巨人の2016年ドラフトを振り返って(2)各論1 天才的センスと一様に謳われる吉川尚輝の評価
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舎人
2017年01月15日 06:11 visibility4515
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。本当なら年内にやっておかなくてはいけないこのドラフトの振り返りも、今回は年を跨いでしましました。その間に、大田のトレードがあり、FAや外国人選手の乱獲があり、人的補償で平良の流出ありで、ファンとして本当に落ち着かなかった感じです。こういったことは熱が冷めないうちに、一気に仕上げておかないと、いくら良い内容でも白けたものになってしまいます。本当は止めてしまおうかとも思いましたが、自らまとめると宣言してしまった以上、何とか形にしたいと思います。そうすることで、開幕に向けての意気も上がりますし、私のファームウォッチャーとしての下地も出来上がると思います。
この選手ごとのことを話す各論は、3回ないし4回の予定で行いたいと思っています。今回はドラフト1位の吉川から4位の池田のことまでをまとめてみました。各紙の評価やコメントをキュレーションし、その選手の本当のところは何なのかを浮かび上がらせる作業です。各選手のストロングポイントとウィークポイントを把握することができれば、今後の成長の軌跡を思い描くことができるようになり、ファンとしてもウォッチャーとしても、一歩進んだ視線を送れるようになることでしょう。
野球太郎(ドラフト直前大特集号)2016年9月24日発売
アマチュア野球(ドラフト2015)2016年10月5日発売
週刊ベースボール(2015ドラフト大展望)2016年10月11日発売
野球人(Vol6 ドラフト候補選手最強名鑑号)2016年10月12日発売
スポーツ新聞各紙 評価は10月19日紙面(報知は18日)、寸評は10月21日紙面
週刊ベースボール(2015ドラフト総決算号)2016年10月25日発売
野球太郎(ドラフト総決算&2016大展望号)2016年11月28日発売
各紙の評価のランク
野球太郎(◎→◯→△→なし)
アマ野球(AA→A→BA→B→C→なし)
週刊ベースボール(横綱→大関→関脇→小結→前頭1~17→なし)
日刊スポ(特A→A→B→C→なし)
スポニチ(A→B→C→なし)
報知(横綱→大関→関脇→小結→前頭1~15→なし)
サンスポ(A→B→C→なし)
デイリー(特A→A→B→C→なし)
トーチュウ(特A→A→B→C→なし)
※野球人は著者の安倍昌彦さんの一人ドラフトによる
ドラフト1位 吉川尚輝の各誌寸評
野球太郎(ドラフト直前大特集号)総合評価:A(◎)
・どんな選手?/走攻守揃った大学生ナンバーワン遊撃手。高校時代から頭一つ抜けていた守備はフィールディング、スローイングによどみがなく流麗。打球に対する一歩目の動き出しが早く、二遊間・三遊間の立ち回りが軽快で守備範囲も広い。今年6月の大学選手権ではスター性を発揮して大会を吉川一色に染め、誰も予想しなかった「優勝」まで手中に。初戦の第一打席でいきなり中越え三塁打を放つと、以後も自在なバットコントロールで左右に打ち分け、毎試合安打をマークした。準々決勝では一塁走者として50m走5秒7のスピードを披露。打者の安打が左前に転がったにもかかわらず、エンドランで一気に三塁まで陥れた。
・プロでの成功イメージ/プロの環境でもっとうまくなる。タイプは違うが大学の先輩・菊池涼介(広島)のように攻守で魅了。二塁手としてもプレー可能。
・推薦したいチーム/この先10年、二遊間にメドを立てたいチーム。
・プレーヤータイプ/西岡剛(阪神)
アマチュア野球(ドラフト2016)評価:A
スピード感あふれる守備が魅力/抜群のスピード感を誇る守備が魅力のショート。他の選手がスローにみえるほどの圧倒的なフットワークは見事という他ない。打撃も年々パワーアップしており、次の塁を果敢に狙う走塁も高レベルだ。
週刊ベースボール(2016ドラフト大展望)評価:大関
