ドラフト関連 追補
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DIME
2008年10月16日 09:49 visibility486
まず最初にお礼を。これだけ多くの方にランキング押していただけるとは正直想定していませんでした、たぶん昨日だけで500ポイント超だから50人以上、10人に1人近い割合の方に押していただいています。
本当にありがとうございます。
追加に関しては、記事に付け加えていこうかとも思ったのですが、追記がわかりにくいだろうから、追記用にひとつだけ作成することにしました。
追記することもこれまで書いてきたことの繰り返しであることが多いのですが、今のところ2点です、今後の方向性ともし仮に他球団に指名された場合、です。
そのほかドラフト関連以外のことについても更新したいことが残っているのですが、そちらに関しては過去ログ置き場のほうで更新するつもりです。
後から書いてもいいんですけど、私のこれまでの犯歴をかんがみるに書けるうちに書いておかないと多分書かないので、時間に余裕があるときは書いておきたいと思います。落ち着いたらこちらに移します。
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で、まず長野久義や大田泰示に対して他球団が強行指名してきた場合の話です。
結論だけ先に言ってしまえば、「どうでもいい」です。それによって巨人は被害を蒙るわけではありませんから。
もし仮に他球団が強行指名して、そして本人が他球団への入団を決めたとすればそれは本人の意思を尊重するだけの話、縁がなかった事を嘆くしかありません。
そうなるかどうかは、他球団や本人の意思の話であって巨人がどうこうできることではなく巨人の被害などという次元の問題ではありません。
よく考えていただかなくてもわかると思いますが、仮に彼ら2名を指名できなかったときに巨人に発生するデメリットと言うのは実質的にはほとんどありません。
前回の日記(大田泰示の話とドラフト目論見)で書きましたように、長野も大田も、数年後に破綻してしまう危険な状態の有力な解決手段として高く評価できる選択肢です。
逆に言えばどういうことか、早急な対策が必要なものではありません。李承ヨプが32、ラミレスが34、小笠原が35歳です。金本が40なのは有名ですが、ウッズが39、和田37、アレックス37、カブレラ37、ローズ40等々。主力野手の高齢化という観点から見れば相対的には他球団よりは若い方であるのもまた事実なのです。
上にあげた選手の年齢でもわかるとおり現在プロ野球選手の寿命は飛躍的に伸びています、気になるのはラミレスがこれまでのシーズンは行っていたシーズン中のウェイトトレーニングを今年は出場するのが精一杯でできなかったとの報道があった事ぐらいで、他球団の主力選手の年齢を見る限り「数年後」というのは2、3年の話ではありません。
それを見据えて、5年、7年先の主軸となってくれることを望んでいる2名です、個人的にはプロでの育成とアマでの育成ではプロのほうが数段優れているなどとは思いません、今プロで育成する機会が得られなかったならその分しっかりアマで育ってもらえばそれでいい。
その後から指名しても別に遅くはないです、育たないリスクは今巨人に入ったってある、そのリスクに大きな差はないと言うのが私の考えです。もしあるのだとすれば巨人は大田入団に対して最初からどんな無茶をしてでも囲い込まなきゃいけないわけですが、そうするべきだとは思わないので。
大田に関してはそもそも「東海大進学」が規定路線です、欲を出してあわよくば高校生で指名できるかもということでやってみたこと。不可であったならばそれはしょうがないとあきらめて規定路線に戻すだけです。大学卒業後の路線は長野が見せてますし。
長野に関しては、アマに入ったことでその後の成長を心配されたのですが、各種ドラフト関連雑誌等での評価やアマ大会での出場成績を見る限り、アマで予想以上の成長をしてくれています、それが今の高評価にもつながっているわけですが。って事は今年無理だったらそのままアマで成長を続けて来年来てもらえばいいわけです。3度目を犯すチームがでてきますかね。
