序盤の雑感(後編)
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DIME
2008年04月30日 12:15 visibility139
投手編の前にひとつ。古城茂幸が怪我で離脱したそうで。亀裂骨折、それも肋骨とはまた困ったもんです、交流戦明けぐらいにまでずれ込むかな。
とりあえず円谷英俊や寺内崇幸を出来るだけ使いつつ、カバーしきれなければ小坂誠となってくるでしょうけど、控え選手の中では打撃も悪くなかったですから、地味ですけどすごく痛いですねえこれは。
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さて、投手編です。全体としてみればこんなもんだったかなぁとおもいます。
さすがに幾らなんでも上原浩治がこうなることは予測しづらかったです、個別の感想は後で。ただ「悪い目」だったのが上原なんで珍しいだけであって、全体としての出目からみれば予測の範囲に収まっていると思います。
先発投手の結果ですが、28試合でQSが16試合、準QSが3試合、残8試合です(QS=6回3失点以下、準QS=5回3失点以下、私は自責点ではなく失点で計算しています)。率に直すと.593、去年一年の結果が.549ですから、先発投手全体の成績はけっして悪くないです。
中継ぎにしても、ほとんどの負けは先発についていて、中継ぎは14個中4つだけ、そのうち2つが開幕3連戦ですから、失点数ほど悪くはない。
逆転負けが多い(らしい?)としてもその逆転を許しているのは先発です、中継ぎの問題ではありません。その先発も試合は作っているとなると本当の問題はそのぐらいの失点で逆転されるような点差しか作れない野手でしょう。
まぁもちろん、その失点した試合が負け試合だったのは運が良かったからであって、それが勝ってる試合の時にあらわれるかもしれないと言うのも事実(というかたぶんこっちが正しい)ですけどね。
気になるところは、前編でもちらっと書いたんですが、先発投手の起用方法について。あのタイミング(4/17)で6人ローテを崩してきたというのは正直賛成しかねます。
まず、中6日のローテーションを崩すことというのはできるだけ取るべき戦略ではないと私は考えているからです。
グライシンガー一人を崩して回す(4/11)ぐらいまでは理解できます。どうせGWのところで9連戦が来ます、個人的には谷間を作って中6日以上堅持が最善だと思いますが現首脳陣の投手起用の傾向からすれば、谷間を作らずに詰めて回す可能性のほうが高いです。そこでどうせズレるなら多少は許容の範囲内です。
負けが込んでいるので何か手は打ってみたい、かといって野手の方はまだ見極めるには早すぎる、じゃあ投手。で、投手の中で問題点としてあげられるのどこか、中継ぎもやはりまだ見極めるには早すぎる、じゃあ先発。じゃあ4/10時点までで先発に問題があったのかはどこかと言うと高橋尚成です。
4/10までの11試合でQSが達成されなかったのは4回、そのうち2回は高橋尚成、残りは既に落とされた金刃が1、初登板だったので早めに見切られた栂野が1。負けている状況で、3連戦の頭に信頼性を欠く先発を立てるのもあまり良くはないだろう。以上のように理由は多く考えられます。
4/11の起用については「グライシンガーが去年中5日でうまく回っていた事」を理由とする報道を多く見受けましたが、グラは白星がついてないだけで安定していたのを考えると、主因は高橋尚成の方だろうと思います。
問題はその後、具体的に言えば4/17以降ですね、中5日の投手が一人でも居るとなると、起用法としては特定の投手だけ中5日&他を中6以上として穴をその場その場で埋めるか、他の投手も日程を詰めて、基本中5日で詰まった時は中4日とするか。ここで後者を選んできたこと、正直私は賛成できません。
4/17以降の11試合で、QSが7ですから、今のところ中6日未満で投げた結果として何か問題が発生しているようなことは見受けられません。ただし、去年の結果を見ると月間成績で唯一QSが5割を下回ったのが7月でした。去年中5日以下での投手起用が見られ始めたのは5/31以降です、5/31〜6/30まで20試合中7試合が中6日未満でした。
これが偶然なのか必然なのかはわかりません、推測するにはデータが少なすぎます。けど個人的にはここに理由が全くないとは思えないです。
もし影響があったと仮定すると、5月から6月にかけて現在調子の良い先発投手(グライシンガー、内海、木佐貫)まで調子を落としかねません。
