
ルーキー高木勇人プロ初完投初完封!若者は突然変身する 首脳陣やフロントはその兆しを見逃してはならない!
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舎人
2015年04月06日 06:43 visibility1552
2週続けてルーキーの高木が大きな仕事をやってのけました。びっくりのプロ初完封劇です。多彩な変化球と、内角を堂々と突くピッチングは最後まで変わる事無く、阪神打線を抑え込みました。2安打、三塁を踏ませないピッチングだったのです。前回のDeNA戦よりも変化球が多く、ストレートがやや少なかった印象です。その変化球もこの試合では100キロ前後のカーブが多く、その分ツーシーム(シュート)系の球が少ない感じ。しかし、どの変化球でも簡単にストライクが取れており、ボール先行でも、決して追い込まれたような印象は受けません。抜群の安定感だったと思います。
ヒーローインタビューでは自分の特長を聞かれて「僕は僕です!」と、この先の代名詞になるような明言を吐きました。自分を見失わずに投球する事が自分の信条であると言いたかったのでしょう。そのあたりのことは、試合後の原監督も褒めていて「自分を信じて疑わずに投球できていた」と評価していました。
これで前回の登板が決してまぐれではなかったことが証明された訳です。多彩な変化球に、150キロ近いストレート、このストレートも解説の水野さんによると、数ミリ変化させているようです。この引き出しの多さは久保や菅野、はたまたダルビッシュに通じるもので、本格技巧という貴重な系譜の投手なのだと思います。今後は相手も慣れてくるでしょうから、ここまで上手く行くとは限りません。したがって、それを克服するためには、相手が自分の事を研究する以上に、相手の事を研究しないといけません。また、高木の球はどれも標準以上の質を持っていると思いますが、カットボール以外は概ね70〜80点といった感じ。これを少しずつさらに質の高いものにしていく必要があると思います。特にフォークを磨き研究すれば、もっと楽に投球できる気がします。
高木はいわゆるオールドルーキーです。ドラフトの対象に6度も成りながら、今までスルーされて来たのです。こんな良い投手がどうして今まで見向きもされなかったのでしょう。ドラフトの後の日記で高木のドラフト時の評価を調べてみた事がありました。
高木勇人年度別ドラフト評価
2007年
野球小僧 なし
アマ野球 C
2010年
野球小僧 ◯ 主審が怖がる140キロ台の速球とカウント球にも使うフォークでJR東日本を完封し今季急上昇
アマ野球 B
2011年
野球小僧 △ 力感とラフさ。対極の長所と課題。140キロ台の速球、スライダー、フォーク。持ち球優秀
アマ野球 C
2012年
野球太郎 なし
アマ野球 C
2013年
野球太郎 なし
アマ野球 なし
高木の評価とは、高校時代は「アマチュア野球」誌でC評価をされているだけで、寸評すらないその他大勢の投手の1人だったようです。それがドラフト解禁となる社会人3年目で、球威とフォークの使い手として注目され、ドラフト中位〜下位でなら指名があり得る存在になったようです。おそらくこの頃は力投型で、広島に行った小野淳のような投手だった事が想像されます。しかし、その後は、荒っぽい投球スタイルが嫌われたのか、徐々に評価を下げて行っています。そして一昨年のドラフトでは「アマチュア野球」でも「野球太郎」でもリストから外しており、どうやらドラフトの対象とはみなされなかったようです。それが昨年の社会人野球で結果を残した事で注目され、再びドラフトの対象となった。
高木勇人2014年ドラフト評価
野球太郎 ◯
アマチュア野球 B
日刊スポーツ B
スポニチ B
報知 評価なし
サンスポ 評価なし
デイリー A
トーチュウ B
野球太郎(◎→◯→△→なし)
アマ野球(AA→A→BA→B→C→なし)
日刊スポ(特A→A→B→C→なし)
スポニチ(A→B→C→なし)
報知(横綱→大関→関脇→小結→前頭1~15→なし)
サンスポ(A→B→C→なし)
デイリー(特A→A→B→C→なし)
トーチュウ(A→B→C→なし)
デイリーが高い評価をしていますが、それ以外はドラフト中位以下の評価、報知とサンスポに至っては、依然としてドラフトの対象として扱っていません。おそらく高木がここまで評価されなかった理由としては、年齢がどうしても行っていた事で、指名する選手としては旬を過ぎた印象があったことと、一度付いてしまった印象で、悪かった時の印象をマイナスされてしまったのではないかと思います。
