2005.10.15...
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HiRO
2006年06月20日 01:25 visibility61
Marines 4 - 5x Hawks
なんと言っていいのかわからない。
胸が熱くなる。
こんなゲームはそうそうない。
後世に語り継がれる名勝負。
負ければ後のないHawksと、王手をかけたMarines。
この究極の状況が生み出した珠玉のゲーム。
Marinesはここまで31年ぶりの優勝の重圧なんて感じていない。だが、本当にそれがかかった緊迫した場面で、今までと同じ状態でプレーが出来るのか。残念ながら、ここまでLionsもHawksもそういうプレッシャーを与える展開に持ち込めていない。
逆に、Hawksは失う怖さを知っているだけに、自らにプレッシャーをかけてしまっている。
そういう意味で、救いはこの日の先発が新垣渚だってところ。彼の場合、そういうプレッシャーに関係なく、いいときの渚か、悪いときの渚かできまりそうやけんね。
Marinesは渡辺俊介。
そして王貞治は遂にオーダーを代えてきた。バティスタをベンチにおいて3番に宮地を入れる。
そして、ズレータは自慢のドレッドをバッサリ。
こういう気合いや心意気を目に見える形で表現するところが、また日本人っぽい。
そして、これは信彦への無言のメッセージにも思える。
「自分一人で背負っとるわけやないよ。」
自分は、水道橋のスポーツバーで関東のHawksファン20数名と一緒に観戦だ。
初回、新垣の立ち上がり。
簡単に3人で終える。いいときの渚だ。
スライダーのキレが素晴らしい。
だが、3回に先頭ランナーを出し、セットポジションとなった途端、それまでとは別人に。なんか上半身と下半身がバラバラになって、いいところに決まっていたスライダーの制球が悪くなる。この回、4安打で2点を先制される。
ん、そういや先制点を許したのは初だな。こりゃ逆にいいかも。
Hawksも、序盤から俊介相手にランナーを出すものの1本がでない。1点が遠い。
中盤は、投手戦の様相。
ゲームの進行が早い。
8回表。
西岡にヒットと盗塁を許し、堀に四球で、1死1、2塁、福浦という場面で、三瀬にスイッチ。だが、三瀬の初球をライト線に運ばれ、2点タイムリー2ベースとなる。
終盤の決定的なダメ押し点。
Hawksファンを包む重たい空気。
4点差...
このままMarinesの胴上げを見ることになるのか?
結局、信彦は無安打のまま。1年越しの想いは叶わぬままとなるのか...
再び、信彦の涙は見たくない...
4点差のまま、あっという間に迎えた9回裏。
当然、マウンドには小林雅英。少し表情がこわばっている。緊張気味だ。
今までのMarinesは優勝争いのプレッシャーとは無縁だった。
プレーオフのないペナントならば9月の首位攻防で必ず何処かでプレッシャーと対峙することになる。それと向き合い、打ち勝たねば栄冠を手にすることは出来 ないのだが、プレーオフのおかげか、2位Marinesにはそれと向き合う場面がなかった。なんせ、2位がもう早々に確定していたからプレーオフが待って いる。
...その頂点を手にするプレッシャーを、Marinesが感じた初めての瞬間。
それを見透かしたかのように、カブレラが小林雅英を翻弄した。
打席で構えない。バントのような握りで、投げる瞬間、やる気なさげにちらっとバットを出して引っ込める。それを2球続けて2ボール。3球目はきちんと外角 にストライク。ならばと、やる気なさげにバットを構え、投げる瞬間に1歩ちょこんとベース寄りに動く。ピッチャーには目障りだろう。カウント1-3。次は またバントの構え。外に決まって2-3。だが、フルカウントにして追い込まれたのはカブレラではなく、小林雅英のほうだった。6球目は甘いコースに棒球。 それをセンター前に弾き返す。
続く代打のバティスタは打ちとられ、代打大道。
ボテボテのピッチャーゴロ。小林雅英が素手で掴み...なんと1塁へ悪送球!
その間に1塁ランナーカブレラは3塁まで進む。1死1、3塁。1塁は代走鳥越。
4点差もあるのに、このプレッシャー。これが頂点を極めんとする内なる葛藤。
王貞治の代打攻勢が続く。スタメンから外れた大村の登場。
初球からガンガン振る。さすが、いてまえの核弾頭。2球ファールの後の3球目。
決していい当たりではないが、打球は1、2塁間を抜く。
1点をかえすタイムリー!
沸きに沸く福岡ドーム。
Hawksファンはフラストレーション溜めとったけんね。このプレーオフ、やっと少しだけ吐き出せた瞬間。このまま負けるのは切なすぎるけん、最期に少しだけいいところも見せてよ。
この段階では、まだその程度。
が、これはまだまだ序章に過ぎなかった。
なおも1、2塁。
川崎が大きなバウンドで3塁今江の頭を越すレフト前ヒット。
ボールを獲ろうとジャンプした今江と2塁ランナー鳥越が交錯し、鳥越は3塁にストップ。ところが、これが走塁妨害とみなされ、一旦は、鳥越のホームインが 認められる。が、ボビーの抗議を受け協議の結果、走塁妨害だが、それがなくともホームインは出来なかったとの判断で、ホームインは取り消し。鳥越は3塁へ 戻され、満塁で再開とのアンパイアの説明。
凄まじい大ブーイング。
このブーイングの最中、次打者、代打荒金の肩を抱き何か一言ささやく王貞治。
その荒金がセンターへ抜ける2点タイムリー!
4-3、1点差!
