巨人の2015年ドラフトを振り返って(上) 地味な選手の指名を続けた謎

  • 舎人
    2015年11月23日 04:01 visibility10423
ドラフトが終わって一か月が経ちました。例年行っている総括も今年は指名選手たちの試合を観戦したりしていたために、いつにも増して着手するのが遅くなってしまいました。しかし、その分しっかりと彼らのことを見て考えを巡らせることが出来たと思います。

さて、今年の巨人がどのような予測の下にドラフトを迎えることになったかをドラフト前の各誌の分析から見て行きたいと思います。

野球太郎(2015年ドラフト直前大特集号)ポイント(要点を抜粋)
チーム事情
・球団至上際弱の打線 「打てない」今季の巨人を象徴する言葉はこれに尽きる。
・原采配の迷走 99%捕手の戻すことはないという決意で阿部を一塁手にコンバートしたはずが、開幕早々に撤回。その後、一塁手に戻したが、打順を毎試合のように変える。
・低迷した移籍組ベテラン 片岡と村田は移籍後最低の成績で終わりそう。井端は貴重なリザーブとして貢献したが、打撃面ではかつての粘り強さがなくなった。
・捕手の世代交代 阿倍の次を担う捕手として小林誠司を多くの試合で起用したが、攻守両面でまだ力不足。2年目ということを考えればそれも当然で、長い目で見守る必要がある。問題はそれまで我慢できるかどうか。
・立岡の成長が打線で唯一の明るい話題 野手陣で明るい話題は、後半戦に1番打者として活躍し、規定打席に不足しているとはいえ打率3割3分近くを残した立岡宗一郎ぐらい。
・打線に恵まれないながら奮起した投手陣 投手陣は12球団トップの防御率。菅野智之は8月まで防御率1点台をキープ。援護に恵まれなかったことが多く、大きく勝ち越すことは出来なかったが、エースのピッチングをシーズン通して見せた。
・ルーキー高木の活躍 内海哲也、杉内俊哉がけがや不調に陥る中、ルーキーの高木勇人がチームを救った。プロ2戦目の登板で完封勝利を飾るなど開幕から6戦5勝。
・安定していた外国人投手 ポレダはクイックに不安があるものの、防御率3点台。マイコラスは2ケタ勝利に防御率も1点台と安定していた。
・再編が必要とされるリリーフ陣 マシソンが7敗、山口が5敗を喫するなど、勝負所での甘さが目立った。クローザーに転向した澤村は及第点といえる成績。
ドラフト分析
・打線も問題だがまずは左投手 打線も心配だがまずは日本人先発投手で内海と杉内が30代後半になることもあり左投手を補強すべき。東海大相模の小笠原はリリーフとしては即戦力に近いが、今季台頭した田口とともに将来先発ローテの中心になれる。
・野手は左打ちの内野手 25歳以下では辻しかいない、早稲田大の茂木は打撃に爆発力があり逆方向にスタンドインする力がある。亜細亜大の藤岡もパンチ力があり走塁のセンスもいい。
・二遊間を守れる右打ちの選手 昨年岡本、一昨年和田と、一塁三塁を守る中長距離タイプを獲得したが、逆に二遊間を守れる右打の若手選手が少なく1人は指名したい。亜細亜大の北村は野球に対する頭脳が抜群でポスト井端になり得る。
・外野も右打ちの選手 二遊間以外に、外野手も右打の若手がほとんどいない。JR西日本の杉本は打撃に粗さはあるが、飛ばす力、脚力と肩は一級品。日本生命の上西の俊足と強肩も戦力になる。JFE東日本の中嶋は無駄のないスイングから鋭い打球を飛ばす。
・捕手は高校生から 小林を正捕手にしようとしているが、まだまだ相川や加藤たちのサポートが必要。来年25歳未満の捕手が育成枠しかいなくなるため、高校生捕手を1人獲得しておきたい。国学院久我山高の了海は大型捕手で勝負根性もあり。