計算できる投手が少ない今、目先の1勝の為に計算できる投手を酷使するのではなく、計算できる投手を大事にして、効率よく勝つことが目指されるべきだと思います。
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先発としての可能性がある投手が5人以下しかいないのでその人数で回すより他にしょうがないというのであればまだわかります。
でも先発として計算できる可能性がある投手がいないとは思えない、栂野雅史や野間口貴彦を先発で試すことに特に弊害があったとは思えません。
例えば、栂野は結局中継ぎに回してから後、白星が混んでいることもあってうまく登板機会を与えられずにいます。もちろん彼の場合は先発候補として中継ぎに回っているのだとすれば起用方法はこれでよく、無節操に勝ち試合用の中継ぎが居るにもかかわらず調子が良いからといって勝ち試合の中継ぎとして栂野を使うのは100パーセント間違いです。
ただし、じゃあ栂野が使われる状況が出ないのは白星が混んでいるだけなので問題ないのかといえばそうでもありません。彼が使われるべき状況にあったとしても中継ぎの人数が多く為そう出来ない可能性のほうが高いと思います。
何故そうなってしまったのかと言えば、結局は先発が少なすぎるからです。
「中継ぎを厚くする」っていうのは良く聞かれる言葉ですけどね、本当にそれは厚くなっているでしょうか。ワンポイントの多用でもしない限り、先発が試合を作った勝ち試合一つに必要な中継ぎの数は3〜4だと思います。カードの枚数を増やしたとしても使えるカードの数が決まっているのであればそれはただの持ち腐れだと思うんですけどね。
ちなみに先発が試合を作れない勝ち試合(=乱打戦)もありますが、現在の巨人では打たれたら終わりで乱打戦となる可能性は低いです。
そして、勝ち試合の中継ぎというのは先発が何人で回っているかに関係なく固定されているのが正しい状態ですから、中継ぎの投手の頭数がどれだけ多くなろうともそこが強化されるわけではありません。
逆説的に言えば、「厚い中継ぎ」を有効活用するには、先発を短いイニングで降板させなければならない、たとえ調子が良くてもね。それは本末転倒でしょう。
或いは、登板間隔が短くなったことで先発が責任を果たせないことが多くなる可能性が高い、なのでそれへの対策として、「中継ぎを厚く」しておいて備えるのかもしれません。
でもそれもまた、本末転倒です。失敗が見越せるような戦略はその時点で無理のある間違った選択です、選ぶべきではない。失敗することを見越してそれに備えるぐらいならば、最初から失敗してもしょうがないと割り切って、中継ぎに回していた過剰な「負け担当中継ぎ」に先発させ、計算の出来る先発投手には失敗を見越さなくても済むような起用をする方がよほど効率がいいです。
結局、今の巨人の状況は本末転倒の状態には陥らずに済んでいます。しかしその状態にならなかった分だけ、ベンチを暖めているだけの選手を作っています。これは戦力を効率的に使えているとは思えません。
全体の厚み(出場選手登録数)は同じである以上、「中継ぎを厚くする」事は「先発を薄くする」事でもある可能性が高いです、野手の場合もありますが。
「先発が薄い」からこそ「中継ぎが厚い」のか、「中継ぎが厚い」からこそ「先発が薄い」事になるのか、どっちが卵か鶏かは知りませんが、お互いが負のスパイラルとして作用するのは間違いありません。
経験則的に先発と中継ぎそれぞれの最適な厚みというのは導かれているはずです。どっちかの厚みが薄くなりそうな事があれば、その時まず起こすべきアクションは「厚みを維持する」ことでしょう、それが最適なのですから。
そして「厚みが維持できない」のがわかってから、次善として「厚みの割合を変える」って方法が選ばれるべきだと思います。
具体的に言えば、先発に関してはまず6人で回す、離脱者が出たらその次の先発候補に椅子を与える。手元にある可能性のある先発候補が全てダメであることを確認した後に5人以下の先発でローテーションを組み先発で余ったぶんの椅子を中継ぎに渡す、それが正しい順番だと思います。
今の巨人は最善を飛ばして次善を選んでる、私にはそう思えてなりません。
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最適な状態よりも1試合辺りの述べ登板者数が増える可能性が増加する、そういう意味でも中6日を崩さなくて済むにも関わらず崩す事は私は賛成できません。「わたらなくても良い危ない橋を、リスクを承知で渡っている」そのような印象を私は感じます。
