#244 オリンピック 奇跡の聖火ランナー ~奇跡への経緯~
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ペスカドーレ
2012年08月29日 20:42 visibility1795
<国際大会中の死亡事故>
懸命の救命治療により、ムアンバは一命を取り留めた。
ディーナー医局長は「もし誰もが一度だけ奇跡を使えるとしたら、私は今回、その権利を行使したことになる‥」と話した。
今から9年前、2003年にフランスで開催されたコンフェデレーションズカップ準決勝「コロンビア対カメルーン戦」、カメルーン代表のMFマルク・ヴィヴィアン・フォエが心臓発作で倒れて亡くなった。
あの試合時の救急措置は今とはかなり違っていました。
そのままフォエは競技場で亡くなり、続行された試合後、すぐにその訃報は伝えられた。
このことがきっかけになり、9年間でトップレベルのサッカーの試合における救急医療体制は、はるかに向上した。これもムアンバが一命を取り留めた要因の一つだった。
<医療体制を見直すきっかけとなった5年前の事故>
現在は世界最高水準と称されるプレミアリーグだが、9年前のフランスでの死亡事故があったにも関わらず、実のところ数年前までの医療体制は、お世辞にも褒められたものではなかった。
改善のきっかけは、2006年10月に起こった「GKペトル・チェフ」の大怪我だった。チェルシーの守護神が、今やお馴染みのヘッドギア着用を余儀なくされる原因となったアウェイゲーム中の頭蓋骨陥没骨折事故である。
相手選手との接触事故だったのだが、外傷が見られず意識もあったことから、周りが怪我の重度を計りかねている間、チェフは担架を待つ間に自力でゴールラインの外に這い出さなくてはならず、ようやく担架に乗せられた後は、控え室で救急車を待たなければならなかった。
最終的には、脳外科の緊急手術で大事には至らずに済んだのだが、当時の監督だったジョゼ・モウリーニョは、「私のGKは30分間も救急車を待たなければならなかった。イングランドのサッカー界は、この事態を深刻に受け止めなければならない。サッカーよりもはるかに大切なものがあるはずだ」と、怒りを露にしたのも無理はない。
チェルシーからの苦情申し立てを受けたプレミアリーグは、現場における医療対応の基準アップを図ることになったのだが、日本だけでなく世界各国も「事故が起きてから」というのが現状なのでしょう‥
結果として、スタジアムには選手専用の救急車、ピッチサイドには救急隊が待機するようになった。試合への帯同が義務付けられたチームドクターとフィジオ(フィジカル・トレーナー)は、蘇生を含む高度な応急処置の研修を終えていることが前提となった。チェフの経験がムアンバの命を救った一因とも言えるでしょう。
<いつ目覚めるのか?>
当時、チェフの一件で「目を覚まさせてもらった」と会長が言っていたプレミアリーグだが…今回のムアンバの一件も教訓として生かさなければならない。
イギリス国内では、3部リーグではあるが、昨年の2011年1月にベテラン選手が心不全で他界したばかりだった。近隣のスコットランドでは、2007年にトップリーグのMFが試合中の心臓発作で命を落としている。
これはセビージャのアントニオ・プエルタが、試合中の心停止が原因で22歳にしてこの世を去ってから、わずか4カ月後の悲報だった。
最悪の事態は回避されたムアンバだが、悲劇の中で偶然に恵まれたケースであったことも忘れてはならない。
観客の中にトットナム・ファンの循環器専門病院の医局長がいたこと、ピッチに降りて医療スタッフにアドバイスを与え、病院まで付き添っている彼の勤務先は、国内最高レベルの専門病院だった。
これでプレミアリーグが本当に目覚めるのだろうか?今後の動きに注目したい…
<より精密な心臓検査を‥>
悲劇の再発を防ぐため、年に2回の心臓検査を提唱しているのは、マンチェスター・シティのロベルト・マンチーニ監督だ。
「世界最高のリーグには素晴らしい環境が整っているが、医療面には改善の余地がある。年に一度の検査では不十分。半年に一度は行うべきだ。しかも、より精密な検査を行う必要がある。監督としてイングランドにやってきた2年前から、選手の健康管理には不安を抱いていた。」と言う。
イタリア人監督が警笛を鳴らしているように、プレミアリーグが所属クラブに義務付けている年次健康診断では、心臓に関して「心音・心雑音と脈の確認程度」しか行われていない。
より精密な検査は、プロ入り後の早期の実施が推奨されているのみで、育成段階の16歳前後の時点で、協会の資金提供による心電図と心臓エコー検査を受けた後は、間隔が空いてしまう選手が多いとされる。これに対して、専門家からは、異常の兆候が少年時代の検査では発見されない場合もあると指摘されてきた。
ムアンバが今季開幕前に心臓の検査を受けていたように、完全はあり得ないが、命にかかわる問題なのだから、万全を期すに越したことはない。
報道によれば、心臓検査に要する費用は、選手1人当たり250ポンド(約33000円)程度。破格の報酬を得る選手を多数抱えるプレミアリーグの金銭感覚からすれば、取るに足らない出費と思われる。
クラブの宝である選手を守るための費用なのだから、各クラブにはより厳格な健康診断基準が適用されるべきだろう。
医療面での事後サポート体制は、トップレベルにある現在のプレミアリーグ。今後は、選手の命にかかわる事態を未然に防ぐために努力しなければならない。
ムアンバが意識を取り戻した翌日、リーグは医療基準の更なる見直しを公約した。
<救急医療体制を向上させようという動きの活発化>
イギリスでは、この「ムアンバの奇跡」をきっかけにサッカーを始め、「スポーツイベントでの救急医療体制を向上させよう」という動きが活発化してきた。
先日のロンドンオリンピックでは、たとえ選手が試合や練習中に心臓発作を起こしたとしても、命を救える体制が最大限準備されていたという。
また、予防にも力を入れている。例えばプレミアリーグは、これまで2年に1度だった選手の心臓の検査の回数を半年に1回など、頻度を増やしていく方針。さらに英国メディアは、心臓発作に関する啓蒙活動を始めてもいる。
<すぐにAEDを使えば一命を取り留める可能性が‥>
突然の心停止は、心臓が危険な鼓動を打つことにより、若くて健康な人にでも突発的に起こり得ます。心筋梗塞は、高齢者や不健康な生活を送る人が、動脈を塞がれることによって多く発症するものです。
心室細動を起こした場合、通常、AEDなどで電気ショックを与えなければ、心臓は正常の状態には戻らない。若い人が急性心筋梗塞を起こすのは稀と言われています。
つまり、健康な若いスポーツ選手が、突然試合中に心臓の疾患で倒れた場合は、不整脈による“心室細動”などの可能性が高く、すぐにAEDで電気ショックを与えれば、一命を取り留める可能性も高いのです。
<AEDを使ってもいいか?どうやって判断するのか?>
それはAEDが判断してくれます。
音声アナウンスの指示に従ってボタンを押すだけです。
ただし、心臓発作などの急病人を前にした時、素人ができる救命措置でまず大事なのは‥助けを呼び、胸骨圧迫による心臓マッサージを続けることです。
救急車や助けを呼んで、次に胸骨を圧迫(胸の真ん中を押す)して心臓をマッサージし、脳に血を送り続けることがAEDが届いた時、電気ショックを行うチャンスを繋ぎます。それと並行してAEDを持って来てもらい、すぐに使えば、救命率は格段に上がります。
日本でもこれまで救えたはずの生命が無駄にならないことを祈ります。
このムアンバに起こった“奇跡”が、奇跡じゃなくなる日が早く来ることに期待したい…
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