その3 書評 巨人軍は非情か

  • DIME
    2009年01月31日 23:26 visibility221

ちょっと間が開いてしまいました、その3です。
ひとまずこれで最後かと思います。

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最後なので残り物ってかんじですけど。プロ野球のいろんな制度とか状況とかについての認識ですね。

例えば、保留権や、契約金について。
個人的にはごくごく当たり前のことだと思うのですけど、意外とこういうことって認識されていないことが多い。少なくともしっかり認識されていない理の通らない論理があふれてます。
このあたりについてかかれている部分を抜粋してみますと、まず一番わかりやすいのはこれでしょうか。
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契約金は選手を長期拘束する代償である。(中略)日本球界は球団が選手に対して、九年間の長期保留権を保有することで成り立っている。秀でた選手も入った球団に年季奉公を九年間も勤め上げなければ移籍できないし、引退後も野球活動を制限される。一軍半以下の選手であれば、入った球団からでられないことも珍しくない。
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保留権と契約金っていうのは、表裏一体なんですよね、このあたりがどうも理解されていない事って多いなぁと思います、ちょっと考えればわかると思うんですが。
契約金が高いのは保留権が長すぎるから。契約金を下げようとすれば、契約後の強すぎる球団側の権利を弱めなければバランスが取れない。
だから、契約金はもっと少なくあるべきだとかいいながら同時にFA期間短縮に反対するなんていうのはあからさまに矛盾。それは理が通らない。
逆に言えば、入団時点での契約金を高騰させないようにしようとするのであれば、保留権を撤廃するか弱めてしまえば良いだけ。先に大金を支払うだけの価値を無くしてしまえば、誰も支払おうとはしなくなる。
西武の裏金問題のときとか、ビジネスモデルを論じたときにも書いたけれど、裏金が発生する理由は、裏金を支払うメリットがあるから、支払うメリットが何故出てくるかと言えば強い保留権があるから。
だから裏金問題を解決使用するならば保留権を弱めることで裏金を支払うメリットを無くしてしまうのが解決策としては最善。とても単純でわかりやすい事なんだけどな。

あと、契約金に関連することについては、育成選手が支配下選手になったときに契約金を支払うのかどうかについてもかかれていますね。
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 ちなみに、巨人軍は育成選手が支配下選手(七十人枠)に昇格した場合でも、一定の契約金を払うことにしている。経理部長は渋い顔をするのだが、新人選手を野球協約というルールで縛る以上は合理的でありたいと思う。
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 例えば、育成ドラフトで入団した選手には支度金はあるが、契約金は払われない。(中略)育成選手が支配下選手にはい上がっても、巨人軍以外の球団は契約金を支払っていない。
 彼らも支配下選手になったとたんに、球団から「フリーエージェントになるまでに九年」と長期拘束を義務づけられる。だから私は「金額は少し安くても、その能力や将来性に応じた契約金を支払うべきだ」と主張し続けている。
 しかし、それが多数意見とならない現状にあっては、育成選手はこれより道はなし、と思い定め野球に精進するほか手立てはないだろう。
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これに関しては私も松本哲也が支配下にあがるときに書いたんですけど(日記 松本哲也が支配下登録へ)、同じ意見を持っています、払わないのは「非合理的」ですよね。

あとここについては一点、補足しておきますと、「巨人軍以外の球団は契約金を支払っていない」っていうのは、違っています。正確に言えば違っているのではなくて、その記事の日時、2008年2月4日時点でっていう注意書きを加える必要があります、「2008年2月4日時点では、巨人軍以外の球団は契約金を支払っていない」が正確です、たぶん。
この記事以降に、育成選手が支配下選手となったケース(過去に支配下選手だった場合を除く、吉川とかね)は、オリックス、楽天、横浜で4例あるはずです。
このうち私の記憶が確かなら、例えば、横浜ベイスターズの関口雄大は契約金も支払われているはずです(参考、ニッカンスポーツ)、彼の昇格は2008年シーズンオフですね。
オリックスの梶原は支払われず、楽天の中村と内村に関しては当時気にしてニュースを見たんですけど、その点に触れている記事がなかったのかな、見つけられませんでした、今もちょっとぐぐってみたんですけどやっぱり不明。このあたりが「不明」になってしまうマスコミってどうなのよって思いますけど、まぁ今のマスコミにここが大事な場所だとわかっているように期待する方が間違っているんでしょうねえ。
最低限こういうのは、加筆修正ぐらいはしておいて欲しかったなぁと思います。

