
巨人の2013年ドラフトを振り返って ポスト阿部とともに必要だった未来への布石
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舎人
2013年11月13日 04:12 visibility5866
ドラフトが終わって3週間ちかく経ちました。なかなかまとめることができませんでしたが、今年も巨人のドラフトがどうだったか振り返ってみたいと思います。まず今年の巨人は夏場までは一位指名を桐光学園の松井にする予定のようでした。しかし、ドラフト会議が近づくにつれて徐々に即戦力投手を指名するのではという話が浮上します。これは澤村や宮國の不調、ホールトンの不安定さなど、先発投手のコマは不足しており、連覇を続けるためには即戦力の投手が必要という事情があったようです。また、今年の場合は有力選手と他の選手との間に実力差があり、競合を避けてやや格落ちするものの有望な選手を一本釣りする方が賢明であろうという判断があったようです。
昨年に比べ少数精鋭の方針(週刊ベースボール2013.7.29号)
上位候補リストには例年よりも少ない25人程度が記されているようだが、他球団も高評価を下す桐光学園高のエース・松井裕樹については、すでに昨年から不動の1位候補。今年に入り複数回スカウト会議の結果、さらに1ランク評価を上げ、最上位候補として引き続き複数人のスカウトを派遣して、チェックすることが確認されている。6月29日の報徳学園高との練習試合を視察した山下スカウト部長は「スライダーはすでに一軍クラス。チェンジアップ(習得)でさらに幅が広がった」とさらなる成長に絶賛を惜しまない。ただし、同部長が「少数精鋭になるかも」と話したように、13年度のドラフトでの全体指名数は少ない見込み。それでも、補強ポイントとして挙げられている捕手では、日本生命・小林誠司をはじめ、昨年より上位候補としてマークを続ける大阪桐蔭高・森友哉などをこまめにチェックしており、今後も狙いを絞った調査が進められるようだ。
重複指名を避け目玉選手回避か(週刊ベースボール2013.10.28号)
以前から今週のドラフト会議に向け、桐光学園高の左腕・松井裕樹に高評価を与えてきた。ゆえに1位指名の大本命と見られていたのだが、ここにきて風向きは変わってきている。山下哲治スカウト部長は「現時点でこの選手でいくというのは決めていない」と断言。1位指名の候補はJR東日本の吉田一将ら即戦力投手を中心に4、5人だという。松井への評価は「素晴らしい投手」と変わっていないのだが、今年の場合は有力選手と他選手の差があるだけに「クジで外したら苦しい」(山下スカウト部長)と競合した場合のリスクが大きい。重複する可能性の少ない選手を指名するために、最後まで見極め作業を続ける。指名人数は全体で4、5人になる見込みだ。
そのような中で1位指名候補として浮上してきたのが東京ガスの石川でした。今年の5月18日に巨人とのプロアマ交流戦に登板して、注目され始めていましたが、夏場を経てさらに評価を上げ、「この1年でグンと伸びた」との評価をスカウト陣から受けていたのでした。年齢的には25歳と坂本や田中将大と同じということで、ハンカチ世代最後の生き残りのような存在です。最も注目されている松井裕樹に比べるまでもなく、同じ社会人投手のJR東日本の吉田や大学No.1投手の大瀬良よりも注目度は低かった感じでしたが、そういった格落ち感が競合を恐れた巨人の方針に合致したのかもしれません。かくして巨人の1位指名候補の一人として石川は選ばれたのでした。
巨人のドラフト1位が石川になる可能性をいち早く報じたのは9月末の日刊スポーツの記事でした。それはどうやら関係者のコメントをつなぎ合わせたものによる単なる憶測に過ぎないものでしたが、会議が近づくにつれてひょうたんから駒のように、単なる憶測が真実に近づいて行った感じでした。報知は最後まで1位候補は松井を含む4名のうちの誰かといったぼやかしたような予想しかしていませんでしたが、日刊に続いてスポニチも巨人の1位指名は石川に間違いないと報じ、もはや巨人の1位指名は予想として鉄板のようになっていました。
