
いよいよ全体像が見えてきた“清武声明問題”
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舎人
2011年11月14日 04:13 visibility1011
金曜日に午後に行われた巨人の清武代表の記者会見から2日が経ちました。土曜日の夜に渡辺会長から反論の文章が発表され、続いて清武代表から再反論が行われました。スポーツ新聞の紙面のトップは、日本シリーズそっちのけで、「暴露合戦が始まった!」だの「渡辺会長 清武代表謀反メッタ切り!」などといった感じです。日本シリーズが行われている最中だというのにこんなことが行われているとは、多くの野球ファンから顰蹙を買っていることでしょう。巨人ファンとして本当に恥ずかしい限りです。早くケリが着いて欲しいと願うばかりですが、2日経って少しずつ全体像が見えてきたこともあるので、前回に引き続きこの問題について話してみたいと思います。私には第二ステージに突入した感のあるこの問題です。
前回の日記では清武さんが記者会見で本当に訴えたかったことについて私の意見を話しましたが、もう一度かいつまんで説明すると、「かつて不祥事の責任を取り、一線から退いた球団の平取締役に過ぎない渡辺氏が、オーナー然として球団の経営を取り仕切るのは、道義上も、コーポレートガバナンス上もおかしいのではないか?」「組織の健全性を保つためには、それぞれの職分の範囲を超えてはいけないのではないか?」これが訴えたかったことの1つ。表立って記者会見を開いた理由です。そしてそれを訴えることで自分が目指していた「フロント主導によるチーム強化のシステム構築」を守りたかった。渡辺会長はお金とビックネームでチームを強くしようとするのに対し、誰が入れ替わっても強さが失われないシステムを作ることが必要と清武さんは信念としていた。もう1つはこの理念を訴えたかったのだと思う。
この日記を書いて、多くの方からコメントをいただき、昨晩日記を書く以上に時間をかけて返信をしましたが、その内容を元に少し補足をしながら話してみたいと思います。
まず、なぜこのような派手な記者会見を開く必要があったのか?それはただ単に組織内部でたてついただけでは、意見を握りつぶされてしまうからでしょう。無視された挙げ句、体よく本社に呼び戻され、閑職に追いやられてしまう可能性があった。大仰にして渡辺氏が無死できないようにしたかったのではないか?
そして、ほとんどの人が清武さんの記者会見をただの無謀な自爆テロのようなものだったと話していますが、本当にそうでしょうか?この記者会見で問題として指摘された渡辺会長の球団私物化については、相手に取って非常に痛い部分でした。渡辺氏はオーナーになりたくてもなれないために止むに止まれず院政を敷いていたからです。権力の構造としては力を保持していても、その職分からは直接球団の人事や運営を行うだけの権限を渡辺会長は持っていないのです。このことを記者会見で世間に訴えることで、渡辺氏は一場問題に責任を取っていないにもかかわらず球団経営に深く関与しているという道義的な問題と、読売はコーポレートガバナンスにいい加減だということが露見してしまった。これが清武さんの狙いだったのだと思います。 今後、渡辺オーナーが球団を牛耳ることは親会社のトップである以上、変わらないと思いますが、少なくともオーナーと同然に振る舞うことが憚れることでしょう。今よりも少しはおとなしくなると思います。
私はこの点を渡辺会長側がどのように回答してくるか注目していたのですが、事実関係を順序だって述べているだけで、何の反論にもなっていません。言わば「言った言わない」の押し問答のレベルです。要はそんなの当然だとばかりにはねつけたのです。裏返せば反論しようにもできなかったのだと思います。
渡辺会長声明全文「“清武声明”は悪質なデマゴギー」
この渡辺会長からの反論文に清武さんはすぐさま反応し、再反論文を発表しています。
清武代表声明全文「意図的に虚偽の事実を述べたことは遺憾」
「言った言わない」という部分は話の核心ではありません。清武さんが最初の声明で訴えていた「渡辺氏の球団私物化」について渡辺氏から回答がなかったのですから、これはただの押し問答です。しかし、このやり取りからは別の核心が浮かび上がってきたのです。
つまり、今回の騒動の発端となった人事は原監督がオーナーやGMの清武さんの頭を飛び越して関与したという疑惑なのです。これは渡辺氏が自分の職分を超えて権力を振るうのと同様に、原監督が球団フロントをないがしろにして職分を逸脱しているということです。土曜日の晩の時点では原監督は全否定をしていたようですが、今晩になってこれは事実だったことが報道されました。
11日の時点では「全くありません」と話していたのに、渡辺会長と口裏でも合わせたのでしょうか?しかし、このことが第ニの問題を生み出してしまったことになります。