1死1、2塁。
さっきまでは、せめて最期に少しはいいところも...だったのが押せ押せムード。同点、逆転への夢が俄然現実に。盛り上がる会場と福岡ドーム。
続く宮地は初球をファーストゴロ。ランナーは進塁し、2死2、3塁。
そして...ここで回ってくるのか?!信彦!!!!
一緒に1年越しの夢を叶えんと割れんばかりの大歓声。きっと、このとき、福岡ドーム全体が震えていたに違いない。
昨年は、プレーオフ最終戦。そう、9回裏同点の2死2、3塁、一打サヨナラの場面。
Lionsは三冠王松中との勝負を選択した。
結局打てず、1年間、その雪辱を胸に、がむしゃらにバットを振った松中信彦。
信彦もファンも分かっている。この想いはバットでかえすしかない。
だが、このプレーオフ、その想いの強さが災いし、信彦の筋肉を強張らせスイングを狂わせている。ここまで無安打。
遂に、この緊迫した状況で、その雪辱のときを迎える。
三冠王に輝き、シーズンをぶっちぎりの1位で終えたにも関わらず、眼前のLionsの胴上げにタオルを被ってうつむき泣いた信彦。
今年も二冠王。
もう二度とそんな信彦の姿は見たくない。
Hawksファン全ての願いを背に打席に向かう信彦の姿。
だが、無情にもキャッチャーが立ち上がる。敬遠。
確かに、普通なら、ここは二冠王との勝負は避ける場面。
だが、ここはあと1死を獲ればMarines優勝が決まる。信彦は未だ無安打。後ろはズレータ。それで敬遠するか?
信彦の雪辱の機会を奪われ大ブーイングの福岡ドーム。
こういうときの福岡ドームは本当に凄い。密閉空間特有の地鳴りがする。
想い出すのは1999年9月。初優勝をかけ、優勝争いをするLionsとの直接対決。
松坂が、その剛球で秋山の頬骨を砕いたその瞬間。360度、ありとあらゆる方向からの怒声が、その特有の密閉空間で反射するのだろう、地鳴りがおこりドーム全体が鳴動する。そのとき、それをスタンドで経験した。
その後、韓国で行われた五輪予選で、満員の韓国サポーターからのブーイングを浴びた松坂はこういった。
「福岡ドームに比べれば、全然大したことありません。」
信彦の打席、3球目の後、スタンドからものが投げ込まれている、それに気づいた信彦自らがタイムをかけた。スタンドに向かって制止するかのように手を振る。3塁ランナー宗もスタンドに向かって「抑えて、抑えて」というゼスチャー。
王の息子達は何処までも素晴らしい。それを見るだけで目頭が熱くなる。
信彦は歩かされ、2死満塁でズレータ。
だが、この一連の、この福岡ドームの雰囲気に呑まれた小林雅英の腕は完全に縮こまっていた。球速こそ153km/h出ているが、全くストライクが入らない。ストレートの四球!押し出し!
遂に同点!!!
完全に分からなくなった。
Marinesの選手達はこの回、歓喜の瞬間に備えて、もうベンチ前に出てきていた。胴上げに備えスパイクも履き替えていただろう。
だが、勝負は下駄を履くまで分からない。
Hawks側から見てもそう。
昨年のプレーオフは最終戦の9回、同点に追いつきながら勝ち越し点が奪えず敗れ去った。
だが、馬原がその流れを確かなものにする。
同点で迎えた10回表、先頭今江を打ちとったところで三瀬から馬原にスイッチ。
その馬原をリードするのは若い領健。このバッテリーがストレートで圧しまくる。
なんと、領健がゼスチャーで馬原に「腕を思い切り振れ」と腕を振っている。
堀をストレートで圧倒し三振。
こうなると負ける気がしない。
さあ、10回裏。
先頭バティスタがレフト前ヒット。こういう集中力はさすがだ。鳥越が1球できっちり送って1死2塁。
大村が初球をセンター前へ運び1死1、3塁。
そして打席に宗。2球目に大村は2塁へ。1死2、3塁。
Marinesは当然前進守備。
川崎の1、2塁間への打球は、その前進守備の間を抜けた。
サヨナラ!!!
なんという劇的なゲーム!
勝った瞬間に目頭が熱くなった。
宗もお立ち台で目頭を熱くしている。
そして...信彦は雪辱のチャンスを貰った。
「あした打席に立てることを、みんなに感謝したい」
9回の敬遠は、今まで相手を見下ろせなかった信彦の心境を変えるかも知れない。
プレーオフを後から振り返ったとき、この敬遠が致命的なボビーのミス采配となる可能性がある。
やっとHawksらしい連打が出た。
そしてMarinesが初めて経験する重圧。
星勘定の上では、まだ不利なのは確か。
この流れを離さず、ガッチリ握って明日、明後日に。
最期の最期まで諦めなければ可能性はある。
ここから。ここからだ。
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交流戦が終わり、昨年同様Marinesの1位が決定。
ここから、今年のペナントレースがどう転ぶかは分からないが...
Hawksファンとしては昨秋の悔しさは決して忘れてはいない。
そんな悔しいプレーオフではあったが、負ければ後のない場面で若鷹達はこんなに素晴らしい最高のゲームを魅せてくれた。
そんなことを考え、想い出し、昨秋書いた文章を、こちらにアップすることにした。
昨秋は濃厚なゲームをたっぷりと堪能させて貰ったプレーオフ。
今年の秋、野球ファンを愉しませてくれるのは、どのチームの、どの選手だろうか。
Hawksファンとしては、もちろん、それがHawksで、日本シリーズまで愉しませてくれることを願ってやまない。
- favorite1 visibility61
- 事務局に通報しました。
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