事務折衝の話。
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DIME
2008年03月17日 16:11 visibility169
今回は報道各紙の内容はほぼ同一ですね、そっちの方がわかりやすかったんで一般紙から引用します。
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日本プロ野球組織がFA改革案を提示、選手会は保留
フリーエージェント(FA)改革などを議題とした日本プロ野球組織(NPB)と、労組・日本プロ野球選手会(宮本慎也会長=ヤクルト)の協議交渉委員会が16日、都内で開かれ、NPB側はFA資格取得期間の短縮や補償金の減額など、移籍活性化のための案を提示したが、選手会側は回答を保留、今後も協議を続けていくことになった。
NPBは、
〈1〉FA資格を取得するための期間は国内に限り、現行の9年から8年にする。2度目以降のFAの資格取得期間は国内、海外ともに4年
〈2〉人的補償を廃止し、FAで選手が流出した球団は、支配下登録と出場選手登録枠を1人増やし、それぞれ71人と29人にする。外国人の出場登録枠も1増の5人(ただしベンチ入りは4人のまま)にする
〈3〉FA選手の獲得に伴う補償金は、現行は最高で年俸の120%だが、旧球団の年俸順に1〜3位の選手をAとして年俸の80%、同様に4〜10位のBランクは60%、11位以下のCランクはゼロとする
〈4〉現行ではFAの獲得人数は2人に制限されているが、Cランクの選手獲得については制限を設けない
〈5〉2年間の試行期間の後、効果や球団経営への影響を検証する――の5点を提案した。
これに対し、選手会側は、資格取得期間について「国内7年」の姿勢を崩していない。〈2〉の外国人出場登録枠の増加については、「日本人選手の出場機会が圧迫される」と強く反発。〈3〉の補償金額の割合に関しては、さらに低く設定するよう求めた。
(2008年3月16日22時09分 読売新聞)
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FA補償金を大幅減、訴訟回避に譲歩案
日本プロ野球選手会(宮本慎也会長=ヤクルト)からフリーエージェント(FA)資格取得年数の短縮とFA補償金の撤廃を求められている日本プロ野球組織(NPB)が、現行9年のFA期間を国内移籍に限り8年に短縮し、FA補償金は一部撤廃を含め、大幅に減額する方針を固めたことが14日、わかった。16日の12球団代表者会議で最終案を固め、選手会と話し合う同日の協議交渉委員会で提示する。
選手会は訴訟も辞さぬ姿勢でFA期間を7年まで短縮するよう要求しているが、NPB側は8年が限度との意見が大勢。譲歩案として、選手会が移籍の活性化を妨げていると批判する補償金の減免を用意する。
現行は、FA選手の移籍先球団が旧所属球団に対し、当該選手が旧球団で得ていた年俸の1・2倍(人的補償を伴う場合は0・8倍)を補償金として支払っている。この一律だった補償金を、当該FA選手が旧球団で得ていた年俸の順位によって3段階に分け、大幅に引き下げる。
具体的には(1)年俸が上位3位以内なら補償金は旧年俸の80%(2)同4位から10位までは同60%(3)同11位以下は補償金なし−−の案を軸に最終調整する。また、FA移籍選手の旧所属球団が、移籍先球団のプロテクトした28選手以外の選手を獲得できる「人的補償」の撤廃も検討している。
NPB側が大幅な譲歩案を用意する背景には、訴訟を回避したい意図がある。FA権を得るまで長期にわたって身分を拘束する制度は不当として、裁判に訴えられた場合、NPB側の勝算は不透明。敗訴して大幅なFA期間短縮を強いられるより、話し合いで解決したい思惑が働いている。
しかし、選手会は国内FAを7年まで短縮したい意向。下交渉では譲歩案に同意できない方針をNPB側に伝えている。このため、NPB側は16日の交渉でさらなる譲歩を迫られる可能性が高く、最終決着にはなお時間がかかりそうな情勢となっている。
産経新聞
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(2008/3/19追記)