報道畑の人たちは本当に面白い。最初に動いた清武さんがあれこれ暴露するのは分かるにしても、まさか渡辺会長まで今シーズンの内幕をばらしてくれるとは意外でした。おそらく原監督は清武さんのことを不満に思っているのだろうと思っていましたが、やはりそうでした。ファームと一軍が連動していなかった理由もこれで分かりました。元々は若手の登用に熱心だった原監督でしたが、いつしかベテランを重用するように方針がシフトしていました。まるで、清武さんが育成に熱を入れれば入れるほどベテランを起用するようになっていった感じです。若手の育成にばかり気を取られ、肝心な即戦力を用意してくれない清武さんにいつしか不満を持ってしまったのでしょう。ベテラン重用はその当てつけのようなものだった。昨シーズンオフに原監督が要望した村田(横浜)の獲得を見送った辺りでその溝は決定的になったのかもしれません。
そうやって監督と球団代表が今ひとつしっくり行っていないと、今まで球団の内外で清武さんのことを面白く思っていなかった者たちが、あれこれと話を吹聴するようになった。中には讒言めいたものもあったのではないかと思います。それが渡辺会長の耳にも届くようになった。
日刊ゲンダイの「ウの目タカの目」。清武さんのことでしょう。
ここまでのことを総括すると、今回の騒動は球団内の清武さんのことを面白く思っていなかった者が、原監督と清武さんがあまり上手く行っていないことに目を付け渡辺会長を動かしたことが背景にあるのだと思います。
原監督は監督の職分を超えた行為をしていた訳ですが、おそらく清武さんは原監督が渡辺会長に接近していることは知っていたでしょうし、そういった人事的なことも話していると把握していたと思います。しかし、内心面白くないもののあえて知らないふりをした。渡辺会長の職分を超えた行為を非難するのと同様、原監督にもこれは越権行為だということを示したかった。クギを刺したということです。
おそらく、清武さんの目的は次の通りだったと思う。
引き続き自分が球団運営を続けるか、もしくは
①も②も自分がいなくなったとしても、球団内の秩序が回復し、清武さんに代わる次の人物が球団運営をやり易くなります。③が無理で、自分が球団を去ることになっても、それだけは置き土産のようにやっておきたかった。清武さんがGMの仕事に固執したから、今回の騒動を起こしたと言っている人がいますが、渡辺会長から騒動の前から身分は変えても引き続き実質的なGMの仕事をするように言われているのです。GMの仕事をしたいというよりも球団の秩序回復(と言うか確立)が清武さんの一番の目標だったと思います。
③は球団内で孤立している今の状況を考えれば、かなり厳しい気がしますが、どれだけ渡辺会長側が清武さんのことを恐れているかによると思います。なにしろ、自分が球団経営にかかわるようになって初めて自分にたてついた者が現れたのです。ここで一方的な解任などしたら、この先どんな爆弾を炸裂させるか分からない。なにしろ、7年間、巨人の編成をしていたということは、どんなマル秘情報を蓄えているか分かりません。それが清武さんの今後の切り札です。渡辺会長は、土曜日の記者会見の直前までまさか本当にそんなことをするとは予想していなかった。ただのブラフかと思っていた。それが本当に、爆弾を破裂させてしまったのですから、清武という男は何をしでかすか分からないといった恐れを間違いなく抱いていると思います。
今回の騒動は最終的にどんな結果に終わるかわかりませんが、本当に色々なことを私たちに教えてくれたと思います。色々な立場でそれぞれの者が真剣に考えると、目的は同じでもどうしても意見に齟齬が生まれてしまう。それをルールに基づかないで処理すると、衝突や組織に亀裂を生じてしまうと言うことです。清武さんも渡辺会長も原監督もそれぞれが、巨人のことを真剣に考え、良くなって欲しいと思って行動してきたと思います。しかし、成功しているうちは意見の齟齬も問題にならないものの、失敗すると問題になってしまうのです。それを衝突や亀裂にしないためには、全ての者に秩序に従わせることです。それぞれが自分の職分に従って行動する。それが組織であり、巨人も例に違わないことだと思います。清武さんもこんな騒動を起こして困ったものですが、この組織倫理を守ろうとした点は評価してあげたいと思います。清武さんのことを明智光秀のようだという意見がありますが、私には大津事件の時の児島惟謙の方が例えとしていいと思う。
清武さんは今回の件で球団内でも本当に孤立していることが分かりました。清武さんも渡辺会長側もそれぞれ落としどころを探している段階でしょうが、どんな体勢が出来上がっても、お互いが別の方向を向いているのでは困りものです。優勝なんかできっこありません。戦後処理が一番の問題です。「雨降って地固まる」を期待したいと思います。
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- 事務局に通報しました。
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