仁志敏久に捧ぐ。
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DIME
2008年03月27日 20:12 visibility2089
話が出たときから、今年の開幕一発目のお題はこれにしようとずっと思っていました。仁志が著書を出すという話です。
セの開幕からはちょっとフライング気味ですが、明日更新できるかどうかがわからないのでご容赦ください。
まず清武英利球団代表が『週刊ベースボール』紙上に連載している「野球は幸せか!」コラムの第四回、「トレードと情」を引用したいと思います。誤字・脱字・漢字変換ミスなどあるかもしれませんがそれは私のミスです、予めご了承願います。
日記の内容上、全文を引用します。引用の範囲内と思っておりますが、関係先で問題があると判断されたとすればその旨ご連絡ください。
先に言っておきます、長いですよ(笑)
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【トレードと情】
仁志敏久が残していったサインボールを代表室に飾っている。
<心こそ 心迷わす心なれ
心に心 心許すな
2006年11月6日>
十一年間、巨人の背番号8を背負った仁志が横浜ベイスターズに移籍することが決まった日だった。東京・大手町にある巨人軍の事務所に、彼は別れを告げに来た。
代表室のソファに座った仁志はいつものように、はにかんだような笑顔である。横浜への移籍は彼が強く望んだことだった。
「よかったね」と私が言って、この部屋にも何か残していってくれ、と求めると、「禅の言葉なんですが」とサインペンを器用に動かした。
自分の心と戦った一年だったことを、サインボールが語っている。
仁志はスポーツ雑誌『Number』に「プロフェッショナルの証明」というコラムを長期連載していた。遠征先のホテルや移動中でも原稿を書いていた。それを本にまとめたいと言うのが、彼と私の共通の願いであったが、ボールを手に「移籍でも、仁志はプロフェッショナルだったなぁ」と私は場違いなことを思っていた。
あれから半年、彼は手強い一番打者として、新天地の横浜打線を牽引している。打率三割三分三厘(5月19日現在)。「時間が惜しいんです」と言った仁志の決断は正しかったのだろう。
移籍の舞台裏を私たちが明らかにする事はほとんどないが、彼がサンケイスポーツに原稿十九枚もの手記を寄せているので、その範囲の中で球界のトレードについて述べてみたい。
サンスポの手記の中で、彼がトレードを思い描き始めたのは昨年3月だったことを明かしている。実際に彼が『移籍させて欲しい』と伝えてきたのはそのだいぶ後だったが、トレードがいかに難しいか、仁志自身もわかっていたようだ。
<ベテランの域に入る高年俸の選手となれば、現実的に相手探しだけでも容易ではない>
<清武代表とは口論となることもあったが、私自身が介入できるはずもないのだから任せるしかない>(手記より)
日本球界にはいまだにトレードをタブー視する傾向が強い。ベテランや功労者を移籍させれば、「冷酷だ」だの、「選手を大事にしない」だの、まともな取材をしない運動記者たちが悪罵を投げつける。
仁志に別れを告げてから二日後、産経新聞や朝日新聞にお決まりの批判記事が掲載された。産経はこうだ。
「いつから、巨人はこんなにも、選手を大事にしない球団になってしまったのだろう。(中略)桑田や仁志との決別。二人とも生え抜きの選手であり、巨人を支えてきた功労者。その彼らが心底から、巨人以外のユニホームを着たい−−−と願ったとは思えない」
プロの選手は出場機会を何よりも求めている、ということをこれらの記者は知らない。突っ込んだ取材をしようともしない。キャンプから遠征まで同じ釜の飯を食い、その背中を見つめていた自軍の選手たちだ。かわいくないはずがない。
仁志は当初、残留を説得した私に「自分はまだ選手としてやれると思っているが使われない。監督の方針もわかるが、こうして年を重ねていくのが耐えられない。時間が惜しい」と言って、二塁手が手薄な横浜の名を挙げ、「トレードを成立させて欲しい」と求めた。
選手の保留権を抱える球団は、選手を自由に移籍させる権利を有している。好きな球団に勝手に移籍されてはチーム編成もままならない。だからといって、仁志の移籍志願を頭から否定すれば、彼は引退へと追い込まれていったであろう。
彼は早稲田大学時代に主将を務めたが、リーグ戦で優勝したくて、監督を無視して自分でサインを出した、という逸話を持っている。頑固者である。
仁志は手記にこう記している。
<(引退か移籍か)どちらに転んでもと思っていたはずだったが、いざとなると自分自身の弱さを痛感する>