走攻守3拍子揃う逸材/走攻守の3拍子が揃っており、今年6月の大学選手権では初出場初優勝の原動力となった。侍ジャパンではライバルと公言する日大・京田陽太と意気投合し、お互いにレベルアップした。端正なマスクから“4拍子”が整っており、人気を集めることは間違いないだろう。
野球人 評価:外れ1位相当
・4年間の歩み/2年春に岐阜のリーグ戦で見た時は、4年になったら〈隠し玉〉に…とたくらんでいたが、今年の大学選手権ですっかり有名人になってしまった。そもそも、これだけインターネットで情報が〈一網打尽〉にされてしまう時代に隠し玉などあり得ない。神宮で優勝するまでの5試合、さらにその後〈日米〉での実戦経験でバッティングの実戦力がぐんと上がっている。高いレベルの実戦という場に誘発されて、眠っていた潜在能力が目を覚まし始めた様子。動きのスピードはプロでも一級品だ。
・進路指導 OK/唯一、心配だった遊撃手としてのロングスローの精度が、〈日米〉で二塁手として使えることが証明された。連携で名手・京田が遅れをとったほどの二塁手としてのスピーディーな動き。新たな人材発掘の場となった。
日刊スポーツ 評価:A
50メートル5秒7の大学球界屈指のスピードスター。俊足生かした守備は大学の先輩である広島菊池を彷彿(ほうふつ)とさせる。
スポニチ 評価:A
今春の大学選手権初優勝に貢献。走攻守に秀でた大学No.1の遊撃手
報知 評価:小結
全日本大学野球選手権で初優勝初Vに導き、先輩の広島・菊池のような野性味あるプレー
サンスポ 評価:A
走攻守にハイレベルな大学No.1遊撃手
デイリー 評価:A
大学日本一と大学日本代表を経験した即戦力遊撃手。華麗な守備と50メートル5秒7の俊足に加え、広角に打ち分ける打力も魅力。開幕スタメンも十分狙える。
トーチュウ 評価:特A
大学日本一と大学日本代表を経験した即戦力遊撃手。華麗な守備と50メートル5秒7の俊足に加え、広角に打ち分ける打力も魅力。開幕スタメンも射程
週刊ベースボール(2015ドラフト総決算号)
50メートル5秒7の快速だけでなく、高い身体能力を誇る三拍子揃った大学球界No.1内野手。
野球太郎(ドラフト総決算&2016大展望号)抜群のセンスとスター性
・どんな選手?/走攻守揃った野球センス抜群の大学生No.1遊撃手。軽快なフットワークでゴロを捕球し、瞬く間に持ち替えて送球する一連の守備は流麗。打撃は対応力があり、センターから左方向を中心に安打を量産。50メートル5秒7の俊足でダイヤモンドを駆け抜ける。今春の大学選手権で優勝するなどスター性も十分。
・未来予想図/技術はプロの環境でもっと上手くなる。問題は体の強さ。ケガをしなければ二遊間で長くレギュラーを張れる。
巨人がこのドラフトで第一の目標に掲げていたことは即戦力投手の獲得だったと思います。しかし、田中正義の抽選で敗れ、佐々木千隼の抽選で敗れたことで、一気に方針を展開して野手の指名に踏み切ったのです。吉川は今から話す通り様々な意見があるものの、間違いなく今回のドラフトで即戦力に足りうる内野手の筆頭だったと思います。それは仁志が抜けて以降長いことレギュラー不在のセカンドの穴を埋めるに足る選手だということを意味しています。最大の懸案課題だった即戦力投手は取れなかったものの、一方の課題だった補強ポイントをしっかり押さえたという点で、この指名は納得の行くものだったと思います。
吉川の評価で最もヒットする言葉は走攻守揃ったというものです。その中でも特に注目されているのが守備で、流麗とか華麗とか、スピード感溢れるとかいった言葉でコメントされています。どうやら吉川という選手が評価された最大の理由は、このスピード感溢れ、流れるような、圧倒的フットワークを生かした守備にあるのでしょう。ここに載っていないことまで調べていくと、小関順二さんは「吉川の守備には華があり、球の回転まで分かるようだ」とドラフト中継の際にコメントしていましたし、前日のTBSのスポーツ番組で野村克也さんは「こういったショートはなかなかいない。色んな投げ方ができる典型的な内野手だ」と話しています。吉川本人は守備についてこだわりを持っていて、「自分のセールスポイントは守備のスピード。一塁に投げるためには、どこで捕れば一番速いかをいつも考えながらプレーしている」とのこと。「高校までは基本に忠実に、正面で捕ることを心がけていたんだけど、大学では基本を大事にしつつ、いろいろな捕り方を学んだ。OBの菊池さん(広島)のプレーを参考にしながら『遊び感覚』を取り入れるようになった」とも話しています。