アマチュア野球39 ドラフト2015
投手補強が最優先事項先発ローテの一角を担える投手を!
 昨年は高校生内野手、右の強打者である智弁学園高・岡本和真を1位指名した巨人。今年は、投手の補強が最優先事項になると見られる。
 昨年まで先発陣を支えてきた内海哲也が、今季は開幕前に左前腕の張りで離脱。リハビリ後も状態が上がらず、ほぼ2軍で暮らした。さらに杉内俊哉は長年痛みに苦しんできた左股関節の手術を受けることが決まり、来季中の復帰は不透明な状況にある。
 先発投手陣の一角を担える投手を、最上位で指名する可能性が高い。現状では、仙台大・熊原健人や富士大・多和田真三郎の本格派右腕に、夏の甲子園優勝投手の東海大相模高の・小笠原慎之介や県岐阜商高・高橋純平らが候補に挙っている。
 また、ここにきて大商大・岡田明丈やパナソニック・近藤大亮らも、評価を上げてきている。いずれの選手も、昨年のドラフト2位・戸根千明や同3位・高木勇人のように、即戦力として活躍できる可能性を秘めている。
 野手では明治大・高山俊や慶応大・谷田成吾ら巧打の左打者がAランクに名前を連ねている。
 また、夏の甲子園で評価を上げた選手について、視察した山下哲治スカウト部長は「オコエ君と平沢君」と話すなど、将来性豊かな高校生にも熱視線を送っている。
 いずれにせよ、巨人は例年、話し合いを重ねた上で最終決定を下すことになる。
 今年のドラフトも、他球団の動向をじっくり見ながら、直前まで戦略を練っていくことになるだろう。

週刊ベースボール 2015.10.22号 ドラフト大展望
即戦力か、素材を重視か 投手か、それとも外野手か
 リスト最上位にあるのは2人の大学生と、2人の高校生とみられる。9月20日、東京・大手町の球団事務所でスカウト会議が行われ、山下哲治スカウト部長が取材対応し、「最終リストには67人。そのうちの上位候補は10人」と明かした。中でも実名を挙げた選手のうち、大学生では東京六大学の安打製造機・高山俊外野手(明大)、みちのくの本格派右腕・熊原健人投手(仙台大)に注目しているようだ。高校生では身体能力の高いオコエ瑠偉外野手(関東一高)、夏の全国V左腕・小笠原慎之介(東海大相模)の評価が高い。

今年の巨人は史上最低打線と揶揄されるほどで、ウイークポイントは打力不足だということは明白でした。したがって、レギュラーを脅かすことが可能な即戦力野手の一位指名こそが最も上位指名に相応しいと思われました。しかし、どうも巨人は即戦力投手で行くのではないかという見解の方が強かったようです。とは言え最初からそんな夢のない話はせず、山下スカウト部長は9月末の段階ではマスコミ受けしそうなコメントをしています。

