得失点と勝敗

  • DIME
    2009年06月13日 19:39 visibility181

今年は誤解と濫用の年と書いた気がしますけれど、こんなところから出てくるとは思わなかったです。
ヘンリー予想にしろRPW式にしろ、「監督の手腕を評価する」指標として編み出されたものじゃないと思うんですよねえ。
言及しておいたほうがいなぁとおもっていたら、クロスケさんがまた秀逸な記事を書かれていたんで、リンクを張らせていただきます。

ほんとこれ書こうと思ったらすごい難しいので、私もまとまってない文章になってしまうんですけど。

そもそも考え方としては、勝敗数と得点を結びつけるってのがこれらの式のコンセプトであると思うんですよね。
野球(というかスポーツ)の目的は勝利すること、なんです。では、勝利に結びつく指標は何であろうか、と考えたときにまず出てくるのが得点と失点。ここでは得失点は結果ではなく、データです。
これは辞書をひけば「野球とは得点を競う競技」とたいてい定義されていることを考えれば、誰でも予測できること、当たり前といえば当たり前ですよね。
その予測をある程度裏付けるのが、ヘンリー理論なりRPWなんです。
実際の勝率と仮想の勝率とを比較するっていうのは、そもそも想定されている活用方法じゃないと思います。このあたりは私は体系だってセイバーメトリクスを勉強しているわけではないので、多分そうだろう、って事でしかないんですが。

「予測勝敗」と「実際の勝敗」との間にはどうしても乖離が発生します。そもそも乖離が発生するのは回避できないことであり、そこには複合的な要因があります。そこをひとつの要因だけに限定することは非常に難しいです。
ところが、「ヘンリー理論などでの勝率と、実際の勝率を比較して、監督の能力の差として論じる」のは、「ヘンリー理論での勝率と、実際の勝率との間で発生する乖離は、監督の能力差のみ(或いは大多数を占める)である」という仮定を未証明のまま、使っていることになります。
この仮定はほとんどすべての人は受け入れられないと思います、こう書いて見れば。ただ改めて書き出して見ないと無意識の仮定って気づきにくいものです。

で、これは既に多くの方が言っていると思いますけれど、ではなぜ大きな乖離が発生しているのですか?と聞かれれば、一番可能性が高いのは、偶然(或いは運)です。
主体的なモノでこの乖離を作り出しているかもしれないと思えるものとすれば、「勝ちパターンの中継ぎ」が関与する可能性が疑われるぐらいかと思います。ただ、この場合は「勝ちパターンの中継ぎ」とは何かという定義からはじめないといけないので、証明は非常に難しいのですけど。
そういってしまうと記事にならないというのはわかりますけどね。まぁこの辺は他の方も言及しているでしょうから。
そもそも「監督の選択」は勝敗を左右できるほど、大きな選択肢である可能性は低いです。
監督は球を投げないし、監督はバットを振りません。
そして、野球というスポーツは優れた投手(或いは野手)であれば高い確率で成功し、劣った投手(或いは野手)であれば高い確率で失敗する、というようなスポーツではありません。
確率で見たときに分布は狭い範囲に偏っていて、ここに有意差を見つけ出すにはたくさんのサンプルが必要です。だから偶然に左右されやすい。

ちなみに、得失点から予測される勝敗と実際の勝敗とに大きな乖離がある球団があったときに、その球団をどう思いますか?って聞かれれば、「これから勝利が偏って、予測勝敗に近づいていく可能性が高い」、つまりチーム成績が向上していく可能性の高い球団である、と答えますよ。

chat コメント 

コメントをもっと見る

通報するとLaBOLA事務局に報告されます。
全ての通報に対応できるとは限りませんので、予めご了承ください。

  • 事務局に通報しました。