CL 決勝 と 忘れられてる?
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2006年05月21日 04:21 visibility115
今年のチャンピオンズリーグ決勝は、6 月に W 杯が開催される事の影響で世間での注目は例年に比べると低かったのかもしれない。
今週 15 日に、日本では W 杯のメンバーが発表され、マスコミの目、世間の目は、" 巻 " や " 久保 " の話題で持ちきり。民放では、メンバーに選出された人、されなかった人がテレビ画面に映し出され、様々な情報が飛び交っていた。つまり世間では「いよいよ W 杯が始まるんだ!」という認知になり、どこに行っても W 杯モード一色に染まった。そんな中、チャンピオンズリーグ当日がむかえたが、一体誰が見るんだろう?という自問。
もちろん、チャンピオンズリーグ前日には、決勝戦の見所がピックアップされ、お茶の間へ伝えられていたが、優勝決定後の消化試合の様な扱いでしか、世間では注目されていない様に感じてしまい、シーズンを通してサッカーを見ているものとして悲しい気持ちになった。
ヨーロッパのクラブチーム最強を決めるチャンピオンズリーグは、例年、異常なくらいの注目度がある。W 杯が 6 月に控えているので、仕方のない事なのかもしれない。しかし、選手の給料を払っているのはクラブチームであり、ヨーロッパ最強のクラブチームを決めるチャ ンピオンズリーグは、見る側も経緯を払うべきだなどと考えてしまい、自分の思い入れの強さに笑ってしまった始末である。
注目度の高い代表試合は、各国の選抜チームなので確かに楽しみではある。しかし、そんな中でも頂点を目指し戦っている選手がいる事を世間には知っていてもらいたいし、楽しみにしていてもらいたい。
と、前置きはこれくらいにして、決勝について。
試合は、アーセナルとバルセロナの対決。
バルセロナはフランク・ライカールト監督のもと、ここ数年で、低迷していたチームを常勝軍団に片鱗させた。攻撃的であり、見ている人が楽しめるサッカーを展開するチームを作り上げた。今のチームはバルセロナの基盤を作ったクライフからの系譜である。
私の視点で見るバルセロナは、決して最強のチームではない。最強というなら、チェルシーやレアル・マドリー、ユベントスの方が最強だろう。最強と いう視点で言うなら、ヨーロッパのチームの中で強い方という印象である。しかし、ロナウジーニョが入ればまったく別のチームになる。
試合前から、ロナウジーニョ VS アンリといった見出が、どこの WEB サイトを見ても目に付き、世論的にはバルセロナの勝利を願っている声の方が強い傾向であった。アンリは世界でも TOP 3 に入るであろう FW だが、ロナウジーニョは現役選手の中で唯一無二の選手である。個人的に、ファンタジスタはロベルト・バッジョ以外には存在しないと考えているが、もう 1 人現役選手の中からファンタジスタを選べと言われたらロナウジーニョと答えるだろう。ロナウジーニョは現役の中で群を抜く存在である。一言で言うと、彼が 入るとまったく別のチームになる。世間はロナウジーニョのダンスがみたいのである。
アーセナルは、今シーズン若手を中心としたチーム編成でここまで勝ち進んできた。アーセン・ベンゲル監督のもと、攻撃的なチームであり、美しい サッカーをするチームといった印象である。今シーズンは、怪我人が多かった事もあり、若手を起用する事が多くなったが、逆にこれがチームに追い風となり、 ここまで勝ち進んできた。
誰が出場しても、同じサッカーをする。それが、ベンゲル監督が作ったチーム。ゴール前でもヘディングはほぼしない。フィジカルが強く、激しいあ たりのプレミアリーグにしては異色のチームと言ってもおかしくはない。シュートが出来るポジションでもパスを出し、よりエレガントで流れる様に綺麗なサッ カーをする。プレミアリーグでゴールデンブーツを獲得しているアンリのヘディングシュートでの得点など、私は 1 度しか見た事がない。それくらい、足元に早いパスを出し、狭いスペースでパスを繋ぎ、流れるように得点を目指すサッカーを展開する。
そんな両チームの対戦は、試合前から打ち合いが予想された。
試合が始まってすぐにわかった事は、アーセナルの方がコンディションがいいという事。リーグ戦の消化が早かった事もあり、決勝戦に照準を合わせ、ほぼベストと言ってもよかっただろう。バルセロナは、数日前の試合から疲れが抜けていない印象が否めない。
試合の入り方もアーセナルが、好機を作る。アンリが 2 度に渡りゴールに迫る。しかし、ビクトール・バルテスがファインセーブ。バルセロナも中盤でパスを回し、攻撃をするもアーセナルのディフェンス陣が奮闘。
試合はこのまま膠着かと思われた 15 分すぎに、この試合のポイントとなる瞬間がおとずれる。