【巨人】ドラ1候補絞った オコエ、小笠原、熊原、高山の4人(2015年9月30日 スポーツ報知)
 巨人が29日、東京・大手町の球団事務所でスカウト会議を開催。今年のドラフト1位候補が、関東第一のオコエ瑠偉外野手(18)、東海大相模の小笠原慎之介投手(17)、仙台大・熊原健人投手(21)、明大・高山俊外野手(22)の4選手に絞り込まれたことが明らかになった。いずれの選手も現状の補強ポイントに合致。10月22日のドラフト会議に向け、球団内の意見を統一していく。
 巨人のドラフト戦略の一端が明らかになった。スカウト会議では約2時間にわたり意見を交換。取材に応じた山下哲治スカウト部長は「最終リストには67人。そのうちの上位候補は10人」と明かした。その中でもオコエ、小笠原、熊原、高山の4選手が巨人の最終候補として絞り込まれたもようだ。
 ここへ来て一気に1位候補に躍り出たのが、オコエだ。今夏の甲子園では、2回戦の高岡商(富山)戦で大会タイ記録となる1イニング2三塁打をマーク。準々決勝の興南戦でも決勝弾を放つなど、スピード感あふれるプレーで魅了した。
 話題性も抜群だが、山下部長は「甲子園ですごく評価を上げてAクラスになった。スター性に加え、技術でも将来必ずレギュラーになれる。人気よりまずは力優先」と、あくまで実力重視と説明した。右の外野手の層が薄い巨人の補強ポイントに合致する。
 一方の小笠原は最速152キロの剛球を武器に、東海大相模を45年ぶりの夏の頂点に導いた。変化球などの精度も高く、高校生ながら完成度は極めて高い。
 大学生の2人は、紛れもなく即戦力となる能力の持ち主だ。熊原は最速152キロを誇り、大学日本代表にも選ばれた右の本格派。宮城・柴田高時代は無名ながら、仙台大で力を伸ばしたたたき上げでもある。今秋のリーグ戦前に背中を痛めた影響が懸念されたが、回復して好投を見せている。巨人としても、即先発ローテを張れる投手は、のどから手が出るほど欲しい。
 高山はこの秋のリーグ戦で、東京六大学歴代タイ記録となる通算127安打を達成した安打製造機。貧打に泣いた巨人打線を、活性化できる逸材といえる。
 いずれの選手も、世代交代が迫る巨人にとってはスター候補生。山下部長は、ほかに県岐阜商・高橋、仙台育英・平沢、駒大・今永、明大・上原、大商大・岡田、青学大・吉田らの名前を列挙したが、先述の4人がドラフト戦略の軸になる可能性は高い。「即戦力投手でいくのか、外野手の即戦力かまだ決まっていない。ただ、投手ならこれ、野手ならこれという準備はしている」と話した。
 運命の「10・22」。巨人新世代の旗手は、果たして誰になるのか。

ここには桜井の名前もなければ、重信の名前もありません。その言葉の通り、本当にまだ候補を絞り込んだだけで、誰で行くかを決めていなかったのだろうと思います。しかし、どうもその頃、私の野球観戦仲間の情報によると、巨人は即戦力投手で行くのが濃厚だという話でした。するとオコエとか小笠原なんてマスコミ受けする話はしていても、実際は熊原を筆頭に考えているのではないかと思ったりしていたのでした。

そんな感じで個人的には熊原という馬力は感じても、福田のようなカクカクした投球フォームの投手になることが残念に思ったり、評論家の安倍さんが「野球人」で熊原のことを非常に高く評価していることに感心したりしてドラフトが近づいて来るのを待っていた感じです。

すると、ドラフト会議数日前の10月20日に巨人はスカウト会議を開き、候補を7名に絞ったという報道がされます。

巨人、ドラフト1位候補に小笠原ら7人に絞る[2015年10月20日 日刊スポーツ]
巨人は20日、東京都内の球団事務所でスカウト会議を開き、22日のドラフト会議での1位指名候補を小笠原(神奈川・東海大相模高)や桜井(立命大)、高山(明大)ら7人に絞った。他球団の動向を見極め、当日に最終決定する。山下スカウト部長は「ことしはAクラスがそろっている。(競合で)外れてもいい選手が残っている確率が高い」と話した。

「4人に絞ったはずが何で増えているんだ!?」とやや怪訝な思いでいたものの、選択肢が増えたことは悪いことではないと思いました。この7人とはすでに名前が挙がっていたオコエ、小笠原、熊原、高山の4人に加えて、吉田(青学大)、岡田(大商大)、桜井(立命大)のようです。この候補が増えた裏には何があったのか?後で分かったことですが、10月10日、11日に行われた仙台六大学野球リーグで先発登板した熊原が、東北福祉大に対して不本意な投球をしてしまったようなのです。記録を見る限り10日は先発して8回を投げ被安打5、四球2の失点3で負け投手、11日はリリーフで最終回に2/3回だけ投げてヒット1本を打たれている。炎上というほどではないようですが、ここで1位指名にGOサインを出そうと思っていた巨人スカウト陣は「待った」をかけることになり、指名候補の見直しを迫られることになった。そこで4名から7名に候補が拡げることになったと思われるのです。

