虎狩り
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おかき
2009年11月17日 13:51 visibility109
後半12分浦項のFK。前半殆どの時間をイテハドに支配されていた浦項の絶好のチャンス。ノ・ビョンジュンの蹴ったFKは最初何があったのかわからないまま直接ゴールに吸い込まれた。リプレイを見ると、壁に立っていた18番ヌールと14番カリリの壁の隙間を抜け選手の身体に触れて角度が変わりゴールに飛び込んでいる。浦項とは製鉄の町。鉄の槍が貫いた瞬間だった。浦項が先制。
エンブレムに虎をあしらっているイテハドは、そのエンブレムの様に前半から何度も浦項に襲い掛かった。特にサイドに流れながらアブシェルアン、シェルミティという2人にボールを集め、チャンスを作り出していた。彼らは足元の巧さ、そして縦への突破力が魅力的で、浦項はノ・ビョンジュンが戻って守備を余儀なくされる程押し込まれていた。
だがイテハドに難があったのはここからで、バイタルエリアから相手を崩しきるパスを出せなかった。イテハドはACL準決勝でも名古屋に退場者がいたとは言え6点を奪って圧勝したゲームや、準々決勝でも4点を挙げるなど決してセンスのないチームではない。逆に浦項がカウンター狙いのチームである所以だろう、守備の堅さを見せて前半無失点で凌ぎきった。
後半もイテハドがやや攻め込んでいた時間帯で、カウンターから浦項に与えたFKで失点。この失点が痛かった。失点後あれだけ一気呵成に攻め立てていたチームの士気は下がり、DFラインでのボール回しが増え、それを狙われてのカウンターを何度も許した。
そして9分後、またしても浦項のFK。キム・ジェソンの右からのボールに合わせたのはキム・ヒョンイル。イテハドDFと競り合い、空中で下がりながら当てたヘディングは美しい弧を描きゴールに。反撃したかった「虎」は目の前にポッカリと空いた落とし穴に落ちてしまった。
そこからは浦項の逃げ切る時間が始まった。前線にデニウソンを残して9人で守りに入った。手数が多いイテハドはこの鉄の檻の中でもがくしか出来ない。
それでも左からのクロスをシェルミティがヘディングで折り返すと、浦項のGKのキャッチングがこぼれたのをヌールが押し込んでイテハドは一矢を報いる。
同点にしたいイテハドは攻勢を強めたいが、浦項は1点を失った事で逆に前線からの守備の意識がはっきりとし、イテハドは中々前にボールを運べない。こうしたところで韓国人のメンタルや意志の強さが伝わってくる。
ロスタイムは3分は過ぎていく。アブシェルアンのFKは浦項の選手が蹴る前に何度も飛び出して警告を受けるが、それもただの時間稼ぎでしかなかった。やり直しの3回目が外れた時、雌雄は決した。
虎を鋼の槍で貫いて、暴れる虎を鉄の檻に閉じ込めた浦項がアジアチャンピオンとなった。
しかし、これでクラブワールドカップで勝利できるかというと疑問符は付く。セットプレー以外では得点の匂いがせず、典型的なカウンターサッカーでは限界がある。イテハドにサイドを押さえられていた現状では相当苦しいが、その鋼の意志でその壁をどこまで破れるのか12月が楽しみである。
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