個人的な見解

  • DIME
    2011年11月14日 23:12 visibility510
原典についてはこちらでご確認を


で、私なりに清武氏側に論理的妥当性があまりないなぁと思うところを解説。

まず清武氏の主張としては
①10月20日に了承したにも関わらず11月4日に了承していないと渡邊氏が事実に反する発言をした
②オーナー人事等の社内人事に対して決定する権利がないにも関わらず介入している。

この2点が主張の要点だと言えます。

まず①について

時系列順にまとめますと
10月20日 渡邊氏にコーチ人事報告
10月31日 CS第一ステージ敗退
11月 4日 渡邊氏が「聞いていない」発言
11月 9日 渡邊氏のコーチ人事腹案が清武氏に通達

さて、ここからは詭弁のようになって来るのですが、一応渡邉氏側が理を通せるのですよね。
ポイントは渡邉氏側の「CSステージ敗退があった以上、コーチ人事の見直しが必要なのは当然である」という主張。
つまり、4日の渡邊氏の聞いていない発言は、31日~4日深夜までに「CS敗退を踏まえた上でのコーチ人事の報告」を聞いていないという意図であったといえば一応「虚偽の事実を述べた」という清武氏側の主張には十分な反証になるかと思います。
なお、「俺は何にも報告を聞いていない。俺に報告なしにかってにコーチの人事をいじくるというのは、そんなことはありうるものかね」という文言がこの文脈と一致しないという反論はおかしいです。この文言は渡邊氏の発言そのまま(一次ソース)ではなく、記者が編集した文言ですから。渡邊氏の発言が編集されまくるのは周知のことです。

そして「31日~4日の間にコーチ人事の再報告を行わなかった」ことと「20日の時点でCSの結果に関わらずコーチ人事の決定は覆らない旨を伝えていた」ことのいずれもあてはまらないのは以下の記事から推察できます。

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桃井オーナー、驚きの“奇襲”会見に「かばうことはできない」…清武代表緊急会見
 巨人・清武英利球団代表兼GM(ゼネラルマネジャー=61)が11日、文部科学省内で緊急の記者会見を開き、渡辺恒雄球団会長(85)を批判した。同氏によると、渡辺会長が来季のコーチ人事を覆し、野球評論家の江川卓氏(56)を入閣させようとした他、球団幹部の人事を独断で進めるのは、コンプライアンスに反すると訴えた。また会見を受け、東京・大手町の球団事務所で桃井恒和オーナー兼球団社長(64)が、清武氏が独断で会見を開いた事実を明かし、コーチ人事の変更や、自身のオーナー職剥奪もやむなしとする考えを示した。
 巨人の桃井オーナー兼球団社長は、東京・大手町の球団事務所で記者会見を行った。清武代表の突然の会見について「私を含め球団の誰もそういう会見があるのを承知していませんでした。大変驚いている」と切り出し、寝耳に水だったことを強調。「個人的にも残念でならない。球団の内部統制という意味では逆に言えばとんでもない話。(本人には)かばうことはできないと伝えた」と終始、厳しい口調だった。
 清武代表が渡辺会長の一方的な変更と主張するコーチ人事は「(渡辺会長に)了承をいただいたが、レギュラーシーズンが終わる前のこと」だったという認識を示した。10月20日の最初の会談から9日後の29日から行われたCS第1Sでチームは敗退。「大惨敗というか、ああいう負け方をしてしまったということで、渡辺主筆としては、状況が変わった、やはり見直しが必要だという判断だったろうと思います」とコーチ人事に着手するのは当然、との見方だった。
 またCS敗退後に「事前に了承を頂いた案でいいかと念押しするべきだったと、それは私自身としては非があった」ともう一度、念押しする必要性があった、と心残りもある。それでも清武代表がとった行動については「会長は親会社(読売新聞グループ本社)のトップ。だから(清武代表の言う)“ヒラ取締役”が、というのは違う」と強く反論した。
 清武代表の声明文にはヘッドコーチに江川氏との交渉も始めているとあったが、ひとつの“プラン”であったことを強調した。「私が(渡辺)会長と話したのは別の場面で、こういう案があるという、そういうのはどうだろうかという話はした」と江川氏との交渉を否定。岡崎ヘッドコーチの留任を示唆した。
 自身がオーナー職を解かれることを通告されていることに「2年連続で優勝を逃し、けじめをつけないといけない」とも明かした。清武代表とは新聞記者時代から30年以上の同僚。「7年前(04年)の8月に(清武氏と)一緒に来た。あの頃の巨人がどん底の状態だった。それを何とか再生しようということで一緒にやってきて、戦友というか、そういう間柄」とそれからリーグ3連覇に育成システムの確立など、球団を立て直してきた。ともに、汗を流してきただけに、残念そうだった。
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それでも、この①を再反論の中心に据えてきた(というか②に触れていない)ということは、②の主張がそもそも怪しいものだということを清武氏側も十分に認識していることの示唆でもあると思います。
いわば、本筋では勝てる気配が無いので、末節でツッコミをいれることで打開をはかろうとしている。


