巨人の2012年ドラフトを振り返って

  • 舎人
    2012年11月05日 07:30 visibility7285





ドラフト会議から10日が経ち、ようやく見えてきたこともあるので、今日は今年の巨人のドラフトについて振り返ってみたいと思います。今回のドラフトの最大の課題は昨年取り逃がした菅野の獲得でした。この課題をクリアできれば80点以上のドラフトといった感じだったと思います。ドラフト前はDeNAや楽天が指名するなんて噂がありましたが、結局横やりは入らず、巨人の単独指名となりました。2年越しの願いが叶ったことになります。しかし、この菅野を巡るドラフトで巨人が失ったものは多かったと思います。巨人がドラフトの精神に反しているという批判から、清武さんが起こした一連の騒動まで、この原監督の甥をめぐる争奪戦が絡んでいたと言ってもいいでしょう。そういった十字架を菅野は嫌が応にも背負わなくてはいけません。しかし、悪いのは菅野ではなく、周りの大人たちです。菅野をかつて同じように十字架を背負い悪者扱いされてしまった江川さんや桑田さんのようにしてはいけません。そのことを重々踏まえ、巨人は全力で菅野を守らなくてはいけないでしょう。







菅野の指名は言わばやり残した宿題のようなもので、チーム事情からすると、巨人は今年のドラフトで別の課題がありました。野手の補強です。坂本や寺内たちが指名された2006年から2008年までの間、巨人は積極的に野手を指名してきました。その時の野手がここにきて選別され始めているのです。選手によっては成長して一軍の戦力になったものもいます。しかし、多くは二軍に埋もれたままで、徐々に見切りを付けられ戦力外になったり、トレードに出されたりしています。昨日も田中大の戦力外や山本のトレードの報道がありました。「野球太郎」にも載っていましたが、巨人で一軍の戦力になるということは恐ろしく大変なことなのです。2006年から2008年までに入団した野手は19人ですが、一軍に定着したのは坂本、寺内、松本哲、藤村の4人だけ。隠善、中井、大田、橋本といったあたりは今後が期待されますが、田中大や円谷など11人がすでに退団しているかユニフォームを脱ぐことが決定しています。














2009年以降は本ドラフトにおいて、野手の指名をほとんどしてきませんでした。わずかに2009年に長野、2011年に高橋洸だけです。これ以外はすべて本ドラフトでは投手・捕手しか指名しなかったということです。2010年のドラフトでは育成枠で5人もの選手を指名していますが、これは第二二軍を創設するための員数合わせのようなもので、実力本位の指名ではなかった感がありました。言わばテスト入団の大盤振る舞いです。しかし、俊足軽量小型の成長してもコマにしかならないタイプの選手ばかりで、その多くはすでに退団しています。



その結果、現在のファームの野手は本当にカスカスの状態です。二軍に振り分けられている中井や大田、橋本あたりが一軍に昇格したら、この先、目も当てられない状態になることでしょう。おそらく第二二軍は試合を組めなくなる可能性があると思います。野手を今回のドラフトで補強するということは、育成選手制度を維持し、3年後、5年度の巨人を考える上で、喫緊の課題だったのです。



  巨人2012年ドラフト指名選手

[本ドラフト]

1     菅野 智之     23歳 185cm 88kg  投手(右・右) 東海大相模高―東海大   

2     大累   進     22歳 175cm 70kg  内野(右・右) 駒大苫小牧高―道都大

3     辻   東倫     18歳 181cm 83kg  内野(右・左) 菰野高

4     公文 克彦     20歳 173cm 75kg  投手(左・左) 高知高―大阪ガス

5     坂口 真規     22歳 186cm 90kg  内野(右・右) 智弁和歌山高―東海大   

[育成ドラフト]

1     田原 啓吾     18歳 182cm 86kg  投手(左・左) 横浜高

2     松冨   倫     22歳 172cm 70kg  内野(右・右) 楊志館高―別府大



今年のドラフトでは本ドラフトにおいて5人、育成で2人の指名がありました。右投手が1名。左投手が2名、内野手が4名という内訳です。この野手4名というのは私が考えていた最低の数字でした。本当は本ドラフトで4名、育成で3名くらい指名しなくてはいけないと思っていました。第二二軍を機能させ、ファームを充実させるためにはそのくらいの人数が必要だと思ったのです。もっとも、戦力外が予想された高口や仲澤、立岡あたりが残留するようなので、これなら試合を行うのにギリギリ何とかなる人数かなと思います。しかし、指名された選手に関しては大いに疑問でした。2位指名の大累は果たしてこの順位で取るべき選手なのか?色々な寸評やレポートで、良い選手だということは分かりました。ただ、俊足攻守の選手は現時点で特別困っている訳ではないし、この先のドラフトでいつだって取ることができると思う。最悪、トレードで補うことだって可能だと思います。このような成長した先に代走や守備要員といったコマとしての姿しか浮かばない選手は、せいぜい4位以下で取れば良いと思います。私が思うに、ドラフトの上位では、その順位でなくては取れないタイプ、つまりは打撃に特長があり、将来のレギュラーやポイントゲッターを期待できるタイプを取るべきだと思います。大累のようなディフェンス型で打撃が課題の選手は捕手でもない限り、下位で指名すべきというのが私の考えです。