ただし、このような良く言えば「派手で自由奔放、悪く言えばセオリー軽視でリスキー」のプレースタイルは賛否両論あるようです。小関さんはナンバーのコラムの中で吉川の守備を絶賛し、「ミスさえも長所に思える」とコメントしながらも、プロのスカウトの話として、「同じショートのドラフト候補、京田(中日2位)と比較して脚力で劣る分、捕球体勢に遅れが出て、それがスローイングのミスにつながる。自在と華やかさで吉川、堅実さと強肩で京田、各球団のニーズで評価が変わる」このように話しています。また、「野球太郎ドラフト総決算号」では吉川の守備のことを「現状良くも悪くも“我流”、高校時代に一定の基本は身についたが、“プロ野球の遊撃手”としてはまだ粗い」と評しています。さらに、某セ・リーグ球団スカウトの話として、華麗なランニングスローで魅了する一方、「スローイングでしっかりとトップがつくれていない」と紹介しています。この吉川のスローイングについては安倍さんも「野球人」の中で心配しています。
走塁については、2大学年の春から3季連続で盗塁王を獲得しているそうですが、隙あらば常に次の塁を狙って行く積極果敢さが評価をされているそうです。楽天の山田スカウトは吉川の走塁を目撃して「オコエ(瑠偉)のようだ」と話していたそうです。
打撃については「広角に打ち分ける」とか「バットコントロールに優れている」といった感じで各紙で評価されています。4年春までの過去7シーズンで打率4割超を3度マークしており、2年春にリーグ戦で4割3分9厘で首位打者、昨年も首位打者で4割9分と打ちまくったのだとか。通算打率は3割7分に達しているそうです。どうやらアベレージヒッターとしての資質を評価さえている感じです。とは言え、単打ばかりのアヘ単かというとそうでもなく、昨秋はリーグ戦でトップの2本塁打だそうです。中日の中田スカウトは「春までは打てていなかった内角を意識して、しっかり打てるようになった」と成長を認めていたそうです。ちなみに昨年 の8月24日に吉川は東海地区の大学の選抜チームの一員として出場し、ペレスからタイムリー三塁打を放っています。
これらのことをまとめてみると、吉川というのはプレーにスピード感があり、華がある。守備において広い守備範囲を誇るものの、時として積極性が裏目に出る。走塁は状況判断に優れ果敢に次の塁を狙って行く。打撃は左右に打ち分けバットコントロールに優れてたアベレージタイプ。長打力もここに来て身に付いている。こんな感じではないかと思います。
先輩の広島・菊池との比較ですが、中京学院大の近藤監督の話によると「肉体的な強さは菊池の方が上でしたが、打撃の確実性や守備などプレーそのものは吉川が優っている」そうです。通算安打数は菊池の106に対し、吉川は大きく上回る131です。しかし、本塁打は菊池の10本に対し、吉川は3本と大きく劣っている。両者は似ているようで、どうもタイプは違うのでしょう。
様々な資料を読み漁った限り吉川という選手を一言で形容すると「天才性」だということです。きっちりと積み上げた鍛錬の成果を具現化したプレーをするのではなく、持って生まれた天性でプレーをするタイプ。それは様々な場面でチームを救うことになるでしょう。しかし、うっかりミスでチームを窮地に落とし入れることもあるかもしれない。そういったことを含めてこの選手は華があるということなのだと思います。私は坂本の若い頃のことを思い出します。坂本は二岡に比べれば肩の力が劣ったものの、二岡にはない素晴らしい守備範囲と積極性がありました。華のあるプレーだったのです。ミスをしてもその華をファンは愛したのでした。私は吉川にもそんな愛される選手になって欲しいと思います。
