函館放浪記~逆転つかの間

  • 仲本
    2017年10月01日 16:57 visibility2299

さて、タクシーを使ってまで間に合わせた10時からの第一試合。スタンド前で球場係員の野球部員にチケットを渡し、こちらが突っ立っていると「半券は再入場を希望する人にこちらから渡します」とのこと。そういうシステムなのか。入場料は500円だった(結局半券はもらいそびれた)。

 

台風接近で風は強いが、試合は予定通り行われた。函館大柏稜と函館中部との対戦だ。函館大柏稜は有斗高校と同じ系列。全国大会出場はないが、1回戦・2回戦とコールドゲームで勝ち上がっており、今シーズンの函館では有力校の一角と考えてよかろう。場内アナウンスでは「かんだいはくりょう」と言っている。ということは函館大有斗も地元では今は「はこだてゆうと」ではなく「かんだいゆうと」になっているのだろうか。ちなみにわたしの地元で「かんだい」といえば、もちろん関西大学のことである。

 

函館中部高校は明治28年に函館尋常中学として開校し、野球部創立も明治32年というから、一部マニアも納得の伝統校だ。この球場の名前の由来であり、明治40年に結成された社会人クラブチーム・函館太洋倶楽部は、初期には函館中学とも対戦している。また、北海道から中等学校野球の全国大会に出場したのは大正9年の北海中学が最初だが、その翌年の大会では函館中学が北海道代表の栄誉を勝ち取った。しかし道内ではやはり北海中学が強く、昭和21年、夏の全国大会が復活した年にようやく2度目の出場を果たしている。このときはユニフォームもままならず、予選会では色や形がバラバラ。全国大会出場の際には市役所からの借り物でまかなったという。

 

現在のユニフォームはご覧の通り早稲田スタイル。日記で紹介した函館ゆかりの名選手・久慈次郎の母校も早大だったから、そのあたりも影響しているのかもしれない。胸マークは「KANCHU」。学制改革で一度は「函館高校」に校名変更しているが、3学年がそろったところで「函館中部高校」となった。ほかの学校との区別の必要もあっただろうが、あえて「中部」を名乗ったのは、「函中」の伝統を受け継ぐ意向があったのだと推測する。メンバー表を見るとベンチ入り上限18人に満たない16人と少し寂しい状況で今年の秋を迎えた。

 

函館大柏稜の先発マウンドにはエースの佐々木投手が上がった。と、これは…、

 

 

 

左のアンダースローだ。1回表を三者三振で立ち上がると、2回以降も緩急、とくに緩い球をうまく使ったピッチングで打たせてとる。コーナーを狙ってくる変則投手ならじっくり待って四球をとるということも考えられるが、1球1球は振ればなんとなく当たりそうな気がするから逆に厄介だ。まあ、強豪校ならなんなく対応するのかもしれないが…。

 

柏稜は初回、1番ヒット・2番犠打・3番左越え二塁打であっという間に先制した。これは点差が開くかもしれない、と思ったが、ここから函中のエースも良く投げた。野手ではショートがよく動いてボールをさばいていた。4回無死満塁は6-4-3の併殺間の1点で二死2、3塁。ここで緩いゴロ、慎重にいったセカンドの手前でバウンドがやや沈んだか。打球はセンターへ抜け、これで3点目。

 

函中は5回、先頭打者の二塁打を足掛かりに一死1、3塁のチャンスを作る。ここでピッチャー返しの打球は佐々木投手がキャッチ。三塁転送で併殺とツキもめぐってこない。3-0、柏陵リードで前半5回を終了した。

 

函中は学校がこの球場から徒歩5分程度と近いこともあり、父兄会に加えてブラスバンドの有志がやってきてなかなかにぎやかにやっている。対する柏稜はほぼ父兄会と部員のみ、強豪校のように部員がめちゃくちゃ多いな、というわけではない。わりと普通。

 

7回表、函中はこの回先頭の4番打者がこの試合ここまでほとんどなかったライナー性のいい当たりのヒット。バントで手堅く得点圏に走者を進め、タイムリーで1点を返す。その裏の柏陵の攻撃一死1,2塁を併殺で切り抜けると、8回は1番からの好打順だ。二塁打と四死球2つで満塁のチャンスをつかんだ。

 

5番・笹谷の当たりはセカンドオーバー、右中間を転々とする間に満塁の走者が生還。逆転に成功した。

 

追う立場になった柏稜は8回、連続ヒットで無死1,2塁とするもバント失敗などまずい攻めもあって無得点に終わった。9回も送りバントが2塁封殺と嫌な流れになりかけたところ、打順は上位に返り、連打で一死満塁とする。打席にはこの日3打数2安打と当たっている3番阿部が向かった。3球目、1B-1から三塁方向へのファウルフライ。捕手と三塁手が追いかけるが最後は捕手がグラブに当てながら落球した。これで打ち直しとなった4球目、打球は左中間を真っ二つに割った。2塁走者までゆうゆう生還でサヨナラゲームとなった。

 

 

(9回裏「2X」をタテに表示するタイプ)
後半に巡ってきた少ないチャンスを生かして一度は試合をひっくり返した函館中部だったが、地力は函館大柏稜のほうが上回っていたようだ。なお、柏稜は後日のブロック決勝でラ・サールを破り、全道大会への出場を決めた。

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