3位指名の辻は非常に良い指名でした。田中大の後任として、左のポイントゲッターとして育てたらいいと思います。4位のサウスポーの公文の指名も納得の行くものです。大立や古川など、どんどん切っていたのでどうしたことかと思っていたら。1人サウスポーを取る公算があったのでしょう。3位4位と納得の指名が続きましたが、5位の坂口の指名は個人的には評価していません。右のスラッガータイプとして、1つ上に中井がいて、同い年に大田がいる。大田や中井が一軍に定着しているのなら話が分かりますが、今のままだとチャンスを喰い合うことになりかねません。入団してみないと確かなことは言えませんが、中井や大田を上回る要素があるように思えないのです。坂口が高校生で中井大田と年が離れていたら、良い指名になったのにと思いました。



育成はたった2名だけでしたが、2006年以降では最少の人数です。このあたりに球団の第二二軍に対する方針の転換を感じざるを得ません。清武さんの始めた育成選手制度は壮大な構想で、素晴らしいものだったと思います。課題も多いものでしたが、それは年々改善すればいいことだったと思います。しかし、これだけ人数を減らしたにもかかわらず、指名が少ないとなると第二二軍を廃止はしないにしても、今後、積極活用する方針ではないのでしょう。もっと発展するかと期待していただけに、この方針転換は残念な気がします。



さて、指名された選手たちの評価がどうだったかです。今年は雑誌3誌と、新聞5紙のドラフト前の評価を集めてみました。

















1位の菅野はアマチュア野球が昨年のAAから1つ格付けを落とし、Aとしています。これは試合感が鈍っていることを鑑みた評価のようです。選者の小関さんの話だと、試合に観戦に来て見かけた菅野の表情に厳しさが消えていることを気にしています。また、週刊現代でドラフト座談会なる記事があったのですが、澤村を中央大で育てた高橋さんが、試合感が戻るまで1年近くかかるだろうと心配していました。どうせ感覚が戻るまで1年かかるのなら社会人を経て、2年後のドラフトを目指した方が菅野にとっては良かったのではないかとのこと。そういった試合感は実際のところどうなのか分かりません。全く影響がないと言う人も数多くいることだけは確かです。菅野のアマチュア野球以外の評価は全て最高ランクです。素材としては抜きん出た存在だということでしょう。多才な変化球を駆使し、常時150キロ前後のストレートを投げる柔剛併せ持つ投手のようです。常に全力投球ではなく、相手に合わせてメリハリのある投球ができることも評価されています。試合感に問題がなければ澤村と同程度の活躍を期待できそうです。リリーフの特性もあるそうですが、あくまで先発で起用されるでしょう。澤村と宮國、そして菅野が、かつての槙原斉藤桑田のような3本柱になることを期待したいと思います。







2位の大累はドラフト直前になって、頻繁に名前が聞こえるようになった選手でした。地方大学の選手ですが、知る人ぞ知る名選手だったようです。しかし、評価は各紙ともあまり高くありません。狙っていた球団があったのかもしれませんが、その評価は中位以下だったようです。それをなぜ巨人が2位で指名したかを考えると、大累の守備と走塁は今年の内野手の中でトップクラスであり、育成の必要がなくすぐに一軍で使えると判断したからだと思います。藤村や寺内に刺激を与え競い合わせることが目的としてあったのでしょう。指名後のインタビューでは「犠打には自信がある」と将来の目標に川相さんの犠打記録を抜くことを挙げています。このあたり、2位指名選手の志にしてはやや寂しい気がしますが、自分の進むべき道が分かっているという点では良いのかもしれません。課題の打撃がさまになってきたら面白い存在になると思います。



3位の辻は3位指名に相応しい評価を各紙がしています。阪神の鳥谷に似ている巧打のショートという評価がありましたが、実際に動画などで確認すると、もっとスラッガータイプの打撃をしている気がします。打ち方が広島にいた浅井を思い出しました。高校通算35本ということですが、育て方次第では長距離砲に化ける可能性を感じます。これで巨人は中井、鬼屋敷に続いて三重県の選手が入団したことになります。スカウト間のパワーバランスが垣間みられます。三重県出身の選手はなかなか大成してきませんでしたが、中井たちと共にそのジンクスを打破して欲しいと思います。