その翌日にはスポーツ報知に「オコエが1位候補から外れ、立命大・桜井が急浮上」なんて記事が出ます。夢のある高卒野手の指名に一縷の望みを保っていたものが、機関誌の報知に載ってしまったのでは諦めるしかありません。小笠原も無しとのこと。「まぁ、オマエらの魂胆は最初からお見通しだよ!」と思いながらも、「桜井って誰だ??」突然浮上してきた未知の名前に俄に戸惑ったのでした。

【巨人】オコエ外れた!ドラ1候補に立命大・桜井が急浮上(2015年10月21日  スポーツ報知)
 巨人のドラフト1位候補として、立命大の最速150キロ右腕・桜井俊貴投手(22)が急浮上したことが20日、明らかになった。この日、22日のドラフト会議に向け、東京・大手町の球団事務所でスカウト会議を開催。球団は即戦力の投手獲得を最優先としており、候補は仙台大・熊原、大商大・岡田と実質3人に絞られている模様。最終決定はドラフト当日だが、現状では桜井が一歩リードしているとみられる。
 運命のドラフト会議まであと2日。スカウト陣は候補選手の映像をチェックし、詰めの意見交換を行った。「最終的にはあさって(当日)に決まる。現段階では1位は決まっていない」と山下哲治スカウト部長は慎重に言いつつ、残った7人の1位候補を並べた。その中でいの一番に名前を挙げたのが桜井だった。
 桜井は兵庫・北須磨高では甲子園経験こそないが、立命大で本領発揮。MAX150キロのストレートを武器に、この秋の関西学生野球のリーグ戦では6戦6勝。14日の関大戦では巨人のスカウト5人が見守る中で延長14回完投勝利を挙げ、一気に評価を上げた。「秋のリーグ戦で内容がよかったからね。魅力は? 直球のキレ、制球。投球が安定している」と山下部長も絶賛の逸材だ。
 今季2位に終わった巨人は戦力の底上げが急務で、ドラフトでは即戦力投手を最優先とする方針。先発陣は今季、菅野が10勝、高木勇が9勝を挙げたものの、若手の台頭に乏しかった。マイコラス(13勝)やポレダ(8勝)ら助っ人に負う部分が大きかったが、来季残留は未定。内海がここ2年不振で、杉内も右股関節の手術で来季開幕は厳しいことからも、先発ローテを張れる投手の獲得に踏み切ることになりそうだ。
 山下部長は桜井の他、熊原、岡田、東海大相模・小笠原、富士大・多和田、明大・高山、青学大・吉田の名を挙げた。実質的には桜井、熊原、岡田の3人が最終候補とみられ、中でも急成長中の桜井が一歩リードの模様だ。また投手優先の中、将来性を評価してきた関東第一・オコエは外れ「(1位を)外したときに残っていれば多少考える」との評価にとどめた。
 原監督の勇退で、指揮官不在のドラフト。未来を担う逸材を求め、ギリギリまで熟考を重ねる。

桜井の名前が急浮上したのは熊原にGOサインを出せなかった直後のこと、関西学生野球リーグの関西大戦に登板した桜井が一世一代の投球をしたことに依るようです。下級生の頃から巨人のスカウトは桜井のことをマークしていたようですが、熊原に疑問符が付き、誰にしようか思案しているところに桜井は快投を演じたのです。桜井は後に神宮大会の東北福祉大戦で、大会タイ記録となる18奪三振の完封勝利を挙げるのですが、このスカウトたちの前で投球した関西大とのリーグ戦は、その神宮大会の快投よりも上の出来だったと桜井本人が語っています。なんでも延長の14回、200球以上を1人で投げ抜き、最速は自己新の150キロ超えを果たしたとか。神宮大会の東北福祉大戦も痺れてしまうような快投でしたが、それを上回る投球ということでしたら、スカウトたちが指名方針を変更してしまうことも仕方がないのかもしれません。