しかし、石川のことを注目していたのは巨人だけではありませんでした。ドラフト前日のスポニチの紙面にロッテが石川を1位指名するという記事が躍ったのです。ドラフト前の石川に関する記事をさらうと、やたらとロッテのスカウトや編成の人の名前が出て来るのですが、比較的早い段階からロッテも石川のことを1位指名候補としてマークしていたのではないかと思います。競合しないという大方の予想を覆すロッテの石川指名参入の話に巨人では当惑したことと思います。おそらく本当は報知の記事の通り、ドラフト直前までどの候補を1位指名するか決めかねていたのではないかと思います。ただ、色々な検証やシュミレーションをした結果、やはり1位指名は石川にしようとなったのでしょう。どうせ競合するのならば石川でなく、松井にしても良かったのではないかと思いますが、巨人は2年前にも高校生左腕の松本竜を1位指名していますし、ここに来て今村が急成長してきているので、以前よりも松井のことに拘らなくても良いと思ったのではないかと思います。
会議が始まると恐れていた通りロッテが石川を1位指名し、巨人と競合してしまいます。そして、原監督がクジを外し石川の交渉権はロッテに持って行かれてしまったのです。しかし、菅野の時と違ってどうも巨人のテーブは「まぁ仕方ないかな・・」といった感じだったように映りました。どうも何が何でも石川が欲しかったたのではなく、毎年輩出される即戦力の投手を取り損なった程度の反応に思えたのです。それはファンの反応も同様で、正直言って大してイタくない結果だったという反応が多かったのではないかと思いました。ただ私は、このドラフトにおける巨人の姿勢と楽天の姿勢が好対照だったことが気掛かりでした。消極的な選択の末、競合を避けるつもりで臨んだ選手の抽選に敗れた巨人と、競合も辞さないアグレッシブな姿勢で今度ドラフト最大の目玉選手の交渉権を引き当てた楽天、この時の勢いが数日後に行われた日本シリーズにも反映されてしまったように感じたのは私だけのことだったでしょうか。
巨人という球団は欲しいと思った選手は何が何でも取りに行くといった強面の部分があるものの、これといった縛りがないと非常にあっさりとしているというか、淡白な指名をしている気がします。例年は1位指名に全力を注いだ結果、2位以下で気の抜けたような指名をしてしまう感じですが、今年に限っては最初から淡白に感じました。今回は指名順で最後になるというハンデがあったからかもしれませんが、今後も巨人が優勝争いを演じるチームであり続けるならば、同じようなジレンマは続く訳です。それならば腹を括って本当に欲しいと思った選手に対し果敢に指名に向かって欲しかったです。もちろん、それが石川だったというのならば何も言いませんが、話を総合するに外れ1位を繰り上げた消極的な姿勢の結果、つまらない選択をしてしまったように感じてしまうのです。私は巨人がこのような消極姿勢であり続けるのならば、今後完全ウェーバーを導入してもらった方がいいのではないかと思いました。なぜなら、現行の制度では指名順が12番目の球団は1番人気の選手の交渉権を獲得できる代わるに、2位指名は全体の24番目となります。1位指名の結果如何では1位指名が12番目だってありえます。そうなると1位が12番目、2位が24番目という最悪の事態もありえるということですが、1巡目からウェーバーにすれば、指名順が12番目の球団は1位指名が1巡目12番目、2位指名が2巡目1番目となり、12番目と13番目の選手を確実に抑えることができるのです。ちょうど今年の日本ハムのドラフトは全体の12番目と13番目の選手を指名したのですが、完全ウェーバーだったとしたら巨人も同じようなドラフトを展開できたのです。今回巨人は抽選の3選手と1本釣りの2選手の計5名を除く6番目の選手を1位指名で、24番目の選手を2位指名した訳ですが、12番目と13番目に指名権があった方が良かったようなような気もしてきます。もしかしたら小林と渡辺(日ハム1位)の両取りも可能だったかもしれません。
巨人2013年ドラフト指名選手(データはスポニチ参照)
[本ドラフト]
1 小林 誠司 24歳[大阪] 178cm 75kg 捕手(右・右) 広陵高―同志社大―日本生命
遠投115㍍、捕球から二塁到達まで1.8秒台。強肩にインサイドワークも光る社会人No.1捕手
2 和田 恋 18歳[高知] 180cm 70kg 内野(右・右) 高知高
今春センバツでは済美の安楽の直球をフルスイングし左中間スタンド最上段へ。長打力一級品
3 田口 麗斗 18歳[広島] 170cm 75kg 投手(左・左) 広島新庄高
最速147㌔。西のドクターKは今夏予選7戦で81奪三振を奪った。18Uワールドカップでは準優勝
