【ニュース】 阪神30億円減免問題

  • DIME
    2006年11月15日 06:13 visibility334

阪神の親会社統合に伴う預かり保証金の減免問題が29億円減免という形になりそうだ。

 

私はこの問題についてはそもそも、30億円を支払わせるべきだと考えていた。その理由は以下のとおりだ。

 

株式会社阪神タイガースが存在してこれを阪神電鉄が保有する形になっている。この親会社である阪神電鉄が子会社化されるというのが今回の形。
もしこれでも親会社は阪神電鉄のままだとすると認めてしまうと親会社(阪急電鉄)の孫会社(阪神タイガース)でありながら、子会社(阪神電鉄)の子会社だから変わらないという主張が認められてしまうことになる。
当たり前のことだが「孫会社は親会社とは関連のない会社」なんて事は誰も思わない。「孫会社は親会社の子会社」でしかない。

 

これを認めてしまうと、例えば球団Aがあり、○○新聞社が親会社であったとしよう。この時○○新聞社はそのまま保持せず、Aの全ての株を持つ株式会社Bを作り、Bの全株式を○○新聞社が保持しておく。こうしておけば○○新聞社は球団を■■社に売却しようとするときB社の全ての株式を■■社に売却する。これでも同様に球団AがBの完全子会社という形式に変更がない(参照)ので認めなければならなくなる可能性が高い。
もちろん実情が全然違うのは一目瞭然なのだが、例えば今回認めておいて次回これはダメとかいったときに、論理的には同じなのに認めないのはおかしいなどと訴訟を起こされれば、勝つのは難しいだろう。

 

 

と考えてはいたのだが、今回の決着に関してはこれなら減免してかまわないと思っている。

理由はなにより誓約書の存在である。

根来コミッショナーは弁護士資格の保有者であるから、彼を納得させられたということは法的な拘束力を持つ誓約書であるだろうと推測できる。

前回阪神側はあくまで「口約束」しかしていなかった。過去の事があるから口約束で十分納得してくれるだろうという態度だった。もちろん「古きよき時代」であればそれで済んだのだろうが今はもうそれで済ましておいたらそういう穴を誰かがつついて来ないとも限らない。

そもそも村上ファンドの問題だって「不文律」があるから大丈夫だろうと高をくくっていたところを突かれて来たわけだし。

とりあえず今回のように誓約書が提示されればあくまでこれは特例であるという阪神側の主張を認めることが可能になる。

前回の30億支払えという結果に対して「阪神がこれまで野球界に行ってきた貢献が評価されていない」なんて嘆いていたがなんのことはない、阪神側の言動が甘いってことだ。

法的にみても問題のない対応をすればちゃんと他球団は貢献を評価してくれる、してくれた。それだけのことに過ぎない。村上氏のときにも感じたがどうもまだ古きよき時代の慣習が抜けていないのではないだろうか。

 

またこの件で注目しなければならないところは30億円減免でなく、29億円減免となっているところだろう。

30億円の内訳は預かり保証金25億円・野球振興協力金4億円・入会手数料1億円となっている。となると入会手数料だけは認められなかったというわけだ。

それは何を指すか。思うにはこれは形式上は「新規参入」であるとしている事を示しているのではないだろうか。

つまり名目上は「球団保有者は変更」されたので新規参入として入会手数料は必要であるが、「実質上の球団保有者には変更がない」ので特例措置として保証金25億円と野球振興協力金4億円は免除するという判断であるのではないかと推測される。

この対応は今後の悪しき例とならないためにも球団の持ち株会社の売買は所有者の変更にあたるとしつつ、阪神側への考慮も果たせている。なかなかいい落とし所だったのではないだろうか。

 

 

 

またこの預かり保証金に関して、全球団から徴収すべきだという意見が出ていたのは非常に喜ばしいことだ。

先日述べたように、巨人に権力が集中してしまう理由は他球団がお金を出そうとしないからである。

ソフトバンクの笠井オーナー代行の意見を紹介すると

笠井和彦オーナー代行 

「しかし新しい球団から預かり保証金をとり、古い球団からはとらないのはおかしい。万が一どこかの球団が経営破たんしたときの選手の生活保障のための預かり金ならば、他球団が連帯保証する制度などを考えるべきだと提案し、それを実行委員会などで検討するという付帯条件をつけた。」

  〜毎日新聞より

こういう意見がもっと広がって欲しいと切に願う。

 

 

ちなみにこの30億円について、「新規参入障壁」だという意見ばかりが多く見られるがこの金額はそもそも「安易な新規参入を防ぐ障壁」でも同時にあることを忘れてはならない。

そもそもこれが起きたのは南海や阪急がファンに対して事前の説明や報道が一切ないかたちでいきなり球団売却(それぞれダイエー・オリックス)を表明したことがそもそもの発端である。

このときに球団買収を行った側の買収意図は「本社のネームバリューの向上」だった。ダイエーはともかくオリックスなどはリース会社としてどれだけの認知度があったか、現在どれだけの認知度があるか。このメリットは金額換算にすると(同じだけの認知向上を直接広告などでまかなおうとすると)途方もないものになる。 最近で見れば楽天の認知度の爆発的広がりを見れば明らかであろう。

ところがこれはほんの数年で達成してしまえる目標なのである。認知度向上のためだけならば楽天にしても既に保有する必然性はほとんどない。

そうなるとまた今度は次の会社に簡単に売られてしまうのではないかという懸念が発生した。当然の懸念だろう。

これに対して参入障壁を作ることで「安易な売却」をなくし、長期的な球団経営の安定化を図ろうとしたのがそもそもの意図である。

 

現在この預かり保証金制度についてはそういう意図以外での部分でのデメリットが大きくなり再検討が必要な状況にあるといえる、それは間違いない。

しかしだからといって現時点での状況から逆算して当時の「預かり保証金制度の創設」という選択を評価するのは愚かな行為だ。15年以上も前に現在の状況を想定することがどれだけできたか。どれだけの企業が「ミス」をせずに済んだか。ほとんどない。

本当の問題は当時にそういう選択をしたということでなく、15年前の選択を世間の流れに応じて身軽に変えていくことの出来ないプロ野球界の腰の重さである。

あの時こうしていればとか、当時あぁなっていればなんて意味のないツッコミを入れるぐらいであるならば現在のプロ野球界をどう改善するべきかなんてことをもっと考えなければならない。構造的な解決をはかっておかなければどうせまた15年ぐらい経った後に、現時点では「正しい」と思えた選択が「間違って」くることになる。例えばFA制度の変革とかポスティングシステムの問題とか、今回の保証金問題にしてもそうであろう。

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