一つになるフランス、一つになれなかったブラジル:ブラジル-フランス
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soultrans
2006年07月03日 03:25 visibility126
優勝候補筆頭で、セレソン史上最強と呼ばれたブラジルは、ロナウジーニョが輝くことなくフランスの堅守の前に敗れた。これはだれもが予想していなかった事態かもしれない。
前半はお互いに攻撃と守備が入れ替わり、シュートまではなかなか持っていけない状態が続く。ブラジルはロナウジーニョ、カカ、ペルナンブカーノ、ゼ・ロベルト、ロナウドらが攻撃を模索するが、フランスの4バックに絡めとられる。フランスの4バックはボールを取ってからドリブルで前線へ進み、ジダンやヴィエラを経由して、マルダ、リベリーへと渡してアンリへつなぎたいが最後に詰められない。また両チームの最後尾には、ここ一番の集中力に強いバルテズ、ジーダがそれぞれ優れた判断を披露して、前半はスコアレスで終了。
ただ、ブラジルは明らかに攻撃しきれていない印象があった。逆にフランスは、運動量の衰えたジダンをサポートするかのようにその周囲あちこちに出現するリベリーの運動量+スピードで、シュートまではいかないものの、前にボールを持っていく意志が感じられた。というか、リベリーがとにかく無鉄砲に前に持っていくのが、ブラジルのベテラン両サイドバックを翻弄していた。ロベカルはともかく、カフーに関しては明らかにスピードが落ちていて、アンリにはあっという間に置いていかれるという場面もあり、ブラジルのサイドバックの裏を狙われるシーンが多かった。
後半に入って、ジダンが左サイドからFK。ゴール前に蹴り込まれたボールは、どフリーのアンリへ。アンリをマークした多分ロベルト・カルロスが、置いていかれたというか、完璧にDFとしての職務放棄をしてしまいアンリはきっちりダイレクトで合わせる事ができた。右足インサイドのダイレクトボレーで、先制。セットプレーで二人の天才がフィットしたゴールとなった。その後、前がかりになったブラジルは、投入したアドリアーノ、ロビーニョも攻撃をフィニッシュさせることがなかなか出来ず、反対にカウンターで、フランスは更に2回ぐらいは惜しいチャンスがあった。ブラジルは98年のワールドカップ決勝の時のように攻め手を欠きに欠いて、ロナウジーニョは一度もスピードで切れ込むことが出来ず、そのまま試合終了。フランスが最終的には堅守でブラジルを粉砕した。
ブラジルはフランスに対して、これまでのワールドカップでは、1勝2敗。最近の2試合は、86年のジーコvsプラティニの対戦(PKでフランス勝利)、98年のファイナル(ジダンの2得点+プティのダメ押し)と2敗している。そのジンクス(トラウマ?)のせいなのか、フランスの攻撃そのものが良かったというよりは、ブラジルの攻撃がかなり単調なものに終始していたのが敗因と言っていい。
史上最強といわれたセレソン。そのタレント振りから、いつ大爆発するのか、とみんなやきもきしていたはず。実際に、日本戦では4-1、ガーナ戦では3-0と、その強さを徐々に発揮しつつあるという印象はあったが、みんなが望んでいるような、圧倒的な強さはどこにもなかった(日本にとっては十分すぎる程あったが、あの試合にしてもブラジルのベストゲームとは到底いえないような気がする)。これは単純に僕らの期待感がそう感じさせているだけなのかもしれないけど。そして、今大会初めて、優勝経験国でもあり、優勝候補といわれるレベルにあるチームと対戦したブラジルは、カルテット・マジコによる魔法は見る事はできなかった。
ブラジルが優勝戦線から離脱したのはただただ残念。ただその一方で、ジダンのプレーは、衰えるどころか、その終わりに向かっているのにもかかわらず、ますます冴え渡っていて、フランスの優勝が俄に現実めいてきた。
ワールドカップ前のフランスには、常に不安がつきまとっており、それを象徴するかのように、薄氷を踏む日々がフランス代表には続いていた。それはワールドカップ予選が始まっても同じ。スイス、韓国に連続ドロー。一方そのスイスと韓国は、フランスとのドローのほかに勝利を持っていたため、仮にスイス、韓国が最終戦で互いに引き分けを狙おうものなら、フランスにとっては、条件付き勝利という厳しい結果を求められることになった。しかも、3戦目はジダンが欠場するという状態。そこでフランスはなんとか踏ん張り、スイスと韓国は壮絶な形で勝敗を決定した。韓国は敗退してフランスが生き残る。ジダンとフランスはそこから一つになりつつある。
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