ペナントレースとクライマックスシリーズと日本シリーズ。

  • DIME
    2007年09月28日 15:54 visibility87

「今年のペナントレースは大混戦で、これでクライマックスシリーズ(以下CS)なんてのやらなければもっと盛り上がってたはずなのに」
この手の呆れた主張は、パ・リーグがプレーオフを始めてからずっと世に蔓延っているので今更聞き飽きたものかもしれない。でも何故かなくならない、特に昔の野球を美化し、昔の野球と違うこと=悪いこととしている一部のプロ野球OBと言う名の老害に多い。
言うまでも無いことだが「そもそもCSがなかったら、同じように混戦になっていたとは限らない」のである。
もちろん「CSという1つのルールによって戦い方は変化する」と言うことを証明することは難しい、というかほぼ不可能、だってシーズンを同じ条件で2回することはできないのだから、ルール有り、ルール無し、で2回試行しました、なんて学問的な解決はできない。
だから当然「CSがなかったとしても、同じように混戦になっていたかもしれない」「CSがあったから、混戦になったとは限らない」と言うのもまた正しい。
言葉遊びみたいなことを繰り返してしまって申し訳ないが、では事実として何がいえるのかと言えばこれだけである。
「CSがあったシーズンは、混戦になっている事が多い」。
正直に言ってまだまだ試行回数(つまりプレーオフありのシーズン)が絶対的に足りないのでもしかしたら最近は偶然戦力が均衡していることが多いだけであるかもしれない。
でも、現時点で断定的にいえるのは上記だけである。であるならば、「混戦の面白いペナントレース」を実現するためには「プレーオフ制度を続ける」が現時点では一番正しい選択となるのは自明だ。
このあたりはtoraoさんがうまくまとめているのでそちらも参考にして欲しい。


ただ、このプレーオフ制度をこれからも続けるに当たって、1つだけ早急に解決をしておいて欲しい問題がある。
「ペナントレースとクライマックスシリーズと日本シリーズ、この3つは何処で区切られるか」と言うことだ。
これに関しては「何処で区切りをつけなければならないか」は明白である。ペナントレースとCSの間だ。何故か。ペナントレースは長期戦、CSは短期戦、日本シリーズは短期戦、と完全にスタイルが異なっているからだ。
もし仮に、ペナントレースとCSに区切りをつけずにそのまま行う(つまり昨年までのパ・リーグの開催方式)と、「長期戦で争ってきたペナントレースの存在価値」が低下することになる。これは非常にまずい。どうまずいかというと興行的にまずいのである。
最後の数試合で決めることとなれば、長い期間をかけて行うペナントレースの1試合の勝ち負けは優勝にほとんど関係しない、消化試合とほとんど変わらないような価値しかもたなくなる。当然観客の興味は薄れるだろう。長期的に見ればこれは非常にまずいことである。
そうならないためには、まずペナントレースはペナントレースとして独立した優勝チームを決め、その後で日本シリーズを拡大した結果としての6チームによる短期決戦で日本一を決めている、というスタイルにするのが望ましい。
と言っても既に現時点で行っている開催方式は上記のようなスタイル(=ペナントレース勝率1位チームを優勝とする)となっており本来ならば問題は無い。

しかし、現在の制度上はそうでないにもかかわらず多くのファンは感覚的にCSと日本シリーズの間に区切りをつけているきらいがある。これはプロ野球全体として改善しておかないと、上記の興行的な問題が降りかかりかねない。
では何故、多くのファンの感覚が、実際のスタイルとずれてしまっているのか。その原因は、パ・リーグ側がプレーオフ制度に伴う収益効果を重視するあまり、パ・リーグだけで独自にプレーオフを導入したことにある。
プレーオフの導入自体は英断だったと評価するし、パ・リーグだけで独自に動かなければ現在のように両リーグで同時に導入ということにはなっていなかっただろうから、それもしょうがない。
ただしょうがないとは言え、プレーオフをパ・リーグだけで行わなければ行けないと言う関係上、どうしてもCSと日本シリーズの間に区切りをつけなければいけなかった。それがファンの間に定着してしまったのだ。
そのため、現在ちまたの野球関連のblog等を見ても、制度をそのまま理解してペナントレースとCSの間に区切りを入れている人の方が少数派である。
もちろん、上記の理由から当然「パのプレーオフのようにクライマックスシリーズの勝者をペナントレース優勝とするべきだ」という考えは間違いだと言うこともおわかりいただけるだろう。

このファンに与えている誤解を、プロ野球は全体で正していかなければいけないと思うのだが、現状では報道のされ方も含めて、むしろ誤解を助長するようなきらいさえある。
小難しい部分であるので、どうしてもファンに説明すると言うのが難しいのであろうが、自分たちの興行に直結することである、せめて報道機関への対策ぐらいはしておいて欲しいものだ。
と言うことで、この日記を読んだ人はせめて覚えておいてください。現行制度で区切りがついているのはどこなのか、と言うことを。

余談だが、プレーオフ導入当初から「短期決戦でチームの優劣を競うのは正当ではない」という主張がある。
私はこの意見には同意する、むしろ大賛成と言ってもいい。前にも述べてきたとおり野球というスポーツは他のスポーツと比べても非常に実力差が結果に反映されにくいスポーツである。そのスポーツの中で本来の実力差を反映させるためには、できるだけ試行回数が多い方が良い、つまり長期戦で決めた方が良い。
ただし、である。「短期決戦でチームの優劣を競うのは正当ではない」という論理が使えるのは必ずしもプレーオフに限った話では無い、日本シリーズも同じだ。
「日本一」という事の本当の価値を問うのであれば、短期決戦で決めるべきではない。1リーグにして年間通してリーグ戦をして決めるべきであろう。
しかしそれが実際には難しいから、短期決戦の日本シリーズで一応の「日本一」という体裁をとっているに過ぎない。そもそも日本シリーズによる「日本一」という称号もその程度のあやふやなものなのだ。
そういう「チームの実力を反映する」という点においてあやふやだった日本シリーズが、これまで2チームだったところを枠を広げて6チームにしたというのが、クライマックスシリーズというわけだ。
この点も多くの人が間違って認識している部分であろう、余談として付け加えておく。

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