最後に、このように評価も高く、華もあり、楽しみな存在ではありますが、1年目はかなり苦労をすると思います。技能もさることながら吉川は体力面でまだまだ発展途上だという記事が数多く見受けられるのです。大学日本選手権以降、休み暇もなく、色々な大会や混成チームで戦ったことで、夏場以降、精彩を欠いた時期があったようですし、そのために、軽いケガまでしている。そう言った意味からすると吉川は本当の意味での即戦力の選手ではないのでしょう。吉川よりも同時期比では体が出来上がっており、フィジカル面で優れていたと評される先輩の菊池でさえルーキー時は63試合しか出場しておらず、打率も.229とパッとしたものではありませんでした。しかし、その苦労を乗り越えて2年目以降は毎年140試合以上出場できるようになったのです。吉川は本格化するのに、もう少し時間がかかるかもしれない。本当のレギュラー定着は順調に行って3年目かな。吉川がモノになるかどうかは、その辺りのことチームが理解し、いかに我慢できるかどうかにかかわっているような気がします。
ドラフト2位 畠世周の各誌寸評
野球太郎(ドラフト直前大特集号)総合評価:B+(◎)
・どんな選手?/長身から投げ下ろすストレートの威力は大学球界でもトップクラス。打線の援護がなく全国にたどり着けずにいるが、昨秋には3試合連続完封を達成するなど近畿大のエースとして実績十分。即戦力としても十分期待できるが、まだまだ伸びしろも感じる大器だ。
・プロでの成功イメージ/150キロに迫る、独特の球筋のストレートと、見分けのつきにくい変化球を低めに集めて凡打を量産する。変化球をうまく活かせるようになり、打者との駆け引きが上達すれば恐ろしい投手になるだろう。上手く育てばチームのエースになれる投手だ。
・推薦したいチーム/使いながら育てる余裕のあるチーム
・プレーヤータイプ/武田翔太(ソフトバンク)
アマチュア野球(ドラフト2016)評価:BA
近畿を代表する大型右腕。伸びやかなフォームから140キロ代後半のストレートと鋭く落ちるフォークを投げ込む。春は打線の援護に恵まれず1勝に終わったが、リーグトップの78奪三振、防御率3位と結果を残した。
週刊ベースボール(2016ドラフト大展望)評価:なし
寸評なし
野球人 評価:なし
・4年間の歩み/昨秋のリーグ戦で完投6回の4完封。ここで一気に素質開花を思わせたが、今秋はシーズン途中で右ヒジ痛を発症。戦列を離れた。夏のオープン戦では150キロ台に乗せたという。これだけのサイズを持ったオーバーハンドにしては投球時のボディーバランスがいいし、左足が真っすぐ踏み込めてコントロールも安定しており、好素材と期待していたが…。変化球もカーブとスライダーくらいか。〈新兵器〉を覚えれば、ピッチングの幅も奥行きももっと広がる投手だ。〈大器晩成〉の典型とみる。
・進路相談 待った/〈ネズミ〉はいっそクリーニングしてしまったほうが…という考えもある。昨秋にポン!ときたが、長い期間奮闘できていたわけでもなく、ここは「ヒジを直しながらもっと勉強しなさい」という〈天の声〉と考えたほうが自然だと思うが。
日刊スポーツ 評価:B
最速150キロを超える直球と抜群のコントロール。3年秋にはリーグタイとなる3戦連続完封勝利を挙げた。
スポニチ 評価:B
3年秋にリーグタイ記録の3試合連続完封。最速152キロを誇る本格派
報知 評価:前頭4
高校までは無名だが、大学で急成長。大学生投手では関西最速の152キロ右腕
サンスポ 評価:B
大きな潜在能力を秘めた長身右腕
デイリー 評価:B
しなやかなフォームから繰り出される最速152キロの直球は威力十分。今秋は右肘痛に悩まされたが、潜在能力は大学生でもトップクラスだ。
トーチュウ 評価:B
しなやかなフォームから繰り出される最速152キロの直球は威力十分。今秋は右肘痛に悩まされたが、潜在能力は大学生でもトップクラス
週刊ベースボール(2015ドラフト総決算号)
50メートル5秒7の快速だけでなく、高い身体能力を誇る三拍子揃った大学球界No.1内野手。
野球太郎(ドラフト総決算&2016大展望号)150キロよりも投球術に注目
・どんな選手?/まだまだ成長段階でプロ入りを迎えた。186センチの長身から150キロのイメージの一方で、本人のこだわりは緩急や打者心理を見越した投球。独特の野球感を持ち、大学で目覚めた遅咲きタイプ。先の姿を想像させない。
