初めての浮気

実は、つい先日、初めて浮気をした。


ボクは、見ての通り、結構マジメだったりするものだから、
もちろん、今まで浮気なんてしたことなかったし、今回だって、
しようと思って自ら積極的にアクションを起こしたわけじゃない。


向こうが声をかけて来たんだ。


「頭数がそろわなくて困ってるので、良かったら
助っ人に来ませんか。」、って。


ちょっと迷ったけど、何も予定のない土曜日だったし、
たまには違う子とプレー、いや、違うチームでプレーする
のも刺激的かも、なんて思って誘惑に乗ってしまった。


なんでも、都内の、あるエリアの１部から５部の各リーグ
から選抜されたチームでトーナメントをやってるらしく、
ボクを誘惑してきた子、いや、ボクを誘ってくれたチームは
４部で、対戦相手はひとつ上の３部ということだった。


当日、試合が始まってみて、ちょっとびっくりした。


ボクが参加させてもらったチームは、普段ボクがお世話に
なってるチームと同じくらいか、ひょっとするとうちのチーム
が勝つかな、くらいのレベルだったのだけれど、対戦相手は
ずいぶんと違っていた。

もちろん、一人一人が技術的な面で、一枚上手というのは
あったけれど、勝つための野球、組織的に動く野球が徹底
されていた。

中盤、コールドになる点差がつくまでは、全員が徹底して
右打ち。やたらめったら走らない。ランナーが出ると、一球
一球ベンチからサードコーチャーを介してサインが出る。

とっても基本的なことではあるけれども、勝つために有効な、
チームとしての取り組みが一人一人に徹底されていた。


ただ、ボクが異様に感じたのは、なんだか静かなのだ。
いや、声はよく出てたと思う。これも勝つ野球をするために
有効なひとつの手段なのだけれど、よく通る声の出し方を
知ってる選手は多かったと思う。

けれど、なんていうか、一人一人の「個」が見えて来ないのだ。

コーチャーがランナーにかける声もすべて同じ。
ずぅっと同じ選手がコーチャーに立ってるんじゃないかと
思うくらいに。


かたや、ボクが混ぜてもらっていたチームはと言えば、
２，３人の特定の人が、その人の元々のキャラというのも
あるのかもしれないけれど、各メンバーにかける指示や
注意の声が、結構、きつい。

ある時なんか、たぶんこの人、つい最近、野球始めた
ばっかなんだろうなという感じの、外野を守ってる
メンバーがヒットの処理をのんびりやっていたら、
「早く内野に返せっ！！」っと、えらい勢いで叫ぶのだった。


そんな相手チーム、自チームの様子を見ながら、
「やっぱ、うちのチームが一番だよなー。」なんて、
途中までは思っていたのだけれど、中盤を過ぎた
あたりで、ふと思った。


ん？　いや待てよ。
レベルやノリは違えど、彼らがやってることは、
勝つために彼らなりに考えて実行していること。

コーチャーがランナーに指示だしするかけ声や、
フライを追うときにお互いがかけるかけ声って、
いろんな人が集まってきた草野球のチームだと
バラんバラん。
同じ、野球部での野球を経験してる者同士でも、
学校によって違いはある。
これって、チームで統一したほうがいいんじゃ
ないか。

ヒットの後処理だって、本人、無意識のうちに
ゆったり動いてるのかもしれない。
ひょっとすると、そういうことを知ってさえ
いないのかもしれない。
だとしたら、声かけたほうがいいし、言い続けなきゃ
いけないんじゃないか。
言わないのは、そのメンバーに対して不義理だし、
ましてや、言ったり言わなかったりするのは、すっごく
いい加減なんじゃないか。


そんなふうに、ボクは、初めての浮気で、

あれやこれやといろんな事を考えた。

そこのマジメで一途なキミ、

たま〜には、よその子とプレー、いや、よその
チームでプレーしてみるのも、面白いかもよ〜。