<携帯電話に清武代表からの連絡が入った。“いい方向に話が進んでいるから”。知人らとの外食の最中の出来事だったが、笑顔があふれる反面、涙を抑えることに苦労した>
移籍は土壇場の選手を奮い立たせ、球界を活性化させる。そう信じて監督と話し合うのだが、邪魔をするのは選手への「情」である。だから、球団代表は選手を好きになってはいけないね。
(敬称略)
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前々から言っていることですが、巨人は親会社がマスコミでありながら、マスコミ対策が非常に下手です、下手でした。
どう下手だったかと言うと、「河童発見」という見出しを出すようなレベルの新聞だからと高をくくっていたのか、これまで低俗な噂話程度なぞ目もくれなかった。そういう対応がいけなかった。どんなにバカらしくてもちゃんとそれが嘘であると言わないといけなかったんです、ほんとは。
そんな事をすると、今度は「何を噂話程度に向きになっているんだ」という批判が飛んでくるからやめていたんでしょうが、結果的にそれはミスでした。
何故ならそんな嘘を一々否定しなかった結果、世間ではこと巨人のことだけに限っては、“河童”レベルにもかかわらず、それが事実であるかのように通ってしまう、何とも不可思議な社会になってしまったからです。
ほんと意味がわからないんですけどね、何の証拠も無くスポーツ紙や雑誌で推測に推測を重ねただけの記事なんて幾らでもあるのに、何故巨人のことだけは信じてしまうのか。巨人だけが「悪魔の証明」を強いられるのか。無い事を証明しなければあるんじゃないかだなんて巨人以外に関しては戯言だと誰もがわかっていると言うのに。
そう思い込んで巨人という捌け口を確保しておかないとやってられないぐらい日々の生活でストレスを得ているのでしょうね、可哀想に。
で、まぁ可哀想な人がたくさんいるのは事実です、その可哀想な人々は正直どうでもいいのですが、世の中には清い心をお持ちで嘘を見抜けない人や、後から二次情報、三次情報として知らされるため、それが“河童”レベルの話だと知らずに確度の高い情報との誤解の元に情報に触れてしまう人がたくさんいます。
なので、嘘は嘘だとちゃんと教えてあげなければいけません。これをしなかったのが巨人のマスコミ対策が非常に下手だと言っているところです。
で、現在はどうかと言えばちゃんと行っています、嘘を書いてる週刊誌があれば嘘だと抗議し、嘘を書いてる夕刊紙があれば会見への立ち入りを禁止する。
その報道の締め出しに対して、「マスコミを親会社とする球団のすることか」などというアホ丸出しの批判もありましたけど、そもそも「伝達情報に正確性を有する」という報道としての当然の責務を果たしていない物は、報道という名の殻をかぶった別の存在です、そんなモノは国民の知る権利の代行者たる資格はないのです。
そういう抗議に対して、「後ろめたいことがあるから抗議してるんじゃないか」なんて明後日の方向を向いた邪推をする人もいます。全くそうではありません、わざわざ否定してあげなければ理解のできない可哀想な人が多すぎるから否定せざるを得ないんです、当然だと分かっているはずのことが巨人に限ってだけは当然とならないのがそもそもの原因です。
似たような事例として、「ある事ない事かかれてしまうのがイヤだから私はブログで直接発信します」とかいう芸能人やその他有名人に多い対処方法です。
結局これを巨人もすればいいんですね。小難しく言えば、巨人は加工された二次(以降の)情報を出すのではなく、自らが一次情報を直接発信しなければならない。
ネットが普及した最近ならともかく、昔は一次情報を発信できるという条件は貴重だったにもかかわらず、それを有しながら(=親会社がマスコミでありながら)、やってこなかった、これは大きく非難されてしかるべきだと思います。
例えば、戦力均衡に関する問題。私がこれまでずっと書いてきたとおり、「戦力均衡はプロスポーツの発展には何ら繋がらない」という考え方、大げさに言えばイデオロギーがあります。それに対して「戦力均衡することでプロスポーツはより発展する」というイデオロギーもあります。
そして巨人は前者のイデオロギーを前提として動いています。戦力均衡はプロスポーツの発展には何ら繋がらないと理解し、より自由な競争社会であることを目指しています。憚りながら私も同じです。
その「前提の部分がそもそも違っている」のだという理由を巨人はちゃんと発信しなければいけないんです。
それをしなければ、「戦力均衡=リーグ発展」という前提を元に作られた世界(報道、特にそこになんら疑いを持っていない個人のコラム等)の中では、巨人の活動が悪者扱いされるのは当然です。前提が間違っているのですからどれだけその後の論理が正しかろうとも間違った解答しか生まれません。