・未来予想図/右ヒジのネズミは今オフ手術の可能性も。体の状態を整え、急ぐことなく大らかに育ってほしい。適正も経験も積みながら見えてくるだろうが、先発、救援もこなす、岩嵜翔(ソフトバンク)のようなイメージも。
このドラフトにおいて巨人の最大の課題は即戦力投手の獲得でした。1位は内野手の吉川、2位でようやくこの畠を獲得したのです。しかし、この指名は評価の分かれるものだと思います。ドラフト前の秋季リーグでヒジを痛め、登板できなかったことがその大きな理由です。ただ、もしもヒジをケガしていなかったとしても、2位指名というのはやや過大評価だったように思います。実はこの畠も吉川同様に本当の意味での即戦力ではなく、まだまだ発展途上にある投手だったように思えるからなのです。
畠という投手のレポートを読み進めて行くと、まずヒットする言葉は「最速152キロ」というワードです。また、「しなやか」や「ボディーバランスが良い」ということも特長のようです。すると186センチの長身を生かした奪三振型の速球派投手のように思えるのですが、どうもそうではなく、打者のバットの芯を外し、打たせて取るタイプのよう。尊敬する投手として桑田真澄を挙げ「タイミングをずらす投球が好き」なのだそうだ。また、投球の理想として「打者にスイングさせないこと」を掲げているそうです。こういった、ただ何も考えずにに投球するのではなく、自分の投球のスタイルを模索しながら投球しているという点は好感が持てます。高校時時代から騒がれ、才能だけで来た投手と違い、畠は無名の高校時代から、考えてここまで来た投手なのです。考えられるというのも才能だと私は思います。その他の優れた点として、ベースボールチャンネルでは「細身ながら手足が長くリリースポイントが見にくいため、打者からすると打ちづらさを感じる」と紹介しています。
特記事項としては3年秋のリーグ戦で6試合4完封を成し遂げたこと。昨年の3月8日に阪神との練習試合に先発登板し、5回を3安打1四球無失点に抑えている。この時は鳴尾浜球場で最速148キロ、ほとんどのストレートが144キロ〜146キロだったそうです。当時の2chの阪神ドラフトスレには「1位は畠で良い」なんてのもありました。また、昨年の8月23日の日本新薬戦でノーヒットノーランを、同月26日のNTT西日本戦で自己最速の152キロを記録したことなどがあります。
畠の問題点としては、ストレートのコントロールは自信があるものの、変化球の精度が悪く、なかなか自分の投球を律することができないようです。小関さんは「投球の動作に無駄が多く、テイクバックで体が沈み込み、右肩も下がるので抜けるボールも少なくない」とテクニカルな問題点を指摘しています。また、メンタル面も心配されている記事が散見し、「優しすぎる」だの「気持ちが見えてこない」など言われています。そういったことが能力の割になかなか勝ち星に恵まれなかった理由なのかもしれません。大学の通算成績は13勝13敗、これは昨年1位の桜井の28勝8敗に比べればかなり見劣りするものです。
畠はドラフト後、ヒジの手術をし、遊離軟骨を除去したそうです。このことで一部新聞が問題視していますが、これは巨人のスカウト陣にしてみたら想定内のことだったと思います。「野球人」で安倍さんが話している通り、思い切って手術をしてしまった方が、後々良いと私も思います。もしかしたら、開幕には間に合わないかもしれませんが、GW明けには登板できるのではないかと思います。
そういった手術の話以前に、私が最も疑問に思ったのがこの畠の2位指名でした。私は畠という投手がすぐにでも使える本当の意味の即戦力投手ということなら、この指名は致し方なかったのではないかと思います。しかし、どうもまだまだ発展途上の投手で、育成の必要があるという評価を考える限り、2位指名は何も大学生にこだわる必要はなかったのではないかという思いに駆られるのです。堤GMは高校生の指名をあまりやりたがらない人のような気がしますが、大学社会人だから即戦力、高校生だから育成、という固定観念めいた考えは捨てた方が良いように思える。畠のケガが癒え、本格化するより前に、戦力になる高校生投手が何人もいる気がします。
