東アジアサッカー選手権2010決勝大会 香港代表-中国代表
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おかき
2010年02月18日 02:34 visibility363
多分今までで一番香港代表を応援したのではないのだろうか。日本人に馴染みのないキムやユやチェンなどの名前は即興では覚えられないが、香港代表にはカメルーン出身のジェラードという選手がおり、皆直ぐに名前を覚えてしまう。誰だってイングランド代表のジェラードを想起するのだが、ポジションも違えば当然プレーの質も違う。残念なプレーも多いがそんな事を言っていられない。
この日の晩に行われる日本代表が東アジア選手権で優勝する為には、香港代表に勝って欲しいなどとは言わないが、せめて最小失点で終わらせて欲しい。誰しもがそう願っていたはずだ。
たまたまなのか、面白い事に香港がホーム扱いで行われたこのゲームは自然と日本のゴール裏も同じ方向にあり、奇妙な一体感があった。基本的には第三者の日本人、あるいは日本人サポーターなのでどちらの良いプレーにも歓声があがるが、それでも拍手まで起きるのは香港代表がプレーした時。
試合開始からゲームを支配したのは中国だった。初めて韓国を倒して勢い付く中国代表は、香港代表を圧倒しにかかる。中国代表はサイドを支配し徹底的にサイドからボールを入れるが、香港はジェラードがしっかりとクリアし、また若干19歳のGKヤ・フン・ファイが決定的なシーンを何とか止めてこれを凌ぐ。
逆に左サイドの18番カク・ケンポーがカウンターから突破を図り、中央に何度か折り返しヒットしていればというシーンもあった。日本人サポーターのため息が漏れ、シュートで終わると拍手に変わるのはこのシーンだった。
ところが前半も終了しそうな前半44分。FKのこぼれ球のスルーパスに反応したのは中国代表11番ク・ボー。オフサイドギリギリで右サイドを突破しGKとの1対1を制して先制点を奪った。
日本人サポーターにとってはまさしく悪夢だった。格下のチームが格上のチームに先制を許す事は、勝利の可能性が大きく下がってしまうというだけでなく、精神的に崩れ立て続けに大量失点する事は少しサッカーを知っていれば容易に想像できる話だからだ。
それでも「We are HongKong!」と応援し続けるサポーターの姿を見て奮い立ったのか、日本人も興味を失う事がない。応援に参加したりする事はないが、じっと香港視線でゲームを見守る。
その日本人がこのゲームで最も湧いたのは、後半開始早々のプレー。香港代表が右サイドからクロスを入れた。クロスというにはやや質が低く上がりすぎ、中国代表DFが簡単にクリアするはずだったが、ヘディングミスで頭の上を越えてしまう。そこに走りこんでいた香港18番カク・ケンポーが利き足の左足でダイレクトボレーを放ったが、今大会の最優秀GKに選出されるヤン・ジーがこれを片腕ではじき出したのだった。
きっと国立にいた日本人と香港サポーターが頭を抱えた瞬間だったに違いない。
この大きなチャンスを逃した代償は大きく、結果としてそれ以上大きな歓声が香港代表に浴びせられる事はなかった。
後半25分にはPKを献上し、これをまたしても11番クー・ボーに決められて0-2。何とか引き分け、負けても最小失点という日本人の願いは叶わなかった。
しかし、香港代表は諦めずに戦った。残り15分、自分達の優勝がかかっている訳でもないのに、必死になって戦う姿勢に段々と引き込まれていく日本人。
試合は0-2で中国代表が勝利。これでこの後登場する日本代表が単独で優勝するには3点差以上での勝利が必須になった。試合後香港代表はホーム側のゴール裏に挨拶に来た。一際大きな拍手。それは「2点で抑えてくれてありがとう」という上から目線で準備していたそれではなく、試合を通して感じたどんな相手にも怯まず戦い続けた香港代表への純粋な称賛の拍手と信じたい。
負けて飛び交う怒号やブーイングといった殺伐とした空気が充満するスタジアムも好きだが、こうしてレベル云々関係なく真摯に戦う場面を見るために私はスタジアムに足を運ぶ。
と、心の中で再確認したはずなのに、この試合の3時間後には。。。(笑)スポーツというのは本当に上手くいかないものである。
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