バットにボールが当たる瞬間


 僕は野球部に所属したことがない。

 子供の頃から野球が好きだが、何となく「野球部」というもののイメージにとらわれて、一度も所属し終いだった。

 「野球部」のイメージとは・・・自分の自由な時間の全てを野球に捧げなくてはならない、運動能力の高い人ばかりが所属している、部員が多いからレギュラーになれずに終わる人が多い、指導者が怖い、練習がきつい・・・というものだった。

 それでも、一度は高校に入学する時「ここで野球をしなければ一生野球をし終いだ。それでいいのか?」と自問した。でも、結局は別の部活を選んだ。

 今では、学生期のどの時期を宛てるべきだったのか・・・それは分からないが野球に打ち込む時間を自分で掴み取るべきだったと後悔している。

 だからこそ、野球を観ると時間を忘れてしまうほど好きなのかも知れない。

 それでも、僕は子供の頃から、たまにレクリェーションでするソフトボールが大好きだった。

 バットにボールが当たる瞬間がたまらなかった。

 大人になってから職場の草野球に出て、ファーストライナーとショートゴロを打った時の掌に残った感触が忘れられない。

 バットにボールが当たる瞬間は物理的にはごく短い時間だとしても、記憶の中では何年たっても何度も甦って心を震わせてくれるのだ。

(写真と文章は関係ありません)

 





















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