もし、彼らが他球団に入団する事になるのだとすれば、それは巨人にとってはマイナスでしょうが、そもそも他球団に入団する可能性がないという前提で考えた状態からのマイナス、他球団への入団を本人が承諾すると言うことはその前提が覆ることなのですから、そもそもそのプラスは存在していなかったと言うのが正しく、やっぱりマイナスではありません。
そして、巨人としては彼らが指名できないとなったときに、ドラフトでの指名権を失っているかと言えばまったくそんなことはありません。
巨人としては彼らが他球団に強行指名されたときには、自らの補強ポイントにあった他の上位クラスの選手をただ粛々と指名するだけです。個人的には甲斐希望。
巨人としてはドラフトで選手を補強できることになんら制限が加わるわけではありません、思ったとおりの選手が指名できないというのは当たり前にあることです。
そこでしっかりと他の上位で指名するに足る実力を持った選手を指名できていれば成功、上位で指名するに足る実力のない選手しか指名することができなければ失敗、それは通常のドラフトとなんら変わりありません。
ではデメリットを蒙るのはどこか。何度も繰り返しているとおりチームにとって"非常に貴重な資源”である上位指名枠、仮に拒否された場合それ失うことになる強行指名したチームです。
簡単に強行指名するべきだと言ってる人が多いように見受けられますけど、西武の上位2枠剥奪とかと同じ方向性のデメリットをうけるわけですからね、このリスクは相当に高いですよ。
もちろん大田や長野を翻意させられれば別ですが、私はこれまでの経緯や雑誌等でインタビューなどで見てきた限り、彼らを翻意させられるとは思いません。
水面下でよほどいい感触を得られることがなければ、やるべきだとは思いません。
たとえば、中日の浅尾。確かに良い投手で今年すでに結果を残しています、もうちょっと時間かかると思いましたが。彼の中日志向は結構有名な話で今年の大田や長野に劣らないぐらいのものだったと思ってます。
巨人としては、順番では中日より先に浅尾を指名することはできた、中継ぎで可能性のある投手、巨人としてはいくらでも欲しいタイプです、越智も2軍でさえ結果がまだぜんぜん残っていないころの話。
でもあの時巨人は強行指名するべきだとはまったく思いませんでした、失敗したときのデメリットが大きすぎるからです。
もっとわかりやすいので言えば、上野貴久を指名する時点で同じ左腕である森福が残っていて(どちらも現時点では結果が残せていませんが)評価は森福のほうが高かったし今でも高いと思います、でも森福を指名しているべきだったとは思いません。
それぐらい強行指名というのはリスクが高い。日ハムの長野強行指名も分離ドラフトでの4巡だし、巨人の福井指名拒否も分離の4巡、横浜の分離3巡(全体1番目)の木村強行指名ぐらいでしょうか、統一ドラフトに換算しても上位指名枠を失うぐらいのリスクだったと言えるのは。普通はやはり下位だからこそ賭けに出られる事です。
巨人側が彼らを下位で指名しようとしているときに、それより前に来る下位の指名順を活用して賭けに出るのは理解できます、でも巨人側も上位枠を消費して指名してこようとしている以上はそのリスクは非常に大きい。
「巨人にいい方向に転んで欲しい」という期待がそう思わせている可能性を否定はしませんが、私としては「上位指名枠を賭けの元手にする」事はよほどの勝算がない限りしてはならない、っていうのが客観的な評価だと思います。
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さて、もうひとつ。「今後の方向性」って書いていたけど意味わからないですね(笑)。球界全体が目指すべき方向性の話です、これもいつも書いていることですけど。