FA国内移籍年数合意せず…選手会と球団協議
労組・日本プロ野球選手会の宮本慎也会長(ヤクルト)ら10選手と12球団の代表者が16日、都内のホテルで、フリーエージェント(FA)制度改革について協議した。FA権取得年数の現行9年からの短縮、FA移籍に伴う人的および金銭補償の緩和策など幅広く議論したが、合意には至らなかった。
12球団側は海外移籍9年、国内8年とする方針を改めて提示。これに対し選手会は海外9年には同意の意向を伝えたが「7(年)という数字が見えないのが評価できない」(宮本会長)と、国内8年の再考を求めた。
また12球団は、FA選手獲得球団が旧所属球団に行ってきた人的補償制度を廃止。代わってFA流出した選手数がFA獲得選手数を上回った球団に限り、支配下選手登録枠を71人、出場選手登録数も29人と1人増やす。また旧所属球団内での年俸(日本人選手のみ)ランクが11位以下の選手は、移籍に伴う金銭補償をゼロとする方針を選手会に示したが、これらも合意には至らなかった。
今後は事務方レベルで協議を重ねて、4月末ごろに一定の結論を出す予定だ。
(2008年3月17日06時00分 スポーツ報知)
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報道を見てのまずの感想はともかくびっくりした、球団側がまたえらく譲歩している、既報があったとは言え、ほんとにこうなるとやはりびっくりする。改革派の球団はよくもまぁこれだけの譲歩を内部で勝ち取ったな。
普通に考えて、最初に意見を出し合って「じゃあそれで行きましょう」となるなんて小学校の学級活動じゃないんだからありえない。これを出した時点で球団側からしても想定している落とし所はもう少し先のほうにあるのが自然。
具体的には7年は妥協して、外国人は押し切る(か、アジア枠とか呑ませる、こっちは韓国・台湾のリーグとの折衝もいるが)ぐらいなのかな。
まぁ7年の方は改革派球団からすれば願ったり叶ったりといったところもあるだろうから、これ幸いと尻馬に乗るだろう、っていうか最初からそこまで考えといて他の部分で譲歩させといたんだろうけど。
実際のところ松坂などのポスティングの事例を見ればわかるとおり、「あと1年だったらもう1年我慢すればいいや」と思う選手が多いっぽい。それを踏まえると内外差1年だと、「もう1年待ってMLBも含めて検討しよう」と選手に思われるのは確実。
報道を見る限り、国内移籍をしてしまえば海外についても次は4年後という事だろう。それも踏まえて「国内に留めるチャンスが2回になる」と考えれば7年にするという事も理解してもらいやすいんじゃないかな。
今回最大の結果といえるのは事前の推測にもあったことだけど選手会側が海外期間短縮の要求を事実上放棄したこと、これは改革派球団からしても絶対呑めないから、選手会が強硬に主張し続けるようなことがあれば、訴訟一直線だっただろう。
日本の裁判所はとっても面白い判断基準をお持ちなので(ex:それでもボクはやってない)結論がどうでてくるかはわからないが、アメリカの裁判所とかだったらたぶん現行の保留権なりそういう「特異な球界の慣例」そのものが否定されかねないようなのがNPBの実態、常識的な裁判所ならそうなる(ただし日本の裁判所は多分そうならない、先日の小池会長のそれに近い、実に日本らしい性分をお持ちだから)。
この前の肖像権についてもそうだったしね、あんな判決が出てくるとは思わなかった。横浜事件の免訴なんかはあまりに当たり前すぎてあれで裁判所が批判される意味がわからないけど。っていうかあれが批判されるから裁判所もおかしくなるんだよな。
話を戻して、ここで選手会側が折れてくれたことでソフトランディングでの着地点も道筋も見えてきただろう。
内容については、面白いなぁと思ったのはこれ↓
〈3〉FA選手の獲得に伴う補償金は、現行は最高で年俸の120%だが、旧球団の年俸順に1〜3位の選手をAとして年俸の80%、同様に4〜10位のBランクは60%、11位以下のCランクはゼロとする
あ、そっかって思った、これは考え付かなかった、バカだなぁ俺も。