4 奥村 展征 18歳[滋賀] 177cm 72kg 内野(右・左) 日大山形高
主将兼4番として山形県勢初の甲子園4強に導く。勝負強い打撃で18U日本代表準優勝に貢献
5 平良 拳太郎 18歳[沖縄] 181cm 70kg 投手(右・右) 北山高
細身の体ながら腕の使い方は柔らかく最速は147㌔。将来性は十分でエースになれる素材
[育成ドラフト]
1 青山 誠 22歳[兵庫] 185cm 81kg 外野(右・右) 育英高―日大
広い守備範囲、積極的な打撃と強肩光る
2 長江 翔太 22歳[大阪] 190cm 88kg 投手(右・左) 金光大阪高―阪経大
幾度の故障から復活し入団テストに合格
3 北之園 隆生 18歳[熊本] 180cm 80kg 内野(右・左) 秀岳館高
高校時代4番・投手でテスト合格
さて、石川を抽選で外した巨人が1位指名したのは日本生命の捕手小林だったのですが、当初小林は2位で指名する予定だったのではないかと思います。それがロッテが外れ1位で指名するといった話が出たり、中日が2位で指名するなどと言った話が出て、繰り上げで1位指名に選ばれたのではないか。しかし、私は巨人の補強ポイントとして捕手は喫緊のものでなく、優先順位の低いものだと思っていました。なぜなら、阿部の正捕手は向こう5年間続くと思っていましたし、実松も加藤もここ1、2年で極端に衰えるということは無いのではないかと思っていたからです。さらに河野は急成長していますし、鬼屋敷も着実に力を付けて来ています。育成の芳川も捕手としての総合力は鬼屋敷以上ではないかと思っていますし、市川だって体調が充実している時は素晴らしいプレーをしています。そう考えるとどうしても私には今の巨人には捕手の補強の喫緊度が高いとは思えなかったのです。茶柱さんと「自分たちが編成だったら捕手は補強ポイントじゃないね」と話していたほどです。しかし、今回こうやってドラフトで小林を1位指名したということは、私たちが考えていた以上に阿部や実松、加藤といったあたりの衰えを球団は懸念しており、河野や鬼屋敷の成長を待つことができないと判断したのではないかと思います。日本シリーズの最中に解説の衣笠さんや佐々木さんが不調の阿部のことを「肩やどこかを痛めてそれを無理して出場しているのではないか」と話していましたが、ひょっとしたらドラフト前からこの阿部の状態が不安視されていた可能性を感じます。また、2番手捕手の実松も9月に入ってから脇腹を痛めて離脱してしまったということも理由としてあったのかもしれません。しかし、阿部も実松も心配することなく今まで通りのパフォーマンスで復帰するとしたら、この指名はやや問題を生んでしまう可能性があります。捕手というポジションは1つしかないにもかかわらず、どうしても実戦での経験が必要になってきます。すると、せっかく順調に伸びてきた河野や鬼屋敷と出場の機会を喰い合ってしまうことになります。ドラフト解説の小関さんは「巨人に若手捕手がいない訳ではないが、小林を指名したということは、高いレベルで正捕手争いをさせようという意図があってだろう」と話していました。私もそうなるしかないのだろうと思いますが、もしも、阿部が万全であったら、実松と加藤のどちらかは放出した方がいいと思います。そうすることで確実に一軍の第三捕手を小林なり河野が務めることで次代の正捕手争いの意味が生まれてくると思うのです。
今回のドラフトの特徴は2位以下が全て高校生だったことです。これを周囲は余裕のなせる業と解釈していましたが、これは2位の指名順が来るまでに、これといった即戦力投手が他から指名されて残っていなかったという理由があったからだと思います。山梨学院大の高梨や日本生命の吉原など、その時点で残っていた即戦力投手はいましたが、現在、巨人に在籍している投手と比べると、そこまで欲しいと思える投手がいなかったのでしょう。注目すべきことは指名された高校生4人のうち2人が野手だったということです。2位の和田はスラッガータイプ、4位の奥村はバランスの取れたアベレージヒッタータイプのようです。さらに育成3位でも巨人は北之園という内野手を指名していますが、この選手もスラッガータイプとのこと。つまり今年のドラフトでは打力を評価した高校生を3人も指名したということです。これだけ高校生野手を指名したのは2006年の坂本、田中大二郎、伊集院以来のことです。