昨日の件で一つ質問があったので。
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DIME
2007年12月24日 20:59 visibility660
補足しておきます。
まず、最初にお断りですが、野球協約に関しては、選手会HPの以下の書式に準じます、詳細はリンク先にてご確認ください。
日本プロフェッショナル野球協約2007
質問の内容は、野球協約第123条並びに124条についてです。「これが適用されるので、トレードによって入団した選手は、プロテクト名簿に含まれないのではないか?」という質問です。
先に回答をしますと
第123条並びに124条は、「ウェイバーによる選手契約の譲渡」に限られます。
ほとんどのトレードは「ウェイバーによる選手契約の譲渡」ではなく、単なる「契約の譲渡(別の言い方をすればウェイバーによらない選手契約の譲渡」ですので、これらの条項は該当しません。また仮に「ウェイバーによる選手契約の譲渡」に該当したトレードが行われていたとしても、それを理由としてプロテクト名簿から除外される事にはなりません。
まず該当する2条を抜粋します。
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第123条 (再度のウエイバー)
他の球団からウエイバーにより選手契約を取得した球団は、その日から60日を経過しなければ、その選手との選手契約のウエイバー公示手続きの申請は許されない。
第124条 (譲渡条項の準用)
この協約における選手契約譲渡にかんする各条項は、別段の定めがない限り、ウエイバーによる選手契約の譲渡にかんするそれぞれの場合に準用する。
*第100条(譲渡公示の手続き)、第112条(譲渡選手の事故)、第113条(事故の通告)第114条(移転費)
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この内容を理解するためにまず『ウェイバー公示』とはなんぞやということから説明します。
これは第115条にその定義が記載されています。
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第115条 (ウエイバーの公示)
球団が参稼期間中その支配下選手の契約を解除しようとする場合、球団はあらかじめ所属連盟会長へ、その選手との選手契約を放棄し、その選手の保有を希望する球団に選手契約を譲り渡したい旨のウエイバー公示手続きを申請しなければならない。
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これに関連して、『選手契約の譲渡』は第105条で以下のように定義されています。
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第105条 (選手契約の譲渡)
球団は、その保有する選手との現存する選手契約を参稼期間中、または保留期間中に、他の球団に譲渡することができる。選手契約が譲渡された場合、契約にかんする球団の権利義務は譲り受け球団に譲渡される。
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以上からわかるとおもいますが、ウェイバー公示というのは、「支配下選手の契約の解除」を目的として行われるものです、譲渡のためにするものではありません。
逆に『選手契約の譲渡』に関しては、ウェイバー公示についての記載が有りません。
もちろんそう書いていないだけでは、「選手契約の譲渡には必ずウェイバー公示が必要なのでは無い」ということの証明にはならない、実際は必ずやっているんじゃないのかって主張する人もいるかもしれません。
しかし、「選手契約の譲渡で必ずウェイバー公示をしなければならないわけではない」事は簡単に証明できます。
まず「選手契約の譲渡で必ずウェイバー公示をしなければならない」のだと仮定してみます。
第105条で、『選手契約の譲渡』に関しては参稼期間中、または保留期間中に出来る、とかかれています。それに対して第115条で、ウェイバー公示は参稼期間中にする場合とかかれています。
「選手契約の譲渡で必ずウェイバー公示をしなければならない」のだと仮定していますから、ウェイバー公示ができる期間外である保留期間中には選手契約の譲渡ができないという矛盾が発生します。ゆえに仮定は偽です。
改めますと、契約の譲渡の時にウェイバー公示を必ずしなければならないという記述はありません、『選手契約の譲渡』は必ずしもウェイバー公示が必須ではないって事です。
それを別の言い方に変えると、「契約の譲渡」には
1、ウェイバー公示を経た譲渡
2、ウェイバー公示を経ない譲渡
の2種類がある、ということです。
ほとんどの契約の譲渡は2番に該当します、実際にトレードの時にウェイバー公示が行われている例はほとんどありません。
ただ、もちろん「悪魔の証明」という言葉で知られている通り、「『無い』事を証明する」のは非常に難しい為、これらのトレードがウェイバー公示されていない事そのものを証明するのは無理なんですけどね、どれだけ公示はされていないと言っても、その直接的な証拠は無理です。
公告の義務のようなものがあればいいんですけど、残念ながらウェイバーの公示についてはそれをリーグの外、つまりファンへ示す義務も定まっていないし、実際に外に示すという活動は探してみても見受けられませんでした。
具体的に言えば今回の阪神の2つのトレードのうち金村のトレードに関してはウェイバー公示を経たトレードではないと言うことを証明するのは難しいです。
ちなみに、平野と阿部のトレードに関しては参稼期間中ではない12月になってからのトレードなので絶対違います、このあたりは後で詳しく述べます。
だいたいほとんどのトレードは関係する2球団(日本では三角トレード禁止されているので2つ)で合意した結果行われています。その時に必ずウェイバーをしなければならないという規定は無いので、ウェイバーにかけることはほとんど有りません。