「ドラフト制度」、或いはそれを発展させた「戦力均衡」、「リーグ繁栄」のためにはこれらを推し進めるべきと考える人たちの主張には根本的なところがひとつ足りません。この2つがどう繋がっているかを正確に示していないのです。
何度でも繰り返しますが、そもそも「優勝不確実性を高める事」が「リーグの価値を高める」かどうかについて、事実であることを示しているスポーツビジネス例はけっして多数派ではありません。
そもそも「優勝不確実性を高めることはリーグ全体の価値を高める」って事はアメリカ発のビジネスモデルにおいて、自由主義経済に反するような各種の例外事項を法的に認めさせられるために生み出されている方便に過ぎません。「」内には「そのためには全体の利益の最大化のために各種の制限をすることもやむをえない」って続くわけです。
しかし、アメリカのプロスポーツリーグ以外で、そんなことを主張しているリーグはほとんどないし、特定一部球団にしか優勝の可能性が無いことが最初からわかっているようなリーグ(例、プレミアリーグをはじめとしたサッカーリーグ等)であっても高い収益を上げています。
もっと言えば、個人スポーツでは根本的に「優勝不確実性を高めるために戦力を均衡する」なんて土台からして無理な話なわけですよ、フェデラーに君は勝ちすぎだから、テニス界全体のために優勝不確実性を高めるような活動をしてくれとか言えば良かったんですか。っていうかそもそもフェデラーが君臨していた4年間ほど、テニス界って衰退してました?優勝不確実性が発展に必要不可欠なら強すぎる王者は衰退を招かなきゃおかしいですよね、タイガー・ウッズにしてもそう。
「優勝不確実性がリーグの価値を高める」という論理はアメリカで使われているただの建前ですよ、それをビジネスモデルだけを輸入して、このビジネスモデルのとおりやればうまくいくんだ、って強弁しているのは典型的な失敗への道程です。
ひとつの可能性としてあるのは「観客の大多数が、そう思い込んでいる」ので、「大多数のファンの欲求を満たすことで価値向上につながる」可能性ですけど、これは新興宗教等が集団心理に巻き込んで幸福感を味あわせる手法と大差ありません。いつか気づきます、「これで幸福なはずと信じ込んでいたから幸福だっただけ」だと。
ただ、私は「優勝不確実性」はまったくもってリーグの魅力を高める事に必要のない事だとも思っていません。所属するすべてのチームに必要ではないですけど、複数のチームが一定程度の優勝不確実性を持つ事はリーグ繁栄の為の方策の1つだと思っています。その場合、問題はどのぐらいが最適な優勝不確実性なのか、というところです。
話がそれますが、「優勝不確実性」をほとんどあまり考慮しなくても魅力的なリーグである事も十分可能だと考えています、だから解決方法としては大きくもう1つあると思いますが、今回はそちらに関しては言及しません。
今日は、もし仮に「優勝不確実性を高める事でリーグの繁栄につなげたい」っていうアメリカ式のビジネスモデルでやってみようと考えた場合での話に限って書いてみます。
これも前に書いたことですが、そもそもMLBにしたって上下に突出しているチームがある事も大きいとは言え、そのチームを除いてみたって年俸格差で見れば、けっしてNPBより均衡しているとは言いがたい。
例えば2007年シーズンで言えば、最多のヤンキースが約21900万ドルに対して最少のマーリンズが3100万ドル、差は7倍超。この2チームを除いた残りのチームを比較しても2〜3倍近くの差があります、これを「戦力均衡したリーグ」と表現できるとは思えません。(数値に関しては鈴木氏のブログから年俸をお借りいたしました)
これに対して、たとえば2008/2/14号の週間ベースボール紙P.18〜19のデータによれば、2008年シーズンキャンプ開始時点での選手年俸総額は最大が巨人の53.0915億円、最小が広島の15.0490億円、同じように上下に突出しているチーム同士を比較した場合のMLBの7倍超に比べて3.53倍に過ぎません、半分以下です。上下2チームを除いたら2.22倍の中に他の10球団はすべて収まっていることになります。