私は常々、中井や橋本たちの世代の仕分けが終わる前に、次の世代の野手の獲得する必要性を訴えてきましたが、その問題意識は巨人の編成も共通だったようです。巨人が抱える問題の1つはポスト阿部ですが、それはキャッチャー阿部よりも、むしろバッター阿部の方が今後重要な課題になってくると思われるのです。主軸を作ることの難しさです。巨人はFAや逆指名ドラフトの導入以降、主軸を打つことのできるバッターの確保に苦労してきませんしたが、それ以前は打者が育たず、慢性的な得点力不足に悩んでいました。私は今の巨人にその90年代前半のような状態になる恐れを感じていました。阿部や村田が4番を張れなくなるのはそう遠くない時代だと思います。今は逆指名ドラフトもなければ、今後FA市場に主軸を打てるバッターが都合良く現れるとは限りません。ポストバッター阿部、その時に備えて巨人は主軸の育成に全力で備えないといけないのです。野手というのはある程度同世代も淘汰で揉まないと育たないもの。和田たちは1つ上の辻にもいい刺激を与えることと思います。また、今から一軍に定着する中井や橋本たちを数年後突き上げる意味でも、今年指名された選手たちは大きな存在になってくることでしょう。
次に今年指名された選手がどんな各紙でどんな評価を受けていたかですが、1位指名の小林の評価は真っ二つに別れています。野球太郎とアマチュア野球のムック二誌がともに低評価だったのに対し、スポーツ新聞系はまずまず高い評価をしています。2位の和田も小林と同じように評価が別れています。しかし、3位の田口は押し並べてどこも高い評価、奥村や平良についても各紙悪くない評価をしています。総評として昨年のドラフトのように全紙特A評価の菅野のような選手が取れなかった代わりに、下位においてもまずまず評価を得ている選手を確保できたというものだったと思います。
野球太郎(◎→○→△→なし)
アマ野球(AA→A→BA→B→C→なし)
日刊スポ(特A→A→B→C→なし)
報知(横綱→大関→関脇→小結→前頭1~15→なし)
サンスポ(A→B→C→なし)
デイリー(特A→A→B→C→なし)
トーチュウ(A→B→C→なし)
それにしても各紙特徴が現れるものです。野球太郎の評価で行ったら、巨人のドラフトは間違ったものだった感じです。逆にサンスポなどは巨人の指名と評価が正に合致したものです。これが数年後どの程度正解だったかが注目です。
指名された選手についてですが、1位指名された小林は大阪出身ながら高校は広島の広陵高校です。ここで後に広島に入団した野村とバッテリーを組むこととなります。九番キャッチャーという立ち位置だったそうで、特別注目されていた訳ではなかったようですが、全体を見渡せる目と真面目な性格から徐々に捕手としても資質を開花させることとなったようです。広陵高から同志社大に進学した小林は1年秋からレギュラーに抜擢されます。頭脳的なリードで4連覇に貢献します。しかし、4年秋にプロ志望届を提出するものの、「1位指名以外なら社会人へ」という触れ込みが災いしたのか指名する球団はなく、日本生命入りすることとなります。ここでレベルの高い投手陣にもまれたことで、小林はさらに成長を遂げることになります。ディフェンス面では数年に一人の素材との評価まで聞くようになりました。しかし、一方では小林の線の細さと打力の物足りなさを危惧する意見も少なからずありました。流しのキャッチャーの安倍さんなどは「小林クンはプロ入りするよりもニッセイでアマの野球を続けた方が幸せだったのではないか」とラジオの番組で言ったとか言わなかったとか・・そうした賛否がドラフト前の評価が割れてしまった要因のようです。このようにディフェンスのコマとしては即戦力ながら、打力に関しては甚だ心もとない捕手を巨人は1位指名で迎い入れることになった訳です。ただ、捕手というポジションはやはり守れないと話にならないという特殊性があります。投手に与える影響が違ってきますし、チーム全体の士気にかかわってきます。だから打力が10で守備力が0の捕手よりも、打力が0で守備力が10の捕手を選んだ方が良い。「大阪桐蔭高の森君を指名した方が良かったのに」という意見がありますが、私は森君を打者として指名するのならば賛成ですが、捕手として指名するのであれば小林で良かったと思っています。小関さんが言っていたように、正捕手を河野や鬼屋敷、芳川と高いレベルで争って欲しいと思います。先日行われた日本選手権では一回戦のセガサミー戦で4打数2安打2打点、二回戦のJFE西日本戦でも3打数2安打2打点と小林は懸案の打つ方でも結果を残しており、前評判ほど打力が無い訳ではないようです。期待したいと思います。