最後に、畠の今後のことを考えると、今シーズンの一軍登板は楽天に移籍した小山と同程度と思え、3試合程度と思います。ゆくゆく上手く本格化してくれれば、先発タイプとしてローテの一角を占めていることでしょう。それも早くて3年先のような気がします。
ドラフト3位 谷岡龍平の各誌寸評
野球太郎(ドラフト直前大特集号)総合評価:C+(◯)
・どんな選手?/高卒2年目から名門のエースになり、3年目の今年はワンランク成長。飛び抜けてすごいボールはないのに、いい意味で相手を見下ろして投げている。130キロ台のタテスライダー、フォークのタテ変化が主体だったところに、同じ球速でツーシームを覚えて、投球の幅が広がった。股関節がほぐれたら、球質アップも。
・プロでの成功イメージ/狭い球速帯を逆手に取って、相手を惑わす。度胸のよさも含めて中継ぎ向き。
・プレーヤータイプ/横山弘樹(広島)
アマチュア野球(ドラフト2016)評価:A
高校卒ながら早くから主戦として活躍。下半身主導のフォームは安定感があり、両サイドを突く投球でしっかりと試合を作る。都市対抗でも初戦で敗れたものの7回途中で自責点0と見事な投球を見せた。
週刊ベースボール(2016ドラフト大展望)評価:前頭9
テンポの良い頭脳派右腕/ヒジの使い方がしなやかであり、中日の“浅尾拓也二世”との声も聞かれる。成立学園高では2年生エースとして創部87年で春夏通じ初の甲子園へ導き、東海大甲府高との1回戦は1時間16分と1960年以降で最短ゲーム。つまりテンポの良さと、打者との駆け引きに優れる。
野球人 評価:なし
・3年間の歩み/2年目の昨季、都市対抗予選で150キロをマークして完封。都市対抗本戦でも6回まで試合を作ってみせた。周囲の見通しより早い成長カーブだったのではないか。大きな期待を背負った今季は、やはり都市対抗でオッといわせる快投をやってのけながら、その前後の公式戦ではなかなか結果が出なかったという。フォークという絶対的な武器はある。大舞台でもコンスタントに145キロ前後をマークしながら、70%前後のコントロール率で投げ進める技術。順調に成長している。
・進路指導 待った/強豪相手にもひるまず向かっていく勝負根性は間違いない。この先はそれをセルフコントロールできて、コンスタントな実戦力につなげられる〈人としての力〉が欲しい。〈東芝のエース〉の看板を背負ってのプロ入りなら、あと1年学習を。
日刊スポーツ 評価:B
最速150キロの直球とテンポの良さ売りの本格派右腕。高校時代に2年生エースとして母校を春夏通じて初の甲子園出場に導いた。
スポニチ 評価:B
社会人3年間で着実に成長。最速150キロを超える直球軸にローテ入り
報知 評価:前頭12
投げっぷりの良さが魅力の150キロ右腕。球威ある速球とフォークで1年目から期待
サンスポ 評価:B
最速150キロを誇る抑え適正抜群の本格派
デイリー 評価:B
しっかりタメをつくって最速150キロを投げる本格派。状況に応じて変化を微調整できるフォークが自慢。中学時代までは捕手で伸びしろも十分。
トーチュウ 評価:A
しっかりタメをつくって最速150キロを投げる本格派。状況に応じて変化を微調整できるフォークが自慢。中学時代までは捕手で伸びしろも十分
週刊ベースボール(2015ドラフト総決算号)
社会人でもまれた即戦力。特筆すべきは腕の振りの良さでスライダーのキレで空振りを奪う。
野球太郎(ドラフト総決算&2016大展望号)ふてぶてしさが威力の竜平
・どんな選手?/高卒2年目で制球のコツをつかみ、150キロは出るけど暴れ放題だった1年目から見違えるほど、試合をまとめられるようになった。不敵な表情、落ち着いたマウンド捌きに、フォーク、タテのスライダーに左の外側に沈むツーシームと、タテ系の変化で勝負する。
・未来予想図/横山弘樹(広島)のように硬さで投げるタイプ。年間を通して調子を維持できるかは疑問符がつくが、リリーフで勝負度胸を発揮してくれたら。手薄な右の中継ぎに食い込め。