まえーにFA制度について書いたときにも、単純に年俸だけで決めてると有利不利が出るよと言っていたんですけど、これなら大丈夫っぽい。
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各球団の年俸評価の画一化が計られていなければ球団によって同じ金額でも選手評価が違うわけですから無意味です。
仮に今のような状態でそれをやったとなると、例えば1億の価値がある選手にチーム事情から0.5億しか払えていなかった球団の場合、その選手が移籍したとき、実際は1億分の損失があったにもかかわらず見返りは0.5億に準じたものしかなりません。逆に2億払っている球団だとすれば1億の損失に対して2億相当の見返りが与えられます。つまり金払いの良い球団のほうが有利です。
(一部抜粋)
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球団内部での相対的な順位という事にすれば、外部と比較はしないのですから球団毎の年俸格差による有利不利はなくなりますからね。
ただし、逆に言えばこういう制度にするというのは事実上、「球団によって年俸評価の格差がある」という事を認めるに等しいですから、「新入団選手が希望球団を選べない」事を問題視するときにその実態を示している現象の1つと言われるのは確実、というか私ならつつく。
ドラフトに問題があると考えているような球団からすればそれはむしろ歓迎されるべき事態ですからそこまで見越してやっているのかもしれませんけどね。
他の影響とすれば、そうなってくると若手選手についてはFA資格を獲得する直前の年度になって急に年俸をあげてくる(或いは直前まで抑えてくると表現すべきか)事例が増えるでしょうね。
逆にベテラン選手は「それまでの積み重ね」で高年俸になってくる状況が多少変化して実力に見合う水準に近づくかもしれない、まぁどれだけ市場が活発になるか次第ですけど。
(2008/3/19追記)
ちょっと私の考え不足でこの点は他にも問題点がありました、あんまり上記は参考になりません。まだ考えが固まらないのでとりえあえずその点だけ先に謝罪しておきます、失礼しました。
〈2〉人的補償を廃止し、FAで選手が流出した球団は、支配下登録と出場選手登録枠を1人増やし、それぞれ71人と29人にする。外国人の出場登録枠も1増の5人(ただしベンチ入りは4人のまま)にする
これについては、実際のところどうなるのかなぁと思うとちょっと微妙。まずそもそも出場選手登録枠を1つ増やしたとしてもベンチ入りが25人のままであればその影響力はほとんど無いはず、怪我人がいるとき助かるとか、中継ぎで連続登板が続いた選手がいたとき助かるとか、その程度。具体的には先発の「上がり」が1名増えてその分中継ぎを厚く出来るって所だろう。
これがもし仮に、ベンチ入りが1名増えるとすればたまったもんじゃないけど。下手したら選手能力による戦略バランスがひっくり返りかねない、仮にそんなことになるとすれば、今の人的補償よりよっぽどFA選手を取りに行くリスクが高くなりかねない、っていうか多分なる。
シミュレートしてみないと正確にはわからないけど直感的には、「チームによってベンチ入りの人数に差が出る」なんて変化はあまりに危険、違うスポーツになりかねないぐらいの地殻変動になっちゃう。
とりあえず、そこは置いておくにしても、微妙に思うところがある。タイムスケジュールの問題。基本的に「FAで選手が減った」と確定するのは、オフシーズンも半ば以降。そのタイミングで「1名増やせることになりました」と決まったとしてじゃあその1名はどこから獲得するのだろうか。
今の球界全体でのタイムスケジュールから言えば、その頃には「戦力外になった選手」の中でも使える選手は既に移籍先がとっくに見つかった後。ドラフトも当然とっくに終わってる。71人に増えたとして、ドラフトで指名を追加できるわけでもない、目ぼしい戦力外選手がいるわけでもない、じゃあ残る選択肢は外国人選手しかない。
それもあって「外国人の出場登録枠も1増の5人(ただしベンチ入りは4人のまま)にする」という一文が加えられているのだろうけど、もし仮にそこを選手会が反対で押し切ったとすれば、この補償は形骸化確定に近い。1対2のトレードでもする?