ところで、小林は今回で3度目のドラフトだった訳ですが、野球小僧とアマチュア野球の過去の評価がどうだったのかを調べてみました。高校3年時と、大学4年時、そして今回です。
小林誠司の評価
2007年(高校3年時)
野球小僧なし アマチュア野球B
2011年(大学4年時)
野球小僧◯ アマチュア野球BA
2013年(アマチュア2年時)
野球太郎△ アマチュア野球B
このように今回厳しい評価をしたムック2誌も、大学4年時は今回よりも高い評価をいていました。これはどういうことかと考えると、やはり年齢が若ければ若いほど評価とは可能性込みのものになることが反映されているのだろうと思います。太郎(小僧)の安倍さんだって、大学4年時は、小林の打力は物足りないと思っていたものの、この先今よりもアップする可能性があると思っていたから〇評価にしたのでしょう。しかし、2年経っても思ったより打力が向上していないということで△にしてしまった。こういったことはどのドラフト誌においても共通することではないかと思います。24歳の社会人よりも大学生が、大学生よりも高校生が、可能性という不確定要素を加味されて評価されているのです。読者はそのあたりのことを十分に踏まえながら考えないといけないということを示唆していると思います。
2位以下はその可能性を加味された評価を受けている高校生たち中心のドラフトだった訳ですが、2位指名の和田は高校通算55本塁打の右のスラッガーです。ポジションはサードがメインだったようですが、時々ショートや投手も務めたりしていたようです。今年の選抜大会で済美高の安楽投手の144キロのストレートを左中間スタンドに本塁打しています。この時の通算本塁打が35号ということですから、3年時になってから20本塁打の上乗せがあったことになります。このあたりの成長過程は坂本や内川に通じるものがあると思います。内角打ちが非常に巧みという意見もあれば、逆に内角が苦手という意見もあります。しかし、サードの守備はどれも非常に安定しているという評判です。走力に関してはそこまで高くないようです。好きな選手は坂本とのことですが、目標は村田とのこと。タイプ的には坂本よりも村田の方が全然近いと思われるので、これはもっともなことかもしれません。元々進学する予定だったそうですが、プロ志望届を提出したことで複数球団が指名を検討することになったようです。特に注目していたのが巨人と阪神、前評判からいったら3位~4位相当の選手でしたが、巨人が2位で指名した背景には阪神が3位ないし4位で指名してくるという読みがあったのではないかと思います。恋という名前はまるでホストのようですが、これは両親がみんなから好かれるようにという願いを込めて名付けたとか。その名の通り多くのファンから愛される選手になって欲しいと思います。
3位指名された田口は麗斗(かずと)というキラキラネームに似つかわしくない正に野球小僧のような風貌の投手です。まるでちばあきおの漫画に登場しそうだと私には思えました。その風貌の通り、野球が楽しくて仕方ないようで、今年の夏の地方大会決勝で延長15回213球を投げ抜いても、「あっと言う間で楽しく投げられた」と語っているほどです。この試合は結局0対0の引き分け再試合となってしまったのですが、翌日も一人で投げ抜き、23イニング目に力尽きてついに失点。そのまま0対1で試合に敗れ甲子園に出場することが叶わなかったとか。しかし、その力投は注目されることとなり、甲子園不出場組としてはただ一人U-18W杯の日本代表に選ばれたのでした。実際は170センチの満たないと思われる小柄な体から信じられないほどのエネルギーがほとばしる投球でMAXは147キロを計測したとか。さらに、スライダーはプロ級で、コントロールもかなりのものらしいです。楽天に指名された松井とよく比較され、東の松井、西の田口と称せられているほどです。解説の小関さんは「1位か2位で消えると思っていた」と話していましたし、野球太郎の評価でも1位・2位指名候補としてカウントされています。このように評判から言ったら申し分のない素材を巨人は運良く3位で確保することに成功しました。しかし、問題を指摘する声が無い訳ではありません。時としてどうも投球のたびにフォームがバラバラで一定していないらしい。