☆甲子園出場校ぶらり散策日記〜高校野球「裏」ビジネスより〜

茨城県の県庁所在地である水戸市に、今年の夏の選手権に初出場した水城高校がある。
水城高校は県内有数のマンモス校で、国公立大学合格者を150名輩出している進学校で、ゴルフ部は全国屈指の強豪として知られており、ゴルフ部OBには、片山晋吾、宮本勝昌、横田真一らがいる。

 

水城高校は、2008年4月に県立高校の校長を定年退職した橋本実氏を野球部監督に迎えた。
橋本実氏は、低迷していた名門・水戸商の監督に就任後、野球部を立て直し、選抜準優勝にまで導いた名将で、NHKの高校野球解説の経験もある。

 

個人的には、水城高校はゴルフ部の活躍や進学実績(←昔とはずいぶん変わったみたいです(汗))で既に県内の私学の勝ち組となっており、いまさら名将を引っ張り野球を強くしなくてもいいだろうにと冷ややかな目でみていた。

しかし、軍司貞則氏著の高校野球「裏」ビジネスを読んで、少々見方が変わった。

 

以下、 高校野球「裏」ビジネスより一部引用

水城高校の山野校長は、水戸一高時代に正捕手として活躍した元高校球児である。山野校長の生き方が変わったのは、定時制と通信制の水戸南高に異動になったときである。
当時、同校には定時制高では全国唯一の硬式野球部があった。ただ、昼間働いて夜勉強する生徒の練習時間は思うように取れず、その基本技術のレベルの低さから当初はさほど気には留めなかった。ところが、野球部監督の転任で後任を懇願され、やむを得ず監督を任されることになった。約10人の部員は皆きゃしゃな体つきで、グローブは軟式用、20個のボールは縫い目が破れ、バットは5本、ヘルメットはひび割れた右用2個、左用はなしという状態。何より野球の基本となるキャッチボールが相手に届かず、あらぬ方向に投げるなどまともにできない状態で、トスバッティングもフリーバッティングも練習にならなかった。とはいえ、部員たちは毎朝5時に起床してハードな仕事をこなし、夕方から授業を受けて野球の練習。帰宅後は倒れこんでしまうほど疲れ果てていた。それでも弱音を吐かず、毎日明るく元気に練習に励む。なぜそこまで硬式野球にこだわるのか?
ある日、部員たちに聞いてみた。そして、部員たちの殆どが身寄りのない子供たちが集まる施設で育ったことを知る。「硬式野球を続ければ新聞の高校野球県予選の選手紹介欄に名前が載り、それを見た父か母が会いに来てくれるかもしれない」、そう語るけなげな姿に胸を打たれ、自身の半端な気持ちを省みた。それから、彼らのためにできる限りの行動を起こし、練習に勤しむようになった。さっそく母校など知り合いを頼ってボールやバット、ユニフォームなどの用具をそろえ、夜の練習に朝練も加え基本からコツコツ鍛え上げていった。
暫くして、山野氏は不思議なことに気がつく。夜の9時半になるとレフト後方にいつも同じ男性が立っていて練習を最後までみているのである。学校関係者でも、生徒の親でもない。あの男性は一体誰なのか?謎が解けたのは夏の県大会が間近に迫ったある日のことであった。山野氏はその男性に声をかけた。男性は、朝日新聞水戸支局の井上明と名乗った。山野氏は、「あの井上さんですか!」と驚いた。その男性は、松山商業の元エースで、三沢高校の太田幸司投手との延長18回引き分け再試合の投げ合いを制し、甲子園の優勝投手になった人物である。その野球エリートが定時制野球部の練習を見に来ていたのだ。山野氏は、井上氏になぜ硬式野球をしているのかを説明し、みている人はみているものだ、これが高校野球の真髄だ!とつくづく思った。
その夏の大会は、0対38で5回コールド負けを喫したが、山野氏は選手たちの全力プレーを誇らしく思った。この年の「毎日グラフ」には、高校野球の特集として、原辰徳を擁した人気と実力の東海大相模、東大合格者1位の灘、そして定時制野球部の水戸南の3校が取り上げられた。
その後、山野氏はかつての野球の強豪校・明野高校の校長として定年を迎えることとなる。明野高校に赴任したときには、既に学校は衰退、荒廃しており、かつて甲子園に何度か出場したことのある野球部も休部状態であった。そこでも、「野球の力」で学校を立て直したのである。

山野氏は定年後の2006年に水城高校長に就任し、野球の求心力を信じて指導に力を入れた。「野球も勉強も基礎と基本の繰り返し。シンプルですが、これが野球を通じて学んだこと」
その信念を受け継いでくれたのが、同じ中学の2年後輩の橋本実監督であった。その橋本監督が就任後2年3ヶ月で甲子園出場を果たしてくれた。


「私のやり方を悪く言う人もいるだろう。だが、目的を達成するには逆算して、一つずつ積み上げなければ。学校経営は野球の得点と同じ」
地元の選手だけで、山野校長と橋本監督の二人三脚により夢の舞台に一気に駆け上がった。

 

 

 

 

 

以上です。

 

 

 

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