(非野球)東野圭吾さんについて

オフシーズンなので非野球ネタを一つ.

 最近,東野圭吾さんの本に,はまっている.東野さんの前に「はまっていた」浅田次郎さん同様,当たり外れが少ないことが大きな理由である.デビュー以来,安定して佳作をだしているのに,話題作となった「秘密」まで10年以上売れなかったというのは驚きである.まあ,厳しい世界ですな.
 大学の工学部出身という作家にしては珍しい経歴の持ち主で本人は,「似非理系」と謙遜しているが,ものの考え方は「理系」そのものであると思う.どの作品も一貫して,きちんとつじつまがあうようになっているのは(だから,私も好きなのだが),そのせいかもしれない.ちなみに,東野さんは大阪出身だが,彼のエッセイから推定するに,私と同時期に同じ予備校に通っていたらしい.

 だいたい30冊くらい読んだが,その中でいくつか紹介する.

放課後(1985年)
 江戸川乱歩賞を受賞して出版されたデビュー作である.この作品については,犯人の動機について賛否両論があるようだが,私は「あり」だと思う.主人公のものの考え方が理系人間の典型的なそれであると思う.クールで客観的だが,実は優しい一面を持っている.信じているものに裏切られると手ひどく傷つくが,その一方でそれを冷静に分析していたりする.「理系人間」というものを知りたい方に進めたい.
 なお,ラストは衝撃的で,続きを知りたくて仕方がないが,自分で考えない限り無理だろうなあ.

卒業
 放課後に続く第2作である.東野作品の多くに認められるように,この「卒業」というタイトルには二重の意味がある.それが,わかるのは最後だが,実に切ない.「切ない裏切り」というのがこの本のテーマであるように思う.東野作品では数少ないシリーズキャラクターの一人となる加賀恭一郎が出てくる.東野さん本人が認めるようにトリックが難解である.
 なお,東野さんは,「第2作は,売れるとしても第1作の1/10くらいだろう」と予想していたとのこと.このあたりがいかにも「理系」である.編集者は,その冷静な分析に驚いていたという.たいていの新人作家は,受賞作と同じくらい売れると思いこむらしい.

鳥人計画
 スキーのジャンプを題材にしたミステリである.犯人が密告者を推理するというのも斬新な佳作である.私が最初によんだ東野作品かもしれない.東野さんの名前はしっていたし,「こういう毛色の変わったミステリを書くのだから,相当売れているのだろう.」と感じたことを覚えている.実際は,この時点(1989年)でもぜんぜん売れていなかったらしい.

美しき凶器
 このタイトルにも二重の意味があるというかどんでん返しがある.本人によれば「出来が良くない」らしいが,私は大変おもしろく読んだ.ストーリーが比較的単純だったからかもしれない.

あの頃ぼくらはアホでした
 著者の中学・高校生時代を主に振り返るエッセイ集である.上述のように私と同郷で同学年なので,実になつかしく読んだ.

悪意
 犯人の「動機」を突き詰めた作品である.実に画期的な作品で傑作だと思うが発売当初は売れなかったらしい.

探偵ガリレオ
 福山雅治主演のドラマ・映画で一躍有名になった作品.ドラマ・映画では主人公の相棒となる刑事は女性だが,小説の方では男性です.

秘密
 広末涼子主演の映画で有名になった作品.私は広末涼子が好きで,この映画も大好きなので,主人公(父親)の内面の部分が掘り下げられている原作の小説の方には違和感を持ったことを覚えている.1998年のこの作品以降,東野さんは売れ出したらしい.

片想い
 ある意味,秘密の続編的要素を持つ作品.詳しくはかけないが,おすすめである.

手紙
 話題作で傑作だが,リアルすぎて気持ちが暗くなる.安易なハッピーエンドにしないところが東野さんらしい.

容疑者χの献身
 東野さんが,苦節20年にして獲得した直木賞受賞作品.これも,思いもしないトリックが隠してある.犯人は理系だが,犯人が幸せにしたいとおもう人は普通の人なので,犯人にとっての当然の献身が,対象の人には理解されないという悲劇がある.まあ,東野さんにして描ける世界だと思う.

赤い指
 年老いた親の介護を背景にしたミステリ.加賀恭一郎が出てくるが,彼の父親に対する複雑な思いもうまくからめてある.私にも年老いた親がいるので,身につまされる話である.


 
 

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