また、アマチュア野球の対談では「社会人(野球)に行った方が良いかもしれない」という感想をもたれています。素晴らしい投球をしていても、どうしてもこの上背では賛否が分かれてしまうのは仕方ないことなのかもしれません。これは西武に指名された森においても同様のことでしょう。ただ、幸いなことに左投手にはヤクルトの石川のように167センチしかなくても大成している投手がいます。それに、今年シーズン終盤に一軍登板した公文も172センチしかありません。田口には星飛雄馬のような「巨人の星」を目指して欲しいと思います。来シーズン、ファームで193センチの松本竜と170センチの田口の凸凹左腕リレーが見られるのではないかと楽しみにしています。
4位指名の奥村は走攻守揃った左の内野手のようです。今年の夏の地方大会では18打数12安打と大暴れし、出場の決まった甲子園でも初戦の日大三高戦で本塁打を放ちました。山形県勢初の甲子園ベスト4に貢献した奥村はU-18W杯の日本代表にも選ばれ、セカンドのレギュラーを務めていました。非常に柔らかいグラブさばきと、フットワークの良い守備が持ち味で、打撃においてもバットコントロールが巧みとのこと。しかし、高橋由伸を真似たという大きく足を上げる打法は、もしかしたらプロ入り後矯正されるかもしれません。目標は今年引退を決めたヤクルトの宮本とのこと。1つ上の辻とはポジションがかぶる上に同じ左バッターです。辻は大いに刺激を受けているでしょう。来シーズンのファームはどちらをショートとして、どちらをセカンドとして起用するのかが楽しみです。競い合ってお互いを高めて行って欲しいと思います。
5位の平良は今年の春の九州大会で選抜出場の創成館を相手に毎回の16奪三振を記録し、一躍注目された投手のようです。肩周りの柔軟性に秀でており、横手から大きなテイクバックでMAX147キロを投げ込む右の本格派投手とのこと。高速スライダーやフォークのキレも抜群だとのことです。夏の予選では一回戦敗退のように、まだまだ未完成の投手なのでしょうが、その素材として値打ちは一級品だと評価されたのでしょう。同じ沖縄出身の宮國を目標に掲げ一歩でも近づけるようにしたいとのことです。柔軟性があるといって思い出すのは笠原のことです。入団仕立ての頃の笠原も未完成の素材そのものの投手でしたが、肩周りに柔軟性があり、キャリアを積むごとにどんどんレベルアップして行きました。平良にも同じようにステップアップして行って欲しいと思います。
育成では3名が指名されましたがいずれもテストを合格した選手のようです。今年の巨人の入団テストは4名だったので、この3人に新潟アルビレックスの寺田投手が加わっていたことと思います。テストに合格しても指名されるか分からない。プロ独立リーグ交流戦で見た寺田の投球は素晴らしかっただけに、少し残念な気がしますが、年齢的なことなどがネックになったのかもしれません。さて、まず育成1位の青山ですが右の大型外野手のようです。今秋のリーグ戦ではトップバッターを任され、東都2部ながら打率.319を記録したとか。強肩で守備範囲も広いとのこと。先輩の長野や村田といった右のスラッガーに少しでも近づいて行って欲しいと思います。育成2位指名の長江は190センチの長身からMAX146キロを投げ込む右の本格派投手とのこと。大学2年時にリーグの新人王に輝いて以降ケガがちでほとんど注目されていなかったようです。巨人が指名に踏み切ったということはケガの状態は問題ないと判断されたのかもしれません。育成3位の北之園は左のスラッガータイプとのこと。解説の小関さんが聞いた話によるとアマチュア時代の松中(ソフトバンク)を彷彿させるバッターとのことです。足や守備が特長のバッターを主に集めてきた巨人の育成選手ですが、今年は青山にしても北之園にしても打力を期待しての選手です。育成選手制度も大きな転換点にさしかかっているのかもしれません。
