「クサビ」のパスを狙う 「意識」「技術」「戦術眼」


以前、近代サッカーは縦へ速くなっていると言うお話しをしました。

先日行なわれた日本代表vsイラクも、日本の攻撃は非常に縦を意識した近代的なサッカーを見せてくれました。

特に本田選手の先制点は、DFラインの裏を取る意識と、柴崎選手のDFラインを1発でし止めるパスがドンピシャのタイミングでイメージが合った素晴らしい速攻でした。

しかし試合全体を見ると、CFの岡崎選手やトップ下の香川選手には効果的なクサビがほぼなかったと思います。


では、自分達がボールを保持している、いわゆる「ポゼッション」している時にどこを見るか?

これが1番クサビのパスをチャレンジするのに重要になります。


その前に1つ。頭の中の誤解を少し整理します。

サッカーにおける攻撃で1番効果的なのは、オープン攻撃です。ここでは詳しくお話しませんが、中央突破からの得点より、オープン攻撃からの得点の方が上回ります。

ここで、オープン攻撃とサイド攻撃は同じではないと言う事を理解して下さい。

オープン攻撃とは、いわゆる相手サイドバックの裏にできる「オープンスペース」を効果的に陥れ敵陣深くからのクロスで得点を狙うもので、サイド攻撃とは、中央の守備を固めた相手に対し、サイドに起点を作り中央の相手をサイドへ引きずり出す攻撃で、必ずしもDFラインの裏へボールを運ぶ攻撃ではありません。


では、オープン攻撃を成功させる為に何が1番重要なのか?

その答えが「クサビ」のパスです。

縦パスとクサビのパスが違う事は、以前の日記にも書きました。

クサビはほぼ中央へ打たれていますが、これをサッカーに置き換えると、CFやトップ下(センターハーフ)へ打たなければいけないということではないでしょうか。


クサビは物を割る時などに使われていましたが、サッカーでも相手のMFとDFの間のスペースを「割る」というイメージを持っていいと思います。横パスをしつつ、サイドへボールを散らしつつ、またバックパスからサイドチェンジを織り交ぜながら・・・

しかし見るところは横でも後ろでも、サイドでもありません。1番に見るべきところはCFやトップ下といった、真ん中にポジションを取る選手です。


ここへ「クサビ」を打つため、相手の目線を変えるためであったり、打ちやすい場所を探すためであったり、打たれる側が準備する時間を作るためであったり、横パスを代表とするその他のプレーは、この「クサビ」を成功させる為の予備動作と言えると思います。

しかし、実際はサイドチェンジ(横パスも含め)する時クサビのパスを意識していない選手が多いです。


どんな時もクサビのパスを意識しながらプレーすれば、クサビを受ける側もいつでもクサビを受けられる準備を早くしなければいけません。そうすればクサビを打つタイミングも増え、相手MFとDFの間、いわゆる「バイタルエリア」で攻撃の起点を作る事ができます。

相手にとって1番嫌な所で起点を作れれば、そこへ相手の意識が集中します。当然相手のサイドプレーヤーの目線も中央へ寄ります。このタイミングがサイドバックの裏のスペースである「オープンスペース」を狙うベストタイミングです。

クサビのパスが良い形ではいれば、オープン攻撃のみならず、中央突破も狙いやすくなり、相手からするとボール奪取の的を絞りにくくなります。


また、クサビのパスが成功すると、中盤の選手は前を向いた状態でボールを受ける事が可能で、ゴールへ直結するスルーパスやシュートといったプレーを実行しやすくなります。

先日の日本代表の試合でも、吉田、槙野両CBからボランチを飛び越えトップ下やFWの選手へパスが通った場面がありましたが、そうする事で全体が相手ゴールを向いてプレーできると言う、前への推進力を高める事ができます。


縦へ速い攻撃とは、カウンターだけを指していると私は思いません。当然そういった「速攻」も縦へ早くなければいけませんが、「遅攻」でもゆっくりしたテンポから、このクサビのパスを合図に周りの選手が相手ゴールを向いて、そこから速い縦へのプレーを実行する事も含まれると思います。


どのポジションでも、どのエリアでも、このクサビのパスを常に意識してプレーする必要があり、そしてボールを奪った瞬間に1番に見るべき選手は、クサビを受けるセンターポジションの選手です。

クサビのパスが成功するか否かで、その後の攻撃の質が変わります。その為には、クサビのパスを常に狙う「意識」と、それを正確に実行する「技術」と「戦術眼」を養わなければいけません。



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