しかも保留権が長く、年俸がそのまま戦力数値に結びつかないのは日本側のほうです。
そして戦力数値に結びつかないとは具体的にどう作用しているかといえば、高いお金をもらう価値のある選手ほど正当な金額をもらっている可能性が高い。そのため、総額の低い球団が戦力相当額より低い可能性が高く、年俸総額という見た目の差は、実際の戦力差よりも大きく出るように作用します。
この2つのリーグのどちらが、「より戦力均衡しているか」といえば、MLBではなくNPBであることは明らかです。もし仮に「戦力均衡」が「リーグ運営」を招くための魔法のステッキだったとすれば、NPBの方が大きく発展していなければおかしいんですよ。
百歩譲って、戦力均衡がある程度作用している結果として現在のMLBの繁栄があるのだとしても、ではその繁栄に必要なだけの戦力均衡はすでにNPBは満たしていると言わざるを得ないでしょう。
にもかかわらずMLBがNPBに比べて大きく成功しているのはなぜなのか、理由は自明です。戦力均衡がリーグ繁栄のキーになったのではなく、リーグ繁栄のキーとなったモノが別に存在するんです。具体的に言えば公金誘導やチームの存在から発生する利益をチーム内に取り込んでいった事、もっと言えば最近割れたバブルもそうなんですが、まぁ話がそれるので割愛。
こういうことを書くと、こういう反論がくるかもしれません。「今年は年俸総額の低いレイズがリーグ優勝に王手をかけている、去年はロッキーズが残った、これは戦力均衡しているって事じゃないのか」って。
そうそここそが野球のほかのスポーツには無い強みであり、野球が最も追求すべきところなんです。なぜ、去年ロッキーズが、今年レイズが、ここまで勝ち残っているのか。それは「野球だから」です。戦力均衡なんて無関係です。
これもずっと言っていることですが、これだけ優勝チームの勝率が低いスポーツは他に例を見ません。今年デッドヒートを繰り広げて、圧倒的な勝ち星を収めたように野球ファンには見えた巨人と阪神、どちらも勝率で言えば6割をきっています。
現在のJリーグは、サッカーリーグとしては異端の緩い均衡政策があるので珍しく勝率は低いのですが、それでも2008年シーズン、現時点で勝率6割を超えるチームは6チーム存在しています。直近の例で言えば、Jリーグディビジョン1の鹿島アントラーズは7割8分6厘(22勝6敗)、尚最高勝率は浦和レッズの8割3分3厘(20勝4敗)、ラグビートップリーグ、三洋電機は勝率10割(13勝0敗)、バレーボールプレミアリーグ女子の東レは8割5分2厘(23勝4敗)、同男子8割5分7厘(24勝4敗)、アメリカンフットボールXリーグで最も勝率が良かった松下電工は10割(5勝0敗)、バスケットボールJBLスーパーリーグのアイシンが7割4分3厘(26勝9敗)、国内では最も戦力均衡策の強いリーグの1つであるバスケットボールBJリーグでさえ、勝率7割2分5厘(29勝11敗)。
話がそれますが、ちなみに勝ち点制度というのは何なのかと言うと、確率上引き分けが発生しやすく(得点を得にくいスポーツに多いです)、同時に勝率は非常に高くなりやすいスポーツにおいて、勝率をそのまま優劣に直結してしまうと強さが正確に現れない或いは優勝があまりに早く決まりすぎてしまう事を少しでも解消する為に生み出されたツールだと思います。
試合数が少ないからこうなっているだけで野球もそうなると思われますか?だとすれば、試合数を少なく区切ったところで、「12勝1分」なんてことが起きるのは良くあることのはずで、今年の巨人みたいに10何年ぶりだとか何とか騒がれたりしないはずですよ。
過去の記録をたどっていっても、何十年も続けながら、優勝チームの勝率が7割さえ超えることがほぼない(セ・リーグではエキスパンション直後の1950年代以来ありません)、それどころか6割をきるチームが優勝することも珍しくないスポーツなんて野球ぐらいのものですよ。
その特性が、去年のロッキーズや今年のレイズを導いているのです、勝率が狭い範囲に集中すると言うことはそれだけ上下の逆転が置きやすくなるということに他なりません。
