野球読書日記「古葉カープ 赤ヘル伝承」

 

 

まずこの本、題名が良いと思います。「古葉カープ、赤ヘル伝承」。決して「古葉カープ、赤ヘル伝説」ではないのです。古葉竹識さんが指揮した時代のカープの良さをこれからも語り継ぐ決意を感じます。
 私が真剣に野球を見始めた頃、古葉さんは既にカープを去り、横浜大洋ホエールズの監督を務めておられました。1987年にカープの衣笠祥雄さんが当時の連続試合出場記録を樹立された時、対戦チームの監督であった古葉さんは花束を手に優しい目で衣笠さんの偉業を称えておられました。
 しかし、古葉さんの率いたホエールズの成績は振るわず、古葉さんは3シーズンでホエールズを去ることになります。
 野球の歴史を知る様になってカープ監督時代の古葉さんの偉大さを理解しました。
古葉さんの監督としてのチーム作りや采配のルーツは野村克也さんに仕えた南海ホークス時代にあるとの指摘があります。
 この本でも以下の様に紹介されています。


「振り返れば、 古葉監督の作戦、およ び指導者としての土台作りは、 1970年からの南海での4年間 (選 手2年、コーチ2年)が大きなウエー トを占めた監督兼捕手の野村克也か らは緻密な観察力を学んだ。相手バッ テリーの研究、打者の心理的弱点を読 み取る“野村のスコアラーのデータもフル活用した。 78年、1シーズンだけヘッド兼守備 コーチとしてカープに在籍したドン・ ブレイザーとの関係も見逃せなかった。 南海時代にヘッドコーチを務めたブレ イザーは『シンキング・ベースボール』 を提唱。野村の、選手として指導者と しての 重責をカバーし、攻撃面の采配 を振るった足を使っての機動力野球。 盗塁、エンドラン、バント......相手 バッテリーを揺さぶり、野手のミスま で誘発した」。(6~7頁)

 

 謂わば、古葉さんもまた野村克也の門下生とも言えなくありません。しかし、監督としての日本シリーズ優勝を野村さんより早く成し遂げた古葉さんは決して野村さんの野球の亜流ではなく「古葉野球」を確立させたと言っても過言ではないでしょう。
 また、古葉さんの教えについてカープの名捕手達川光男さんはこの本の中で次の様に語っておられます。


「記憶の中に刻まれた教えは2つある。 一つは、『キャッチングを勉強しな さい』と、口酸っぱく言われた。具体 的には『サイン違いの球を捕ることが できて初めて一人前のキャッチャーだ』 捕手の極意を説いて聞かされた。『サイン違いというのは、特にナイターだとピッチャーはキャッチャーの股の間の影の中で1本の指が2本に見えたり、2本が3本に見えたりすること もあるんです。『人間というのは見間 違い、聞き間違い、言い間違い、首か ら上は間違いだらけだ』と古葉さんは おっしゃった。『そういうことがあっ ても何事もなかったかのように対処で きるだけのプロの技術を身に付けなさ い』と。」(31頁)


 野球のみならず、仕事や勉強にもいかせることだと思います。古葉さんはカープやホエールズで選手にそんな数々の教えを授けておられたのでしょう。
 古葉さんは2021年11月12日に永眠されました。もうすぐお亡くなりになり1年になります。改めてご冥福をお祈り致します。

 

 

 

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