エトーが抜け出し、GK レーマンと 1:1 。レーマンは、ペナルティエリア外でエトーを引っ掛ける。ボールはこぼれてバルセロナが得点する。そしてレフリーの笛。両チームの選手がレフリーにかけよ るが、主審のテリエ・ハウゲさんは、レーマンにレッドカードを出し、得点を取り消した。このレフリーのジャッジが試合をより緊迫したものにしてしまう。 11:10 となり、当然攻勢をかけようとするバルセロナ。そんな中意外な形で得点が生まれる。
アーセナルのカウンターをファールで止めた事により、FK が与えられる。キッカーはアンリ。スワーブがかかったボールは、キャンベルの頭にピンポイントであわせられ、難なくキャンベルが決めて、アーセナルの先制。ディフェンスの完全なミスと言ってもいいだろう。
この得点で、アーセナルは 10 人になっている事での緊張感がいい方に作用する。コンディションの良さを伺わせ、10 人とは感じさせない守備を披露。そして、数的有利のバルセロナには、焦りが生まれ、再三、いい形を作るもアーセナルの堅守に阻まれる。エトーの反転シュー トはポストをタタキ、前半はそのまま終了。
後半、エジミウソンに変えてイニエスタを投入。ここからバルセロナの攻撃が機能しだす。デコからロナウジーニョ、エトーなど何度もボールが渡り、 いつものバルサのサッカーが展開される。10 人のアーセナルの守り方は守備のお手本というべき守り方をしていた。ボールを持っている人に必ず 1 人がつく。抜かれてもカバーが入り、必ずフリーでボールをあげさせない。このチームこんなに守備のいいチームだったのか?と思わせるくらいお手本の様な守 備。試合は、このまま、アーセナルが守りきるのか、バルサが追いつくのか?といった展開で進むが、得点の予感はまったくなかった。堅守からのカウンターで アーセナルも決定機をを演出するも、アンリは決められないなど、アーセナルが逃げ切る予感が漂う。
バルサは、ファン・ボメルに変えて、ラーションを投入。このラーションが試合の立役者となる。
後半も残り 15 分ないくらいに、ファン・ブロンクフォルストが左サイドから入れたボールをラーションがワンタッチで流すと、エトーがディフェンスの裏を走り抜け、そのままシュート。GK アルムニアを破り、バルサが同点に追いつく。
その 5 分後、ボール受けたラーションが、再び流すと走りこんで来た途中交代のベレッチがシュート。約 5 分で 2 得点をとったバルセロナが逆転で、ビッグイヤーを獲得した。
レーマンの退場から、試合終了までの約 70 分。アーセナルは数的不利の緊張感でゴールを守りながら、カウンターで試合を組み立てた。しかし、70 分という時間は一流選手といえど長すぎる。後半途中から雨が降った事でボールの動きが早くなり、体力の消耗に拍車をかけた。それでも、リュングベリ、フレ ブ、アンリを中心によくカウンターで攻めたと思う。この紙一重の緊張感は 1 点リードという流れであるから出来た事だ。同点に追いつかれた瞬間から、アーセナルの集中力は極度に落ち、疲労度が急激に出た。
失点の前に、セスクからフラミニに選手交代した事も、失点の直接的原因にはならないだろうが、私は問題があったと思う。セスクはまだ 10 代とはいえ、アーセナルの中盤の中心選手。昨年までいたビエラと同等、それ以上のパフォーマンスを見せていた。消耗していたとはいえ、選手を交代させるな ら、セスクではなく、フレブだったと私は思う。
失点シーンについては、オフサイドという見方も出来る。VTR で映されている映像はあきらかにオフサイドだったと私は思う。DF のトゥレがエトーにボールが渡る前に手を上げていた姿を見るとオフサイドと見る事も出来る。エトーの快足で副審にはオフサイドに見えなかったのかもしれな い。ジャッジはオフサイドではなく、得点を認めた。
そして、GK アルムニア。急遽、出場してエトーのシュートを手にあてて、防いだりファインプレーも見せたが、控えキーパーである事に変わりはなかった。少し厳しい視点 かもだが、バルセロナのシュートは、2 得点とも防げていたかもしれないシュートであった。理由としては、2 本ともシュートコースが限定されていたと思う。そして、キーパーの反応がもう少し早いキーパーであれば体にうまく当てていたかもしれない。
何れにしても、バルセロナの 14 年ぶり 2 回目の優勝が決まった。ライカールト監督は、選手と監督で優勝した人物として、語り継がれるだろう。メッシは怪我で出場する事が出来ず、非常に残念だった選手の 1 人。
ビッグイヤーを掲げたプジョルは、バルセロナの生え抜き選手でありチームのキャプテンである。カンテラからバルセロナに所属し、サポーターからの支持もあつい。来期のチーム編成がどの様になるのか、今から非常に楽しみである。
そして、バルセロナのサッカーとアーセナルのサッカーは、我々視聴者を楽しませてくれるサッカーを必ず約束してくれるだろう。
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- 事務局に通報しました。
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