高木の事を昔から知る小関(順二)さんによると、「高木は21歳だった2010年から名前が知られていたドラフト候補の常連で、当時からボールの速さが評価されていた。しかし、成長途中では投球フォームがもっさりとしていて、ストレートも評判になるほど速くはなかった。2013年の都市対抗では小さく落ちる123、4キロのスライダーと100キロ台前半で真縦に落ちるカーブの方が良い投手に思えた。それが体作りが進みフォームが安定した2014年では、ストレートが安定して速くなり、最速で147、148キロが毎試合計測されるようになった」(2015年版プロ野球問題だらけの12球団参照)小関さんはちょうど良いタイミングでプロ入りしたと評価していますが、まさかここまで活躍するとは思っていなかったのではないかと思います。
安倍さんに至ってはもっと評価が低い感じで、「かつての高木はスピードを上げたくて、上体だけの力任せの投球で、高めの球を痛打されていた。それが昨年は低めに球を集めることで、元々鋭い変化を持っていたスライダー、フォークの緩急で勝てる投手になった。このスタイルさえ崩さなければ、中継ぎでも困った時の先発でも働けるだろう。ただし、あくまでも昨年のスタイルを崩さなければ・・」(野球人Vol.3参照)安倍さんは昨年の高木の投球を認めながらも、それはたまたま一過性の可能性もあるし、もう一巡下で指名できたのではないかと話しています。
高木の指名に関しては昨年六月の都市対抗野球予選で山下スカウト部長が指名を決めたという話ですが、最初は担当スカウトから「5位指名でも獲得できますから」と説明を受けていたとのこと。それが他球団との駆け引き上、3位に繰り上げて指名する事になった。したがって3位指名ではあるけれど、巨人も実際は4位以下の評価ではなかったかと思います。
こういった年齢の行った投手で最近成功した例としてはソフトバンクの摂津の名前が浮かびます。高校卒業後社会人で投げ続け、25歳で指名を受けた摂津の経緯は高木のそれによく似ています。摂津は今や4億円プレーヤーとなり、球界を代表する投手となった訳ですが、入団時の評価は5位と高木よりもさらに低いものでした。私が思うに、こういった選手が評価を覆して活躍した理由は、その選手に何かエポックメーキング的な出来事があり、それをキッカケにして突然道が開けたのではないか。それが摂津の場合はテイクバックの小さな投球フォームだったのかもしれない。高木の場合も、小関さんの言う体力アップかもしれないし、安倍さんの言う低めへの意識だったかもしれません。
高木や摂津のようなオールドルーキーは球団にとってすぐに使える点で非常にありがたい存在です。だから高木の成功によって今後球団は年齢は行っていても使えそうな選手の獲得に積極的になるかもしれません。良い選手ならそれもありだと思います。しかし、私が今回の高木の件で首脳陣やフロントに一番考えて欲しいことは、選手というものは何かのキッカケで突然変わるものだということです。つまり、その覚醒がプロ入り前だったか後だったかの違いがあるだけで、高木のような存在は、もしかしたら気付かないだけでチームの中にいるかもしれないのです。選手によってそれは何がキッカケになるか分からないし、何時になるかも分からない。しかし、何らかの可能性を認められてプロ入りした彼らには、誰もが突然覚醒することがあり得ると思った方が理に適っています。だから、若手の選手を「先入観」「思い込み」「決めつけ」といった色眼鏡で見ないで欲しいと思うのです。常に枯渇気味の投手陣ではそんな心配はあまりないのかもしれませんが、なかなか試されない野手に関しては強く感じる懸念です。
ともあれ、高木には恐れ入りました。高木のような孝行息子がもう1人、2人いればペナントレースはもっと楽に戦えるようになるでしょう。それは、もしかしたら意外な選手かもしれないのです。原監督たち首脳陣には、そういった選手が身近にいないかをまず検証していただくことをお願いしたいと思います。高木の活躍は間違いなく他の多くの若手選手たちの刺激になったことと思います。そこから生まれた若手選手たちの上昇志向を、上手くチームの活力に結びつける作業を首脳陣にはぜひともして行って欲しいと思うのです。
2015年4月4日(日) セントラルリーグ 巨人対阪神(in東京ドーム)
先発高木勇人全投球結果
一回表
鳥谷:カウント0-1からファーストゴロ(140キロS、真ん中低め104キロ、井端よく反応して捕球のナイス守備!)