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そして、本筋の②です。
これは清武氏側もたぶん最初から自分たちが弱いと思ってるとしか思えないほどです。
何故なら、最初の声明文だけで既に破綻が見受けられるから。

どの点が問題かというと、清武氏は自分たちの都合にあわせて、渡邊氏の株式会社読売巨人軍における地位について使い分けています。
声明文内において「巨人軍も読売新聞グループの一員であることは十分承知しているからこそ、渡邉氏に丁寧に報告をし、意見を伺ってきました」とあります。そして同時に「巨人軍の代表取締役でもない取締役会長である渡邉氏」とも表現しています。
巧妙なことにこれらの表現の前後の文脈に「独立した会社」であるという表現とかしているのが心憎いです。同じように本筋には全く関係ないにも関わらず、「渡邉氏が巨人軍オーナーを退くに至った不祥事」などという文言を盛り込むところもさすがと思わせます。ブン屋さんですね、これが本物のミスリードというものですよ、最近の巨人批判の文章は見習っていただきたい。

話がそれました。話を戻しますと、渡邊氏には株式会社内における平の取締役という地位と親会社の最高意思決定権者という地位があります。この2つのうち主の役割は後者です。
何故ならば、清武氏は重要な事実は渡邊氏に報告し意見を伺ってきたと記してあります。20日の報告には桃井代表取締役もあたっていたとも。代表取締役が「平の取締役」に対して報告と意見を伺う機会を設けるものでしょうか。
これは株式会社内において渡邊氏は親会社の最高意思決定権者として認識され扱われてきたことを示しています。

この点は本筋ではないのですが、コメントへの返信として書き加えておきます。
渡邊氏への報告と意見伺いを行なっているという事からもう1つ示されるのは、オーナーにしろGMにしろ人事権その他の社内権利に関して全権委任を受けているのではなくあくまで最終的には承認を求めるのが、稟議の流れといえると思います。
つまり、「私は報告をしていた」と清武氏が主張することによって、「GMの活動のうちとくに重要なものは最終的には親会社側の承認を経る必要がある」事が同時に示されるということなのです。
「人事権」という表現が何を指すかによっても解釈は違うのですが、少なくとも「人事はGMのみで決定できる」ことではないことは確実かとおもいます。

本筋に戻ります。
となると、オーナーの変更、或いは社内異動(職分の変更)に関しては、「親会社の最高意思決定機関としての意思表示」として渡邉氏側から示されたと見るべきが妥当であり、都合の良い部分だけ、渡邊氏を平の取締役と表現しているに過ぎないと言わざるを得ないでしょう。
この時点で以降の主張はすべて理が通りません。
内部統制という表現をしていますが、親子会社における子会社の内部統制と、支配関係のない一般的な会社での内部統制とでは、一緒には語れません。
特にここにおいては親会社の意思決定機関の子会社における位置づけという内部統制という考え方ととても相性の悪い問題が含まれます。
むしろ内部統制という単語を利用することによって「平の取締役」でしかないかのようなミスリードを招くことが目的ではないかとも思わざるを得ません。

渡邊氏の2つの地位を恣意的に使い分けるのは間違っているし、これを上位の地位に統一すると清武氏側の主張に理が通らない。まとめるとそういうことになります。


なお、どんな会社形態であれ、最後の意思決定は特定の一名或いは合議制における数名によって決定されます。
それを「私物化」と表現するのであれば、すべての会社は「私物」です。もっといえば国家も私物じゃないでしょうか。
私物化という表現はそういう意味で、それ自体がとても弱いものです。私物化しているのかそれとも代表者として意思決定をしているだけなのかの違いは主観的なものであり客観的な正統性をもって示すことは誰にもできないのですから。
だから私は「私物化」という表現は無視してもいいほど瑣末なもので痛痒にも感じていないだろうなと認識しています。

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