僕の好きな先生(後編)
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こじっく
2011年01月22日 18:53 visibility118
そして僕らは「クラス替え」を経て三年生になった。
ヒロ先生は他の学校に転任された。
離任式の日がやってきた。
僕は体育館に入った時から、ステージの方に顔を向けてヒロ先生の顔を見ることができなかった。
泣いてしまいそうだからだ。
泣き顔を周りの友達に見られるのが嫌だった。
でも、ダメだった…やっぱり泣いてしまった。
式の後、ヒロ先生が教室棟を回って僕らにお別れをして下さったのだが、僕はヒロ先生のところに行きたくて行きたくて仕方ないのに行けなかった。
泣き顔を見せたらあかんと思ったからだ。
僕は遠目で友達がヒロ先生にだっこしてもらっている姿を見ながらやりきれない気持ちだった。
後で、友達の一人が泣きながら先生に会いに行ったという話を聞いて激しく後悔した。
僕は多分生まれて初めて
「素直になれば良かった」
と思った。
その悔しさがあったから、その11年後、僕が幹事をさせて頂いてヒロ先生のクラス会をさせて頂いた時の嬉しさは格別だった。
しかし…あれから、クラス会は一回もない。
それは…幹事を拝命した僕があのクラス会で「俺は司法試験に合格して弁護士になる!」と大見得を切ったのに未だなれていないからだ。
何と言う公私混同ぶり!!
こういうのって、めちゃくちゃ恥ずかしい。
死んだ方がましなぐらい恥ずかしいし情けない。
そして僕は、もう司法試験すら受けていない(まだ司法試験というものがあるのかさえ今は、はっきり知らない)。
しかし、だんだん、そんなことは別にどうでもいい気になってきた。
僕という人間がたかが試験に合格できず特定の職業に就けなかったことなど、本当に気にしているのは世界中で僕という人間一人のように思えた。
先生やクラスの仲間に「ありがとう」という気持ちがあればすべてOKな気がしてきた。
それはさておき…今から二年前の2008年の秋、ある小学校の前に、紺のスーツを来た細身の男性が立って生徒の下校を見守っておられるところを目にした。
僕はその人の顔を見たとき「ハッ」とした。
年齢は重ねておられたが、ヒロ先生のようにも思えたからだ。
僕はしばらく立ちつくしてしまった。
しかし、やがてヒロ先生と思しき方に声をかけず僕は歩きだした。
僕は自信がなかったんだ…もちろん、ヒロ先生の顔を見分ける自信なんかじゃない。
その時は、「今の自分」に自信がなかった…。
僕、全然成長してない。
小学校三年生の時、泣いてしまったからヒロ先生に会いに行かないと意地を張ったあの時のまま。
ええ加減に変わらんとね…。
今年は年男だし、四捨五入したら不惑の四十歳!
そうすることが正しいと思うことがあったなら、ためらわずに前に出たい。
それが、昔の弱虫の僕を知ってくれている大事な人達に成長の証を見せることになるのだろう。
もう僕は前に進むだけなんだ…。
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