かくして桜井の1位指名の方針は決まったと思われるのですが、ドラフト当日になって桜井にロッテと阪神が1位入札するのではないかという一部記事が躍ります。ロッテとは一昨年、クジで石川を競合し負けています。その当時のドラフトでは「年齢の行った石川(当時すでに25歳)を1位指名するとはなんて夢の無い。クジに敗れてもちっとも悔しくない!」そんなことを思ったのでしたが、その石川がプロ入りすると、二年連続で二桁勝利をあげたのです。巨人のスカウトもロッテのスカウトも眼力は確かだったのです。そのパターンなら、今度の桜井も悪くはない素材なのかもしれない。少しずつこの方針を受け入れる気持ちになって行ったのでした。

  巨人2015年ドラフト指名選手(データは日刊スポーツ参照)
[本ドラフト]
1    桜井 俊貴     22歳[兵庫] 181cm 82kg  投手(右・右) 北須磨高ー立命館大
2    重信   慎之介  22歳[京都] 173cm 70kg  外野(右・左) 早実高ー早稲田大
3    與那原   大剛  17歳[沖縄] 190cm 89kg  投手(右・右) 普天間高
4    宇佐見 真吾  22歳[千葉] 181cm 87kg  捕手(右・左) 市立柏高ー城西国際大
5    山本 泰寛     22歳[東京] 176cm 76kg  内野(右・右) 慶応高ー慶応大
6    巽 大介    22歳[鳥取] 183cm 84kg  投手(左・左) 岩倉高
7    中川 皓太   21歳[沖縄] 183cm 83kg  投手(左・左) 山陽高ー東海大
8    松崎 啄也   23歳[栃木] 174cm 90kg  捕手(右・左) 作新学院高ー作新学院大ー日本製紙石巻
[育成ドラフト]
1    増田 大輝     22歳[徳島] 172cm 65kg  内野(右・右) 小松島高―近畿大中退ー四国IL徳島
2    小林 大誠     21歳[青森] 180cm 82kg  捕手(右・左) 八戸学院野辺地西高―青森中央学院大中退ーBC富山ーBC武蔵
3    松沢 裕介   23歳[愛知] 181cm 83kg  外野(左・左) 誉高―朝日大ー四国IL香川
4    田島 洸成     19歳[埼玉] 175cm 78kg  内野(右・左) 帝京高ーBC武蔵
5    大竹 秀義     27歳[埼玉] 180cm 87kg  投手(右・右) 春日部共栄高ーBC信濃ーBC富山ージャンバーグブーマーズーBC武蔵
6    山下 篤郎     17歳[熊本] 178cm 82kg  投手(左・左) 鎮西高
7    矢島 陽平     25歳[埼玉] 179cm 82kg  投手(右・右) 進修高―駿河台大ー関西L神戸ー福井ーBC武蔵
8    長谷川 潤     24歳[東京] 186cm 74kg  投手(右・右) 成立学園高―金沢学院大ーBC石川

ドラフト会議で巨人は実に16名の大量指名です。これは2006年と並んで過去最多タイとのことです。2006年は第二の2軍がスタートするということで高校生ドラフトで3名、大社ドラフトで7名、育成ドラフトで7名が指名されたのです。その中から坂本、寺内、金刃、松本哲、隠善など、多士済々な戦力が生まれました。昨年は何しろ本指名で4名しか指名をしませんでした。周りから「やる気があるのか」などと不評を託いましたが、その通り、指名しないことには戦力になる確立も上がりません。今年は左右の投手から内外野まで非常にバランスの取れた指名をしています。高校生が少ないことが不満と言えば不満ですが、こと指名人数に関しては積極的で良いことだと思いました。





























































































































































