今年のルーキーたちについて2011 (1) 澤村拓一

  • 舎人
    2011年10月16日 05:32 visibility2583





























































まだ公式戦も残っておりますが、ドラフト会議まで2週間切ったという事で、今日からオフの企画を始めたいと思います。昨年同様に「ルーキーたちについて」「ドラフト指名選手について」の2本を年内に行い、年が明けたら「今年期待の若手選手たち」について話そうと思っています。昨年ほど力を入れて行えるか分かりませんが、出来る限り頑張ってみたいと思います。

さて、まずはルーキーたちの話ですが、今日は澤村について。この選手はファームウォッチャーの私が語るにはおこがましい選手です。一昨日、2003年の木佐貫を上回る11勝を完投で記録しました。しかも、防御率は脅威の1.97です。これは木佐貫の3.34はおろか、1999年に上原が新人王を取った時の2.07をも上回ります。当然、これには統一球が絡んでおり、一概に比べられるものではありません。 しかし、巨人の中で唯一ローテーションを一年間守ったのはこの澤村だけでしたし、首位の中日に完璧に互角以上の投球が出来たのも澤村だけだったと思います。数字以上に、澤村は味方への頼もしさを印象付けたと思います。ドラフト時は早稲田大・斎藤佑樹を指名すべきだったという声も多々聞こえましたが、今では誰もそういった声は聞こえません。正に実力で雑音をねじ伏せ、名声を勝ち取った感じです。

澤村拓一 2011年成績(10月15日現在)
全球団成績 11勝11敗
28試合 196回2/3 146安打 171奪三振 51死四球 失点51自責点43 防御率1.97
中日戦成績 2勝1敗
4試合 33回        16安打25奪三振 06死四球 失点07自責点07 防御率1.91
ヤクルト戦成績 2勝4敗
6試合 42回2/3    34安打40奪三振 11死四球 失点13自責点11 防御率2.32
阪神戦成績 2勝1敗
3試合 20回1/3     20安打16奪三振07死四球 失点03自責点03 防御率1.33
広島戦成績 1勝2敗
6試合 37回2/3     30安打31奪三振10死四球 失点13自責点10 防御率2.39
横浜戦成績 2勝1敗
3試合 21回        15安打19奪三振 04死四球 失点05自責点03 防御率1.29
オリックス戦成績 0勝1敗
2試合 15回        13安打19奪三振 04死四球 失点04自責点04 防御率2.40
楽天戦成績 勝ち負けなし
1試合 06回        06安打03奪三振 04死四球 失点03自責点03 防御率4.50
西武戦成績 2勝0敗
2試合 16回        09安打15奪三振 03死四球 失点01自責点01 防御率0.56
日ハム戦成績 0勝1敗
1試合 05回        09安打03奪三振 01死四球 失点02自責点01 防御率1.80

対セ・リーグ 9勝9敗
22試合 154回2/3 115安打 131奪三振 38死四球 失点41自責点34 防御率1.98
対パ・リーグ 2勝2敗
06試合 42回 31安打 40奪三振 12死四球 失点10自責点9 防御率1.93

澤村の凄いところは苦手の球団を作らなかったことです。どの球団に対しても防御率を1点台後半〜2点台前半に抑えています。さらに、交流戦においてもその安定感は変わらず、セ・リーグの球団とほぼ同様の投球をしています。苦手な球団を作らなかった。これは澤村の最も評価していいポイントではないかと思います。

しかし、ほとんどの試合で安定した投球をしていた感のある澤村でしたが、シーズンの中盤までなかなか勝ち星が伸び悩み、9月の頭の段階では6勝11敗と大きく負け越してしまっていました。防御率の割になかなか勝てない原因を、その頑固なキャラクターにあるとされ、チームプレーに馴染まない唯我独尊だと非難されもしました。一番酷かったのは忘れもしない8月12日のニッポン放送ショウアップナイターで達川さんが話していた事です。「澤村はまともにあいさつもできない。周りがちやほやしたために勘違いをしている。ファームで一からやり直すべき。ドラフトで他球団が指名しなかった訳だ・・」などど酷評をしていました。たまたま車を運転して放送を聞いていた私は、いくら何でもいいい過ぎと思いましたが、この時の発言は色々なところで相当波紋を呼んだようです。