何故ならば、仮に球団同士が合意の上でトレードをしようとしても、そのトレードをウェイバー公示した上で行おうとすれば、ウェイバー順の早い球団が手を上げればそこが獲得する権利を得るからです。
阪神が行った2つのトレードのように、他から横槍が入らなかったというのは、ウェイバー公示をした上でのトレードでは無いということを示しています。
という間接的な証明しか出来ません。
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なので、引き続いて、仮に金村・平野・阿部らのトレードがウェイバー公示によるトレードだったとしても(実際は間違いなく違いますが、証明できないので)、この第123条がFAによる人的補償とは関係しないということを説明します。ポイントは参稼期間です。
まず、改めて該当する3条を抜粋します。
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第115条 (ウエイバーの公示)
球団が参稼期間中その支配下選手の契約を解除しようとする場合、球団はあらかじめ所属連盟会長へ、その選手との選手契約を放棄し、その選手の保有を希望する球団に選手契約を譲り渡したい旨のウエイバー公示手続きを申請しなければならない。
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第123条 (再度のウエイバー)
他の球団からウエイバーにより選手契約を取得した球団は、その日から60日を経過しなければ、その選手との選手契約のウエイバー公示手続きの申請は許されない。
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第124条 (譲渡条項の準用)
この協約における選手契約譲渡にかんする各条項は、別段の定めがない限り、ウエイバーによる選手契約の譲渡にかんするそれぞれの場合に準用する。
*第100条(譲渡公示の手続き)、第112条(譲渡選手の事故)、第113条(事故の通告)第114条(移転費)
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第115条に書いて有りますとおり、ウェイバー公示ができる期間は参稼期間中です、逆に参稼期間じゃないときはこの記述に従えばウェイバー公示はできません。
じゃあこの参稼期間とは具体的にいつなのか。これは第87条にあります。
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第87条 (参稼期間と参稼報酬)
球団は選手にたいし、稼働期間中の参稼報酬を支払う。統一契約書に表示される参稼報酬の対象となる期間は、毎年2月1日から11月30日までの10か月間とする。
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つまり、ウェイバー公示というのは2月1日〜11月30日の間に、その選手を保有している球団がその選手との契約の解除をしたい時に申請する手続きです。
この時点で12月に行ったトレードである平野と阿部のトレードに関しては絶対にウェイバー公示を経ていないということが証明できます。
逆に言えば、12月1日〜1月31日までは参稼期間中ではないので参稼期間中にするものだと定義されているウェイバー公示はしようと思っても出来ません。
んでほとんどのFA移籍(現時点までに発生している全てのFA移籍が該当します)では『FAによる人的補償で1名が移籍が決まる日』はこの参稼期間外ですので、当然その選手の契約の譲渡にはウェイバー公示が発生しません。
ちなみに何故参稼期間内となるかというと、FAに伴う人的補償には第205条の(3)号で期限が定められているからです、詳しくはこちらの日記(【NPB】 フリーエージェント制度)を参照。
で、第123条をもう一度よくお読みください、60日を経過しなければ出来ない事は「ウェイバー公示」です、「選手契約の譲渡」ではありません。
ということは、もし仮にFA選手の移籍先球団に『60日以内にウェイバー公示を経て獲得した選手』が居たとしても、12月1日〜1月31日は人的補償による選手契約の譲渡はウェイバー公示が出来ない期間中、当然ウェイバー公示を経ない契約の譲渡となりますので、該当する選手が移籍することは可能です。
で、先に「ほとんどの」と断ったように、今までそういう例は有りませんが、FA選手との契約が伸び伸びになって、例えば1月31日に契約し、その契約日から2週間以内に発送しなければいけないプロテクトリストが届く頃には2月の参稼期間中に入っているとかいう可能性もありえるといえばありえます。
ただし、ウェイバーの提示は前年の参稼期間中で無いと出来ませんから、もっとも遅くに出来るウェイバー公示は前年の11月30日、2月1日時点ではどんなウェイバー公示であっても60日を経過しています、結局どちらにしろ第123条は関係しません。
そもそも人的補償による移籍はウェイバー公示はいらないんですけどね。
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ウェイバーによる選手契約の譲渡と選手契約の譲渡は同義では有りません、前者は後者の一部にすぎません、ここを勘違いしないようにしてください。
最近の例でウェイバー公示によって移籍したのは、中日から横浜へ移籍したギャラード、巨人から公示され、ウェイバー順の早かった楽天が希望したけど本人拒絶で契約できなかったシコースキーなどがこの「ウェイバー公示による選手契約の譲渡」です。
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- 事務局に通報しました。
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