ファンタジスタ幻想曲� −ルイス・フィーゴ編−
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学
2009年02月28日 21:00 visibility3557
忘れもしない、あの日のカンプノウは、空から豚の首が降ってきた。
裏切り者「ユダ」の汚名を受けたルイス・フィーゴが、宿敵レアルマドリッドに移籍した最初のエルクラシコだった。それが当時世界最高の移籍金だったことから、フィーゴは金の亡者だと罵られた。
コーナーキックを蹴りに向かうフィーゴにペットボトルやビンが投げ込まれ、物凄い罵声が浴びせられていた。会場全体がまるで呪術師の集会みたいで、呪詛が渦巻く中でコーナーキックを蹴ったフィーゴに、バルサファンである私もなぜか感情移入してしまったのを覚えている。こいつ肝っ玉が太いな、と。
フィーゴのドリブルは決してスピードがあるわけではない。
しかし緩急のつけ方と身体の使い方で相手DFを幻惑し、相手の動きの裏を取って、抜いていったりクロスを上げたりする。それも寸分違わぬ正確さで。
今をときめくクリスティアーノロナウドもいつか30前後になってスピードが衰えた時に自分のプレースタイルをフィーゴのように変えていくときがくるのだろうな、と同じポルトガルの7番を重ね合わせて見たりもする。野球の速球派のピッチャーがいつからか自分の衰えに見切りをつけ技巧派に転向していくように。
曲:FreeTEMPO「Love Will Bring You Back」
スペインの歴史も単純ではない。
バルセロナの属するカタルーニャ地方は、もともとマドリッドを中心とするスペイン人とは別の民族であるカタラン人が住んでいる。言語もカタラン語だ。
ところが、スペインのフランコ将軍がスペインの一部として併合し、スペイン語を話すことを強要した。
まるでどこかの国が海の向こうの国にかつてそうしたように。
それだけ根深い対立を背景にもつからこそ、エル・クラシコは過熱する。
だから、欧州最優秀選手にも選ばれ、チームのキャプテンとして最も愛されていたフィーゴが、金でレアルに買われていくということは、カタラン人にとって、日本でいうところの阪神の選手が巨人に移籍する、ということ以上の意味を持っているのがお分かりいただけるだろう。
愛憎合一。愛が深ければ、裏切られた時それだけ憎さも増す。
豚の首が降ってくるわけだ。
そんな非難や敵視にもかかわらず、本人は自分のサッカー人生を振り返って、バルセロナ時代を最も愛している、といっているらしい。
だとすれば、ひょっとすれば、もしかすれば。
今インテルで不遇をかこっているのなら、サウジアラビアリーグなんかには行かずに、もう一度あの赤と青のバルサのユニフォームを着てから引退してくれないかな、とバルサ時代のフィーゴを愛する一人として期待してみたりして。
そう、ちょうどこの動画の曲のタイトルのように、金じゃなくて「愛があなたを連れ戻す」んだ、と信じて。■
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