具体的には「巨人の動きは球界の発展と逆行する」とかいわれるんです、それは「巨人の目指す方向」と「彼らが前提としている方向」が真逆だからです。
巨人の目指す方向がそちらである事を知っていれば、巨人は巨人なりに「球界の発展に巡行している」事は理解されるはずです。そう理解されるように巨人は努力しなければいけないのです。
誤解の無いように付け加えておきますが「戦力均衡が必要ない」事が正しいと言っているわけではありません。イデオロギーのどちらが正しいのかは歴史が決めます、現時点でどちらが正しいのかは断定できません。ここでいう正しいとは「巨人の思考」を正確にうかがえているかという意味です。
正しく理解されて、その上で「その考え方は間違っている」と思われるならそれでいいのです。
しかし現在の状況は正しく理解されていません。「巨人の思考」への理解がないまま、巨人が何故そんなことをやっているのかが正しく伝えられずに、「間違った前提」というバイアスをかけられてまるでおかしな事ばかりをやっているように報道されてしまう、それが現状です。これは望ましい環境ではありません。
今までの巨人は「ちゃんとわかる人間はわかる」というやり方で動いていました、これは傲慢な殿様商売です、そんな事をしてきたから現状があるんです。
ですから巨人は、自分たちのことを正しく知ってもらう努力をしなければならない、その為には自らが直接発信する一次情報をもっと充実しなければいけない。
その情報に触れてもらった結果、「巨人が間違っている」と思われるならそれはそれでいいんです、たぶんそう思われる方も多数いると思います、でもそれでいいんです。
何故なら「大多数に共感してもらおう」としようとすると結果的に「誰しもに強く共感してもらえない」となる、社会がそう変わったんです。
「もし市場の半分の顧客に嫌われているのだとすれば、それは顧客セグメントが徹底していないという事だ」という言葉をどこかで見た覚えがあります、これは傾聴すべき言葉です。解説いりますか?いる人は言ってください。
一昔前までは、「万人に受け入れられる」と言うのは商品の大事な条件の一つでした。ところが今はもうそうではなくなっています。
これはもう市場が、顧客が、時代が変化しているんです、「万人に受け入れられる」が「ターゲットが不明瞭」に変わったんです、これは社会の変化です。
この変化は巨人にもプロ野球にも同じなんです、地域密着というのはその流れに沿ったものでしかありません。
昔だからこそ、「3人に1人は巨人ファン」なんて現象は発生しえたんですよ、それはそういう時代・社会だったからです。
車も、旅行も、アイドルも、ターゲットセグメントが細分化しているでしょ、それはプロ野球においても同じなんです。
今の社会においてペナントレースの1試合で視聴率を20%以上取るとか、日本全国どこに行っても巨人ファンがたくさんいるとか、そんな事は社会の摂理を超越するぐらいの力がないと無理です。
そんな事ができる前提で経営しようとする経営者が出てきたら巨人は終わりです。所詮多くても数百億の売り上げでしかないしがない小さな会社ですよ、プロクラブって。
ただ、断っておきたいのですが「万人に受け入れられる巨人」を今の巨人経営陣はもう求めていません、全くもって。それは見ていればわかります。
むしろその巨人像を追いかけているのは巨人批判ありきの文章の中であることが多く、巨人軍並びにその関係者は既にそういう思考で動いていないと言うのは皮肉以外のナニモノでもありません(笑)。
先にも書いたように「万人に受け入れる巨人」を目指していないという“前提”がそもそも違っていますので、そういう文章はどれだけ論理が正しかろうとも同じく間違ってしまうわけです。
今の時代に万人に受け入れることを求めるというのはもはや無理です。大事なのは自らを他と明確に差別化する事です。
それによって昔よりファンが減ってしまう事は避けらません、でもその時代を知らない私からすればそれは昔が異常だっただけです。今の時代しか知らない私は、むしろ大多数の人間が同じ方向を疑いもなく向いていたという時代そのものに不可思議さを禁じえません、良くそんな事が成立していたなぁと思います。
他球団との差別化のためにも「自分たちの姿を直接示す」という一次情報の拡充はとても大事です。そしてその手段の一つとして清武代表のこのコラムは非常に大きな役割を果たしていると思います。
一年で終わってしまわないかと危惧していましたが、それどころか1ページだったのが2ページになり、今後も続きそうな気配なのだろうと思います、ここ二ヶ月ほど図書館で週ベを漁っていないので断言はできませんが。
