いたように巨人軍が見習って欲しいと強く願う内容である。ニュースを一部抜粋しよう。
-------------------
査定ポイントはダルビッシュ、八木らを抑えてチームNO1。289%のアップ率は、球団では96年オフの金子の300%(700→2800万円)に次ぐ数字
-------------------
私はこの査定が全くおかしいものであるとは思わない、前に日記でも触れたがどうしても報道などではダルビッシュや八木のような先発が目立ってはいるが正当な査定をしていたらそちらではなくもっとも査定ポイントが高いのは武田久でなければむしろおかしいと思う。
ところがそのおかしな査定をしてるとかしか思えなかったチームが現在のフロントに変わる前までの巨人だった。
巨人は巨人ファンのみならず他球団のファンの多くも知っているような「中継ぎ・抑えが安定しない」という大きなウィークポイントをここ10年来抱えている。
だったらそこにあてがう投手に対して他の投手よりも優先的に査定をあげなければならないのに、中継ぎ・抑えをする投手に対しての査定ポイントが低すぎた。優勝したとしても中継ぎ・抑えよりも先発投手のほうが大きく年俸があがってしまう、それが巨人の査定だった。
どれだけそこが弱いそこを強くしなければといっても、中継ぎ・抑えをするよりも先発をする方が査定が高くなるのであればいい投手であればあるほどチーム内で先発をしたいと思うのは当然だ。
数年前までの巨人に対してずっと思っていたことなのだが、中継ぎ・抑えを強くしたいのであれば、中継ぎ・抑えで活躍する方が先発で活躍するよりも評価されるのだと選手に通達すればいい。
先発で20勝するよりも抑えで30セーブする方が球団としては高く評価しますよとすればいいのだ。
絶対的に評価したときにチーム全体への貢献度を考えれば先発で20勝する方が高いだろう。しかし評価というものはそれだけじゃないはずだ。10勝できる先発が次に控えている中での20勝と、10セーブできる選手さえいない中での30セーブというように相対的に考えれば球団が弱い部分を的確にカバーしてくれる人のほうが評価されてしかるべきではないだろうか。
ではどういう評価をすればいいのだろうか。手っ取り早くわかりやすいのは金銭的な評価で差をつけることである。
例えばとある自動車会社があって、そこの主力商品はセダンタイプの自動車だったとしよう。ただ会社としては市場として成長の見込みが薄いセダンタイプよりも、市場成長見込みが高いのに現在シェアをうまく獲得できていないワンボックスタイプの車をもっと売って欲しい。そうなるように営業社員を導きたいという意図がある。
(あくまでこの例は例であり、実際の自動車業界の現状は上記のままではありません)
その目標を実現するためには色んな手段があるが、そのうち給与に絡めた手段とすれば、ワンボックスを売った人にはインセンティブをつけますよって言うのが一番わかりやすい。
これと同じだ、巨人としては中継ぎ・抑えというウィークポイントをどうにかしたい。だったら中継ぎ・抑えをちゃんとやった選手には他のポジション以上に比重をかけて評価しますよってすればいい。
ただこの点に関しては現フロント陣に代わってから改善が見えている、この点も私が現在の巨人フロント陣を評価している理由の1つである。
昨年の巨人投手陣において1千万円以上の増額だったのは移籍したパウエルを除けば、久保裕也と林昌範だけだった。 これは非常に理にかなった査定だったと思う。
中継ぎ・抑えというものは抑えて当然、失敗すれば大ブーイングっていうポジションである、去年の久保・林も2名で118試合に登板して6敗している(今年は121試合で9敗)。しかし、年に50試合以上登板するような彼らにとってその登板回数を考えれば何度か失敗するのはごくごく自然なことなのだ。
詳しい数字は忘れたが今年藤川がずっと連続無失点記録をつづけて大きな話題となった。逆に言えばずっと無失点で抑えるのがそれぐらい「大きな偉業」となってしまうのが中継ぎ・抑え、ひいては投手という職業なのである。
どうしても先発投手よりも登板試合数、つまりファンの目に晒される機会が多い中継ぎ・抑え投手は自然と失敗したとしてファンが覚えていることも多くなる。ファンもそれを自覚するべきではないだろうか。
去年の久保&林にしても成績の割には世間の評価は決してよいとはいえなかった、しかし現フロントはそのような「主観的ブレ」に惑わされることなく彼らを評価し、チーム投手陣での1・2番のアップ率という評価で報いた。
私としては今年の成績でも久保・林両投手については十分評価されてしかるべきだと思っている。久保に関しては途中に離脱があったので若干マイナスになるとしても林に関しては1シーズン大崩れする時期もなく中継ぎとしてしっかりチームに貢献した、これだけでもアップ査定するに十分なものではないかと思う。
なぜなら先発に比べて中継ぎ・抑えというポジションは結果が出ていないと守りきれないポジションであるからだ。投げる投手には「試合を作る」という目標が求められるが、先発では多少失点したとしてもこの目標が達成可能であるのに対して、特に勝ち試合での中継ぎ・抑えでは無失点でないと試合を作れたとは言えないことが多い。つまり中継ぎ・抑えのほうが結果に関してはシビアなポジションだ。
私は巨人ファンに対してそういう観点からもっと中継ぎ・抑えというポジションにある投手を見て欲しいと思う。もっとそこを担っている投手に対して高く評価して欲しいと思う。
ファンがそこを高く評価せず、ちょっと非現実的なほど無茶な要求をもって見ているからこそ世間でも厳しい評価になってしまうし、素晴らしい結果を収めているにもかかわらずそれでは全然ダメであるかのように思われてしまう。
1年間その仕事をまっとうすることも難しい上に、他の仕事よりもやってきた結果にたいして正当な評価がされにくい。そんな仕事を誰が好きこのんでしようと思うだろうか。それがこれまでの巨人の中継ぎ・抑えという仕事だったのだ、そういう観点で見ればむしろ中継ぎ・抑えというポジションがいつまでたっても弱いままだったのは自明だったとさえいえるだろう。
中継ぎ・抑えが強くなって欲しいのであれば巨人ファンとしても中継ぎ・抑えに対してもっと現実を正しく認識して、正しく=比重を高めに評価することが大事ではなかろうか。
とりあえず今年の成績であれば久保・林両名ともまだまだ年俸が低いことではあるし、去年ほどではないにしろ上積みをして欲しいし、その上積みに対してファンからも当然だという声が出て欲しい。
彼らが評価されるからこそ、若手投手陣としても「中継ぎ・抑えをすれば評価される」と認識するしそこを目指そうとするモチベーションが生まれるだろう。
現在球団側はその当然のことに気づき、対応している。対応しきれていないのは一部ファンである。彼らが早く気づき球団に倣って欲しい、そういう意図も込めての今日の日記である。
- favorite10 visibility133
- 事務局に通報しました。
chat コメント 件