【続・俊輔考〜マンU対セルティック〜】
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吉田大五郎
2006年09月19日 10:19 visibility41
時期外れとなったが、せっかく録画を全て見たので、
ゴールを狙う意識を含め、一考察です。
週末のJリーグや海外から逆行するようで、すみません。。。(^^;
セルティックは守備網を敷いて挟み込みのプレスを仕掛けるが、
ボランチとDFラインとの間に入る強めのクサビのパスが入ると、
そこで一気に統制が崩れピンチの予感が漂う雰囲気。
逆にマンUは、クサビのパスが入った後に、
落とせる場所に1人、ボール保持者を追い越して動くものが1人、
あるいはサイドに開いてクサビの次の次のプレイを待機する者が1人と、
半ばオートマティズム化しているほどの「型」がある。
試合前、中村本人が語っているように、
「1人ではやられるから数的優位で守るために自分も走りたい」と、
その意識は十二分に見てとれた。
中村の場合、時として、
「ゲームメイカー」、「司令塔」、「ファンタジスタ」という、
本来の役割を犠牲にしてでも「自分は守備をやらなければいけない」という意識に、
過剰なまでに神経を割いて自滅に近い「欝」状態になることがある。
後ろに戻り、自陣に引きながら走る距離ばかりが増え、
ボールを捌くことに意識が集中し過ぎて攻撃的なセンスを引き篭もらせる、
そういうケースが見られることがある。
簡単に言い換えればこういうことにもなる。
守備に気を割く余り、位置が下がり、アグレッシブさを削がれ、
テクニックを発揮できぬまま凡庸な選手になってしまう、ということである。
トルシエ時代の中村やドイツでの中村は、それに当て嵌まるだろう。
今回も、前半、ともすればそこに陥りかけそうな場面が幾つかあったような、
傾向としては危険な兆候があったように思う。
勿論、CLへのモチベーションは高く、辛抱する展開であることも百も承知で、少ないタッチの中でもボールを奪われることはなく、
ましてやボールタッチの卓越は明らかに抜きん出ていた。
ただそのテクニックが、
挟み撃ちに行ってもボールを奪えず、走力の弱さが後追いを強いられることで、
キープして繋ぐこと、
横と後ろにパスをすることに必要以上にフォーカスされて、
裏を突くこと、危険な場所を狙うことが、
ややボヤけつつあったのは事実だろう。
もっとも顕著であったのは、
攻守の切り替えが欧州トップレベルの選手のそれからは、
やはり物足りなく感じたあたりである。
それを得意のFKで、
チームの体勢も自分の状態も押し上げることが出来たのは、
気持ちの上で、ただの日本人初ゴール以上に大きかったと思う。
後半も戦うことができた経験こそが、今後に生きると思われる。
象徴的だったのは、
後半40分頃のゴール前で左からの低いアーリークロスに飛び込み、
右足トラップが流れたけれど確実に「決定機」へ近付いたプレイ。
ボールを受けた時に、
中村は2人の間を割って入る「突破」のドリブルを選択した。
そこから左サイドへ展開。
ゴール前の斜めに横断・前進し、人を越え、スペースを越え、
その先にあるゴール前のスペースを見つけ、
相手DFの前へ入り込んだそのプレイ。
「走る」という、オシムJapanで過剰に意識されるそれにも叶った、
そんなプレイであった。
勿論、「決めてこそ」という注釈もあつくのだが。
いずれにしても、サッカーに限らずスポーツにおいて、
レベルが上がるということは、
当たりが強くなり、スピードがあがる中で、
いかに自分のプレイが出来るか、ということにかかってくる。
当然ながら、スコティッシュプレミア<CLであり、中盤<ゴール前でもある。
今ほど少し触れたが、マンUを見て感じた違いは、
プレイの選択肢の優先度が非常にシンプルなことだ。
サッカーにも幾つかの定石があるが、その1つに、
「まずはゴールへ向かうことを考える」という、当たり前のことがある。
FWならば当然、まずはシュートを狙うし、
そのために背後を突いて走りこむし、
相手が嫌がる、相手にとって危険な地域へ入り込むことが、
ファーストチョイスとしてまずは探られるのが基本である。
そのために、選手は事前に首を振って周囲を見て、
危険な匂いをかいでおくのだ。
最近のニッポン代表や日本のサッカー全体を考えると、
それが非常に欠落しているように思う。
パッサーが多い日本。
足元で受けるのが好きなタイプの多い日本。
そういう中盤で溢れていたジーコJapan。
とかく、「その気」を見せないようなキザなプレイが横行するニッポン。
ややもすれば、
お膳立てをするプレイやラストパスを出すことが、
誇大に賛美されてはいないだろうか。
走り込むより、軽やかに合わせるパスで走らせることがカッコいいかのような。
とりたてて、柳沢のことを言うワケでも何でもない。
ゴール前、本当に狙うポイントは、
視野もスペースも「点」そのものである。
まさしくピンポイント。
狭く厳しい(=当たりが強くスピードが瞬間的)中でどれだけ出来るか。
そこを狙って動く、走る、スペースへ入り込む、
ゴールを向く、シュートを打つ。
そういうことをまず第1に狙ってくるマンUに、
ちょっと原点に立ち戻って考えさせられた試合であった。
「Road to PK BAR」の過去コメもどうぞ♪
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