上記の鈴木氏のブログで見ていただければわかるとおり、やはり年俸順で見た戦力のとおり、大体は決まるんです、しかし野球の特性上そこから外れる事象も非常に発生しやすいので、30チームもあれば毎年1つや2つは例外が発生してくる。
日本のリーグで強引に考えれば、延べ30球団=5年分で考えれば、最近ずっと年俸では3強3弱になっているセ・リーグでさえ、3強がそのまま3位までに収まったことは去年と今年だけ、2位以内(30分の10以内、プレーオフは30分の8)には2004年シーズンに一度ヤクルトが食い込んでいます。その先の5年を見ればヤクルトの優勝がまた入ってきます(たぶん3強3弱が崩れてますが)。単純に30回ぐらい試行すれば1つぐらいでてもおかしくないねってのはNPBを見ていても容易に推測できます。
で、何度もいっているとおり、短期決戦は運です、ロッキーズが一つ前まで言ったり、レイズが仮に上まで行っちゃったりするとしたら、運が良かった、ということです。
そして、あまりに戦力均衡を推し進めると、今度は長期戦の結果でさえ運で決まってくる事になりかねません。
他のスポーツが16枚がエースで4枚がジョーカーの20枚のカードから独立して20回カードを選ぶものであるとすれば、野球は大きく強いチームであっても12枚がエースでジョーカー8枚から選んでいるようなスポーツ。
前者を多少均衡させても15と5になるだけですが、後者を均衡させると11と9になってきます、そこまできちゃったらただの「運ゲー」ですよ。
そして、この優勝するチームでさえ、他スポーツとは比較にならないほど勝率が低いこと。言い方を変えれば「負けるスポーツ」である事。これこそが野球の最大の強みであり、他のスポーツとの差別化を図る上で最大のアドバンテージになる事なんです。
ぶっちゃけ言えば、どれだけマスコミがあおろうとも、ファンが議論を戦わせようとも、他のほとんどのスポーツはやる前に結果はだいたいわかるんですよ。少なくとも結果予測をある程度の変数に設定すればその枠内からほとんど外れない。
その現実をいろいろと脚色してぼやかしたりして、スポーツに熱狂させようとしている、それが「優勝不確実性を高める」という事のひとつの側面なんです。
私は巨人がやっているスポーツだから野球が好きに過ぎませんけど、巨人が無かったとしても野球は十分に興味深いと思いますよ、先が見えないチームスポーツなんてこれぐらいじゃないですか、表面取り払ってしまえば他のスポーツは答えが簡単すぎて退屈です。
でも野球は退屈なんかじゃない。野球は野球であるだけで、他のスポーツがどれだけ欲しくても掴み取れないファンをひきつける強力なツールを得ているんです。
他のスポーツが戦力均衡によって追い求めようとしているポイントは今野球がたっているところです、最適点にすでに近しい所にいます、多少行き過ぎてるぐらいかもしれない。それを他のスポーツがやってるからって盲目的にさらに進んでしまえば野球の場合は行き過ぎるだけです。
これはNPBよりMLBの方が発展していると言うところにも一致します、もし仮に優勝不確実性がリーグの魅力を高めるのだとしても、最も魅力的な位置に近いのは行き過ぎてないMLBで、NPBは行き過ぎていると考えれば理が通ります。
話がごちゃごちゃになってきたので、まとめますね、ちょっと文体変わりますけど許してください、論理展開に飛びがあったら言ってくださいね、私すごい飛びやすいので。
そもそも「戦力均衡がリーグの発展につながる」という主張の根拠は一部のリーグの成功例に限られ、成功しているリーグがすべからく戦力均衡になってはいない。
NPBとMLBを比較する限り「戦力が均衡している」可能性が高いのはNPBの方である事からも、少なくともNPBとMLBの成功の差が戦力均衡に起因すると考えるのは不適当である。
そして、野球は他のスポーツと違う大きな特性として、「戦力差が大きくても勝敗は逆転しやすく、戦力差がそのまま勝敗につながりにくい」という特性を持っている。