まぁ、戦力外選手が積極的に独立リーグなどに再就職されるようになるなり、一度ドラフトに指名された選手であれば戦力外後にアマに復帰していた選手でもドラフトを経ずに獲得可能とするなり、何らかの変化と一緒にすればいいんだろうし、その方が球界全体のためなんだけど、独立リーグはともかく、アマの方は無理だろうしなぁ。
(2008/3/19追記)
同じく。私の考え不足でこの点は他にも問題点がありそうです。というか先発投手のことを考えれば明らかにベンチ枠を増やすと1軍枠を増やすのは同義に近いことでした、どう考えても上記は間違ってます、大変失礼致しました。
選手会については、「〈2〉の外国人出場登録枠の増加については、「日本人選手の出場機会が圧迫される」と強く反発。」っての。
自分たちはMLBにおいては“保護貿易”されることなんてなくてそれを歓迎している(現状のFA移籍でMLBからの補償が無いことを問題としていない)のにさ、“球団の保護”は認めなくても“選手の保護”はあるべきだと主張してるわけだよね。
まぁ「既得権益を確保する」とみなせば、選手側としてはあまりに当たり前の考えだから非難されるような考え方してるわけじゃないんだけどね、そんな考え方をするのは自然なことだもの。カッコいいとは思わないけど自分が同じ状況なら当然既得権益の保護に走る。
ただし、選手だけじゃあプロスポーツは成立しないって事は自覚しておいてほしいなぁ。
早晩NPBを維持するためには日本のマーケットだけでは限界となると考えれば、せめてアジア枠を作るとかぐらいは譲歩してNPBのマーケットが維持できるような協力はしておかないと、保護されてるうちに球界全体の体力が目減りして気づいたら自滅するよ。
そういう意味で今の選手側のスタンスにはあんまり感心しない、“保護貿易”するなら選手だけでなくもっと大きな目(NPB全体)での保護貿易にしないと。
選手だけじゃプロスポーツは成立しないでしょ、成立する部分全体で保護しなきゃ選手だけ残っても無意味、それじゃあうまくいかないと思うなぁ。
まぁもちろん一部の優れた選手に関してはNPBがつぶれようがMLBで拾われるのは間違いないだろうから無関係だろうけどね、そして現行の選手会においてはその一部の選手に政治力がほぼ集中されているからね、だから選手会がこういう考え方をするというのは二重の意味でも自然なこと。
そういう意味で言ってもこの「補償」が高いとは全然思えないのだけれどね、該当する選手が選手全体の1/7でしかない(1球団あたり70名と考えて)んだから、「選手全体」でみればけっして高くはない。
もちろん該当する高い年俸の選手からすれば、補償金がなければその分だけ選手個人への年俸への跳ね返りが増えるということなので、「補償金がある」だけで十分高いと思うだろうけどさ。
具体的に言えば球団が総額10億円を支払う価値があると考えたとき、補償があればその分そっちにまわるので総額10億そのままが提示されないけど、それがなければその分年俸として提示される。球団側からすれば「年俸いくら」で獲得を検討するわけではない、「全部でいくら」で獲得を検討するわけだからね。
やっぱり「ハイソサエティクラブ」じゃん、選手会って、価値基準がそこにいる選手のものでしかない。ほんっと不思議なんだよね、なんであんだけ一流選手ばかりが選手会の役員してるのか、「野球が上手である」と「団体交渉が上手である」事は同じじゃないはずなのに、優れた選手ばっかりになるのは奇妙以外のなんでもない。
補償金とかを交渉する暇があれば、選手全体のことを考えれば「その補償金のうち何パーセントかは選手の年金基金にしろ」とかそういう主張になるのが普通だと思うんだけどなぁ、結局自分たちだけよければいいのよね。まぁそれは人として自然な感情だけど、さっきも言ったとおり。
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全体的に「現実的に対処」出来ているんじゃないですかね、球団側にしても選手側にしても。子供のように駄々をこねてはいない。
現在のNPBのおかれている状況を鑑みればそんな好き勝手なことを言っていられる余裕はないのですからその点は両者とも評価したいです、理想ばっかり言ってるんじゃなくて本気で取り組んでいる、ビジネスする気になっている。
ついこの間(近鉄合併問題のとき)の時の特に選手会側は子供にしか見えませんでしたからね、大人になってるなぁ、って年上にいうセリフじゃないか(笑)。
あと、実際のところこれが運用されるようになるためには、日本人の性格を考えたら「FA宣言をすればFA選手」ではなくて「FA資格を有した選手は自動的にFA宣言したものとみなされる」ようにしておかないとダメだと思うけどね。
話せば長くなるから端折るけど、日本人の性格からすれば、それを強制的にやっておかないとMLBのように「権利を得た選手は全員宣言するのが普通」とはならないと思う。そして「全員宣言するのが普通」とならないと結果的にFAはうまく機能しない。
ほんとはその橋はみんなで渡らなきゃいけないんだけど、でも「誰かが渡ってから」って考えるのが日本人だからね。抽象的過ぎて意味わからないか。
ブログランキングとかで見たときにこの話題があんまり人気が無いのはちょっと寂しい、自分の意見だけでは視野が狭窄になるんで色んな人の意見を見たいんだけどねぇ。
でもまぁ「人的補償をなくすなんて、巨人に有利すぎる」とか言い出してる人がいない分だけマシなんだろうか。
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