今回のドラフトで今シーズンに最も直結した指名を挙げるとしたら、この3位指名の谷岡と4位指名の池田ではないかと思います。安倍さんはもう1年待った方が良いようなコメントを書いていますが、十分プロで戦えるだけの武器は手にした投手のような気がします。高卒3年目と、数々のコメントを並べてみると、正に伸び盛りと言った感じの投手ではないかと思います。
谷岡の特長を挙げて行くと、まず「150キロを超えるストレート」というもう文字が目立ちます。その他に「フォークが良い」といったものや、「ヒジの使い方が良い」「下半身主導の安定した投球フォーム」というものもあります。どれも谷岡という投手の本当のところなのでしょう。動画も見てみると、投げる時に若干踏み出した足でタメをつくってから投げ下ろすスタイルです。これは広島に移籍した一岡と近いイメージを抱かせるものです。小関さんはドラフト中継の時のコメントで「球も速いことは速いですけど、コントロールが良いですよね。変化球も一通り持ってまして」と話しています。
谷岡は高校2年の時に甲子園出場を果たしていますが、その頃は投球練習を週に一度やったかやらないかという感じで、そこまで本気で野球に打ち込んでいた訳ではなかったようです。その後、プロ志望届は出さずに社会人入り。1年目でいきなり150キロをマークしたものの、その頃は連投が効かず、投球が不安定。そこから2年目、3年目と経験を積みたびにステップアップしてきた感じです。以前は体力的にも余裕がなかったのか、ただ投げるためだけの存在だったのが、ここに来て打者との駆け引きができるようになってきた様子。目下の課題は「直球をいかに低めに集められるか」だったようです。
このように伸びしろたっぷりでこれからが楽しみな投手ですが、マイナス面を挙げて行くと、まず実績が少ないこと。今まで順調に来ているものの、絶対に戦力になると信じて良い投球をしたことはさほど多くなかった感じです。これから先が読めない投手というものは楽しみはあるものの、反面リスクもあるでしょう。もしかしたら、この時点がピークかもしれない。次に懸念されることは、まだまだ自分を制御できていないと評されていることです。これも経験を積むことで成長を期待できることですが、現時点ではまだまだ物足りないというのがプロの評価のようです。
私は最終的に谷岡は先発でも行ける投手のような気がしますが、今シーズンに関しては中継ぎのコマとして使われるのではないかと思います。10試合・15イニング位は投げてくれるのではないかと期待しています。行く行くは入来祐作のような気持ちを前面に出す投手になってくれたらと思います。
ドラフト4位 池田駿の各誌寸評
野球太郎(ドラフト直前大特集号)総合評価:B(◯)
・どんな選手?/躍動感たっぷりのフォームが魅力の最速148キロ左腕。今年の2都市対抗予選では2試合で完封し、チームを本大会に導く。常時140キロ中盤の速球は打者に恐怖を与える威力。同じ腕の振りから外角に沈むチェンジアップも有効だ。
・プロでの成功イメージ/ストライクとボールがハッキリする時もあるが、ハマった時は手がつけられない。1年目からいけるところまで先発で突っ走りたい。
・プレーヤータイプ/高橋朋己(西武)
アマチュア野球(ドラフト2016)評価:B
社会人で急成長の左腕。上背はないが高い位置から鋭く腕が振れ、ボールの角度は申し分ない。腕を振って投げられるスライダー、チェンジアップも一級品。チームでは先発だがリリーフとしても面白いタイプだ。
野球人 評価:なし
速球と同じ勢いで振れる腕の振りからチェンジアップをピンチには執拗に続け三振を
日刊スポーツ 評価:なし
小柄ながら全身を大きく使い勢いのある球を投げ込む。フォーム改善と持久力アップの結果、完投できるスタミナも獲得
スポニチ 評価:B
最速148キロの直球を軸に打者をねじ伏せる。チェンジアップは落差大
報知 評価:なし
最速148キロの速球とスライダーで攻めるスリークォーター左腕
サンスポ 評価:B
躍動感のあるフォームから力強い投球をみせる
デイリー 評価:C
即戦力左腕。スピンの利いた真っすぐは最速148キロを計測する。制球面にやや不安も、はまれば手がつけられない投球を見せる。
トーチュウ 評価:B
即戦力左腕。スピンの利いた真っすぐは最速148キロを計測する。制球面にやや不安も、はまれば手がつけられない投球を見せる