その特性を考えると、野球を「戦力均衡の状態」にすることは「実力関係なしにただ運の良いチームが優勝する」だけの状態にまで貶めてしまう可能性が高い。
むしろ、「戦力均衡の状態」を目指さなずにたしょう戦力不均衡であろうとも優勝不確実性は他スポーツ並の状態を維持する事が可能であり、もし仮に「優勝不確実性がリーグの繁栄に結びつく」と仮定した場合でも、野球は戦力均衡による優勝不確実性の向上を行う必要性は薄い。
以上より、野球において「戦力均衡」という方策は採るべきではない。それがプロ野球が目指すべき「今後の方向性」の1つです。
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私としては、本当は別のもう1つ、開放型への大転換が解決方法としてはベストだと思います。
ただ、そのような「革命」を起こすのは(特にアマで)既得権益が入り組んだ今の日本野球界では非常に難しいと思います。
なので、最終的な方向性を同じリーグ繁栄に求めるのであれば、閉鎖型ビジネスモデルの中で少しずつ必要の無い戦力均衡の追求などをやめていくのが現実的だろうと思います。
そういう観点で見たとき、ドラフト制度。これはいったいどういう特徴を持ったものなのか。
野球小僧の10月号でもそういう記事があったので更に多くの方が知っていると思いますが、ドラフト制度には本来の目的が1つと後付の目的が1つあります。
本来の目的は、「新人選手獲得にかかる費用の抑制」、後付の目的が「戦力均衡」です。
で、それが存在することによる負の影響があります、新人選手側からすれば、リーグの都合によって損を強いられている事です。単純に「費用の抑制」とか「期待利益の軽減」に他なりませんし、球団を選択できないというのも彼らからすれば非常に大きなマイナスです。
このマイナスを選手側に押し付けられてきた理由は、選手側にとってそれで内部に入らないと利益を得ることができないからだったのですが、田澤によって示されているとおりそのアドバンテージは既に失われました。田澤問題はまた今度書きます。
リーグの繁栄を考えるのであれば、「戦力均衡」が必要ないのは示したとおりです。そして現在Jリーグが行っているように、「選手獲得にかかる費用の抑制」は1950年当時と違って、現代社会では対応は不可能ではありません。そして選手にとって大きなマイナスを生む制度であることは変わらない。
以上の認識を持っているチームならば、現行のドラフト制度に関しては非常に大きな危機感を抱くはずです。
選手側にとって唯一と言っていいプラスだった「内部に入らないと利益が得られない」というカードが失われつつある現在、選手側に新たな魅力を創出しなければ、選手が入ってきてくれなくなります。
では具体的にやるべきことは何か。ドラフト制度の中の「選手のデメリット」を軽減していく方向に動かなければいけません。
それが逆指名のような制度の拡大であるとか、選手側の希望が通じるようにしなければいけないということです。
これはもはやイデオロギー論争に近いものですからね、全員にすべてそれを納得しろとは思いません。
ただ、どうしても言っておきたいのは、巨人のやっていることに対して「時代の流れに逆行している」とかいう理由で批判するのは的外れもいいところだということです。
あなたの「時代の流れ」は巨人の見ている「時代の流れ」とはまったく別です。巨人の方が正しい流れだと言うつもりはありません、いつも言ってることですがイデオロギー論争はどちらが正しいかなんて過去にならないとわからない。正しい確信はありますけどね。
ただ、流れの見方が2つあると言うことは自覚しておいて欲しいんですよね。そして他を尊重する考えを持っておいていただきたい。
「流れの認識」の正しさを証明せずにおきながら、「流れに逆行している」事を論拠にそう批判をするのは的外れなんですよ。
だから、そういう主張をしたいのであれば、まず最初に「今以上の戦力均衡がプロ野球の発展に必要である」事の証明から入って欲しいんですよね。ほんと誰か見せてくれませんか、いい加減に。
