FIFAクラブワールドカップ2006 アルアハリ-クラブ・アメリカ 「カイロ」
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おかき
2006年12月18日 03:02 visibility388
3位になる事は2位になる事よりも、気分がいいという人がいる。
それは優勝はできなくとも、最後に勝って終れるからだ。
準優勝に終わり、相手の優勝の歓喜のシーンを見せ付けられる屈辱を
考えれば、「優勝以外一緒」という立場に立てばそれも頷ける。
決勝までの時間潰しか、話のタネ位にしか考えられていなかったこの
3位決定戦も、勝者は準優勝より精神的に上になるという考え方になると、
非常に興味深いものに映り、熱気を帯びてくる。
アルアハリは正確なボールコントロールの#22アブトレイカが中心だ。
彼が寸分狂わぬラストパスを見せかと思えば、鮮やかなFKを決める事もでき、
実際に緒戦のオークランドシティ戦ではゴールを決めている。
前半から優位にボールを回すのは、アルアハリ。アブトレイカだけではなく、
#7シャディ#17シャウキがクラブアメリカの攻撃を遮断し続けた。
総じてアフリカと聞くとカメルーンやガーナの様な身体能力が高い選手を
思い浮かべてしまいがちではあるが、エジプト人の多くは黒人ではないので、
どちらかというとアジアに近く、身体能力はそこまで高くない。
だが、しっかりブロックを作る事で、クラブ・アメリカの単調な攻撃を
跳ね返し続け、前線ではアブトレイカがいやらしくボールを散らす。
そのアブトレイカの右足が火を噴いたのは、前半42分。
クラブ・アメリカのリカルド・ロハスがアブトレイカが抜け出そうとした
ところへ後ろからファウルを仕掛けてイエローカード。
ここで蹴るのはもちろんアブトレイカ。オークランドシティ戦で決めたのと
ほぼ同じ様に、PAやや左からのFKを直接ねじ込んでアルアハリが先制。
これによってゲームは動き出し。クラブ・アメリカから後半頭より
ブランコを引き摺り出す事に成功する。
後半クラブ・アメリカの司令塔ブランコの登場で沸き立つアメリカサポ。
ブランコは蟹ばさみばかりが有名だが、実際のプレーを見ると
懐深いトラップと強く叩く様なパスからアクセントになっている。
前半のクラブ・アメリカは横パスは何本も出せるが、最後の縦パスや
クロスの精度を欠き攻撃の芽を摘まれていた。
ブランコは元々FWの選手だが、彼をこの試合では右のMFで起用。
低い所からDFを割ってくる嫌らしいボールを繰り出す。
後半開始からはクラブ・アメリカが優勢に試合を進める。
昔はもっと、ゴツゴツしたFWの印象が強かったブランコがMFで
華麗にボールを捌いているのは隔世の感がある。
クラブ・アメリカのチャンスは後半14分。右サイドを一人で抜け出した
ブランコからの低い弾道のクロス。これを前線にいた#9カバナスが
ヘディングを決めて同点。背丈の無い彼は上手く飛び出していた。
ただ、この後のクラウディオ・ロペスの投入はやりすぎたか。彼は全く
機能しなかった。サイドの選手であるロペスを中央で張らせたのだ。
全北現代戦の後半にこの形を試して失敗しているのに、それをまた
繰り返している。同点にした勢いは消えてしまった。
クラブ・アメリカの機能しなくなった前線と対照的に、後半でも
輝いたのはアルアハリのアブトレイカとフラビオ。彼らはパス交換で
抜け出すと最後はアブトレイカの右足一閃。
逆転されてからクラブ・アメリカは目の色を変えて攻勢に出るが、
アルアハリの巧妙な時間稼ぎの前に屈した。アルアハリの3位が決定。
大会の有終の美を飾った。
実はこの試合は開始前よりアルアハリが勝つのではないかと思って見ていた。
入場した時に配られたものでピンと来ていた。「カイロ」が、全入場者に
入場口で手渡されていたのだ。競馬をしている方ならわかるだろう。
こうした縁起が良くあるのを。そして、それを探してしまうのを。
「温かいカイロ」→「暖かいエジプト」→「アルアハリ」
試合前から、アルアハリには神のお告げがあったのだ。
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- 事務局に通報しました。
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