【ニュース】 日本式故障者リスト導入

  • DIME
    2006年12月03日 05:13 visibility263

MLBのDLとはだいぶその内容が違うけど、日本でもようやく故障者リストが導入されることになりそうです。

このDLに関しては、選手会側が「試合数削減」と「ストライキ」を絡めて導入を要求したためにどうも選手側のワガママのように思われている風潮があるけれど、私は必ず導入しなければならない制度だと思っていたので安堵しています。

 

んでまぁ言わずもがなな部分ですが、一応説明しておくとMLBの場合はDLの意図がロースターが40人しか枠がないことへのチームを救済する措置であり、選手のFA権利については付随的なものである色彩が強い。

それに対して日本の場合はロースターという概念がなく、支配下登録選手全員の1軍登録は自由なので、選手が離脱したとしても結局は球団にとって登録人数でデメリットが生じることはない。そういうことで日本での故障者リストの存在は選手側の救済措置である色彩が強くなる。ってな違いがあります。

 

ただこの制度は単純に選手を救済するということだけにはとどまらない事に気づかない人が妙に多く、あまつさえ、「こんな制度を導入すると選手が怠けてしまう」 とか頓珍漢なことを言い出す人さえ見かけますね。

実際に起きるのは逆であることは歴史が示しています、義務教育の範囲内でそれを習っていないはずがないんですが。日教組だかなんだかのせいで日本では妙に近現代史を習いにくい環境にあるのでそのあたりが影響しているかもしれませんが。

何を習っていればそんなはずがないとわかるのか、社会保障制度が成立した歴史的経緯を知っていれば上のような主張が当時の資本家がしていたような都合のいいズレた主張だとわかるはずです。

労働災害に対して公的に救済をするかどうか。これは歴史的に議論されてきました。

資本家階級が主張したのは「労働災害に対して救済をするようになると、少々の怪我でも休まれてしまい効率性が下がる、それを助長するような制度は設けるべきではない」というもの。

逆に労働者階級からは「労働災害に対して救済をすることで、リスクに対する安心感が生まれ、結果的に効率性は高まるので、リスクヘッジのために制度を設けるべきである」というもの。

どっちが正しいか、どっちも正しいです、どちらにも一理あります。論理的にはどちらが正しいとか言い出すとキリがありません。

実際に保障制度があったらそれを悪用して怠けるものがでてきて全体としての効率が下がる、これは事実。たった今も例えば奈良の同和逆差別問題はこれに当てはまるでしょう。

しかしだからといって怪我をした場合の救済措置を講じていないでおくと、怪我をすることのリスクを懸念して多くの人は怪我をしないことというのを第一に考えてしまうようになり効率が下がる、こちらも事実。

じゃあなんで今の世の中はほとんど全ての国で後者が採用されているのか、社会保障で労災制度が設定されているのか。

一部の脳内ハッピーな人たちは「労働者階級の勝利だ」とか言い出すのかもしれないけど、そんなキレイゴトで世の中回らない。もっと単純な話で実際に両方を試してみたときに後者のほうが効率性は高くなるというデータ・経験則が出ているから、導入した国の方が強くなったから、そんだけですよ。

前者が懸念するような事例は間違いなく出てくる、ただその事例が導き出す効率性の低下より後者が生み出す効率性の上昇のほうが大きい、だから世の中は現在こういう制度になっています。

 

もちろん、プロ野球という特殊な職業であればそれは当てはまらないのではないかという主張もあるだろう。ただ現実としてMLBだけでなくNFLやNBAなどでも故障者制度を導入した方がより選手が積極的なプレイをするという主張のほうが正しいと認めているからこそ制度を導入している。

むしろ逆に労働災害の可能性が高い職業であればあるほど、保障がなければ怪我によるリスクをヘッジするために効率性が下がるというデータが出ている。ってまぁそんなもんデータで取らなくても想像力があればわかるだろうと思うが。

 

小難しい話になってしまったが簡単に言えば、「保障制度があることで怠けることより、保障制度がないことで選手が消極的になることのほうが大きい。だから保障制度がないとプレーの質は低下する」ってこと。