2ch巨専 2011/08/12(金) より
「4、5点は楽に取れますよ 」 
「抑えられるボールがありませんね」 
「見てください、投げたあと守りの体制に入ってないでしょ」 
「うわー、ほんとですね。投げたあとの自分に酔ってますね」 
「一度ファームに落とすべきですよ」 
「キャンプで見たときは素質ある投手だと思っていたが心の中まではわからなかった」 
「なんで1球団からしか指名されないのか不思議だったがやはりスカウトの見る目は確かだった」 
「澤村は報道陣に挨拶すらできない」 
「投球以前の問題」 
「いろはのいもベースカバーもできてない」 
「このままではプロでは通用しませんね」 
「周りが騒ぎすぎて過大評価しすぎですね」 

何が達川さんの癇に障ったのか分かりませんが、何の根拠もなくここまでの事を言われるはずがありません。この頃の澤村が低迷していた事も確かで、その原因を澤村の性格やスタイルに結びつけられてしまったのでしょう。しかし、結果が出なければ何を言われても仕方のないのがこの世界です。見返すためには結果を出す事しかありません。






























































澤村拓一 2011年登板結果(10月15日現在)
オープン戦
3月02日 西武戦 先発 4回     1安打4奪三振0死球0失点
公式戦
04月15日 広島戦 先発  6回2/3     6安打01奪三振0死四球 失点2自責点0 防御率0.00 0勝0敗
04月21日 阪神戦 先発◯ 7回        6安打06奪三振2死四球 失点1自責点1  防御率0.66 1勝0敗 
04月28日 ヤク戦 先発● 7回1/3     8安打08奪三振5死四球 失点4自責点3 防御率1.71 1勝1敗
05月05日 阪神戦 先発● 6回1/3     8安打05奪三振4死四球 失点2自責点2 防御率1.98 1勝2敗
05月11日 横浜戦 先発● 7回        6安打08奪三振2死四球 失点4自責点3  防御率2.36 1勝3敗
05月17日 楽天戦 先発  6回        6安打03奪三振4死四球 失点3自責点3  防御率2.68 1勝3敗
05月23日 オリ戦 先発  7回        6安打11奪三振1死四球 失点1自責点1  防御率2.47 1勝3敗
05月31日 西武戦 先発◯ 9回        4安打08奪三振1死四球 失点1自責点1  防御率2.24 2勝3敗 初完投
06月06日 ハム戦 先発● 5回        3安打03奪三振1死四球 失点2自責点1  防御率2.20 2勝4敗
06月12日 オリ戦 先発● 8回        7安打08奪三振3死四球 失点3自責点3  防御率2.34 2勝5敗
06月19日 西武戦 先発◯ 7回        5安打07奪三振2死四球 失点0自責点0  防御率2.12 3勝5敗
06月26日 阪神戦 先発◯ 7回        6安打05奪三振1死四球 失点0自責点0  防御率1.94 4勝5敗
07月03日 中日戦 先発● 5回        7安打04奪三振5死四球 失点5自責点5  防御率2.34 4勝6敗
07月09日 広島戦 先発◯ 9回        3安打08奪三振1死四球 失点1自責点1  防御率2.22 5勝6敗
07月15日 ヤク戦 先発● 8回        4安打06奪三振4死四球 失点2自責点2  防御率2.22 5勝7敗
07月29日 ヤク戦 先発● 7回        4安打07奪三振0死四球 失点2自責点2  防御率2.24 5勝8敗
08月05日 広島戦 先発  1回1/3   4安打02奪三振3死四球 失点4自責点4  防御率2.53 5勝8敗
08月12日 広島戦 先発● 7回        6安打08奪三振3死四球 失点4自責点3  防御率2.60 5勝9敗
08月19日 ヤク戦 先発◯ 7回0/3   8安打08奪三振0死四球 失点1自責点1  防御率2.53 6勝9敗
08月26日 広島戦 先発● 7回        7安打03奪三振0死四球 失点1自責点1  防御率2.47 6勝10敗
09月02日 ヤク戦 先発● 6回        4安打07奪三振1死四球 失点3自責点2  防御率2.49 6勝11敗
09月08日 中日戦 先発  10回      2安打07奪三振0死四球 失点0自責点0  防御率2.33 6勝11敗 実松と組む
09月14日 横浜戦 先発◯ 7回        5安打09奪三振1死四球 失点0自責点0  防御率2.22 7勝11敗
09月20日 ヤク戦 先発◯ 7回1/3   6安打04奪三振1死四球 失点1自責点1  防御率2.18 8勝11敗
09月27日 横浜戦 先発◯ 7回        4安打02奪三振1死四球 失点1自責点0  防御率2.09 9勝11敗
10月02日 広島戦 先発  6回1/3   4安打09奪三振3死四球 失点1自責点1  防御率2.07 9勝11敗
10月08日 中日戦 先発◯ 9回        1安打07奪三振1死四球 失点0自責点0  防御率1.97 10勝11敗 初完封
10月14日 中日戦 先発◯ 9回        6安打07奪三振0死四球 失点2自責点2  防御率1.97 11勝11敗