普通に考えれば先発の登板間隔が短くなれば先発が投げられるイニングも短くなる、中継ぎが登板する事が多くなる。それは中継ぎが充実しているかいないかに限らず、リスクを負うことです。
年間を通して90%は成功する、50試合換算で5試合前後の失敗ですから一流のセットアッパーといって良いと思います。ただ、90%の確率で当たるクジを2回引いて2回ともあたるのは81%、3回引いて。。。と当たり前ですが確率は下がっていきます。
結局のところ、投手はマウンドに上げてみないと結果はわかりません、少なくとも現在の野球レベルでは。そして成功率100%なんて投手なんてほぼいません、複数人揃うって事は稀有でしょう。
となってくると、登板する投手の数が置ければ多いほど単純にリスクは高くなっていくのだと言えます。
現在のところ、4/17以降の先発投手陣は、それ以前と比べて登板イニングが短くなっている傾向は見受けられませんからこれも杞憂かもしれませんけどね。
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ただ、先発と中継ぎとでいえば、まず考えなければいけないのは中継ぎです、中継ぎが足りないことと先発が足りないことで言えば、前者の方が非常に危険です。
何故なら、前々から言っているとおり、「先発適正」を持った投手は数多く居るからです。候補者の絶対数が違います、違いすぎるぐらいに違います。
先日尾花コーチが「先発を作ります」と言っていた報道がありましたが、あの考え方が正しいと思います。
先発は足りなくなってから作るぐらいで十分間に合います、ちゃんとした使い方をしていれば。2軍でローテを組んで投げさせているものが2〜3名、負け試合担当の中継ぎとしてロングリリーフをさせておく(=その試合は捨ててでも、安易に交代させない)のが2名、ちゃんとした使い方をしていればいるはずです、そこから拾えばいい。
それに対して中継ぎは適正を持っている投手が少ない、中継ぎとして与えることの出来る機会(特に1軍での登板機会)も少ない。だからこそ中継ぎとして適正がある可能性のある投手は出来るだけ中継ぎとして育てようとしておいた方が良いです。
ですから、現在の状態から中継ぎで結果を残している投手を先発候補にまわすのは賛成できません。中継ぎに影響を及ぼしてでも先発候補を作り出すべきとまでは思わないです、その時は5人以下でローテーションを組んでも良いと思います。
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では、個別に触れていきます。といっても中継ぎは論評できるほどの数を投げてないんで、良いのはともかく、悪い方はまだ断定しきれません。
まず、先発で最初に触れたいのは上原浩治と高橋尚成なんですが、私はむしろ上原よりも高橋の方が早急に対処すべきなのではないかと思います。
上原の陰に隠れてしまっていますけれど、高橋の結果も非常にヤバイです、むしろ上原より高橋の方が悪い。
上原の場合は開幕当初の2試合まではしっかりQSを達成していた、その後におかしくなっていったのですから、世間では色々言われていますが、シーズン開幕後に何か調子を落とす原因があったと考えるのが自然でしょう。
逆に言えば、「良かった時期」がわずかながらとはいえ、上原にはあります。それに対して高橋はずっと悪かった。ここ2試合(4/24・4/30)はQS、準QSとなっているのでもしかしたら改善傾向にあるのかもしれませんが、昨日の試合を見る限りまだ断定は難しそうです。
私は、高橋は4/18時点、4試合目の登板の結果を持ってローテから外されるべきだったと思います。
上原がそうであったように、エース格の投手、チームの核となる投手に対しては平均以上に我慢しなければいけないと思います。そういう選手が調子を崩して離脱となると、保持できるチーム戦力に制限がある今の制度下ではその穴を埋めるのが容易ではないので。
しかし、高橋はそれに値する選手ではない。高橋の過去の実績からすれば、ここまで特別扱いして我慢すべき選手であるとは思えません。ちょっと高橋尚成を過剰評価しているんじゃないでしょうか。
私は先日の現有戦力評価で書いたように、高橋は「数シーズン通して安定した実績がない」投手だと思っています。高橋の現状は調子が悪いのではなく、実力どおりの結果ではないかと懸念しています。
