読んでみた~金足農業、燃ゆ

  • 仲本
    2020年03月08日 13:21 visibility384

 新型肺炎の対応ということで、とりあえず「幻の大会になるかもしれない」と思って春の選抜大会の展望雑誌を買いに走りました(※冷静な対応が求められます)。あわせて新刊で出たばかりのこちらを購入して読んでみました。

 

2018年の夏の甲子園、話題をさらったのは秋田代表・金足農業でした。もともとファンの間では無名の学校ではありませんし、エースの吉田投手はなかなかの好投手と聞きます。しかしタレント集団が当然のように優勝旗を持ち帰る今の高校野球において、一人の投手では勝ち進むのが難しいというのが常識です。

 

初戦は九州の伝統校・鹿児島実業と対戦し、吉田投手は14個の三振を奪う快投を見せて勝利します。それでも、「評判通りいい投手だな。将来プロに行くかもしれないから、覚えておくか」くらいの印象しかありませんでした。もちろん、次かその次くらいで負けるだろう、という思い込みがあったからです。

 

2回戦、大垣日大に6-3。同点の8回にホームランで勝ち越し。観衆43,000人。

3回戦、横浜に5-4。2点を追う8回裏に逆転ホームラン。観衆42,000人。

 

吉田の奮闘にさして強くないといわれていた打線が応えて、甲子園常連校を連破しました。こうなるとファンは放っておきません。なにしろ甲子園のファンはみんな露骨なひいき目を持っていますからね。そこから決勝戦までの熱狂は皆が知るところです。

 

本書では大会期間中だけでなく、あの代の金足農チームがどのようにステップを上がってきたのかというエピソードが豊富に書かれています。やはりこの著者の書いた『勝ち過ぎた監督』でも思ったことですが、勝負事っていうのはやっぱり気が強くないとやっていけないんだなあ、と思います。

 

過去、甲子園には数々の「旋風」が巻き起こってきました。しかしこの年も結局は大阪桐蔭が二度目の春夏連覇を果たしたように、旋風を起こすチームもだんだん少なくなっていくかもしれません。観戦者としての野球シーズンは先延ばしになりそうな今日この頃。不要不急の外出を控え、たまには本でも読んであの時の夢に酔ってみるのも悪くない、かな?

(参考:『金足農業、燃ゆ』中村計/文藝春秋)

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