【NPB】 大学・社会人ドラフト ドラフト制度について

  • DIME
    2006年11月20日 15:54 visibility155

例年の流れで言えば、大学・社会人についてはドラフト前にある程度決まっていて、競合したりウェーバー順が先の球団にさらわれるのは高校生の方が多いと私は思っていました。

ところが分離ドラフトになった影響でしょうか、今年は妙にぎりぎりまで荒れているというか決まらないようです。 

そもそもドラフトというのはそういうものであるのが正しいので望ましい形だとは思いますが。

 

っていうか完全ウェーバーとかを主張している人は現行ドラフトをどのような目で眺めているのかいつも疑問に思います。

「完全ウェーバーで戦力が均衡になる」という主張が成立するためにはいくつかの前提条件があります。

その一つに「評価が高い順に指名されていく」ということがあるとおもうのですが、実態はそうなっているでしょうか。別に自由枠に限った話ではありません。

下位指名であっても、基本的にプロ側が事前に訪問して挨拶をしている選手でなければ指名しない、或いはそういうのなしにいきなり指名するのがおかしいという風潮は常識となっています(高校生ドラフトでロッテの大嶺指名に対する関係者の発言を見ればわかると思います)。

それを逆手に使えば、事前挨拶を断った場合は獲得できないから撤退しなければならないってことになります。これが囲い込みになるわけです。

 

完全ウェーバーをすると同時に囲い込みも改善すれば良いって言う人もいるかもしれませんが、現在でも改善できていないのにどこからそんな根拠がでてくるのか理解できません。

むしろ完全ウェーバー制度のほうが現行制度よりもより囲い込みに成功したときのメリットは大きいわけですから、拡大するのではないでしょうか。

それでも「完全ウェーバーのほうが戦力均衡により近いのだからとりあえず導入すべき」って意見もあるかもしれませんが、そもそも囲い込みが存在する状況のままじゃ「完全ウェーバーが戦力均衡により近い」という論理の前提がなりたたなくなっていますよね。

 

とりあえずは現行制度内でまず「誰でも指名できる、それが当然だ」という状況をつくるという実績を得ない限り完全ウェーバーへの移行は間違いだと思います。 

今のような実態のままで完全ウェーバー制に移行したとしても、囲い込みは残るでしょう。だって完全ウェーバーになったほうが囲い込みの重要度は増すわけですから。

そこに裏金や密約が本当にあるかどうかは別として囲い込みが起きたときに、悪意を持ったイエロージャーナリズムなどから裏金があるのではないかと書き立てられたときには否定できないままです。

それはプロ野球界全体にとってあまり望ましいことではないのではないでしょうか。そういうのをなくすっていうのもドラフト改革の目標の1つではないでしょうか。

 

またよくメジャーリーグでは完全ウェーバー制だから導入すべきだという意見も見られますが、そのメジャーのドラフト制度が既に崩壊しているのは前に述べたとおりです。

またこれに付け加えてもう1点言わせてもらえればMLBのドラフトではUSAとカナダ・プエルトリコの選手しかドラフト対象となりません。現在その多くをしめる中南米出身の選手はドラフトではなく自由競争で獲得されています。日本人選手があちらへいくときも当然ドラフトにはかかりません。

現在のMLBではドラフト外出身者が約4分の1を占めているわけで、その状況を完全ウェーバーによる戦力均衡が図られている世界と表現するのは非常に語弊があります。

 

別に私は戦力均衡を図る必要がないといっているわけではありません。

各チームごとにある程度の戦力均衡が図られなければリーグ全体として魅力は失われてしまいます(あまりに戦力差のある試合を見ようとはなかなか思いませんよね、ex.アジアシリーズ)。なのでスポーツビジネスとしてリーグが成立するためには戦力均衡は絶対に必要なことです。

ただその方法として完全ウェーバー制度というのは非常に単純な制度なので非常にわかりやすく一見正しそうに見えますが、実態はそうでもないっていうことです。

マスコミはどうしても自分の保有する資源(テレビなら時間、新聞・雑誌なら紙面)の限界があるので、できるだけわかりやすいモノを求めそれを強調する傾向がありますから、あまりに単純なことを主張しているときは疑った方がいいです。

 

まず何に対して均衡を図るかをしっかり考えなければなりません。完全ウェーバーとは一種の社会主義制度といえます。努力をしたチームも努力をしなかったチームも同じだけの戦力を得られるようにしているわけです。

もちろん選手のドラフト指名時だけの能力だけでチームの実力が決まるわけではありませんが、逆にドラフト指名時の能力に大きな有意差がないのであればそもそもドラフトなんてする必要がないはずで、ドラフトをしなければ戦力が均衡しないというのはドラフト時点での評価はチームとしての戦力を大きく左右するということに他なりません。

っていうことは球団として利益を最適化する1つの方法としてできるだけ経費をかけず、制度を使っていい選手を獲得して選手の能力だけで勝っていくことという方法が考えられます。

得られるものが一定の社会では、労力を削れば削るほど自分の得られる成果は大きくなる、こう考える人のほうが多く、そういう考えが招く末路はどうなるかは現代史を習った人なら誰でも知っていると思います。 

じゃあ何に対して均衡を図るべきなのか、私は球団側の努力に対してだと思います。頑張ったチームは頑張ったなりのものを受けられる、これが基本ではないかと思います。頑張ったものというのがお金でもあるかもしれませんし、指名選手への誠意かもしれません。ただ頑張ったら頑張った分だけ評価されるのが一番の理想ではないでしょうか。

もちろんあまりにそれを徹底しすぎると、上下差が広がりすぎたときに戦力均衡が崩壊する可能性がありますのである程度の制限は掛けなければなりませんが。 

そうなってくると例えばバランスを取るためにドラフト制度だけに限らずに、リーグ全体での課徴金制度などでバランスを取るなどという選択肢も考慮に入れなければならなくなるので単純にドラフト制度をこうすればいいってわけにはいかなくなります。

 

個人的に言えば、FA制度を改変してもっと多くの選手がFAを取得できるようにする、それと同時にFA補償として一定の指名順位(選手の能力で変動)での追加指名権利を与える、その指名権利も含めて全ての指名順位の売買を認める、ぐらいの改革が必要だと思っています。

完全ウェーバー制度を導入しているリーグは基本的にその制度に大きな不備があるのを自覚していて何らかのカバーを講じています。そういう部分に関しては何にも言及がなくただ「○○○は完全ウェーバー制度である、だからNPBもそうすべき」なんて意見は参考にしないほうがいいですよ。

そうでなくても他で成功してるからこっちでも成功するなんてのはあまりに単純に過ぎますし。

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