ただ、「現状5人でやりくりしていたところで上原が抜けて4人になった、そんなチーム状態で更にもう1名外す余裕などない」という意見には首肯します。
しかし、その状態を作り出したのは首脳陣なんですよ、そうならないようにすることも出来たはずです、前に戻るんですが、6人で回さなかったからそんなことになるんです。
まず、上原と高橋は見極めをつけなければいけない、この判断がどこで出来たか。
上原に関しては最初の登板は調子が良かったですから、その後に悪化したと見ればこれぐらいの試合数は見極めにかかるのは理解できます。
それに対して高橋は最初から調子が悪かった。4/18の登板、高橋が初勝利をあげた試合ですが、ここで私は一度切ってしまっても良かったと思います。そして、ちょうどこの辺りから、先発を5人で回し始めたんです。
もし仮に、高橋をこのタイミングで外さずにもう少し我慢することにしたとしても、ここで6人で回していれば、次の先発候補として栂野や野間口をテストし始めることは出来たはずです。
仮定に仮定を重ねるのはなんですから、「もし彼らが良かったならば」なんて事を言う気はないですが、良かったにしろ悪かったにしろ、可能性を見る事は十分出来たはず。
その結果として一人でも二人でも出てくれれば、調子の悪い上原や高橋を落としたとしても、内海、グラ、木佐貫に次ぐ4人目、5人目の選別は済んでいて無理なくローテーションを組めたはずです。先発が足りなくなるので上原と高橋を両方とも外せないなんて妥協をする事もなかった。
もちろん、そこで誰も出てこなければ、調子が悪そうだけれど他に選択肢もないから高橋をもう少し我慢するか、となるのは間違ってるとは思いません。結果としてそうなったのだとすれば私は批判しない。
「5人でやりくりしていて余裕のない状態」を招いたのは首脳陣の選択ミスです。「誰か1名出てきて余裕がある状態」になったはずだ、なんて都合のいい事を言うつもりはありませんが、そうなる前に先に手を打つ機会はあった。
ところが6人で回すのではなく、5人で回してしまったことで、「新先発候補をテストする」時期と、「既存先発陣の再編として調子の悪い投手を外す」時期とが被ってしまった。
しかもそのタイミングが、そうでなくても投手に負担がかかる9連戦の時期になってしまった、最悪です。
これは首脳陣が「悪いパターン」をしっかり想定しなかった、「上原・高橋両方がダメなんてさすがにあるまい」と安直に考えてしまったのが原因ではないかと思います。
私がこうやって書いているのは全て結果論です。でも私はこれぐらいは推測は可能だったと思うのですけどね。
「開幕投手」が何か悪い方向に作用した、っていう声がいくつか見受けられます。
しかし、その作用として「上原浩治を開幕に投げさせなかったからだ」なんていうのはただの妄想です、根拠も論理性も全くない。
もしあるとすれば、「高橋への評価をゆがめている」というのならまだ理解できますね。
首脳陣は自分たちがどうして高橋に開幕を任せたのかわかっているはずです、本当ならば。だったら開幕投手だからといってもそんなに特別な投手でもないこともわかっているはずです。
ところが、現状どうもそう思っていないように見えます。
内海哲也に関してはこんなものでしょう、怪我によってほとんど調整登板無しでこの成績ですから、それを考慮すれば素晴らしい結果だと思います、
グライシンガーに関しては、現有戦力評価で非常に失礼なことを書いたと謝罪しなければいけません。一年しか実績がない事から一段低めに見積もりましたが、世間一般での評価の通り彼の安定性は偶発的なものではありませんでした。今の結果を見るともし彼の獲得に失敗していたらとぞっとしますね、全く獲り過ぎではなかった。
木佐貫も、うまく仕上げてきてくれたと思います。開幕にこだわるのではなく、一年間を見据えて活動できるように仕上げるべき。そうは言っても焦りというのは避けられないものであると思うのですが、きっちり我慢してくれた。
また、去年モデルチェンジしたのでまだ一年間しか働けていないわけですから、今年はどうなるかなと懸念していたのですが、今の調子ならば2年先、3年先まで見据えられそうです。年齢バランスが悪くて今年現在で26歳〜30歳の投手が少ないチーム事情を考えると、彼がこのまま核となってくれるようであれば、本当に願ってもないことです。
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- 事務局に通報しました。
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