制度がそこにあるのだから、従うべきだと言うのにもあまり賛同できません。一応今の巨人がやっていることは、制度に反していることではないはずですが、江川のときのようにドラフト指名を経ずに選手を獲得しようとしているわけでもないのですし。
制度の枠内で、制度をよりよく変えていこうとするために活動することを禁止するのは、自由主義社会制度下で社会主義活動を禁止しているのと同じですよ。
今の制度が正しいかどうかさえわかってもいないのに、制度でそうなっているからっていうことを理由にして制度の改善に対する思考を放棄する。日本人に非常に良くありがちな失敗で私は好きではありません。
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ちなみに、なぜ高野連を中心としたアマ野球界がドラフト制度の維持を求めるのか、建前じゃなく、ね。
ひとつ邪推させていただきますとね、これはドラフト制度の特徴の1つである、「新人選手獲得にかかる費用の抑制」と裏金があったと言う事実、そこから邪推はできます。
もし、仮にですよ。アマチュア選手を食い物にしている人間が居るとすれば、たとえばJリーグがやっているように野球界全体で一律で明朗な金銭制度を確立されてしまうと、そこから「手数料」を頂くことができなくなります。それは自らの存亡にかかわる事になりかねません。
現在の日本野球界がおかれている状況は、表面上だけ「新人選手獲得にかかる費用」が抑制されているだけで、実際には裏でお金がもっと動いている、のだとすれば(プロはともかくアマ間は特に制限無いはずでしょうし)、それにはドラフトの維持必須条件です
そこでドラフト制度が持つ役割は、「表面を取り繕うための役割」であり、それ以上に「"表”と"裏”を作るための役割」です。
Jリーグのようにすべてが「表」になってしまえば困るんですよ。裏が存在し続けるためにはドラフトでの契約金などの制限によって、表と裏とをわけてもらわなければいけない。
だからアマ球界の一部の人達からは、ドラフト制度の維持を強く求める声があってもおかしくは無いだろうし、ドラフト制度がより自由になっていくほど、裏のお金は減るでしょうからそれを拒否するのもおかしくは無い。
ちょうど鈴木氏がブログで取り上げられていたので私も紹介しますと、「高校野球裏ビジネス」という本があります。
ちょうど「プロ野球2.0」が話題になっていた時期に本屋で見て買ったんですが、正直こちらの方が野球ファンにとっては読むべき本だと思いますよ。
プロ野球2.0も良い本ですが、早稲田のトップスポーツビジネス最前線の方が良いかな、良くも悪くも野球だけに矮小化してしまっているのがマイナス。同系の本を読んだ上でそれらと比較しながら読むのであれば文句なしにオススメです。
で、そのプロ野球2.0よりよっぽど興味深かったのがこの本です。あまりにも内容が内容過ぎて、どこまで信じていいのかと思いながら読みました。
どこまで信じるのか、メディアリテラシーは個人が持つべきことですから私はとやかく言いません、けれど判断はともかく読んでおいて損は無いんじゃないでしょうか。
正しいかどうかは正直私には良くわかりません。高校野球関係者とか知己は居ませんし、私はアマ野球って言うのは「将来の巨人選手のいる場所」以上の興味が無いので詳しいことをまったく知りません。
ただ私個人の感覚として言わせてもらえれば、利は通るなと思いますよ、理じゃなくて利です。
あと、勘違いしないで欲しいんですが、私は「手数料」があるべきではないだなんて思いはしません。そういう人が居てもいいし手数料があってもいいです、ただし裏に沈むのではなく明瞭にあるべきだとは思います。
野球界がプロを中心としたひとつの組織にまとまった上でその組織内で手数料が明確に与えられる、それは何の問題も無いことだと思います。それは成功報酬であり、正当な権利ですから。
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