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あとは、田沢問題ですかねえ。
先に同意できないところを言っておきますと、個人的には清武代表の「キミはタザワを見たか」っていうのはちょっとわからないです。
「日本での活躍をファンが見届け、深い思い入れを担った選手だから」こそ、ファンは応援するんじゃないのかっていう主張なんだろうと思いますけど、この点に関しては正直そうだとは思いません。
現在のファンってのは、「テレビの中」でしか選手を見たことがないっていうファンも非常に多いはずで(というかそっちの方がほとんどじゃないでしょうか)、そういうファンにとっては、「テレビの中」との距離、テレビの中が東京なのか、それともボストンなのかっていうのはあまり変わらないんじゃないんでしょうか。
ただ、この一点をのぞけば、書かれていることは同感です。
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一球団の消滅にあれほど興奮した人々が、やがては球界縮小、球団消滅へと繋がる可能性の高い人材流出に鈍感なのは首をかしげるばかり
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 こんな時代は予測できた、と怒る上原に、球界関係者の本音を聞かせてあげたい。
 FA/新人ドラフト論議の際、ある球団の代表は「選手の海外流出の懸念もあるが、はっきりしないことにこだわる必要はない」と言い切っている。
 アマチュア団体幹部はこう主張した。
「メジャーへの流出とおっしゃったが、大学、社会人でも、そんなに短絡的ではないだろう」
「ドラフト制度を考えるときに、メジャー流出のおそれがあるから、というのは腹に入りにくい話。ほんの一握りの選手のために制度まで考える必要はないのではないか」
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 田澤選手の意向について、社会人野球を統括する日本野球連盟は、消極的ながらも「反対する理由はない」という姿勢だ。鈴木義信副会長は「職業選択の自由があるし、反対できない」と明言している。
 日本野球連盟を始めアマチュア団体はこれまで、選手の職業選択の自由について否定的であった。選手に球団を選ぶ自由を与えることは不正に繋がるし、プロ球団間の戦力均衡の観点からも芳しからず−−−というのが代表的な意見である。
 しかし、職業選択の自由は、田澤選手だけにあるのではない。大リーグだけにあるのでもない。日本野球連盟が田澤選手の職業選択の自由を尊重せざるを得ないというのであれば、その他大勢の選手についても一律に認めなければならないはずだ。
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この他にも是非読んで欲しい場所はたくさんあるのですけれど、それらは是非、本の中で確認してください。

それにしても「アマチュア団体幹部」、酷い危機意識の欠如ですよね。でもこれは当然です、彼らが自分たちの存続さえを考えるのであればどうでもいいのですから。
前回も書きましたけど、この問題は、プロでない限り「問題」と認識されないんですよ、アマチュアの立場である限りはどうしても、危機とは考えてもらえない。それがおかしいとは思いません、むしろプロ野球を含めたプロ野球全体を考えて活動することをアマチュア組織に期待している人たちの方がおかしいなぁと思います、性善説って基本的にあんまり支持できないです。
アマチュア団体のこれまでの立場、考え方が「職業選択の自由について否定的」な姿であると指摘しているのも正しいですよね、団体側から言わせれば、「否定しているわけではない」って言うに決まっているでしょうけど、彼らの今回の田沢問題に対する姿勢はダブルスタンダード以外の何ものでもないです、これはちゃんと指摘されておかなければなりません。

私は、選手流出に関して、「直接大リーグに挑戦するアマ選手などしばらく出てこないと高をくくっていた」球団があるとは思わないんですよね。
実際の所は、「現実としてそういう問題が早晩発生するだろうけど、それを前提とすると自分の球団に不利になるから、その問題が発生するまではそう主張しておこう」と考えていたんだと、“信じたい”です。
だって、もしそこまで現実の見えてない球団があったのだとすれば、むしろそっちの方が怖いですから。建前として言っていたんじゃなくて本気で言っていたんだとすれば、怖気が走りますよね。
そんなことも「見えなかった」経営陣がいるって事ですよ、恐怖以外の何ものでもないです。ファンがこういうのをね、本気で言っているのだとしてもまだ理解できますけど、それを仕事にしている人間がもしこれぐらい予測できた未来(そして発生した現実)が理解できていなかったのだとすればもうね、泣きたくなりますよね。

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横浜関口が育成から支配下選手契約に

育成選手の横浜関口雄大外野手(23)が支配下選手契約を結んだ。契約金500万円、年俸440万円(金額は推定)。背番号は65。関口は「1ステップは進めたけど、ここからです」と話した。

[2008年12月2日11時25分 ニッカンスポーツ]

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