上本:カウント2-2からセカンドゴロ(142キロS、92キロS、142キロF、144キロB、140キロF、141キロB、138キロF、真ん中やや高め141キロ)
西岡:カウント1-2からセカンドゴロ(111キロB、106キロS、140キロSw、低め138キロ)
三者凡退、一回表終了
二回表
ゴメス:カウント2-2から空振り三振(140キロS、141キロB、136キロB、136キロF、低め133キロフォーク)
マートン:カウント1-0からセンターライナー(105キロB、真ん中やや外より141キロ)
福留:フルカウントから惜しくも外れ四球(132キロB、136キロB、141キロB、140キロF、96キロS、外角139キロ)
江越:カウント1-2から空振り三振(135キロS、121キロB、121キロSw、内角ストレート)
福留残塁、二回表終了
三回表
梅野:カウント1-2からライト前ヒット(136キロB、139キロS、118キロF、内角133キロ)
藤浪:カウント1-2からスリーバント失敗(132キロF、136キロF、124キロB、外角123キロF)
鳥谷:カウント2-1からフェンス手前の大きなライトフライ(137キロB、140キロS、128キロB、内角144キロ、亀井フェンスにぶつかりながら捕球のファインプレー!)
上本の打席で梅野が飛び出し塁間で挟殺死
上本:カウント2-2から途中終了(103キロB、101キロS、119キロB、120キロS)
三回表終了
四回表
上本:フルカウントから空振り三振(138キロB、140キロS、129キロB、112キロB、140キロF、124キロF、アウトロー145キロ)
西岡:カウント1-1からレフトフライ(106キロB、124キロS、低め127キロ)
ゴメス:カウント1-1からセカンドフライ(142キロB、105キロS、内角144キロ、片岡背走で追い付き捕球ナイスプレー!)
三者凡退、四回表終了
五回表
マートン:カウント1-2から見逃し三振(119キロB、124キロS、124キロS、133キロF、144キロF、真ん中129キロ)
福留:空振り三球三振(144キロS、145キロSw、低め115キロ)
江越:カウント0-1からファーストゴロ(144キロSw、外角137キロ)
三者凡退、五回表終了
六回表
梅野:初球右の肩口に当たる死球(118キロ)
藤浪:初球投ゴロ犠打失敗(外角137キロ)
鳥谷:カウント0-1からショートゴロ併殺打(141キロS、内角137キロ)
三者凡退、六回表終了
七回表
上本:カウント1-0からセカンドゴロ(90キロB、外角137キロ)
西岡:カウント1-0からセカンドゴロ(143キロB、内角144キロ)
ゴメス:フルカウントからセカンドフライ(145キロSw、148キロF、122キロF、133キロB、130キロB、147キロB、アウトロー131キロ)
三者凡退、七回表終了
八回表
マートン:カウント0-1からセカンドゴロ(143キロS、外角88キロ)
福留:初球サードファールフライ(内角124キロ)
江越:カウント1-2から見逃し三振(94キロB、124キロS、125キロS、143キロF、真ん中123キロイルスラ)
三者凡退、八回表終了
九回表
梅野:カウント0-1からレフトフライ(119キロS、アウトロー120キロ)
代打狩野:フルカウントからセンターフライ(118キロS、122キロB、143キロB、136キロF、89キロB、真ん中120キロインスラ)
鳥谷:カウント1-1から右中間二塁打(125キロB、139キロS、外角124キロ)
上本:フルカウントから四球(124キロB、142キロS、126キロB、142キロB、144キロF、内角123キロ)
二死一二塁
西岡:カウント2-2からショートゴロ(142キロB、123キロS、101キロF、139キロB、外角125キロ)
二者残塁、試合終了、3対0で巨人の勝利!
