野球読書日記「アメリカンドリーム 大リーグとその時代」

  今回は少し背伸びした気分で書きます。まだこの本の本当の良さを私は理解していないと思うからです。

 この本は高校1年の冬に買いました。実に31年も本棚にあります。

 その頃、私はメジャーリーグに夢中でした。講談社現代新書から出ていた福島良一さんの「大リーグ物語」でメジャーリーグの基礎知識を仕入れ、カネボウから出ていた「メジャーリーグガム」を噛みながらNHK BSのメジャーリーグ中継を観てアメリカに浸った気分になっていました。

 レンタルビデオショップで「フィールド・オブ・ドリームス」や「さよならゲーム」などの野球映画を何度も借りました。ケビン・コスナーは最高にかっこよかった。でも一番のお気に入りはモノクロ映画の「打撃王」でした。

 「メジャーリーグが大好きだ。大人になったら大金持ちになってマイナーリーグの球団のオーナーになるんだ」

 本気でそう思っていました。

 そして、週刊ベースボールの広告欄に載っていたこの本を3000円という高校生としては大金を出して買いました。

 でも、この本の内容は想像していたものとは違いました。私は、ベーブ・ルースやルー・ゲーリッグをはじめメジャーリーグのスターが連綿と紹介されている本だと思っていたのです。確かにメジャーリーガーのこともいきいきと描かれています。しかしこの本の画く世界は広く、豊かでその対象はメジャーリーガーに止まりません。言うならばメジャーリーグを軸にしたアメリカ文化史。ただアメリカ人ならいざ知らず、予備知識のない日本の高校生にはさっぱりでした。

 でも、今ならゆっくりしたペースで脚注を丁寧に拾いながら読むと味わい深さが少しは分かるようになりました。

 もちろん、メジャーリーグのスター達も魅力的に描かれています。しかしここはスター本人が観衆に語った勇壮なる名言ではなく、あえて次の一文を紹介したいです。

 

「彼はそれから二年後に他界した。 しばらく経って、鉄人が残したトロフィーと思い出に 囲まれた夫人は振り返った。

『彼との四十年の喜びや哀しみは何物にも替えがたいも のでした。趣味に明け暮れる未亡人になれるじゃない、 他にも男はいるじゃない、そんな考えは何の慰めにもな りませんでした。彼にとっても、私以外の女は考え

なかったからです。

寂しかった? そうね。虚しくさえあった。でも、は っきりしていました。他の人との二十年よりも彼との二 分間の方が、私には大切だって』」(226~227頁)

  

 ルー・ゲーリッグ夫人 エレノア・ゲーリッグの言葉です。

 結局愚鈍な私はこの本からアメリカ文化のことはあまり学べなかったのですが、本に散りばめられたこんな珠玉の言葉の数々に「アメリカ人って実に素敵なことを言うな。だからアメリカ映画は面白いんだろうな」と納得しました。

 秋の夜長にもう一度ゆっくり読みたい一冊です。

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