だから私は故障者リストに関しては導入すべきだとずっと主張してきました、別に選手の権利がどうとかじゃなくてただいいプレーが見たいんで、それだけです。

 

 

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ただ今回の制度については諸手を挙げて賛成というわけではありません。

一部の人が指摘しているように、現在の「プロ野球選手会」は他スポーツの選手会組織と比べたときに明らかにおかしいです。どうおかしいかというと「プロ野球ハイソサエティクラブ」となっているところです。

 

今回のシステムにはそのプロ野球選手会の問題が如実に表れていると思います。現時点で導入が検討されている制度の内容というのは以下のとおりです。 

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「前年度の出場登録日数145日以上の選手を対象とし、翌シーズン中(キャンプ期間を含む)に故障して出場登録を外れた場合、シーズン後に一定日数をFA権取得日数に加算する」 

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それと以下は前にストライキを検討すると言ったときの宮本会長の発言です。 

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「ボクは、もめて権利を取ろうとは思っていない。負担が増えてもファンが喜んでくれ、球界が発展するなら快く了承すべき。皆にもそう言ってきた。ただ、その代わり働きやすい環境を整備してくださいと頼んでいる。何もFA権を5年にしてくれとか、むちゃを言っているわけではない。それを検討もしてくれないのでは、皆に我慢しろとは言えない。現状では私見だが、増える分の試合をやらない選択肢もでてくる」

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このDL制度の導入は労働環境整備の一環だと主張しているわけです、にもかかわらず一部の選手にしかその環境整備が反映されない事に関しては全くスルーしておいて「一定日数」の部分を拡げようとしていますが、おかしいでしょ。

なんで対象選手を区切らなければいけないのか。こんなことをしてしまったら対象外の選手は、「まずは対象となるために怪我しないで1年間過ごそう」って思うわけで怪我によるリスクを恐れて消極的なプレイに走るのは変わらないままです。

「どうせ自分たちのような主力クラスの選手にとって見ればそこはあってもなくても代わらないから」という考えがにじみ出ていますよ。

 

これに限った話じゃないのですが、現在のプロ野球選手会はシステムとして高給取りの選手を中心とした組織となっていますから、どうしてもそういう選手にとって都合のいいことばかりを主張しているように思えてなりません。

もちろん発言では、「プロ野球界全体の発展のために」とか言っていますけど、実行が伴っていないんですよ。現実として彼らは選手の利益最大化にしか動いていないどころか一部選手の利益最大化しかやっていないように思えます。

そういうところがみえてきたからこそ、最近は再編問題のときほど選手会に対してファンの同調が少ないのではないでしょうか。

とりあえずプロ野球界全体の発展のためにとか言うならば、まずは高給取りの選手から一定額を徴収して、そのお金を使って引退した選手のセカンドキャリアを支援したりするべきです。そういう「痛み」を嫌がって「それは我々ではなく球団がするべきことだ」とかお題目だけは立てて逃げていてはダメですよ。

「本来やるべきところ(球団やNPB)にさせること」と「選手を救済すること」のどちらが大事なのか、んなもの言わずもがなですよね、「うちの担当じゃないんで、事件前は警察の担当じゃないんで」って言って殺されちゃった人とかと同じじゃないですか。救うことが大事じゃないんですかねえ。

「選手を救済すること」のほうが大事だっていうならばまずやるべきです、やれるだけの財力は持っているのだから。その必要性を認識させた上で将来的に球団やNPBにやらせるときに選手会がそれまで払ってきたお金を請求するなりすればいい。

言うだけ言って動かないということは「選手を救済すること」よりも「本来やるべき所(球団やNPB)にさせること」の方が重要なんだと言っているようなものです、いくら口では違うこと言っていたって行動がそれを示しているんだからファンだっていつまでも騙されやしません。

 

私は上記のような理由でDL制度を導入希望していましたのでどんな形であれそれが導入されることには賛成していますが、今回のプロ野球選手会の言動については賛成する気にはなれません。

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