勝ち投手高木勇、負け投手藤浪
高木勇人プロ2試合目登板結果 勝ち投手(完封)
九回 球数116球 打者30人 被安打2 与四球2 与死球1 奪三振7 失点/自責点0 MAX148キロ
ヒーローインダビュー
アナ:放送席、放送席、そしてジャイアンツファンの皆さん、凄いピッチャーが現れました!プロ2試合目で完封勝利! ルーキー高木勇人投手です!ナイスピッチングでした。
高木:ありがとうございます。
アナ:どうでしょう。完封の狙える九回、最後の1イニングはどんな1イニングでしたか?
高木:あのーキャッチャーも阿部さんで、後ろ(の守備陣)も本当に上手い先輩たちが守ってくれているので、もう安心して投げました。
アナ:最後はランナーを背負いましたけれども、八回までは打たれたヒット僅かに1本、二塁も踏ませませんでしたよ!振り返って今日のピッチングはいかがですか?
高木:あのー自分のピッチングというよりも、本当に野手の方に助けてもらった1安打かなと思います。
アナ:その野手という意味ではキャッチャーは阿部慎之介選手でした。初めて組んだともちろん思うんですが、阿部選手に投げる今日一日というのはどんなピッチングでしたか?
高木:んーまだ実感が無いというのか、本当に良かったです。
アナ:見事にあの開幕第三戦で、プロ初勝利があって、そして、この一週間というのは、どういう風に過ごされたんでしょうか?
高木:もう、次へ次へと思って、しっかり今日のために準備してきました。
アナ:そして、この伝統の一戦、マウンドに上がりました。どんな気持ちでしたか?
高木:とにかく自分のピッチングをしようと、もうそれだけを心がけて今日は投げました。
アナ:ジャイアンツはナゴヤドームで三連敗をして苦しい形でこの東京ドームに戻って来ましたが、今日の一勝で阪神に勝ち越し、もうジャイアンツファンの皆さんも高木勇人投手力強く見ていたと思いますよ。いかがですか、そのあたりは?
高木:あのー本当に、あの熱い声援をずっとしていただいていたので、何とか何とかと思って一球一球大事に投げました。
アナ:ぜひ改めてジャイアンツファンの皆さんに自分のピッチングの強さはこんな所だとぜひ仰ってください。
高木:えー僕は僕です!えーしっかり、えー次に向かってしっかり頑張ります!
アナ:次の素晴らしいピッチング期待しています!
高木:ありがとうございました!
アナ:プロ2試合目で見事な完封勝利、ルーキーの高木勇人投手でした。放送席どうぞ…
原監督試合後インダビュー(高木について)
アナ:まず何よりも高木勇人完封です。
監督:ですねぇ。もうー見事ですね。非常にこう、何て言うんでしょうね、気っ風の良い、投げっぷりの良いね、えー、まぁ全く何て言うんでしょう疑わずにね、自分を、えーまぁ自分の投球をできたというのは、あー見事だったと思いますね。
アナ:相手打線も特にカウント球何とか仕留めようとするんですけれど、それを捉えきれない、やはり力というのはどういう所にありますか?
監督:んーまぁ、あのー真っ直ぐにしても、力を入れた真っ直ぐと、おぉまぁ少し抜くんではないですけどね、(力の)入れ所っていうのは非常に上手ですね。まぁスライダーもカーブも、まぁフォークもというね、まぁ、あーまだ彼は野球‥プロ野球人としてねスタートしたばかりですけど、非常にいいスタートをね、えー切ったと思いますね。
アナ:あの味方のピッチャー陣にも、大いなる刺激になったと思いますが。
監督:ですね。えーまぁ、そういう形で(思わず笑いを堪えながら)、なってくれるとね、これはもう一番いいと思いますね。
以下略
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2015年3月21日 -
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