続いて今年も指名選手の血液型と兄弟型について話をしたいと思います。過去に何度も話をしているので大概のことは端折りますが、人間というものはどの血液型が優れているとか、どの兄弟型が最も価値があるといったことは無いものの、その職業で成功するかしないかはある程度傾向があるもののようです。例えば宗教学者の島田裕巳さんの書いた「生まれ順診断ブック」によると戦後の総理大臣で末っ子だったのは管さんただ一人とのこと。最も多いのは中間子だそうです。これは政治家という職業が中間子が得意とする「空気を読む力」が特に必要だからのようです。野球選手おいても活躍をする血液型や兄弟型の傾向というものは存在するようです。血液型においてはB型、兄弟型においては末っ子が最も活躍するようです。その両方を併せ持つ血液型Bで末っ子は長嶋茂雄、野村克也、山本浩二、稲尾和久、イチローなどレジェンドクラスの名前が並びます。最近では阪神の西岡やオリックスの岡田、日本ハムの大谷なんかもそうです。そして、それは投手よりも打者において顕著なようなのですが、今年この血液型Bで末っ子の野手は何人指名されたかを調べてみると、判明している限り3名でした。しかし、それは3人とも日本ハムの選手だったのです。1位の渡辺、3位の岡、7位の岸里です。日本ハムは昨年も大谷を指名していますが、なんだか敢えて選んでいるような気がしてきます。ちなみに、プレーにおけるスペックは別にして、今年最も大成する可能性を秘めた系統の選手は日ハム1位の渡辺でした。血液型Bであり兄2人の三人兄弟の末っ子、つまり男系末っ子です。これは他球団の選手ながら今後を注目したいと思います。
巨人に指名された選手がどうだったか・・
定義
スポーツ選手の兄弟型の優劣 末っ子>中間子>第一子>一人っ子
スポーツ選手の血液型の優劣 B>O=AB>A
巨人2012年ドラフト指名選手(日刊スポーツ参照)
[本ドラフト]
1 小林 誠司 24歳 捕手(右・右) 中間子(男女混在3人兄弟、姉、妹)O型
2 和田 恋 18歳 内野(右・右) 末っ子(男系2人兄弟、兄)O型
3 田口 麗斗 18歳 投手(左・左) 長男(男女混在3人兄弟、妹×2)B型
4 奥村 展征 18歳 内野(右・左) 中間子(男女混在4人兄弟、姉、妹、弟)O型
5 平良 拳太郎 18歳 投手(右・右) 中間子(男女混在4人兄弟、兄、姉、妹)O型
[育成ドラフト]
1 青山 誠 22歳 外野(右・右) 兄弟型不明 O型
2 長江 翔太 22歳 投手(右・左) 兄弟型不明 O型
3 北之園 隆生 18歳 内野(右・左) 兄弟型不明 AB型
小林は空気の読める中間子ということで目配せのできる捕手として、さもありなんといった感じです。しかし、上も下も女という最も女性にモテることが別に意味で気掛かりです。イケメンですし。和田は王貞治や落合博満、松井秀喜などと同じO型の末っ子です。スラッガーとして大いに期待できると思います。田口は内海などと同じ多人数兄弟の長男ですが、投手として問題ないもののリリーフよりも先発を目指した方がいいかもしれません。奥村は中間子ですが、坂本も藤村も血液型は違うものの中間子ですし、内野手らしくていいと思います。平良は多人数兄弟の中間子ですが、どのポジションでもOKではないかと思います。
こういったものは傾向があるだけで占いではありません。我々ファンが選手を見る時の楽しみの一つとして参考にすればいいのです。選手たちは余計なことに捉われることなく、高みを目指して邁進して行って欲しいと思います。
最期に、指名された選手たちのほとんどは大成せず、半分以上は一軍に呼ばれることなく巨人のユニフォームを脱ぐことになると思います。しかし、その時に悔いを残さずに精一杯プレーして、存在をアピールしたということが、彼らの手元に実感として残っていて欲しいと思います。先日発売されたフライデーに辻内の記事が載っていましたが、野球とは縁を切ることを決め、さばさばとした感じでインタビューに答えていました。しかし、最後に「僕も、抑えて(田中将大のように)吠えてみたかった」と悔しさを滲ませていたとか。私は、辻内がその気になれば、巨人からは戦力外になったとしても、どこかでプレーを続けていれば、いつかそれが叶う日が来ただろうと今でも思っています。45歳の木田は独立リーグで頑張ってトライアウトにも参加しました。ヤクルト入りが決まった真田は台湾で頑張っていたそうです。そういった現役へのこだわりは、決して悔いを残して現役を引退したくないという思いからではないでしょうか。私は辻内にもそうあって欲しかった。今年入団する選手たちが一軍の戦力になりスターになることを願うことはもちろんのこと、野球で身を立てることに自覚を持ち、生涯現役を目指すくらいプレーすることが好きで好きでたまらない選手になってくれることを祈りたいと思います。悔いのない野球人生が彼らのものとなりますように。(了)
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