内容としても上記のコラムでもそうあるように、自らもマスコミ出身、そして将来的にはそちらに戻るであろう人でありながら、批判するべきは批判している、非常に健全だと思います。
これからも清武代表にはできる限りこのコラムを続けて欲しいものです、そうでもないと球人蔵も終わり、大家の連載も終わった今、週ベの中に魅力的なコラムがほんとなくなってしまう。
そしてこのコラムができるだけ多くの人に読まれて欲しい、だからいつか紹介したいと思っていたのですが機会がなく紹介しそびれていました。
ただ単に紹介するだけってのも能がないですからね、何か結びつけるニュースがないかなぁとオ持っていたのですけど、その点で今回の仁志の著書の出版は非常に良い機会だとおもったので、コラム一回分を引用させていただきました。
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で、その「一次情報」の大事さが今回の仁志の件でも明らかです、そういう意味でもこれを紹介しておきたかった。
具体的に言えば、下記のような報道が見受けられていると言う事です。
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仁志が作家デビュー…コラム加筆修正
ハマの切り込み隊長が作家デビューだ。横浜・仁志敏久内野手(36)の初の著書「プロフェッショナル」(祥伝社新書・税込み777円)が開幕前日の3月27日に発売されることが29日、明らかになった。
雑誌「Number」で03年から2年間連載したコラムを加筆修正。幼少時代から学生、社会人を経てプロ入りするまでの経緯、巨人入団から06年オフに横浜へトレードされるまでを自筆で書きつづった。技術論もプロの視点で説いている。
「自分で書いたものが出版されることにあこがれていた。現役時代に出した方がインパクトがあるし、説得力もあると思った」。昨年11月から「秋季キャンプ中は夜に、オフは午前練習後にかかりっきりだった」。締め切りの重圧とも格闘し、2カ月半で原稿用紙300枚を書き上げた。
中高年サラリーマンへのメッセージも込めた。「僕が巨人にいたままだったら書いてない。平穏な人間がものを言ってもね…。人生に波があったから、感じてもらえるところがあると思う」。プロ13年目の職人は、ペンでもファンの胸を熱くする。
http://www.daily.co.jp/baseball/2008/03/01/0000856585.shtml" target="_blank">デイリースポーツ
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巨人を出たとたんに臆面もなく巨人批判をし、巨人在籍時から書き溜めたものでありながら上記のように「巨人にいたら書いてない」だなんて事をいけしゃあしゃあと言ってのける。
もちろん好意的解釈をすれば“一部に関しては巨人にいたままだったらかけていない”という意味かもしれませんが、そういう意図よりも巨人批判の急先鋒との自分の立場を確立し、自分の存在価値を見出そうとしている(そして実際それに成功していると思います)ように私には見えます。そんな人だからこそあの仁志だと思います、彼は魅力的な人間なんだと思います。
巨人を出た後の仁志の行動は巨人批判という「多数派への迎合」です、しかし多数派に迎合することが悪いとは思いません、そういう気配を読んで自分にプラスになることであれば選択できる、それがコラムでいう仁志の「プロフェッショナル」な部分だと思います。
なのでこの仁志の言動が悪いものであるとは全く思いません、信とか仁とかいう言葉もありますけど、私自身がそんなものを他人にとやかく言えるような人間ではないですし(笑)。
ただ、こういう事を巨人が「真実は真実として変わらないから大丈夫」とか思って自らの主張をせずに受け入れてしまうのは先にも書いたように間違っているんです、巨人は巨人で自らの主張を示さないといけない。
私自身もだいぶ前にも書きましたが、巨人人気が凋落した期間はそのまま仁志がレギュラーを張っていた時期として重なります。それはつまり、仁志敏久が巨人人気凋落のもっとも重い“戦犯”の一人だという事です、特に選手の中では五指に入るでしょう。
「あなたにそれをどうこう言える資格はない、むしろお前のやったことだろ?」私は仁志に対してそう思います、巨人もそう考えるべきだと思います。巨人は球団と選手という立場に必要以上の遠慮をすることなく(=必要な遠慮はすべきだということです)声を上げるべきだと思います。
なので、巨人はこの仁志の著作で書かれている内容について、もし仮に事実と異なる所があれば、信義にもとらない限りの所まで、事実と異なる点は事実と異なると示さなければ行けません。
