消えた球場(11) 川崎球場

  • Mr.black
    2010年07月15日 13:21 visibility2985

 

競技場としては現存していますが、実質アメフト場になっており、野球は軟式しか出来ませんので「硬式野球場としては消滅した」というくくりでここに書きます。

川崎球場、かつてはNPBの「高橋ユニオンズ」、「大洋ホエールズ」、「ロッテオリオンズ」が本拠地にしていました。


この球場が開場したのは1951年(昭和26年)。

その前年にNPBが2リーグ制になり、急激に球団数が増えたこともあって川崎では多くのプロ野球のゲームが開催されました。そして多くのエピソードや伝説が生まれていきました。ここではそれらを書き切れませんので特に大きなエピソードをほんの少しだけ。


まずはやはり王選手です。王選手が「一本足打法」を初めて実戦で披露したのがこの川崎での大洋戦でした。この試合でのHRが後の世界記録を生み出す第一歩となったわけですね。また、日本球界初の700号HRを記録したのも川崎でした。


この他では張本選手が同じく日本球界初の3,000本安打を記録したのも川崎です。(当時ロッテに在籍)
こういった日本球界の大記録が生み出された場所だったのですね。

個人的には川崎球場というとやはり「10.19」です。優勝が懸かった「ロッテー近鉄」ダブルヘッダーの死闘が今でも思い出されます。

しかしこの球場はこういった記録や熱戦以外にも実は野球場の歴史上大きな役割を果たしました。
それは「阪神・佐野選手の大怪我」です。
年度の記憶があいまいだったので調べてみるとそれは1977年(昭和52年)のことだったようです。
阪神のレフトをその試合で守っていた佐野仙好選手が後方の大飛球を追いかけてダイビングキャッチ。見事に捕球したものの、フェンスに激突。その後全く動かなくなったのです。救急車で運ばれたところ、診断は「頭蓋骨骨折」という場合によっては生命にかかわる重傷でした。

この原因は川崎球場の外野フェンスにありました。当時川崎のフェンスはコンクリートにグリーンの塗装がしてあるだけでした。コンクリートにダイビングして頭から突っ込んだわけですからね、頭蓋骨骨折が起こっても不思議ではありません。


これは何も川崎球場だけのことではなく、当時日本の野球場のフェンスにはラバーなどの緩衝材が付けられていない場所が多かったのです。今からでは想像も出来ないのかもしれませんが、こういう安全面の管理は非常にずさんだったのですね。
事態を重く見たNPBは各本拠地球場に緩衝材をつけるように指示。またその他の球場については「緩衝材が付けられていない球場では今後プロ野球は開催しない」と発表しました。

こういった様々なエピソードを残した川崎球場。その現状は・・・・・。
かつてのスタンドはほとんど解体されてしまい、マウンドも撤去され、全面人工芝でアメフトのラインが引かれたおよそ野球場とは思えない姿になっていました。
スタンドは土盛り部分と、それ以外は鉄骨を組んだ仮設みたいな観客席があるだけです。知らない人がみたらかつて野球場だったとは想像できないかもしれません。

私は実はここに来るのは今回が初めてでした。「そろそろ来年あたり川崎に遠征しようかな?」と思っていた頃にあの「10.19」が起こったのが原因です。
近鉄が引き分けで優勝を逃したことよりもロッテ有藤監督のあからさまな遅延行為に頭に来て「川崎球場なんか絶対に行くものか!」と思ってしまったのです。自分も若くて血気盛んだったんだな、と今では苦笑するばかりです。

今回初めて川崎球場の前に立ち、「こんなに狭いスペースだったんだな。でもこの狭い空間で様々なドラマが展開されたのだな」、と思いました。
行けるうちに行っておかなかった場所というのは後悔が残るものですが、この川崎に関しては上記のように自分の若い頃の血気が懐かしいという感情ばかり湧いてきました。
かつて怒りをぶつけてしまった川崎。球場には何の罪も無いのですがね。(苦笑)



もはや野球場の姿はしていません。完全にアメフト場ですね。
野球場として復活させるというプランもあるようですが、この厳しいご時世ではなかなか難しいことでしょう。



記念碑代わりの時計塔。下部には川崎球場の簡単な歴史が書かれていました。



「10.19」の時に入場できなかった人達が大挙押し寄せたライト場外のマンション。
ここの高層階や屋上から中が見えたからですね。
ちなみにこのマンションはさほど高くなくて6階建てでした。にも関わらず観戦できたということは川崎球場のライトスタンドの規模が小さかったことを表しています。



マンション6階の廊下から見た現在の川崎球場。

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