今年のルーキーたちについて2011 (3) 田中太一

  • 舎人
    2011年12月04日 03:18 visibility1418















































































ルーキーたちの話の3回目です。今日はドラフト3位入団の田中太一について話してみたいと思います。

田中はスリークオーターから150キロ近いストレートを投げる本格派投手です。高校時代から全国的に名前の通った逸材だということで注目されていましたが、三年次にヒジを故障し、最後の夏は甲子園出場を決めたものの、なかなか思った通りの投球ができなかったとか。この3年次の故障という点は宮國も同じであり、巨人としては調査の結果、大丈夫と判断をして指名に踏み切ったのでしょう。ドラフト時の野球小僧では田中のことをこんな風に紹介しています。

田中太一
当面のライバル:笠原将生 未来予想図:金子千尋(オリックス)
どんな投手?:ヒジ痛を気遣いながら投げていた今夏の甲子園でも、初球144キロ。しかも、打者に向かってせり上がっていくような球筋には、この投手の豊かな潜在能力を感じさせた。一度ホップするように見えてから急激落下する個性的なカーブも三振を奪える変化。ボールの質がプロ仕様だ。
育成ポイント:すでに上質の2つの球種に何かもう1種。三振を奪える要素と気性で投げるタイプだけに勝利の方程式の一員候補に。

この選手評の通り、田中のストレートは伸びとキレが同居した一級品だと思います。しかし、もう1つの特長である太一カーブは、どうも魔球と呼ぶにはおこがましい感じのものだった気がします。これはカーブなのか?前々からこれはスラーブではないかと言われていましたが、どうやら縦変化のスライダー(Bスライダー)がその正体のようでした。最新号の月刊ジャイアンツにそのあたりの話が出ていて、本人によるとあれは高校の時の先生がカーブだと名付けたのだが、実はただのスライダーだと話しています。周りも今では“太一カーブ”とは呼ばずに“太一ボール”と呼んでいるそうです。正体は何であれ、打者に武器になるものならいいのですが、私が見た限り田中はこの特徴的なスライダーを使いこなすまでに至っていなかったのではないかと思います。低めに外れてボールになったり、いいコースに決まったものは見逃されたり、ファールになったりしています。空振りを奪うための球というよりもただのアクセントだったのが私の見た“太一カーブ”でした。

田中も宮國と同様にプロ入り後、実戦登板をせずにひたすら体力アップを図るための日々を過ごしました。来る日も来る日もウエイトトレーニングをして、食べて走っての繰り返しだったそうです。そのおかげで、田中は宮國よりも体の大きくなり方が顕著で、プロ入りの時に作ったスーツが合わなくなってしまったとか。特に下半身が目に見えて大きくなったとのことでした。

プロ初登板は宮國と同じ6月5日のプロアマ交流戦でした。先発の宮國に代わって2番手として登板しました。先頭バッターのバットを折り、力のないゴロに打ち取るものの、その打球がサードベースに当たり不運なヒットを許してしまいます。すると次のバッターのバットも先頭バッターと同じく折るものの、今度は打球が詰まりながらライト前に落ちヒットにされてしまいます。その次のバッターはただの送りバントを大田がもたつき内野安打です。なんだか田中にしてみれば訳の分からないままにノーアウト満塁のピンチを迎えてしまった感じでした。結局、このイニング24球を要し4失点、次の回も1失点でこの日2イニングで7安打5失点、ホロ苦いプロ初登板になりました。全37球のうち変化球は9球だけ、28球がストレートでした。そのストレートは145キロを6度も記録し、素晴らしいパワーピッチャーとしての側面を見せましたが、体の開きが早く高めに抜け気味のストレートは打者にとっては球速ほどの脅威ではなかったようでした。しかし、師匠の小谷コーチは「太一は打たれても逃げずにストライクを投げ込めていた。結果はどうであれ合格だ」とほめていたそうです。そのとおり、制球はそれほど良いとは言えない田中ですが、この日の四球は0、打者13人に対しボールスリー以上にしたのも1度だけでした。ほとんどがどんどんストライクゾーンに投げ込まれる強気のストレートを早いカウントから狙い打たれたための被安打でした。野球小僧の選手評のように気性で投げる、強気の田中の投球がスタートした感じでした。奇しくもプロ初実戦の初球も昨夏の甲子園の初球と同じ144キロのストレートでした。