現時点での報道を見る限りそのような内容は見受けられませんが、仁志が無責任にも巨人批判をしその中身が的外れであるのならば巨人は的外れであると指摘しなければいけないのです。
1ファンである私ができる事としても、出版に併せて上記のコラムを引用しておくのは、有益なことだと考えました。だから引用しました。
その本に何が書かれているのかはわかりません、まだ読んでいませんから。しかし出版より遥か前に清武氏は上記のコラムを書いていた、その事実と書かれている内容はは是非皆さんにも知っておいて欲しい事です。
先にも書いたとおり、私は非常に仁志という人間には似た者の匂いを感じます、選手ではなく人として親しみを持っています(それが良い事なのかは微妙ですが)。だからこそのこの日記、1ファンとして私なりの“出版祝い”です。誤解して欲しくないのですが仁志を批判しているつもりはありません、彼のプロフェッショナリズムに誠実に応えるつもりで書いています。
そして本の内容を踏まえた上で、清武氏がコラムで仁志への“出版祝い”をなされることを期待しております。
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話しついでにコラムでも触れられているトレードについて。
これは一昨年、特に桑田真澄の件でも書いたことですが、私は最近のトレード事情の変化は選手側の意識の変化が根本にあると思います。
一昔前はたとえ余力が残っていようとも、その球団でいらないといわれたらユニフォームを脱ぐのが美徳とされていました。引き際の美学ってヤツですね。
今はどちらかというと、どこにいってもどんな場所でさえも「要らない」といわれるまであがくことのほうが美徳となってきた気がします。
仁志にしても桑田にしてもその変化の結果として「巨人後」をそれでも追い求める選手となったのだと思います。何でもかんでもそのせいにしているように見えるかもしれませんけど、これも「社会の変化」だと私は思います。
かつては「その球団に要らないといわれればすっぱりと辞める」というのが選手側の礼儀としてありました、だからこそ球団側としても生え抜きに対して「ぎりぎりまで耐える」という礼儀を返しました。両方が相対して初めて成り立つことだったんです。
「耐える」とはどういうことかというと、具体的には他球団より低いラインでその選手のデッドラインを設けるということです。支配化人数枠には限りがありますから、そこを一名潰してしまうとそれだけチームを強化できなくなります、それは大きなデメリットです。それを犯してでも「選手が球団はもう要らないと思っているだろう」と自覚するまで待つと言う事が球団が耐えると言う事です。
いま、多くの選手は最後の最後まであがくことを選択しています。それに対して球団側にだけ旧態依然とした対応を求めるのは選手側のわがままに過ぎません。
そういう意味でもコラムにも出ているような記事は全くもって間違っているわけです、片方では現役にこだわる選手の意向、その変化を追いながら片方では球団は昔と同じ視点でしか見れていない、自分の視点の自己矛盾に気付いていない、だから間違っています。
巨人は最大限の礼儀を払った、それでもなお本人が「現役」にこだわったから、その思いに応えられる限りの対応、自由契約にするなりトレード先を探すなりする。これは選手側のスタイルが変わっている中でそれに合わせた球団側のスタイルとしてこれ以上ない礼儀の尽くし方でしょう。桑田真澄にしろ、仁志敏久にしろ、前田幸長にしろ。
さらに桑田真澄に限れば、彼が自由契約になったとて国内から獲得球団は出なかった、つまり巨人は12球団でもっとも最後まで桑田を保持することに耐えたのです。巨人は桑田真澄に対し、昔の礼儀も尽くした上で、現在の礼儀も尽くしたのです。
ちなみに私個人は前者の生き方を美徳と思っています。どうでも良い事ついでに言えば、私もコラムに書かれている理由と同じで「選手を好き」であってはいけないと自分を律しているつもりです。
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その桑田がこのタイミングで引退を表明するのも何かの縁ですかね。
覚えてらっしゃるか、そして本人が見ていらっしゃるかはわかりません(というかほぼ無いでしょう)が、自己満足で書かせてください。
ジャイアンツ球場で桑田さんの都合も考えずに居残った私たちに礼を尽くしてくれたこと改めて感謝します。
あの時、試合後のジャイアンツ球場の入り口で最初に握手させていただいた者です。もう一度同じ言葉を、ありがとうを言わせてください、そしてお疲れ様でした。
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