4位の公文は小柄ながらMAX152キロの快速左腕とのことです。評価としても4位が妥当ですが、報知が全体で9番目にあたる小結の評価をしていたり、東京中日スポーツがA評価をしていたり、選者によっては高い評価をされています。球界全体が左腕不足で、どうしてもサウスポーの評価は毎年インフレ気味です。鯛の値段で海老を買っているような指名が毎年目立ちます。この公文はどうなのか気になるところですが、球威も、コントロールもまずまずで、良くまとまっている感じです。下位での入団ながら今年大活躍をした高木京介のようなパターンを期待したいと思います。ただ、152キロというのはどうもマユツバものです。確かに152キロを出した動画がアップされていますが、この時の球速は打球に反応したものではないか?河本コーチの現役時代に似たパワーピッチャーであることは間違いなさそうですが、実際の球速帯は140キロ前半がほとんどだと思います。







5位の坂口は智弁和歌山高の時代の印象が強過ぎて、大学入学後の印象が乏しい選手のようです。当たればどこまででも飛んでいくような脅威の飛距離を誇りますが、荒っぽいままの打撃は相当時間がかかると思われます。昨年のプロアマ交流戦で、巨人は東海大と対戦したので、坂口も出場しているかと思って調べたら、スタメンではなかったものの、代打で1打席だけ出場していました。その時の動画はどうやらすでにアップしていたようです。坂口はブライトとの対戦で、空振り三振に倒れています。0か100かの選手だと思いますが、モノになるまでの時間を球団が用意してくれるかが課題だと思います。



アダム・ブライト 2011年8月31日(対 坂口真規)


※2人目の打者が坂口



育成1位の田原は野手としての可能性も感じるサウスポー、2位の松冨は名鑑によっては身長168センチだったりする非常に小柄な俊足攻守の内野手のようです。2人ともテストで合格したことにより指名されました。2人とも評価は無いに等しいものです。巨人のテストに合格したことにより、リストに載せただけのような感じでしょう。



巨人のドラフトは毎年、1位に関してはやたらと強引で、どんなことをやってでも狙った選手をモノにする貪欲さがあります。そのことが過去にどれだけのトラブルを巻き起こしてきたか分かりません。しかし、どうも2位以下の指名は、その貪欲さが失せると言うかあっさりしているというか、物足りない指名が多い気がします。それに、マスコミなどの評価とは全く違う独自路線を行っている場合が多々ある気がします。したがってドラフトに詳しくなればなるほど、指名された選手に不満が出てきてしまう感じです。しかし、昨年の一岡や高木、田原といった指名は、ドラフト時懐疑的に思われていたものの、実は素晴らしい指名であることが今シーズンが始まってから判明しました。だから、今年の指名も色々思うところはありますが、スカウトの方々やBOSと呼ばれる選手獲得システムを信じたいと思います。この中で3人でも一軍選手に成長したら大成功、2人でも合格です。菅野の成功は固いと信じて、続くのは誰かを注目したいと思います。



次に毎年恒例の兄弟型と血液型について。何の科学的根拠もありませんが、スポーツ選手の活躍や将来度は、血液型や兄弟型が関係していると言われています。すでに野手については話していますが、投手も含めて今年の指名はどうだったのか?








  巨人2012年ドラフト指名選手

[本ドラフト]

1     菅野 智之     23歳 投手(右・右) 末っ子(男女混在2人兄弟、姉)A型

2     大累   進     22歳 内野(右・右) 末っ子(男女混在3人兄弟、姉、兄) O型 

3     辻   東倫     18歳 内野(右・左) 末っ子(男女混在3人兄弟、姉×2) B型 

4     公文 克彦     20歳 投手(左・左) 第一子(男系3人兄弟、弟×2人)A型 

5     坂口 真規     22歳 内野(右・右) 第一子(男女混在2人兄弟、妹)A型  

[育成ドラフト]

1     田原 啓吾     18歳 投手(左・左) 兄弟型不明 A型 

2     松冨   倫     22歳 内野(右・右) 兄弟型不明 B型 



先日も話した通り、大累も辻も末っ子で期待していい系統です。特に辻は今年指名された野手全体でも5本の指に入る高系統です。同郷の先輩中井と兄弟型血液型ともに同じ。坂口の兄弟型と血液型は先輩でもある原監督と全く同じです。チャンスにやや弱い系統なのが心配です。菅野の兄弟型と血液型で一致するのは西武でエースだった渡辺久信(現監督)です。先発でもリリーフでも期待できます。公文は今の時代に珍しい男ばかりの3人兄弟の長男です。これは内海と同じで、血液型も同じです。この男系の第一子の投手は江川さんがそうで、エースに成長するものの、肝心な時にポカをやらかすことがあるようです。体型的にはリリーフタイプですが、系統的には先発向きではないかと思います。



今年のルーキーたちが来年以降、どのようなプレーで我々を楽しませてくれるか分かりません。夢を膨らましながらオフを過ごしたいと思います。



これでドラフトの話は終わりです。次からは今年のルーキーたちの話をしようと思っていたのですが、大二郎や山本がいなくなるらしいので、去り行く者たちの話もしたいと考えています。新しく入る選手たちとの邂逅の思いと、去り行く者たちへの惜別の念が入り交じるオフシーズンの始まりです。































































































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