澤村が猛然と突っ走り始めたのは9月8日の中日戦からです。ナゴヤドームで行われたこの試合で、澤村はソトと壮絶な投手戦を繰り広げ、延長10回を無失点で切り抜けたのです。残念ながら試合は引き分けに終わりましたが、何か一皮剥けた澤村がそこにはいました。今までと何が変わったのか?實松がキャッチャーということが今までとは違う点です。それまでは中央大学の先輩である阿部とのバッテリーが鉄板のようでしたが、相手が左腕のソトだということと、気分転換を兼ねて阿部を休ませ、實松とのバッテリーになったのです。その實松が澤村のテンポを引き出しました。配球も非常にシンプルで単純なものにしてリードしたそうです。この試合をきっかけに澤村は5連勝!その後阿部と再びバッテリーを組んでも調子が落ちることはありませんでした。






























































澤村の活躍は今後の選手育成にも大きな影響を与えることと思います。中学・高校と2番手、3番手の投手だった澤村は、大学に入り自ら課したストイックなトレーニングの結果、強靭な肉体を手にしたのです。特に考えさせられるのはウェイトトレーニングを積極的に行い下半身強化に務めたことです。ウェイトトレーニングは賛否両論です。明治大の野村投手はキレを大事しているからウェイトトレーニングはしないと発言しています。しかし、澤村の活躍はウェイトトレーニング支持派にとって大きな後押しになったことと思います。ファームでなかなか球威が上がらずにくすぶっている若手投手は、澤村からトレーニング方法を教わったらいいのにと思います。

今シーズンが始まる前に多くの評論家が澤村にかつての上原を重ねてしまうという主旨の話をしていました。数字的には20勝を挙げた上原には及ばなかったものの、十分インパクトのある活躍をして、その期待に応えたと思います。上原は新人の年、スーパールーキーではなく、さらに上を行く“ハイパールーキー”と呼ばれていました。澤村もその“ハイパールーキー”ではなかったかと思います。新人王は間違いないでしょう。しかし、達川さんが苦言を呈していたようなことが本当ならば改めるべき。あいさつは社会人としての基本です。始まったばかりの澤村の球歴がさらに輝かしいものになるためにも、みんなから愛される存在になって欲しい。

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