元巨人代表の山室氏のドラフト改革案

  • 舎人
    2010年07月23日 08:08 visibility1192

2000年〜2001年にかけて巨人で代表をやっていた山室寛之氏が、


「野球と戦争」という著書を、中公新書から出版されたそうだ。


 


モバイルG(7月13日)


元巨人代表の山室寛之氏が「野球と戦争」を出版した。


巨人で2001年まで球団代表を務めた山室氏が、


読売新聞社会部記者時代の取材などをもとに、


戦後のプロ野球復活までの昭和史をひもといた。


「中京商—明石中の延長25回」、「最後の早慶戦」など名勝負、


名試合をエピソードを織り交ぜながら再現。


今も日本のスポーツの中心にあり続ける


野球の苦難の歴史を膨大な史料と証言でたどった。


中公新書、税別820円。


 


私はこの人にドラフト改革において、


少し印象深いものを持っているので紹介します。


 


山室氏が巨人の代表をやっていた2000年までのドラフト制度とは、


逆指名2枠、3位以降はウェーバー方式、


逆ウェーバー方式を交互に行うというものでした。


これは言わずもがな巨人と、


それに賛同した一部の球団によって導入されたものです。


しかし、この史上最凶のドラフト制度は数々の問題をはらみ、


ついに改革を迫られていたのでした。


2001年の2月から4月にかけてドラフト制度実行委員会が設けられました。


その当時、どんな案が出ていたか・・当時の書き込みから。


 


明日(9日)のドラフト制度実行委員会で新ドラフト案が合意に達する模様。


新ドラフト案を簡単にお浚いしてみると。


2月19日に湊谷委員長が提示した改革案は、


「逆指名枠」(1球団2人まで)をドラフト会議から切り離し、


契約金など条件面の制限を撤廃した「自由競争枠」とするもの。


ドラフトでは1位だけを入札制(重複した場合は抽選)とし


「自由競争枠」で2人を獲得した球団は、1位指名の権利を失う。


2位以下はウエーバー制となる。


それに対し、3月19日の実行委員会では山室案が提出された。


これは自由競争枠を1球団2人までとし、


ドラフトでは1巡目は自由競争枠を使わなかった球団だけが指名権を持ち(入札・抽選制)、


2巡目は自由競争枠を使わなかった球団および1人だけ使った球団が指名権を持ち(同)、


3巡目以降はウェーバー制とするもの。


どちらの案も、従来どおり自由競争枠に高校生は含まないとすると、


山室案は一見、従来と何の変化もないように思える。


しかし、1位高校生、2大学・社会人といった


最近はやりの(ずるいというかせこい)ドラフト戦法を封じる効果はある。


湊谷案は人気・金銭的に恵まれた球団が明らかに有利だろうが、


山室案は従来に比べれば改善されていると思う。


9日の実行委員会は、この山室案で合意に達する模様だ。


ちなみに湊谷氏とは横浜球団常務であり、山室氏とは読売球団代表である。


巨人が球界全体のことを考えず


自分の有利なように制度を改革しようとしていると言う人がいるが、


それなら湊谷案に対しわざわざ自分に不利なる案を提出するだろうか。


もっと事情は複雑なのではないだろうか。


球界全体を見据えたさらなる改革が必要なのだろうが、


とりあえず第一歩ととらえて期待したい。


 


しかし、実際に2001年4月9日に決まったドラフト制度とは次のものだった。


これが2002年から2004年までのドラフト制度となりました。


 


遂に新ドラフト案が決定した。


非常にややこしく、どこがどうなったのか最初よく分からなかったのだが、


今日になりスポーツ紙を幾つか読んでようやく分かった。


それは、山室案をもとにした妥協の産物のような決定案だった。




自由獲得枠は2人まで、これに高校生は含まない。また、契約金は従来どおり1億円とする。


1巡目 自由獲得ゼロの球団による入札・抽選。外れた球団も改めて入札・抽選を繰り返す。


2巡目−① 自由獲得枠を1つ使った球団がウエーバー巡で指名。


−② ①が終了後、自由獲得ゼロの球団がウエーバー巡で指名


(この段階で全球団が2人を獲得・指名したことになる)


3巡目 逆ウエーバー巡で全球団が指名


(以降、ウエーバー、逆ウエーバー……と4巡目以降続く。)




以上が新ドラフト制度の概要である。


山室案よりも自由獲得枠を1つ使った球団が有利になって、


自由獲得ゼロの球団がやや不利になっている。


また、3巡目(3位指名に相当)が逆ウエーバーになったため、


上位球団が有利になってしまった。


どのような妥協があったのか分からないが、


山室案の方が個人的には分かりやすいし、良かった気がする。


この決定案から感じることは、


自由獲得枠(今までの逆指名枠)を1人使うことを


是としている球団が多かったことなのだろう。


システムが複雑になった分、戦略も複雑になるだろう。


各球団の動きはどうなるだろう。


 


あらかじめ言いますが、私はこれで当時の巨人が、


公平な精神だったと言おうとしているのではありません。


ただどんなにヒドい制度でもスタートしてからは、


その制度でないと都合が悪い球団が多かったのではないか?


そういった球団は巨人と同じ裏金をバラまく汚いドラフトをやっていながら、


巨人とは一線を画したような素知らぬ顔をしていたのではないか?


 


それが証明されたのが、後々の一場事件。


2004年、巨人が明大の一場投手に裏金を渡していた問題が発覚すると、


阪神や横浜にも次々に事件が発覚したのです。


実は三球団とも同じ穴のムジナだったということです。


さらには2007年の横浜の那須野事件、西武の事件へと続きました。


 


山室氏のドラフト案は抜本的な改革は何も示されておらず、


あくまで人気や金銭的に恵まれた球団の既得権を保持しながらのものです。


おそらく12球団公平の精神よりも、


有望な高校生が他球団にさらわれて行くことに対する焦りを感じます。


それは、巨人という即戦力選手とFA補強で作られた球団が、


「このままのドラフト戦略や編成では、まずいんじゃないか?」


「本当は高校生を指名し育成した方がいいんじゃないか?」


とようやく気付き始めたことが伺えるのです。


 


しかし、気付きはしてもそれが実際に生かされることはずっと先でした。


ようやく2004年に清武さんが代表になって、さらに数年経ってからです。


 


山室氏の名前を久しぶりに見たことで、そんなことを思い出しました・・

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