しかし、指名された面々を見てみるとアマ野球に疎い私にとっては聞いたことの無い名前ばかり。「誰だよそいつ??」なんて指名が続きます。私は東海大菅生高の勝俣というスラッガーをぜひとも指名して欲しいと思っていたのですが、2位でも3位でもスルーしています。勝俣は「3位指名以下はお断り」などと最近のドラフト候補生では珍しい高飛車な態度を取っていたので、巨人が「ひょっとしたら下位でとるために囲い込みをしたのか」と期待していましたが、そんな希望的観測も空しく、巨人は最後まで地味な名前が連呼されるドラフトを続けたのでした。

「なんて野心のないドラフトだったのだろう・・」直後の感想はそんな感じです。ドラフトは確実にモノになるものの、成長した先が70点や80点の選手を指名することも必要かもしれない。しかし、そういったコマ的な選手ばかりで野球をしたら、きっと強いチームは作れない。今の巨人は原さんの起用方針もあったのだろうが、70点や80点のコマ的な選手ばかり豊富になり、他を圧倒する90点や100点の選手が減ってしまったのではないか。のみならずコマ的な選手多いことが、将来のレギュラーたる大器の蓋になってしまっていたのではないか。だから、巨人に必要なのはそういった高い確立で戦力になる70、80点の選手ではなく、モノになるかどうか定かではないものの、成長した先が100点だったり、あるいはそれ以上の選手にすべきではなかったか。しかし、下位まで残っているのはあまりに可能性の低い選手ばかり。だから、ある程度の確立でモノになるスケール感のある選手を選ぶとなったら上位指名しかない。私だったら少なくとも毎年1名は、そういったスケール感のある選手を上位で指名し続けると思う。

こういった考え方は何も私だけが思っていることではなくて、多少の差こそあれ、みんなが思っていることでしょう。やはりドラフト後の巨人に対する指名の寸評は私が感じたことに繋がるものが多かった感じです。

(片岡さん THE PAGE)
中日>オリックス>広島=西武=DeNA=ロッテ=ソフトバンク=楽天>日本ハム>巨人=阪神=ヤクルト
(前略)
 片岡氏が、今ドラフトで疑問を投げかけたのは、巨人、阪神、ヤクルトの3球団。特に巨人、阪神は、まったくテーマや狙いが見えない不透明なドラフトだという。
「トリプルスリーの山田を軸に野手の揃ってきたヤクルトの補強ポイントはピッチャーだったはずだが、外れ1位の原は、隠し玉なのだろうか。即戦力ピッチャーを他に取っていないのもよくわからない。もっとわからないのが、巨人と阪神だ。立命大の桜井は4年生になって急成長したピッチャーのようだが、乱暴な指名に思える。早大の重信、慶大の山本と、2人も大学生の野手を獲得したが、そのあたりの狙いもよくわからない。また育成を8人も獲得して、そのうち7人が独立リーグの選手で、うち4人が武蔵ヒートベアーズの選手。近年独立リーグの選手の評価が高まっているが、この指名の仕方には違和感を覚える。
(以下略)

(小関さん NumberWeb)
【ソフトバンク90点、楽天、DeNA85点】
【広島、ロッテ85点、西武80点】
【中日75点、オリックス70点】
【ヤクルト、巨人、阪神、日本ハム各60点】
指名に迷いが見えたヤクルト、巨人、阪神、日本ハム。
(略)
 巨人は秋の成長が著しい桜井俊貴(立命館大・投手)、日本ハムは外れ外れ1位で上原健太(明治大・投手)を指名した。この低評価はあえて「1年目」と限定したい。桜井は春のリーグ戦までは投球フォームのきれいな本格派、という印象が強く残っている。そこからの成長が本物ならもっと評価が上がるが、2位以下に巨人らしい欲望の強さが見えなかったので全体的な評価を下げた。

