絶好調レッズ。進化チャップマン黄金期以来のシーズン100勝なるか?

  • 有希
    2012年09月30日 05:07 visibility200

 シンシナティ・レッズが絶好調です。シーズン80勝をメジャー一番乗りで達成し、ナ・リーグ中地区を独走しています。というわけで今回は、久々にスポットライトが当たっている全米最古の球団、レッズについて紹介したいと思います。

 レッズの前身は、1869年、アメリカで初のプロ野球チームとして誕生したシンシナティ・レッドストッキングスというチームです。1876年、ナ・リーグ創設と同時に加盟しますが、長らく優勝とは縁のないシーズンばかりでした。1919年に初めて世界一となるものの、1919年のワールドシリーズといえば、全米中を震撼させた八百長『ブラックソックス事件(※)』のあった年です。八百長によってワールドチャンピオンになりましたが、その後、レッズは再び低迷。2度目の世界一は、1940年まで待たなければなりませんでした。

 しかし、1970年代にようやく黄金期を迎えます。特に1975年は、2位のロサンゼルス・ドジャースに20ゲームもの大差をつけて優勝。35年ぶりの世界一に輝きました。さらに1976年には、プレイオフとワールドシリーズを無敗で制して2連覇を達成。圧倒的な破壊力で『ビッグレッドマシン』と恐れられたのです。

 1970年代のレッズは、まさに無敵でした。ジョニー・ベンチ、ピート・ローズ、ジョー・モーガン、ジョージ・フォスターは、1970年から1977年の8年間で、4人合わせて6回もMVPを獲得。さらにキャッチャーのベンチ、セカンドのモーガン、ショートのデーブ・コンセプシオン、センターのシーザー・ジェロニモが並んだセンターラインはゴールドグラブ賞の常連で、鉄壁の守備も兼ね備えていました。後にベンチ、モーガン、強打の一塁手トニー・ペレス、そして名将スパーキー・アンダーソン監督が殿堂入り(ローズは賭博行為により永久追放の身分)。1927年のニューヨーク・ヤンキース(3番ベーブ・ルース、4番ルー・ゲーリッグを擁する殺人打線)と比べられ、「どちらが史上最強チームか」という論争が今でも起こるほどです。


そんな球史に残るチームと比較するのは酷な話ですが、それぐらい今シーズンのレッズは素晴らしい戦いぶりを見せています。その強さの源となっているのは、間違いなく『投手力』でしょう。ダスティ・ベイカー監督も「ビッグレッドマシンほどの打撃力はないが、投手力は勝っているのではないか」と語るほどです。現在、ワシントン・ナショナルズに次ぐナ・リーグ2位の防御率3.42をマーク。メジャー5年目のジョニー・クエトや、サンディエゴ・パドレスから獲得したマット・ラトスら若い豪腕投手陣が、レッズの快進撃を支えています。

 特に才能を開花させたのが、26歳右腕のクエトです。長身豪腕投手が多いなか、クエトの身長は178センチ。投手では最も小柄な部類に入ります。しかしながら、独特の投球フォームで時速150キロ以上の速球を投げるのです。そのフォームは、わかりやすく言うならば、野茂英雄投手でしょうか。身体をセンター方向にひねってから投げ、アメリカでは往年の名投手ルイス・ティアント(元ボストン・レッドソックス)の投球フォームに似ていると言われています。

 現在、クエトはリーグ1位タイの17勝、さらにリーグ1位の防御率2.58をマーク。今年のサイ・ヤング賞最有力候補と囁(ささや)かれています。さらに注目すべき点は、クエトの被本塁打数でしょう。レッズの本拠地グレートアメリカン・ボールパークは最もホームランの出やすい球場のひとつなんですが、クエトは今シーズン28試合の先発登板で、ホームランを打たれたのは9試合のみ。計188イニング3分の2を投げて、わずか11本の被本塁打数なんです。さらに14試合で7イニング以上投げて2失点以内に抑えるなど、安定感も抜群。こんなすごいピッチャーは、70年代のレッズにもいなかったと思います。

 ただ、今シーズンのレッズには、クエトと並ぶサイ・ヤング賞候補がいるのです。それが、クローザーのアロルディス・チャップマンです。2009年のWBCキューバ代表で、2010年にレッズに入団。2011年には人類最速となる時速106マイル(約171キロ)を計測し、大きな話題となりました。


そんなチャップマンが今シーズン、さらなる進化を遂げたのです。5月中旬に中継ぎからクローザーに抜擢されたにもかかわらず、現在リーグ1位の35セーブを記録。また、球団新記録となる26試合連続セーブ成功もマークしました。さらにピッチングの内容も驚異的で、66イニングを投げて打たれたヒットはわずか30本。しかも対ナ・リーグの数字を見れば、60回3分の2を投げて自責点2、そして防御率は驚愕の0.30です。

 2009年WBCのときは荒れ球の多いピッチャーでしたが、今シーズンは117奪三振に対し、フォアボールはたったの17個。まるで別人のような安定ぶりです。球界最高のクローザーと言っても過言ではありません。

 現在、レッズの成績は83勝54敗。このペースで勝っていくと、1975年の108勝、1976年の102勝以来となる、シーズン100勝に到達するかもしれません。ビッグレッドマシン絶頂期の勝ち星に、どこまで迫ることができるのでしょうか。久々にプロ野球発祥の地、シンシナティが沸き立って真っ赤に燃えています。残りのシーズン、ぜひレッズの快進撃をチェック


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