阿部4番の意味(1/7, 278,755、野球3、総合8)

日本のプロ野球では、4番打者に大きな責任を負わせる。試合に負けたときの責任である。

プロ野球では優勝するチームでも勝率は6割程度であるから、逆に言えば4割は負ける。ファンにとっては、観戦した10試合の内、4試合以上は負けることになるから、結構な頻度で不満がたまることになる。試合に負ける要因はたいてい複数あるが、ファンにとっては理由が単純な方が鬱憤を晴らすには都合が良い。「4番打者が打てないから負けた。」というのはファンにとってわかりやい理由であると同時に、4番打者以外の選手や(采配ミスをした)首脳陣にとっても都合がよい。これと似た理由に「エースが抑えないから負けた。」という理由があるが、先発投手は5-6試合に1度しか投げないので、この理由は、前者の「4番打者のせい」ほど使い勝手がよくない。付言すれば、好打者でも3回に2回は打てないので、打てなかった場面を見つけて敗因にするのはたいてい簡単である。掛布さんはかつて、「調子の悪いときにでも4番を打てる打者が真の4番打者だ。」という趣旨の事を言っていたが、それは、たぶん、「チームの勝因だけでなく敗因も背負う」事を、自他共に認められる打者が4番打者と言うことだと思う。

 前置きが長くなったが、ラミレスが抜け、小笠原が衰えた巨人にあって、(上記の事を考慮すれば)現時点で4番を打てるのは阿部しかいないというのはたいていの巨人ファンが納得することであろう。舎人さんは、昨シーズンに阿部がケガから復帰した直後に、「今の巨人は阿部のチームである。」という趣旨の事を書かれたがその通りだと思う。それにも関わらず、巨人の首脳陣がシーズン終盤まで「阿部4番」という選択肢をとらなかったのは(つまり、阿部4番の「罪」は)以下の理由があると思う。

 1)4番打者には投手の攻めが厳しい。阿部が死球等で出場できなくなれば、チームは4番打者とレギュラー捕手の両方を一緒に失ってしまう。
 2)4番打者を外せない以上、阿部以外の捕手を使うのが難しくなる。

1について述べると、捕手で4番というと、野村さんや古田さんが有名であるが、野村さんは異常体質ともいえるほど頑健であったことが知られているし、古田さんの場合は、その運動神経のよさと開き気味の打撃フォームによって、死球を受けにくい(受けてもダメージの少ない)選手であったと思う。阿部の場合は、野村さんほどには頑健でもないし、古田さんほどに運動神経がよいとは思えず、フォームも開かないフォームなので死球の心配は常にあるし、そのメタボな体型は、腰痛も含めた下半身の故障に対する不安を持つ。

2について述べると、阿部のリードは周囲で言われるほど悪いとは思わないが、上述の野村・古田捕手のように全幅の信頼を寄せられる域には達していないということがある。個人的には、統一球の利点を生かしきれておらず、慎重になりすぎるきらいがあるように思う。澤村が實松と組んで一時の不調を脱したように、チキンな西村や統一球に対応しきれなかった山口あたりを(強気なリードの)實松・加藤と組ませれば新たな躍進が見込める可能性がある。

 逆に上記のような「罪」があるにも関わらず、シーズン終盤で阿部を4番にしたのは、原監督の采配も含めてチームが迷走し低迷したので、1や2といった「将来の課題」を棚上げにして、チームの形=阿部中心のチームということを内外に明確にし、選手の力の結集を図ろうとしたからだろう。そして、それは、阿部の力によって成功したと思う。BANBABANさんの言うように、選手と監督との間で不協和音があったとしても、阿部を4番にすることでそれは軽減できた可能性がある。そして、「清武の乱」で株が下がったに違いない原監督としては、動揺している選手を結集させるために阿部に頼らざるを得ず、それが今季も「阿部4番」という前提になっているのだろうと思う。

補足:小笠原の調子次第だが、何試合かに1回か、または、1つの試合の中でも展開によっては「4番ファースト阿部」という選択肢を取るべきだと思う。





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