(得津高宏さん 東スポWeb)
(S=ソフトバンク、A=阪神、B=ロッテ、B=中日、B=DeNA、C=広島、C=西武、C=巨人、D=楽天、D=オリックス、E=ヤクルト、E=日本ハム)
(前略)
 同じくC評価としたのは巨人だ。
「野球賭博で投手が足りないというのは分かります。打線が弱いチーム事情なのに、投手4人を指名せざるを得ないというのは仕方ないでしょうね。それでも大学の投手2人(桜井俊貴=立命館大、中川皓太=東海大)は期待できそう。少なくとも4人しか指名しなかった昨年よりはいいドラフトだと思います」
(以下略)

(週刊ベースボール 2015.11.19号 ドラフト総決算号)
(95点=DeNA、90点=ソフトバンク・ヤクルト・ロッテ・阪神、85点=日本ハム、80点=オリックス・広島、75点=西武、70点=中日・楽天、50点=巨人)
収穫:非常に現実的な指名、誤算:ワクワクしない人選
ワクワクしない地味な人選。とはいえ野球賭博問題で3選手が謹慎中の投手を中心に、各ポジションに最低1名ずつと現実的な指名となった。とはいえ1位の桜井俊貴、7位の中川皓太の大学生投手が1年目から働けば、十分合格点になるのでは。注目は育成選手を8名指名したこと。すでに発表されている新設の三軍を充実させる狙いもあるが、8名中7名が独立リーガーで即戦力の掘り出し物が見つかる可能性も。

徳光さんのコメント(G+週刊ジャイアンツ10月26日)
「それから僕は球団の方に批判を受けても敢えて言いたいのはですね、高橋新監督をやっぱり迎える、高橋新監督に照準を合わせてですね交渉をした訳じゃないですか。だったらドラフトもですね、せめてやっぱりスター候補と言われている選手たちに対してまして、しっかりと参戦してもらいたかった。競合してもですね、あのドラフトでやっぱりクジで抽選しても取ってもらいたかった。かつて長嶋さんがやっぱりそのねぇ松井を引いた時のように。それから、あの藤田さんが原選手を引いた時のようにですね、こういうような形でやっぱりドラフトってのは、やっぱり輝きのある選手たち対しましてスポッとまぁジャイアンツがですね目を向けてもらいたかったということは、これは新監督に対してましてまぁひとつのですね、あのー礼儀ではないかぁというふうに思えてならなかった訳であります。えー取れなかったかもしれませんけれども。その点阪神は金本監督を新監督を迎えるにあたりまして、明大のやっぱり高山を、競合であってクジを引いてやっぱり獲得したということは、こういったことっていうのが野球への発展ではないかなと。またジャイアンツっていう、ジャイアンツのファンにしてみればですね、そういうことを見たかったと思えてならない訳でありますね。松坂大輔を取らなかったっていう、あのクジを引かなかったっていうことに対しまして、あのーまだまだですね、えーなんとなくモヤモヤっていうものを持っておりますジャイアンツファンはたくさんいる訳でございますので。もちろんスカウトのみなさんで選んだ選手でありますから、間違いはないと思うのです。ただやっぱりそういうことだけではないということをですね、ジャイアンツファンはそういう気持ちを持っているんだという、やっぱり高山であり平沢であり、小笠原であったり、高橋君であったり、こういった選手にやっぱりちょっと向けてもらいたかったなっていう気持ちが強い訳であります。これを話させると切りがないので止めますけれどね」

評論家各氏が酷評していますし、徳光さんも怒っています。ドラフト後、こういう夢のない指名をすることに対する不満を多くの巨人ファンが抱いたのではないかと思います。それでも指名された選手たちの評価が良ければ救いになると思ったのですが、これが実にヒドい有様!調べ始めて過去最低レベルではないか。桜井が辛うじてA評価が4紙ある程度で、それ以外は指名されるとしても下位候補だと予想された選手ばかりだったのです。





































