“奇術師”が本領発揮 ~新生・ハリルJAPAN~ 2戦目を終えて(その2)。

 


 


ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の下での2連戦を終えた日本代表。初招集や代表復帰など新戦力も多く加わった今回の合宿だが、不動の中心メンバーである本田や香川、岡崎、内田は今回の初陣をどのように感じたのだろうか。


 


アルベルト・ザッケローニ監督が率いていた4年間は1分1敗と一度も勝てなかったウズベキスタンを相手に大量5点を叩き出した新生・日本代表。
 
ハリルホジッチ新監督が3月23日からの強化合宿で強調し続けたタテへの意識と球際や寄せの激しさを選手たちは31日のウズベク戦で、前回のチュニジア戦(大分)以上に強く押し出した。



前半開始早々に青山敏弘(広島)の芸術的ミドルシュートが決まって精神的に楽になった部分はあったが、先発した本田圭佑(ミラン)、岡崎慎司(マインツ)、香川真司(ドルトムント)、内田篤人(シャルケ)の2014年ブラジルW杯主力組はチームの進化を如実に感じ取った様子だった。
 
前半のみで交代した内田は「ウズベクとやるとボールは持てるけどチャンスまで行けない印象があったけど、ああやってサクっと点を取れれば落ち着いてゲームできる。監督はハーフタイムに『ちょっとキレイにやりすぎる』『パンパンパンパン狙いすぎる』とか言ってたけど、速く攻める意識が出たのはすごくいいこと。
 
細かいパスだけだとミスが多くなるけど、一発でオカちゃん(岡崎)に狙ったりするチャレンジもあった。そういうのはミスしてもブラボーだと監督は言ってましたね」と、彼ならではの口ぶりで、新監督のスタイルを好意的に捉えていた。




 



 


長谷部誠(フランクフルト)に代わってキャプテンマークを巻いた本田も、ハリルホジッチ監督が速いサッカーを強調したことで、スピードと質の両立の必要性をより強く感じたという。
 


「あの速さで正確さを求めていくってこと。正確さを求めるがゆえにスピードを落とすってことではない。最高のスピードを求めるのは必要だなと感じるし、やっててすごく楽しいですね」


 


「ブラジルなんかは、あのくらいのスピードでホントに質が高い。インテンシティーの高い中でテクニックにこだわってプレーすれば、かなり向上の余地がある。大変さを感じつつも、自分の中ではトライしていくことが新鮮だし、楽しみな気持ちでいっぱいですよね」と本人はとにかくポジティブだった。


 



 


とはいえ、速さと正確さを両立させるのは容易なことではない。高度なボールコントロール技術やチーム全体の連携はもちろん、高い位置でボールを奪う組織的な守備も求められる。


 


前半35分に今野泰幸(G大阪)がDFからボールをカットし左外の香川に展開して決定機が生まれた場面、あるいは直後に岡崎が本田を狙って出したスルーパスが相手に当たって引っかかったが、それでも諦めずにボールを拾ってつないだことで、本田から乾に決定的な浮き球のパスが入った場面など、効果的なタテへの攻めが出たシーンは必ずと言っていいほど高い位置でボールを奪えていた。こうした守備意識の変化を香川も感じ取っていたという。
 


「僕らが行ったらボランチ、SB、CB含めて高い位置を取って連動した守備ができるってことはすごく楽しいですし、チームとしての守備意識がすごく連動してるところがある。それを高めていけたらホントに素晴らしいディフェンスができると思います」と、彼は所属のドルトムントに近い戦術に自信と手ごたえをつかんだようだ。


 



 


岡崎も「監督のやる気っていうか、1から変えようとしている熱意を感じる。そこは自分も感じたことと共通している部分もあるんで、積極的にトライしたいなと。まだまだ上に行けるんじゃないかと思います」と言うように、日本代表の大黒柱と位置づけられる面々が揃ってハリルホジッチ流を歓迎していることはいいこと。
 
それで2連勝、しかもウズベキスタン戦で5-1という大勝したのだから、彼らの士気も高まるはずだ。けれども、新指揮官の言っていることだけやっていればいいわけではない。今回は初陣であるがゆえに、基本的にはコンセプトを実践することが第一だったが、あくまでピッチ上でプレーするのは選手たちだ。
 
相手の出方やレベル、自分たちの状況を考えながら、戦い方を変えていけるような柔軟性や臨機応変さを持たなければ、本当に世界で勝てる集団にはなれない。シャルケというUEFAチャンピオンズリーグ決勝トーナメント常連チームにいる内田はその重要性を誰よりも強く強調していた。




 


「監督の言ってることは普通だし、そんな難しいことは言わない。今まで何人も監督の指導受けてきたけど、だいたい言うことは同じ。足使って細かい速いパス、ショートカウンター使ってみたいな。それを監督がどこまで細かく言ってくるかじゃないかな。みんなはどう思ってるか分かんないけど、ヨーロッパでは普通のことだし、俺はそんなに気にしてなかった(苦笑)。自分でやって怒られたらやめればいいしね。今回は結果が出たけど、やっぱり大事なのは負けた時、うまく行かない時。そこで俺らも監督もどうするかが一番大事。勝ってる時は何したって勝つんだから。勝負事なんてそんなもんだから」と気持ちを引き締めた。


 


確かにアルベルト・ザッケローニ監督時代も、初陣でアルゼンチンを1-0で撃破し、2011年アジアカップ(カタール)も優勝するなど最高の出足を見せた。が、肝心のブラジル大会では惨敗に終わった。
 


ハリルホジッチ監督率いる新生・日本代表が同じ轍を踏まないためにも、今回の2連戦の収穫と課題を確実に今後に生かす必要がある。タテへの意識、守備面での激しさを維持しつつ、自分たちで判断できる集団へ変貌を遂げていくことが、プレイヤー皆の今後のテーマだと思われる。


 



 


 

































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