その後、田中は第2ニ軍を中心に1〜2週にいっぺんのペースで登板をすることになりますが、毎試合のように失点を重ねていました。小谷コーチは「結果は関係ない。マウンドさばき、投手としてのセンスを伸ばす時期だ」と話していたそうですが、田中は登板したからには結果を出したい。0に抑えたいという気持ちがはやったようでした。その向上心が結果につながったのか、登板するたびに田中の失点は減っていった感じでした。そして8月27日のロッテ戦でついにイースタンの公式戦で初登板を果たします。2対3と1点ビハインドの7回表でした。打者2人を簡単に打ち取ると角に外角ストレートを二塁打されてしまいます。しかし、続く高濱をショートゴロに打ち取って無失点で降板しました。ストレートの最速は144キロと、プロ入り後の最速148キロに比べると抑え気味でしたが、球質は6月の頃に比べると良くなってきている感じでした。

「木村コーチに、とにかく思い切って投げてこいと、と言われてマウンドに行って、それはできたと思います。プロのバッターということは意識しにようにしていましたが、ストレートは簡単に弾き返されてしまった。やっぱり違うなと思いました」

降板後、このように話す田中でしたが、手応えを感じたことも確かだったと思います。そして、9月12日、今度はイースタンで初先発のマウンドに上がります。結果は三回まではランナーを許しても散発の無失点に抑えていたものの、打者一巡した4回から急に打たれ始め、5安打を集中され4失点を喫してしまいました。球種が少なく、どうしても配球が単調になりがちなのでしょう。降板後、本人は「(プロ入り初の)4回だったが、疲れはなかった。抑えるべき場面で抑えられなくて悔しい」と話していました。気丈に疲れの影響を否定していますが、間違いなく投球回が増えたことによる疲れはあったことと思います。
















































































イースタンの公式戦を宮國は4試合19イニングで防御率0.00、3勝0敗という結果でしたが、田中は3試合6イニングで4.50、0勝1敗という結果でした。これは東野のルーキー時よりも上ですし、最近では齋藤と同程度、笠原や宮本よりも上でした。大切に育てられたので登板数は少ないものの、もしもシーズン序盤からイースタンで投げていればイースタンでルーキーとして6勝を挙げた西村や平岡並の成績になったのではないかと思います。

田中の欠点を考えると投球フォームにおいて体の開きが早く、球の出所が打者にとって見やすいという点があるようです。G+で解説していた宮本さんは、踏み出す方の足を工夫すれば、打者にとって球の出所が見辛くなりもっと結果が出るようになるだろうと話していました。その他の課題としては、球種の少なさとスタミナ不足です。田中は先発として7試合、リリーフとして12試合ほど投げましたが、先発よりもリリーフの方が断然結果を残しています。

先発   07試合 27回1/3 自責点22 防御率7.24
リリーフ 12試合 21回1/3 自責点08 防御率3.38

こと8月以降に関してリリーフでの登板は8試合13回1/3を投げて自責点1(防御率0.68)という成績なのです。先発で結果が出せず、リリーフなら結果が出ると言うことは、ストレートの威力に相反して、球種の少なさとスタミナ不足が原因ではないか?もちろん技術的な面だけではなく、メンタル面での理由もあると思いますが、田中がどういった投手であるかということが分かる傾向だと思います。
















































































田中や宮国たちの面倒をみている玉木コーチによると、「田中は細かいコントロールはなく、球の勢いで勝負するタイプの投手。高めに浮くことを減らし、変化球とのコンビネーションを大事にして欲しい」と話しています。本人は「投球以外の動作が鈍く、牽制やクイックなどに課題がある」と自己分析しています。さらに球種を増やすために「フォークボールを覚えたい」とのことです。

私は将来の田中を予想すると、抑えもしくはセットアッパーとして活躍している姿を想像してしまいます。常時150キロ前後のストレートでグイグイ押す豪腕リリーバーです。キレを威力を増したストレートとそれによって有効となった“太一ボール”、そして、新球のフォークでバッタバッタと三振の山を築いて欲しいと思います。先発の宮國が七回八回まで投げて、田中が最後を抑えるような展開になったら本当に最高です。そうなるためには最低、後2年はファームで漬け込まないといけないと思います。根市や平岡のようにケガをすると、ことと次第によっては一気にパフォーマンスが落ちて全てが台無しになってしまうタイプの投手です。今シーズンのような大事な育成を来シーズンも望みたいと思います。

田中太一 プロ初登板 2011年6月5日
田中太一 プロ実戦登板2試合目 2011年6月12日
田中太一 プロ実戦登板3試合目 2011年6月26日
田中太一 プロ実戦登板4試合目 2011年7月3日
田中太一イースタンリーグ初登板 2011年8月27日

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