 




































 野球太郎(◎→◯→△→なし)
 アマ野球(AA→A→BA→B→C→なし)
 日刊スポ(特A→A→B→C→なし)
 スポニチ(A→B→C→なし)
 報知(横綱→大関→関脇→小結→前頭1~15→なし)
 サンスポ(A→B→C→なし)
 デイリー(特A→A→B→C→なし)
 トーチュウ(特A→A→B→C→なし)

皆が酷評する、どうにも救いようの無いドラフトだった気が来るのですが、安倍さんのコメントだけは何だか救いがありました。

(安倍さん NumberWeb)
巨人の重信指名で、どよめきは最高潮に。
 頼みの綱・宮西尚生までヒジのクリーニングで来季前半が危ぶまれ、何が何でも左腕がほしい日本ハムが指名した加藤貴之(投・かずさマジック)をはさんで、巨人が重信慎之介(外・早稲田大)を挙げて、報道エリアのどよめきは最高潮に達する。
 桜井、重信……見出し、どうするんだよ……。スポーツ紙記者のためいきが聞こえる。やはり、人気球団にはビッグネームが欲しいようだ。
 アマチュア時代のビッグネームがナンボのものか。プロに進んで活躍すれば、そこではじめて本物のビッグネームとなり、アマでちょっと売れたぐらいの名前なんて、プロで1、2年停滞すれば、世間はすっかり忘れてしまう。彼らの“これから”について語り、伝えればよいのに。
 重信慎之介を「足のスペシャリスト」と評するのは、決して当たっていない。彼は立派に三拍子そろった、総合力の外野手に成長した。
 早稲田大では茂木栄五郎(内・楽天3位)も、入学時に比べれば別人のような飛距離を獲得したが、重信慎之介のバッティングの力感アップも賞賛に値する。
 内角の140キロ台をパチンと引っぱってライナーでライトの頭上、右中間を襲う打球は、学生当時の青木宣親(現・サンフランシスコジャイアンツ)が重なり、併せて、強肩と前にも後ろにも強い守備ワーク。そして誰もが認める快足は、盗塁スタート時の“横1m”の速さ、スライディングスピードも含め、プロで盗塁王を望めるレベルにある。
 しかし、私が編集した『野球人』の「ドラフト特集号」では、それほどの逸材を落としている。私が重信慎之介のそれほどの成長を確認したのはこの秋。雑誌が印刷にまわってからだった。完全な「敗北」であった。

このコメントには巨人のドラフトの本質を探るヒントがあったと思います。その後、色々なことを調べてみると、今年の巨人が指名した選手というのは、会議の直近で評価を上げて来た選手が多いということなのです。リーグのMVPを獲得し熊原の評価を上回った桜井もしかり、2位の重信も4年時に限って言えば阪神1位の高山と遜色ない活躍。ドラフト後リーグの首位打者になりました。5位の山本もドラフト前のリーグ戦で3本塁打を放ち、ベストナイン。7位の中川も秋のリーグ戦でMVPです。彼らはどうやら評価が追い付いていなかったり、評価が定まっていなかったり。こういったドラフト直前に力を付けて来た大学生組に、與那原や巽といった隠し玉的な高校生をミックスしたのが今年の巨人のドラフトだったということでしょう。確かにまだ評価の定まっていない選手たちを指名するということは、片岡さんの言う通り乱暴な気がします。しかし、それはそれで冒険心のある野心的な試みだったという気がして来ることも確かです。少なくとも一部記事のように、賭博事件でどこからも恨まれない地味指名に徹したなんてことは無かったのだと私は思います。

このドラフトが成功だったか失敗だったかは数年先にならないと分かりません。人気や名前より実力をとった名ドラフトになるのか、やはり、地味は地味のまま、つまらない人選のドラフトだったのか、今後も注目して行きたいと思います。

さて、後半は指名された選手たちがどんな選手だったのかを調べて行きたいと思います。(続く)

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