週刊ベースボール(2015ドラフト総決算号)
常時140キロ代後半の左腕。同じ腕の振りからスライダー、チェンジアップの投げ分けが可能。
野球太郎(ドラフト総決算&2016大展望号) 鋭い腕の振りと強烈な速球
・どんな選手?/猛烈な腕の振りから勢いのあるボールを投げ込む快速左腕。高校時代はエースとして甲子園ベスト8。専修大では2年時に左ヒジを故障するも。ヤマハ入社後にブレイク。今秋の日本選手権ではMVPを獲得した。最速148キロのストレートに加え、腕の振りが変わらないスライダー、チェンジアップも武器だ。
・未来予想図/的が絞りづらい投手。短いイニングよりも、先発の方が力を発揮できるのでは。数年後に2ケタ勝てる投手になりたい。
巨人が課題としていたことに山口に代わるリリーフ左腕の補強がありました。この池田の指名はそういった狙いがあったものでしょう。社会人で急成長したということで活躍を始めてからの実績が浅いことで4位という順位だったのでしょうが、指名としては悪くないと思います。ドラフト後の日本選手権で快投しMVPを獲得したのですが、それがドラフト前だったら指名順位がもう1つ上だったかもしれません。3位指名された谷岡と並んで、今シーズンすぐに戦力になる存在だと思います。
池田を形容する言葉で最も多い言葉は「躍動感たっぷりのフォーム」というものです。上背は173センチとも174センチも表記され、小柄な方なのですが、マウンド上では大きく見えるそうです。そのあたりのことは本人も意識していて「躍動感は自分の個性なので消したくない」と話しています。どうやらこの体を大きく使った投球フォームは大学卒業後、社会人になってから取り組んだもののようで、大学4年時は不調で130キロ台しか球速が出ていなかったものを、ヤマハのコーチのアドバイスで活路が開けた感じです。
池田を語るもう一つのキーワド「ハマれば手がつけられない」というのは何なのでしょう。これは良い時と悪い時の投球がはっきりしているからのようです。昨年夏の都市対抗野球の予選では3勝0敗、その内2試合が完封で優秀選手賞を獲得。正に「ハマった」投球をしたのでした。しかし、7月の都市対抗の本選では球場の雰囲気に呑まれたのか制球に苦しみ1勝1敗、2試合8回1/3イニングで6失点と冴えないものでした。そうかと思うと、今度は11月の日本選手権で3試合登板で2勝を挙げる快投をしMVP。この時は3試合19回2/3で失点5というものだったそうです。球威はありますし、一通りの武器は持っている。球種によって投球フォームが違ってくることもない。こういった長所が噛み合えば、ハマる=戦力になる投手なのでしょう。しかし、コンディションが悪いなり、集中力が覚束ないなどの何らかの理由でつまずくと、制球を乱し自分の投球ができない。要するに送り出してみなければ分からない投手というのが池田なのだと思います。
本人は杉内を目標に掲げているようですが、私にはどうも同い年(学年は1つ上)の公文とダブって仕方ありません。先発タイプのように書いてあるレポートが多いものの、球団としては日ハムに移籍した公文の後釜のリリーフ左腕として、戸根あたりと競わせるつもりなのではないかと思います。成功のカギはいかにハマった投球をできるかどうかなのでしょうが、おそらく使っていく上で何度かの失敗があると思います。しかしこの手の投手は、使う側の心構えで生きもし死にもするタイプの投手だと思われ、「パーフェクトを求めず、失敗してもそれを持って余りある結果を出せば良い」という寛容さで登板の機会を与え続けるべきだと思います。
今シーズンの活躍予想としては谷岡と同様、10試合・15イニング程度ではないかと思います。リリーフで自信を持って山口の後継者になってくれたらと思いますが、田口と並んで先発として競い合って欲しい気もします。
さて、今回はここまで、次回は高田からですが、モタモタしていたらキャンプインですね。なんとかそれまでにはまとめ上げてしまわないと。老眼がキツくなり資料を漁るのが大変ですがもう少しなので頑張ります。では、次回も乞うご期待!
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